2019.04.19 ON AIR

黒人音楽と白人音楽が交叉し始めた50年代をテーマにした映画
「アメリカン・グラフィティ」vol.2 LPでどうぞ!

AMERICAN GRAFFITI ・Original Sound Track Recording
(ワーナー・パイオニア P-5642/3)

img01

ON AIR LIST
1.Ain’t That A Shame/Fats Domino
2.Ya Ya/Lee Dorsey
3.To The Aisle/The Five Satins
4.Green Onion/Booker.T& The MG’s
5.At The Hop/Flash Cadillac And The Continental Kids
6.All Summer Long/The Beach Boys

前回から1973年に公開された映画「アメリカン・グラフィティ」のサウンド・トラックを聴きながら、50年代から60年代の黒人音楽への白人音楽の関わりみたいなことを話しています。
このLPレコードは2枚組計41曲収録されていて、前回聴いたバスター・ブラウンの「ファニー・メェイ」のような黒人ブルーズからデル・シャノンの「悲しき街角」のような白人ポップスまで収録されています。
今日はまずニューオリンズR&Bの大御所、ファッツ・ドミノからです。ジョン・レノンもソロ・アルバムでカバーしていました。1955年ポップ・チャート10位まで上がりましたが、これをカバーした白人シンガー、パット・ブーンのバージョンは1位になりました。当時は黒人がちょっとヒットさせた曲を白人がカバーして大ヒットになるということがよくありました。やはり白人にとってはそれが黒人のカバーであるかどうかより、白人が歌っていればいいわけなのでプロモーションの力も違うので白人の方が売れることになってしまいます。パット・ブーンのバージョンをYouTubeで聴いてみましたが、炭酸の抜けたコーラのようなテイストでした。
では、偉大な黒人ピアニストであり、シンガー&ソングライターのファッツ・ドミノの歌
1.Ain’t That A Shame/Fats Domino

次はもうひとりニューオリンズのシンガー、リー・ドーシーの1961年の曲です。50年代中頃から60年代にかけてニューオリンズのR&Bがかなりヒットして白人の若者たちに浸透していったと思われます。この曲はR&Bチャートで1位、白人のポップチャートでも7位まで上がりました。ファンキーでポップなこの曲もジョン・レノンがカバーしていますが、リー・ドーシーはイギリスでも人気でコンサートにも出かけています。

2.Ya Ya/Lee Dorsey
昔はこの映画にはアメリカの有名なラジオのディスクジョッキー、ウルフマンが出演して映画の中でもDJの役をやっているのですが、実は僕はこのウルフマンにロスで会ったことがあり、彼のラジオ番組にも出演しました。というのは彼が日本でラジカセのCMにデルために来日した時どこかの放送局で日本で英語で歌っているバンドとシンガーをON AIRしながらDJする特別番組をほやったのですが、その時に僕がやっていたウエストロード・ブルーズバンドが選ばれてON AIRされたんですが、その後気に入ってくれたらしくて会いたいとレコード会社に連絡がありました。僕はその頃ロスにいてブラブラしていたんですが、それでロスのカフェで待ち合わせしたらこの映画の本物のウルフマン・ジャックが来て「おおっ!」という感じでした。それで彼のスタジオに連れていかれていまから収録するから出ろって言われてほんのの2,3分ですが出ました。その時ウルフマン・ジャックが「
日本のローリング・ストーンズ」と言って紹介してくれたのですが、「いやいや、それは言い過ぎやろ、おっさん」いう感じで楽しい人でした。
このアルバムでは次の曲でそのウルフマンがラジオを聴いている若者と電話でちょっと話をして曲に入るんですが、 ウルフマンが「こんにちは、君はいくつ」と訊くと男の子が「僕は13歳だよ。あなたはいくつなの?」と言うと、ウルフマンが「僕はたった14歳だよ」と冗談を言うと男の子が「オーボーイ、I Love You Wolfman」と笑って返してます。聴いてください。曲は
3.To The Aisle/Five Satins
いまのは黒人のコーラス・グループ、ファイブ・サテンズでしたが、50年代中頃から黒人のドゥ・ワップのコーラスグループのブームがありました。このアルバムにもいまのファイブ・サテンズ、フラミンゴス、クローバーズ、ハート・ビーツ、スパニエルズとたくさん収録されていて、ドゥ・ワップ・ブームのすごさがわかります。ドゥ・ワップはきれいなハーモニーのコーラス音楽ですし、表面的な激しさ

