2017.11.24 ON AIR

ブルーズ界の至宝、ボビー・ブルー・ブランド中期、円熟のアルバム

Midnight Run/Bobby Blue Bland(ビクターVDP-1508)
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ON AIR LIST
1.Ain’t No Sunshine When She’s Gone/Bobby Blue Bland
2.Take Off Your Shoes/Bobby Blue Bland
3.Midnight Run/Bobby Blue Bland
4.Starting All Over Again/Bobby Blue Bland

 

 

 

 

九月の最初のON AIRで映画「Take Me To The River」のサントラを流した時に、僕がどうにも納得できなかったのがボビー・ブルー・ブランドの歌う”Ain’t No Sunshine”にラップをからませたことでした。映画そのものは悪くない映画でしたし、共感できるところもたくさんありましたが、そのシーンのその曲だけは僕はダメでした。
ボビー・ブランドは黒人音楽の国宝のようなシンガーです。もし、ブランドの方から「オレの歌にラッパーをからませてくれよ」と言ったのながまだしも、録音スタジオで初対面のラッパーをブランドにからませるコンセプトがまったくわからなくて、はっきり言って僕はブランドに失礼だと思ったし、完全にオーバー・プロデュース。
しかも歌った歌がブランドの歌が素晴らしい”Ain’t No Sunshine” ブランドの歌だけで充分でかえってラップが邪魔になっていると僕は感じました。そのラッパーに罪はないですよ。彼も頼まれてきただけですから。
それで今日はそのブランドの歌だけの”Ain’t No Sunshine” をどうしても聴いてもらいたくてON AIRします。
1989年リリースの「ミッドナイト・ラン」というアルバムにブランドが歌ったテイクです。
1.Ain’t No Sunshine When She’s Gone/Bobby Blue Bland

ボビー・ブルー・ブランドは50年代から60年代にかけて若き日に在籍したデューク・レコードでの録音がやはりいちばん素晴らしいと言われていますが、今日聴くマラコレコード時代もいい曲がたくさんあります。
次はTake Off Your Shoesというタイトルですが、「オレの芝生の上を歩くのなら少なくともオマエの靴は脱げ」と歌ってます。
「仕事で遅くなって家に帰る途中でモーテルから出てくるオマエと男を見た。オレが買ってやったドレスに合う赤い可愛い靴をオマエは履いていた。オレの芝生の上を歩くのなら少なくともオマエの靴は脱げ」
要するに他の男と浮気をするならオレの買ってやった靴は履くなよ。それを履いておれの芝生(心)を踏みにじるな・・・と。
2.Take Off Your Shoes/Bobby Blue Bland

ではアルバム・タイトル曲です。ちょっとレゲエのリズム・テイストが入っていて、そういうのにも軽やかに乗っていくブランドはさすがです。
ただ単に恋愛の歌なのか、不倫の逢瀬を楽しむ歌なのか・・
「アップタウンもダウンタウンもみんなベッドの準備をしてる。僕の灯りはまだ点いてそして僕の欲望に油を注がなきゃ。
彼女に会いに行く時間だ、僕は一日中待ってたんだ。僕の愛の時計の目覚ましが行く時間だと言ってる。
ミッドナイト・ラン、真夜中に走る。僕と彼女は目一杯楽しむんだよ」
3.Midnight Run/Bobby Blue Bland
「彼女と会ったら、彼女がいい香水をつけてた。部屋の中に入った時、愛の輝きはまだ輝いている。彼女はオレを喜ばせ、痛みを和らげてくれる彼女に会うために、オレは雨の中を10マイルもやってきたんだ」
不倫かな・・。

次はメンフィスのスタックスレコードにいたメル&ティムという男性デュオが1972年に歌った曲で、チャートの5位くらいまで上がったヒット曲です。別れたはずの彼女だけど嫌いになったわけではなく、彼女がやり直すのなら・・「もう一度始めることは大変だけど、僕らだったらできるよ」Starting all over again is gonna be rough But We Gonna Make It
4.Starting all over again/Bobby Blue Bland
ブランドは2013年の6月に83才で亡くなりました。ギターやハーモニカ、ピアノなど楽器を弾かないブルーズマン、つまりスタンダップ・シンガーとして最も有名で実力のある人でした。僕もブルーズを歌う者としてボビー・ブランドはいつも心にある人です。このマラコ・レコード自体もたくさんいいアルバムがあるので探してみてください。