次はブッカーT.&MG’sの「グリーン・オニオン」
キーボードのブッカーTはじめ、ギターのステーヴ・クロッパー、ベースのドナルド・ダックダン、ドラムのアル・ジャクソンからなるMG’sはメンフィス・スタックス・レコードのスタジオ・ミュージシャンのグループでオーティス・レディングはじめ多くのスタックスの録音そしてライヴもこなしていた。ブルーズ進行のどうってことないと言えばどうってことないインストルメンタルの曲が62年にチャート3位まで上がった。このアルバムでは唯一のインスト曲。
4.Green Onion/Booker.T&MG’s
アメリカの青春映画のひとつとして有名なこの映画は、4人の白人の若者のある一夜の出来事を映画にしたもので恋愛あり、喧嘩あり、悩みありの青春もの。監督のジョージ・ルーカスの出世作であり内容は彼が過ごした50年代の青春を描いていると言われてます。
こんな楽しい曲も入ってます。69年のウッドストック・フェスティバルの映画を観た方なら知っているこの曲はシャ・ナ・ナというオールド・ロックンロールのコーラス・グループが歌ってました。オリジナルは1958年のダニー&ザ・ジュニアズでこのアルバムで歌っているフラッシュ・キャデラック&コンティネンタル・キッズもカバーなんですが、楽しいロックンロールです。
5.At The Hop/Flash Cadillac And The Continental Kids

このアルバムの最後は僕もリアル・タイムで10代の頃ずっと好きだったビーチ・ボーイズです。
映画はベトナム戦争の泥沼にアメリカが入る直前の頃、50年代から続いた平和で豊かな最後の楽しい時代だったを描いているが、映画最後のエンドロールで映画の主人公だった4人のそれからどうなったかが文字で出てくる。そして、その中のひとりテリーがベトナムで亡くなったという文字がでる。その時にビーチボーイズのこの曲が流れる。
楽しく過ごした夏が終わっていくという曲です。
6.All Summer Long/The Beach Boys

アメリカン・グラフィティ観た方も観てない方もDVDで観てください。いつの時代も変らない青春の感じが描かれてますが、自分の高校時代の青春をきっと想い出すと思います。
そして、人種差別や権利の差別がまだたくさんあった時代で社会的政治的にはまだまだひどす時代ですが、黒人と白人が音楽の上では互いに歩み寄っていく時代です

2019.04.12 ON AIR

黒人音楽と白人音楽が交叉し始めた50年代をテーマにした映画
「アメリカン・グラフィティ」をLPレコードでどうぞ!

AMERICAN GRAFFITI ・Original Sound Track Recording
(ワーナー・パイオニア P-5642/3)

img01

ON AIR LIST
1.Rock Around The Clock/Bill Haley And The Comets
2.Funny Mae/Buster Brown
3.That’ll Be The Day/ Buddy Holly
4.Johnny B.Goode / Chuck Berry
5.Smoke Gets In Your Eyes/The Platters

皆さんは「アメリカン・グラフィティ」という映画をご存知でしょうか。
1973年に公開された映画です。1962年の夏のある一晩の出来事を描いた青春映画で監督はジョージ・ルーカス、プロデューサーのひとりがフランシス・コッポラ、主演が名優リチャード・ドレファス。
実は僕はこの映画が公開された73年当時観ていたけど、監督がジョージ・ルーカスだったとは知らなかった。「スター・ウォーズ」が公開されたときにジョージ・ルーカスの経歴を見て初めてこの「アメリカン・グラフィティ」が彼の出世作だったと知った。
映画の中でふんだんに50年代から60年代のR&R、R&B、コーラスグループの曲が流れるのと、時代設定が60年代はじめでそのファッションとか車とか食べ物とかすごく憧れながら見ました。

まず映画のタイトル・クリップと一緒に最初に流れるのがビル・ヘイリー&ヒズ・コメッツのこの有名R&R曲
1.Rock Around The Clock/Bill Haley And The Comets
ビル・ヘイリーは55年に映画「暴力教室」すごいタイトルですが、本題はBlack Board Jungle(黒板ジャングル)これもすごいか。その映画にこの曲が使われてヒットするんですが、使われる前は全然売れてない曲でした。ビル・ヘイリーは白人で元々カントリー&ウエスタンを歌ってました。まああまり売れてないシンガーでしたが、キャリアは長くてこの曲がヒットした時もう30歳は過ぎていました。最初写真を見たときなんかカッコ悪いおっさんやなと想いました。それでカントリー&ウエスタン歌っててもヒットが出ないので、R&Bのテイストを入れたらどうやとプロデューサーに言われていまの曲になったのですが、そり頃には黒人のジャッキー・プレストンがアイク・ターナーのバンドでヒットさせた”Rocket 88″とか、ジョー・ターナーの”Shake Rattle Roll”とか黒人のブルーズをR&R風にしてカバーして売れるようになりました。
おおまかに言うと黒人のブルーズ+白人のカントリーでR&Rテイストが作られました。白人のエルヴィス・プレスリーもそうですし、黒人のチャック・ベリーにもカントリー・テイストがあったから売れたのだと思います。

映画「アメリカ・グラフティ」にはいろんな曲が出てくるのですが、もろに黒人のブルーズというと次のバスター・ブラウンのヒット曲だけです。1960年のR&Bチャート1位、ポップチャート38位です。1960年に白人音楽のチャートであるポップチャートで38位というのはすごいです。
イントロに本物のラジオのDJウルフマン・ジャックの声が入ってます
2.Funny Mae/Buster Brown

次の白人のバディ・ホリーもR&Rのパイオニアのひとり。ビートルズがバディ・ホリーをすごく好きなのは有名な話で”Words Of Love”という曲をカバーしていますが、ビートルズの前身バンド「クォーリーメン」の時に初めてのレコーディングでジョンとポールが選んだのが次のバディ・ホリーのこの曲です。1957年リリース、全米5位になった彼のデビュー曲です
3.That’ll Be The Day/ Buddy Holly
ビートはシャッフルで途中のギターソロもモロにブルーズですね。
バディ・ホリーもカントリー&ウエスタンを歌っていたのだけどそこに黒人のブルーズやR&Bのテイストを加えてヒットを出した。そのきっかけとなったのがエルヴィス・プレスリーで、バディはプレスリーのレコード聴き、ステージを見て自分の音楽を変えていった。当時、歌を歌うのは大所帯の楽団だったり、ホーンセクションを加えたものだったけど、バディはお金がなかったのでベース、ドラム、ギター二本というバンドスタイルで活動せざるを得なかった。そういうバンドスタイルでも音楽が出来るとビートルズ、ストーンズたちに影響を与えた。
でも、黒人ブルーズの世界ではギター二本にベース、ドラムというようなバンドスタイルで演奏することはその前から普通にやっていたことで、時にはギター一本にベース、ドラムとかギター二本のドラム、ベースなしとか、ギターとドラムだけとかブルーズマンは平気でやってました。