2017.11.17 ON AIR

シカゴ・ダウンホーム・ブルーズの極みスモーキー・スマザーズ

Smokey Smothers Sings The Backporch Blues/Smokey Smothers
(OLDAYS RECORDS ODR6216)

Smokey Smothers Sings The Backporch Blues/Smokey Smothers(OLDAYS RECORDS ODR6216)

ON AIR LIST
1.Come On Rock Little Girl/Smokey Smothers
2.I’ve Been Drinkin’ Muddy Watter/Smokey Smothers
3.I Ain’t Gonna Be No Monkey Man No More/Smokey Smothers
4.You’re Gonna Be Sorry/Smokey Smothers
5.Way Up In The Mountain Of KentuckySmokey Smothers

 

 

 

今日はどっぷりダウンホーム・シカゴ・ブルーズです。
実は今日聴いてもらうアルバムはブルーズの隠れた名盤と言われるスモーキー・スマザーズの「Smokey Smothers Sings The Backporch Blues」Backporch というのは家の裏口のポーチ、裏口のベランダみたいなことです。だから直訳するとスモーキー・スマザーズが歌う裏口ベランダのブルーズと鳴りますが、まあ裏口での噂話みたいなことでしょう。

1. Come On Rock Little Girl/Smokey Smothers
当時シカゴでいちばん売れていたジミー・リード・スタイルのブルーズですが、ゆったりとしたダウンホーム感がいいです
スモーキー・スマザーズと言う人はこれといったヒットもないですが、50年代にはハウリン・ウルフのバック・ギタリストで、アール・フッカーやボ・ディドリーともやっていました。

このアルバムは1962年にリリースされたのですが、62年というとマディ・ウォーターズやハウリン・ウルフのシカゴ・ブルーズの全盛がちょっと過ぎた頃で、このスモーキーはマディたちの次の世代のシカゴ・ブルーズマンで当時33才です。その下の世代、この頃20歳くらいだったのがマジック・サム、バディ・ガイ、オーティス・ラッシュでフレディ・キングが28才。もうシカゴにはいろんなタイプのブルーズ・ギタリストがめちゃたくさんいた頃です。それでそのフレディ・キングがこのアルバムで6曲参加しています。フレディとスモーキーのふたりのギターの絡み方が素晴らしくシカゴ・ブルーズのギターのお手本みたいな曲を聴いてください。
2.I’ve Been Drinkin’ Muddy Watter/Smokey Smothers

ギター二本がグイグイとドライヴしていくのをドラムが一緒にグルーヴしていくのですが、このドラムがフィリップ・ポールというこれまた名人で、フレディ・キングの大ヒット”Hide Away”ほかキング・フェデラルというレコード会社のスタジオ・ミュージシャン・ドラマーでいい曲にたくさん参加しています。ベースがいないのでドラムがすごく生々しく録音されていてドラムの人がシャッフルのリズムを研究するのにもこのアルバムはいいと思います。実はこのよく翌日にその大ヒット”Hide Away”がレコーディングされています。だから次世代のブルーズが生まれていく貴重な時代の録音です。
もう1曲フレディ・キングが参加している曲を聴いてみましょう
3.I Ain’t Gonna Be No Monkey Man No More/Smokey Smothers
生々しいサウンドでいいですね。60年代初期シカゴのブルーズクラブの風景が浮かんできます。
ピアノとかハーモニカとかホーンが入っていないのですごくギター・サウンドの作りがわかるし、彼の生まれ故郷南部ミシシッピーの匂いがやっぱりしてます。参加しているフレディ・キングがインタビューでジミー・ロジャーズのことを絶賛していましたが、フレディとかバディ・ガイとかマジック・サムがこういう伝統的なシカゴ・ブルーズギターを直接受け継いだ世代で、その後になるとやはりB.B.キング・スタイルのチョーキングを多様するモダン・ブルーズのスタイルになっていくんですが、彼らはしっかり南部スタイルも体得してます。
まあ、時代の流れとは言え、こういうギター二本、ドラムみたいな生々しい感じはなくなっていくんですが、どこかロック的で若い人たちも好きになるテイストを含んでます。ストーンズなんかはこのあたりをよく聴いていると思います。