そしてバディ・ホリーは売れてからソロになり次第にポップシンガーになっていくのですが、そのあたりはプレスリーと同じ道に入った感じです。それで彼がR&Rのパイオニアのひとりだとしたら、絶対的なR&Rのパイオニアはやはり黒人のこの人。そして永遠のR&Rの名作は1958年のこの曲。
4.Johnny B.Goode / Chuck Berry
チャック・ベリーがR&Rの王様である理由はヒット曲の多さと、その後いままで歌い継がれている曲の多さ、そして音楽的には曲作りの上手さ、ノベルティな楽しい歌詞、印象に残るギターのリフ、フレイズ、ギターソロの上手さ、そして、黒人とは思えないいい意味での軽さが白人にも支持されていまに至ってるのでしょう。
そして50年代中頃から終わりにかけて我も我もとR&Rを歌う白人の若者がデビューしてくるのですが、当初は白人の親の多くはR&Rを不良の音楽として子供に聴かせないようにしていたのだけど、黒人音楽に影響を受けたミュージシャンがプレスリー、バディ・ホリー、ビル・ヘイリーとどんどんデビューしていく中でもうそういう黒人と白人という区別の制約も音楽の上ではだんだん崩れていくんですね。プレスリーは「僕がやっている音楽、ダンス、着ているファッション、ヘアスタイル・・全部黒人が前にやっていることだよ」プレスリーは黒人のクラブに忍び込んで黒人音楽を吸収した人ですから、黒人のカッコ良さよく知ってたんですね。
でも日常生活、社会的政治的には変らず根強く黒人への人種差別は60年代へつづくわけです。そして黒人の権利を求める公民権運動が始まっていくわけです。
このサントラ盤にはコーラス・グループもかなり収録されているのですが、3曲も使われているのが黒人コーラスグループのプラターズ。黒人グループとしは破格に売れていた彼ら。うちの親父もレコードもってました。いまから聴く曲はうちの居間でもよく流れてしまた。ジャズ・コーラスグループでしたが、ポップな曲も多くて白人の若者にも聴かれていたのだと思います。日本のタイトルは「煙が目にしみる」
5.Smoke Gets In Your Eyes/The Platters
ほかにも「Only You」, 「The Great Pretender」,「 My Prayer」, 「Twilight Time」, 「You’ll Never, Never Know」, 「Sixteen Tons」そしていまの「Smoke Gets In Your Eyes」などプラターズは50年代なかばから白人、黒人両方にミリオンセラーの連発でした。

「アメリカン・グラフィティ」のようなアメリカの音楽がたくさん流れる映画のサントラレコードを聴いていると、黒人音楽がどんな風に白人に受け入れられていき、白人がどんな風に黒人音楽のテイストを使っていったのか、また今度は黒人の方が白人にも受け入れられ売れるためにどうしていったのかがよくわかります。来週もこのアルバムを聴いてみようと思います。

2019.04.05 ON AIR

LPレコードで聴くブルーズ名盤

70年から80年代にかけて最高のブルーズロック・サウンドを出していたFabulous Thunderbirds
Butt Rockin’ / The Fabulous Thunderbird(CHRYSALIS RECORDS PV-41319)
img01

ON AIR LIST
1.I Believe I’m In Love/The Fabulous Thunderbirds
2.I Hear You Knockin’/The Fabulous Thunderbirds
3.Cherry Pink and Apple Blossom White/The Fabulous Thunderbirds
4.Tip On In/The Fabulous Thunderbirds
5.Matilda/The Fabulous Thunderbirds

ブルーズにそんなに詳しくない人でもロックを好きな人ならスティーヴィー・レイボーンの名前は知っていると思います。
80年代にジミー・ヘンドリックス・スタイルとブルーズロック・スタイルをミックスしたギタースタイルで登場して、一躍人気の出たスティーヴィー・レイボーン。
その実の兄がジミー・ボーンと言いまして彼は弟とはまた違うギター・スタイルで僕はどちらかというとその兄のジミー・ボーンの方が好きなんですが、そのジミー・ボーンがハーモニカのキム・ウィルソンと1974年に作ったバンドが「ファビュラス・サンダーバーズ」です。
アルバム・デビューは1979年。僕は最初ロスアンゼルスの友達にいいブルーズロックのバンドがいると言われてカセットテープをもらったのがそのデビューアルバムでした。

これが実にいいブルーズロックバンドで、最初歌がいいなと思いました。ほとんどキムが歌っているんですが、白人にありがちな無理な発声もなくもまたか細い感じもなく、すごく自然に歌っていて、演奏よりもまず歌に弾かれました。
今日はその「ファビュラス・サンダーバーズ」の1981年の3枚目のアルバム”Butt Rockin'”をレコードで聴いてみようと思います。
このアルバムは去年僕の後輩のギタリストで上村秀右くんにプレゼントしてもらったもので、あまりにいいので今日ON AIRです。
アルバム・タイトルのButt Rockin’のButtとは・・
まずはアルバムの一曲目
1.I Believe I’m In Love/The Fabulous Thunderbirds

ファビュラスはテキサスのバンドなのでワイルドなテキサス・スタイルととなりのルイジアナのスワンプ、そしてニューオリンズの音楽テイストも入っているところが特色です。

次の曲は以前オリジナルのレイジー・レスターをON AIRしましたが、いわゆるルイジアナのスワンプ・ブルーズの有名曲です。レイドバックとステディなビートが合わさった実にいい味のブルーズなんですが、ファビュラスはその味を損なわないでスワンプ感もしっかりあります。
2.I Hear You Knockin’/The Fabulous Thunderbirds
ちょっとポップな感じもあり最高のダンス・ナンバー、パーティ・ソングです。残念なことにオリジナルのレイジー・レスターは去年の夏に亡くなりましたが、たぶんこの歌はずっと歌い継がれていくと思います。
ファビュラスは最初ルー・アン・バートンという女性シンガーがいたのですが、すぐにやめています。

ファビュラスは結成以来、地元テキサスのオースティンにあるブルーズクラブ「アントンズ」でハウスバンドを長らくやってました。そこで自分たちのレギュラー・ステージをやりつつ、ツアーで「アントンズ」回って来るいろんなミュージシャンのバックも務めていました。だから、バンドは相当鍛えられてタフで上手いバンドになったのだと思います。
次のインスト曲なんかもブルーズではないけれど、ステージでショーアップするために演奏していた曲ではないかと思います。
3.Cherry Pink and Apple Blossom White/The Fabulous Thunderbirds
いまの曲は日本では「チェリー・ピンク・チャチャ」とか「セレソ・ローサ」というタイトルで知られているようですが、元々フランスの曲なのですがヒットしたのはラテンのペレス・プラード楽団の1955年のインスト・バージョンがヒットして有名曲になりました。元々は歌詞があるそうです。
僕も小さい頃にそのペレス・プラード風のアレンジで日本のラテンバンドがやっていたのをなんとなく覚えています。あとは中学校の昼休みにBGMとしてこういう音楽が流れてました。

次もさっきのI Hear You Knockin’のレイジー・レスターと同じレコード会社「エクセロ」所属のブルーズマン、スリム・ハーポの1967年の曲です。
ファビュラスの特徴のひとつですけど、ルイジアナのスワンプ・ミュージックの影響が強いです。他の白人のブルーズバンドと違うところですね。ストーンズとか他のバンドもよくスリム・ハーポの曲を取り上げていますが、ファビュラスほどサウンドとグルーヴがスワンプ・テイストにはなってないです。
語り入りのインストルメンタル曲
4.Tip On In/The Fabulous Thunderbirds

白人のブルーズ系バンドとかミュージシャンはたくさんいるのですが、白人と黒人の違い、また黒人と日本人との違いは歌です。ギターやハーモニカやドラム、ベースといった楽器に関してはブルーズの演奏上、同じようなレベルにあるいは独自の演奏というのはあるのですが歌に関しては自分のことも含めて難しいです。それで僕はやたらと黒人っぽくしょうとか、黒人みたいな声にしょうとかはしません。声は生まれもったものですからどうしようもないです。黒人とは身体の骨格も違うし日常生活も食生活もすべて違いますから。ただツアーを繰り返して長く歌っていると歌うときの自分の声が出来上がっていくんですね。それができあがるように練習とライヴを繰り返すしかないと思っています。たまにブルーズ歌ってもそれは無理です。このファビュラスもすとてつもない回数のライヴをこなしたと思うのですが、ヴォーカルのキム・ウィルソンの歌が自然にブルーズを歌っていてすごくいいです。わざとらしさもないし、がなったり、喉を締めるような感じもなくてナチュラルです。
次の曲でもキムの歌がいいです。曲は僕が大好きなルイジアナ、スワンプR&Bバンドの「クッキー&カップケイクス」の曲です。もうルイジアナという感じです。
5.Matilda/The Fabulous Thunderbirds