では、典型的なスロー・ミディアム・テンポのシカゴ・ブルーズ・スタイル
4.You’re Gonna Be Sorry/Smokey Smothers
この間もコンサートの最後にブルーズのセッションがあったのですが、ほとんどのギタリストが今日聴いてもらっているようなウォーキング・ベースをーのパターン(ガッガ・ガッガ・・・)をギターで弾かないんですね。自分がソロを弾いている以外の時は適当にコードを鳴らしているだけなんですよ。でも、ブルーズのギターの絡みというのは今日聴いてもらっているようにいろいろあるんですよ。ブルーズ・ギターはソロを弾くだけではダメなんですよ。だから先日のセッションもぼくだけがずっと、ガッガ・ガッガ・・・ってリズムを弾くことになるわけです(笑)そのガッガ・ガッガ・・・がブルーズのリズムの命なんですよ。だから、ブルーズ・ギターを志向する方にはこういうアルバムとかエディ・テイラー、ジミー・ロジャースなんかをたくさん聴いて欲しいです。
5.Way Up In The Mountain Of KentuckySmokey Smothers
このアルバムは日本のオールデイズ・レコードからCD化されてリリースされています。

2017.11.10 ON AIR

Blues Guitar Instrumental-2

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Truckin’ With Albert Collins/Albert Collins (MCA MCAD-10423)

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The Original Peacock Recordings/Clarence “Gatemouth” Brown(ROUNDER CD 2039)

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Steady Rollin’ Man/Robert Jr.Lockwood (P-Vine PCD 1863)

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House Of The Blues vol.1(JIMCO JICK89690)

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Blues After Hours/Pee Wee Crayton (P-Vine PCD-3028)

ON AIR LIST
1.Frosty/Albert Collins
2.Okie Dokie Stomp/Clarence “Gatemouth” Brown
3.Steady Groove/Robert Jr.Lockwood
4.Elmore’s Contribution To Jazz/Elmore James
5.Blues After Hours/Pee Wee Crayton

先週に引き続き今回もブルーズ・ギターのインスト特集。
今日はまずブルーズギタリストの宝庫テキサスから1962年録音、ミスター・テレキャスター、アルバート・コリンズの軽快なこの曲
1.Frosty/Albert Collins
アルバート・コリンズは58年にデビューしているのですが、前回のアール・フッカーと同じであまり歌が上手くなくて、この人こそブルーズギターのインストで有名になった人です。初めて聴いたアルバムには歌も入っていたのですが、「コリンズってギターええけど歌あかんなぁ」というのが一致した意見でした。でも、ギターは唯一無比、彼しか弾けないブルーズ・ギターでありその切れ味のいいギター・サウンドもフレイズも彼だけのものです。というのもギターのチューニングがFマイナー・チューニングといわれる独特の変則チューニングで、やはりそのチューニングにしないとコリンズのサウンド・テイストは出ない。
まあ、ブルーズマンは音楽学校なんかで習うわけもないので、みんな自己流で個性的です。僕がブルーズを好きなところがそこなんです。
歌は上手くないと言いましたが、でも途中からかなりがんばって歌をよく歌ってなんとなく彼流の歌というのができあがっていくところがまたブルーズの面白いところです。

次はアルバート・コリンズのテキサスの先輩です。クラレンス・ゲイトマウス・ブラウン
年は10才くらいゲイトマウスが先輩なのでたぶんテキサスのヒューストンのクラブでコリンズは憧れてみていたと思います。テキサスは録音として残っているいちばん古い30年代のブラインド・レモン・ジェファーソンからT.ボーン・ウォーカー、ライトニン・ホプキンス、そしてゲイトマウス・ブラウン、アルバート・コリンズ、ジョニー・ギター・ワトソン・・・と優れたギタリストがたくさん輩出された土地です。
ゲイトマウスは一時は「ザ・ビート」というテレビ番組のハウスバンドのリーダーをやっていて、テキサスあたりではそうとうブイブイ言わせてたと思います。
2.Okie Dokie Stomp/Clarence “Gatemouth” Brown
コーネル・デュプリーもカバーしたブルーズ・インストの名曲Okie Dokie Stompでした。

次は50年代から60年代サニーボーイ・ウィリアムスン、リトル・ウォルターはじめ偉大なブルーズマンの録音で見事なサポートをしてきた間違いなくブルーズ・ギター名人のひとり、ロバート・Jr.ロックウッド
ロックウッドは何度か来日したのでライヴを見ましたが、すごく自然に楽に弾いているのでなんか簡単そうに見えるんですが、これがカバーしょうと弾いてみるととんでもなく難しいんですよ。ブルーズの一流のスタジオ・ミュージシャンですからワザがたくさんあるんですよね。複音で弾くソロとかコードワークの洗練されているところとか、でもジャズまでいかないあくまでもブルーズ。その中でのパターンがほんとに多くてリズム・ギターからソロまでブルーズギターの教科書みたいな人でブルーズギターをやる人は一度はここを通らないといけないというブルーズマン
3.Steady Groove/Robert Jr.Lockwood
いまでも初めて来日した時の最初のギターの音が僕の頭の中では忘れられなく残っています。