ファビュラスはめちゃくちゃ売れたバンドではないのですが、やはりたくさんのライヴで鍛えられたバンドでタイトで骨太、でも大味ではない素晴らしいバンドです。
1986年に「Tuff Enuff」という曲がヒットして日本にも来たのですが、残念ながら僕は見逃しました。
1990年にジミー・ボーンが脱退して、ファビュラスはほとんどハーモニカと歌のキム・ウィルソンのバンドになった感じですが、いまも活動を続けています。いまもいいバンドですが、僕はジミー・ボーンのギターが好きなのでちょっと残念です。ジミー・ボーンはブルーズギターの役割と歌のバックアップの仕方をよく知っていて、派手さは弟ほどないんですが素晴らしいギタリストです。

2019.03.29 ON AIR

LPレコードで聴くブルーズ名盤

若き日のボブ・ディランも参加している
「Three Kings And The Queen 」(Spivey/DOXY DOY679)

img01

ON AIR LIST
1.Sitting On Top Of The World/Big Joe Williams&Bob Dylan
2.Lake Charles Stomp/Roosevelt Sykes
3.Four Shots Of Gin/Lonnie Johnson
4.Brown Skin/Victoria Spivey
5.Wichita/Big Joe Williams & Bob Dylan
今日聴く「Three Kings And The Queen」というLPレコードは1964年にスピヴィ・レコードからリリースされたもので、いまだにCDにはなっていません。今日用意したのはその原盤ではなくて、ヨーロッパのドクシーというレーベルがそのまま復刻したものです。
元々のスピヴィ・レコードというのは女性ブルーズシンガーのヴィクトリア・スピヴィが主催していたレーベルで1985年くらいまで続いていたんですが、その間にマディ・ウォーターズ、オーティス・スパン、メンフィス・スリムなどを録音しています。
今日のアルバムの「Three Kings And The Queen」の3人の王様というのはピアノのルーズヴェルト・サイクス、そしてギターのロニー・ジョンソン、ビッグ・ジョー・ウィリアムスのことで、女王さまはヴィクトリア・スピヴィのことです。それだけでも大いに期待できるのですが、このアルバムのもうひとつの売り物は若き日のボブ・ディランがビッグ・ジョーのバックでハーモニカとバックコーラスをやっていることです。ディランはビック・ジョーが好きで、まあ追っかけとまではいかないまでもライヴに飛び入りとかもしていたみたいです。
では、まずそのディランがハーモニカとコーラスで参加している曲を聴いてみよう。
1.Sitting On Top Of The World/Big Joe Williams&Bob Dylan
ディランの声聴こえましたか。ハーモニカもいいですね。1962年の録音でこの時ディラン20歳です。ディランがレコード・デビューした年ですね。大好きだったビッグ・ジョーとの録音はすごく嬉しかったでしょうね。

次はいかつい顔のピアノのルーズヴェルト・サイクスで語りとピアノ・ソロでドラムとのデュオです。
ルーズヴェルト・サイクスはブルーズ・ピアノの名手で1929年からレコーディングし始めて70年代の後半まで録音があるから約半世紀レコーディングがあった強者です。
いまだにカバーされている”44 Blues”,”Driving Wheel”Mail Box Blues”とか有名曲も残しています。アーカンソー州に生まれて、セントルイス、シカゴ、それからニューオリンズへと移り住んだサイクスのこの曲はそのニューオリンズの湖の名前がついた曲です。
2.Lake Charles Stomp/Roosevelt Sykes
見事にうねるピアノさばきで素晴らしいグルーヴ感です。ピアノも歌も明るい感じの曲調が多くて聴いていても楽しくなります。アルバムもたくさん出てますのでチェックしてください。ルーズヴェルト・サイクスでした。

次はB.B.キングはじめ多くのギタリストに影響を与えたギター名人のロニー・ジョンソン。この人も1925年から亡くなる70年まで録音がたくさん残っている人で自分のソロだけでなく、ジャズギタリストのエディ・ラングとの共演はじめ歌手のバックで弾いているものをいれるとかなりの録音数になります。
とにかく的確で正確でリズムもばっちり、表現が豊かなギターで名人芸です。映像を見るとかなり楽勝な感じでゆったり弾いているのがむかつきます(笑)
3.Four Shots Of Gin/Lonnie Johnson
あまり気張らないちょっと鼻にかかった歌声もレイドバックしていていいですね、それにしてもギターのグルーヴ感が素晴らしい。

次はこのアルバムのレーベル主宰者でもあるヴィクトリア・スピヴィの歌です。ヴィクトリア・スピヴィは1926年にデビューしてその曲”Black Snake Blues”が大ヒットして30年代終わりくらいまでは盛んに録音していたのですが、1961年にニューヨークでこのアルバムのプロデューサーでもあるレン・クンスタットとスピヴィ・レーベルを設立して自分のも含めてたくさんブルーズを録音しました。
では、ビクトリアがウクレレを弾いて歌っている素朴な歌を聴いてください。
4.Brown Skin/Victoria Spivey
ウクレレで歌われるブルーズは珍しいです。

せっかくボブ・ディランがハーモニカで入っているので、もう一曲ビッグ・ジョーとの曲を聴きましょうか。
こうして振り返ってみるとディランが数年前にブルーズ・アルバムを出したのですが、彼もローリング・ストーンズと同じように最初に好きなったブルーズという音楽をずっと好きでいるんですね。ディランはロバート・ジョンソンのアルバムを初めて聴いたときの衝撃をいろんなインタビューで語ってますが、「ロバート・ジョンソン」聴いて自分でも曲を作ろうと思ったという言葉は忘れられません。だから、このビッグ・ジョー・ウィリアムスと一緒に演奏したことも彼の音楽にたくさんの影響を与えたと思います。
すごくディランがハーモニカでがんばってますよ。聴いてください。
5.Wichita/Big Joe Williams & Bob Dylan

今日は1964年にリリースされた名盤「Three Kings And The Queen」をLPレコードで聴きました。

2019.03.22 ON AIR

LPレコードで聴くブルーズ名盤シリーズ

ブルーズの名盤中の名盤
Here’s The Man/Bobby Bland (DUKE/MCA DLPS 75)
img01

ON AIR LIST
1.Turn On Your Love Light/Bobby Bland (side1-3)
2.You’re The One(that I Adore)/Bobby Bland (side1-2)
3.36-22-36/Bobby Bland (side1-1)
4.Stormy Monday Blues/Bobby Bland (side2-5)
5.Blues In The Night/Bobby Bland (side1-6)

LPレコードで聴くブルーズ名盤シリーズ、今日はボビー・ブランドの名作「Here’s The Man」です。
ボビー・ブランドはB.B.キングと双璧のモダン・ブルーズ史上外せないシンガーで、時にボビー・ブルー・ブランドと呼ばれることもあります。
ブランドはこの番組では何度も取り上げていますが楽器を弾かない、歌だけで勝負のいわゆるスタンダップ・シンガーです。
このアルバムは1962年テキサス、ヒューストンの「デューク・レコード」からリリースされたボビー・ブランドの2枚目アルバムです
僕もブルーズにハマってすぐギター・サウンドではなく、しっかりアレンジされた重厚なオーケストラのサウンドのブルーズにちょっと戸惑いました。ギター・サウンドのロックからブルーズに入った人は最初そのサウンドの肌触りに慣れていないので、僕と同じように少し馴染めないかも知れませんが、ブランドのディープな歌声に取り憑かれるとちょっと離れられなくなります。
まずは躍動するグルーヴ感が素晴らしいゴスペル・テイストの曲です。ドラムはのちにJames Brownのドラマーになるジャボ・スタークス。そのジャボのドラムとブランドの歌だけになるあたりの高揚感がたまりません。
「君は突然僕の心を破って引き裂いた。暗闇に僕を残して、僕への愛は死んだと言った。ベイビーどうかお願いだ。その灯りを付けて僕を照らしてくれ、灯りをつけて照らしておくれ」
1.Turn On Your Love Light/Bobby Bland