エルモア・ジェイムズは歌もギターもすぐに「あっ、エルモアや」とわかるやはり個性的なブルーズマンです。ギターも歌もすごいエネルギーを出している人ですが、インスト曲はあまりなくていまから聴いてもらうのがいちばん彼の有名インストかも知れません。50年代から60年代へだんだんスライド・ギターを弾く人が減っていったのですが、
エルモアの影響力はすごくて昔はイギリスのジェレミー・スペンサーはじめ、デュアン・オールマン、ボニー・レイット、そしてデレク・トラックスとロック系のギタリストにも大きな影響を与えた人です。
4.Elmore’s Contribution To Jazz/Elmore James
僕もオープンDチューニングでエルモアの曲をスライドしますが、すごく攻撃的な気持ちになります。彼の演奏の中にある暴力性みたいなものにロックのミュージシャンが共感するのではないかと思います。

最後はゲイトマウス、アルバート・コリンズと同じテキサス出身のブルーズマン、ピーウィー・クレイトン。やはり、この人もテキサス流のワイルドなギターが持ち味ですが、テキサスからウエストコーストへ移ったのでウエストコースト風のややジャズがかったプレイもやります。ルーツはやはりテキサスからウエストコーストへ流れたT.ボーン・ウォーカーですね。聴いてもらう曲はもうブルーズ・インストの定番中の定番。
5.Blues After Hours/Pee Wee Crayton
前回と今回はブルーズ・ギターのインスト大会でしたが、いつも言ってますけどねブルーズは歌ですからね。基本は歌いながらブルーズギターを弾くというスタイルがいちばんです。ブルーズギターだけ弾くというのは反則ですよ。
でも、またそのうちギター特集もしますよ。

2017.11.03 ON AIR

Blues Guitar Insrumental-vol.1

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Blues Guitar Hero/Freddy King (P-Vine PCD-799)

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The Slide Guitar bottles,knives&steel (columbia records CK 46218)

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The Guitsr Wizard/Tampa Red (sony records srcs7393)

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T-Bone Blues/T-Bone Walker (Atlantic Records 8020)

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Blue Guitar/Earl Hooker (P-Vine Records PCD-24045)

ON AIR LIST
1.Hide Away/Freddy King
2.Guitar Rag/Sylvester Weaver
3.Things ‘Bout Comin’ My Way/Tampa Red
4.Blues In D Natural/Earl Hooker
5.Two Bones and a Pick/T-Bone Walker

かなり前にブルーズ・ギターのインストルメンタル特集のリクエストをいただきまして、今週と来週はそれにお答えしょうかと思います。
いつも言ってるんですが、ブルーズという音楽はまず歌があってのものです。ギターという楽器はブルーズの歌をサポートする役割でとして始まったものです。ところが日本では歌わないでブルーズギターだけ弾きたいという人が多いです。僕は歌いながらギターを弾いた方がギターも上手くなると思います。でも、ブルーズの録音が始まった1920年代からギターのインスト曲は録音されていて、やはりギター名人と呼ばれるギタリストがいたことも確かです。でも、念を押しますがブルーズは歌ありきです。それをわかった上で今日と来週のブルーズ・ギター・インストを楽しんでください。

ブルーズ・ギターというのが世界的に認知されロック・ミュージックの世界にも影響を与えたはじめのきっかけを作ったのは、やはりブルーズ界の3大キング、B.B.キング、アルバート・キング、フレディ・キングだと思いますが、B.B.とアルバートはギターのインストルメンタルのヒットというのはありません。あくまでも歌と一緒に弾くブルーズギターでの人気なのですが、フレディはエレキ・ギターでのブルーズ・インストを何曲もヒットさせたブルーズマンです。
たぶんブルーズ・ギターのインスト曲でいちばん有名な曲のひとつだと思いますが、フレディ・キングの1961年この曲から今日はスタート!
1.Hide Away/Freddy King
この曲が有名になったのはエリック・クラプトンがジョン・メイオール&ブルースブレイカーズ時代にカバーしたことも大きかったです。フレディはギターのインスト曲をかなりたくさん録音していてざっと想い出せる曲だけでも、San-Ho-Zay、The Stumble、Just Pickin’、Side Trackedとあり、ギター・インストのアルバムもリリースしています。
60年代当時はヴェンチャーズなどギター・インストが全米で流行っていたこともあったと思います。フレディはサーフィンやホットロッドのような曲までブルーズ・インストで出しています。こういうブルーズマンはフレディくらいだと思います。
フレディは自由自在の名人ですが、録音に参加した当時のキング・フェデラル・レコードのレコーディング・ミュージシャンたちがみんな上手いです。