50年代メンフィスでしのぎを削ってお互いがライバルだったB.B.キングとボビー・ブランドは、女性客に「オマエの方が人気があった」と言い合ってますが、まあふたりともブイブイ言わせていた時期で、ステージに上がってきた女性客に額の汗を拭いてもらっているブランドの写真もあります。一見ごっつい顔のブランドですが、黒人女性にはすごい人気だったらしいです。でも、次の歌なんか歌詞の内容が「君は僕が愛するたったひとりの女だ」なんてことをすごく響くいい声で歌うので、女性はメロメロになるのでしょうか、どうでしょう。
2.You’re The One(that I Adore)/Bobby Bland
今日聴いているボビー・ブランドの「Here’s The Man」というレコードですが、僕が持っているのは原盤、オリジナル・プレスではなくてデュークレコードをMCAレコードが買い取ったあとにリリースしたものでジャケットが違います。オリジナルのジャケットはマイクを持って汗をだくだくで歌うブランドの横顔でしたが、僕のはステージでスポットライトの中に佇んでいるブランドです。そして、いちばん違うのがA面の一曲目の36-22-36という曲のイントロにライヴMCみたいのがオリジナルには入っているのに、今日聴いてもらっているレコードではそのMCがカットされ演奏から入ってます。どうしてこんな編集を後からしたのか疑問です。
では、そのMCが入っていない一曲目を聴いてください。
この数字は彼女のスリーサイズですが、36インチだから胸とお尻が約92センチ ウエストが56センチ・・まあボン・キュ・ボンですわ
3.36-22-36/Bobby Bland

このアルバムでどうしても聴いてもらいたいのが次の「ストーミー・マンデー・ブルーズ」
ブルーズを知っている方ならご存知のブルーズの定番曲ですが、元々はT.ボーン・ウォーカーがオリジナルでそのT.ボーンのもすごくいいのですが、それをカバーしたこのボビー・ブランド・バージョンは是非聴いてもらいたい1曲です。これはホーン・セクションが入ってなくて、コンボでの録音。ギターはブルーズギターの名手、ウェイン・ベネットが弾いています。そのギターソロも珠玉のソロです。
月曜日からずっと働きに出かけてイヤなことばかり、でも金曜日と土曜には遊びに行って、・・・という普通の黒人たちの生活を描いたブルーズです。
ボビー・ブランドの深いいい声がもうとろけるようにいいです。
4.Stormy Monday Blues/Bobby Bland
ブルーズという音楽がもつ美しさを見事に表したストーミー・マンデーだと思います。ブルーズの歴史に残る名演のひとつです。

このアルバムをリリースした1962年あたり、ボビー・ブランドは全盛期なのですが彼の成功の後ろにはアレンジャーでありトランペッターでもあったジョー・スコットのバックアップがありました。
楽器を何も弾かないで歌だけ歌うブランドの場合、やはりバックバンドを自分の歌に合うように仕切ってくれるバンマスが必要です。ジョー・スコットはブランドに合ったアレンジをしただけでなく、歌い方もブランドに指示したらしいです。最近はこういうホーンが入ったゴージャスなバンドを持つブルーズシンガーはほとんどいませんが、50年代から60年代、こういうバンド形態はブルーズマンにとってひとつのステイタスでした。この時代ブランドはオーケストラを引き連れて同胞の黒人のクラブをツアーする大スターでありました。
最後に1941年に公開された映画「Blues In The Night」の主題歌でレイ・チャールズはじめたくさんの人にカバーされています。
5.Blues In The Night/Bobby Bland

今日聴いたBobby Blandの”Here’s The Man”はCD化もされていますので是非ゲットして聴いてください。でも、できればレコードで聴いてもらいたいです。僕はレコードの音の方が好きです。