では、録音で残されているブルーズ史上いちばん古いインスト曲は何かと探してみました。たぶんこれではないかと思います。
1923年、シルヴェスター・ウィーバーというギタリストが”Guitar Blues”と”Guitar Rag”という曲を録音しました。それがブルーズ史上初のカントリー・ブルーズ曲であり、初めてスライド・ギターが録音された曲と言われています。ウィーバーはサラ・マーティンとかヘレン・ヒュームズといった20年代に人気のあった女性シンガーのバックでギターを弾き人気になったギタリストです。
2.Guitar Rag/Sylvester Weaver
すごくギターの音色がいいですよね。フォーク的であり、なんか童謡みたいな感じもするのんびりした曲でいいですね。

次は「スライド・ギターの魔術師」と呼ばれたタンパ・レッド。1928年に”It’s Tight Like That”をヒットさせて以降ギタリストとしてだけでなく、ソングライターとしても素晴らしい才能があり亡くなるまでに300曲以上をレコーディングしているブルーズギター名人です。
さっきのシルヴェスター・ウィーバーの「ギター・ラグ」から約10年後の1934年の曲です。
使っていたギターは金属製のリゾネーター・ギターでナショナルというメーカーのトライ・コーン、いまでも高価なギターですが当時もかなりの高級品でした。
タンパはお金持ちやギャングのパーティで演奏するのにも呼ばれて、ギャラもよかったんでしょうね。いつもスーツをちゃんと着た身なりもいい人でした。
3.Things ‘Bout Comin’ My Way/Tampa Red
タンパ・レッドは聴いてもらってわかるようにすごく繊細で丁寧な演奏で、モダンなところとどこか土着性も兼ね備えて独特なスライド・ギターで、多くのスライド・ギタリストは一度はこのタンパ・レッドのギターを学んでいます。次はそのタンパのスライド・ギターを継承したやはりギター名人のひとりです、アール・フッカー。
アール・フッカーはシカゴ・ブルーズのスタジオ・ミュージシャン的な存在で、南部からシカゴにやってくる土着的なブルーズマンとはちょっと違うR&B的な、またはロック的な要素も持ち合わせた先進的でファンキーなギタリストでワウワウやエフェクターも早くから使った人です。豪快だけど繊細なギターで、やはり名人でしょう。
いまから聴いてもらう曲はオルガンを加えたR&B的な当時にしてはモダンなサウンドです。
4.Blues In D Natural/Earl Hooker
アール・フッカーはブルーズの巨人ジョン・リー・フッカーの従兄弟なんですが、ふたりの芸風のあまりの違いに笑ってしまいます。まあ、アール・フッカーは歌がね、上手くなかったのでギターへ行ったんでしょうね。でも、アメリカン・フォーク・ブルーズ・フェスティバルの映像で楽屋で歌ってるシーンが出てくるんですが、やはり歌は大好きなんだと思います。彼のギターは歌ってますから。
最後はモダン・ブルーズ・ギターの父と呼ばれるT.ボーン・ウォーカーのインストを聴こうと思います。さっきからどのインスト曲もそうなんですが、ギターが歌ってるんですよね。だから適当にアドリブを弾いているのではなく、ここのコーラスでこのフレイズでテーマはこのメロディとちゃんと決まってるんですよ。だから、よくあるセッションでダラダラとギター・ソロを弾く人たちとはかなり違うわけです。次のT.ボーンの曲なんかは本当にしっかり構成もなにもかもアレンジされた素晴らしいインスト曲です。もうひとりのギターはT.ボーンの友達でジャズギタリストのバーニー・ケッセル。ふたりの名人のギターのからみもお楽しみください。
5.Two Bones and a Pick/T-Bone Walker
ギタリストふたりもめちゃ上手いですが、バックのミュージシャンも本当にため息でるくらい上手いです。
今日はブルーズ・ギターのインスト特集でしたが、まだまだ聴いてもらいたい曲があるので来週もブルーズ・ギター・インストお送りします。