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2018.07.20 ON AIR

LPレコードで聴くブルーズ/聞き逃していたゲイトマウス・ブラウン

Pressure Cooker/Clarence Gatemouth Brown (Alligator AL 4745)
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ON AIR LIST
1.She Winked Her Eye/Clarence Gatemouth Brown
2.My Time Is Expensive/Clarence Gatemouth Brown
3.Pressure Cooker/Clarence Gatemouth Brown
4.Ain’t Nobody Here But Us Chickens/Clarence Gatemouth Brown
5.Cold Strings//Clarence Gatemouth Brown

今日はアルバート・コリンズ、ジョニー・ギター・ワトソン、ジョニー・コープランドはじめ多くのブルーズ・ギタリストに影響を与えたゲイトマウス・ブラウンの73年録音のアルバム”Pressure Cooker”を聴きます。
クラレンス・ゲイトマウス・ブラウンは2005年に81才で亡くなるまでたくさんのレコード・レーベルに、たくさん音源を残しました。
ブルース史上に名を残したのは50年代のピーコック・レコードに録音した音源だと思います。僕がブルーズを聴き始めた頃は、そのピーコックレコードのアルバムがなくて、レッド・ライトニンというレーベルからブートレッグでリリースされていた「サンアントニオ・ボールバスター」というアルバム聴いてました。
そのアルバムに1949年から59年までのピーコックの主な曲が収録されていて聴き倒しました。
その時代のゲイトマウスが素晴らしすぎて、その後の彼のアルバムを耳にしてもあまり心が動かなかったというのが僕の本音です。
しかも、その後ゲイトは60年代に入るとフィドル(バイオリン)を弾いてカントリー・ミュージックをやり始めます。このカントリーをやるゲイトが僕は正直好きになれなかった。カントリー・ミュージックは嫌いではないんですが、ゲイトがやるカントリーがまったくいいと思えなかった。
それであまりゲイトのアルバムを買わなくなっていて、今日聴くこのアルバムも何度か中古盤屋さんで見かけてたんですが買いませんでした。
ところが先日、このレコードを見つけた時に安かったこともあるのですが、買ってみようかと思い買ったら「ええアルバムやないか」ということになったわけです。
このアルバム”Pressure Cooker”は1973年にフランスのパリで録音されてます。
最初の曲はその50年代ピーコックレコーで時代に録音した曲の再録音です。
1.She Winked Her Eye/Clarence Gatemouth Brown
ゲイトマウスは60年代中頃にはダラスのテレビ局のR&Bの番組「ザ・ビート」のハウスバンドのバンドリーダーをやっていて、まだまだテキサスではブイブイいわしてました。
でも、70年代に入ると彼がやるジャズ・テイストやカントリー・テイストの音楽がブルーズファンにも敬遠されて、彼はニューメキシコに住んでそんなにツアーもやらなくなっていました。でも、彼はヨーロッパでは人気があり、このアルバムにも参加しているジャズのピアニスト、ジェイ・マクシャーンやサックスのアーネット・コブたちとヨーロッパでツアーをしていました。このアルバムはたぶんそういうヨーロッパ・ツアーの途中で録音されたものだと思います。
フランスのレーベル”Black & Blue”の73年録音ですが、僕がもっているのはその録音を1985年にアメリカのアリゲーター・レコードがリリースしたものです。このアルバムはグラミーにもノミネートされたんですが、それも僕は知らなかった・・・。

次の曲も1949年に録音したものの再録です。すごくいいムードのスローブルーズでゲイトのギターもジェイ・マクシャンのピアノも素晴らしいです。
2.My Time Is Expensive/Clarence Gatemouth Brown
こういうのを聴くとこんなにいい感じでブルーズができるのになんでカントリーやらなあかんの・・と思うんですよね。カントリーを前面に出してやったことでゲイトマウス・ブラウンというブルーズマンのイメージはぼやけてしまったと僕は思っています。でも、カントリーとかジャズは彼のやりたかったことだから仕方ないですが・・。
では、アルバム・タイトル曲”プレッシャー・クッカー”
インストルメンタルですが、ゲイトマウスのアグレッシヴなギターのスピード感が堪りません。
途中のテナーサックスのソロはアーネット・コブです。アーネット・コブはジャズのサックス・プレイヤーの中でもブルーズに近い人でゲイトと同じテキサス出身です。
3.Pressure Cooker/Clarence Gatemouth Brown
タイトルのプレッシャー・クッカーは圧力鍋だけど圧力鍋いう感じの曲ですかね。早く調理できるから早いテンポいうことですか・・・。
ジャズギターのジョージ・ベンンソンの曲にクッカーというのがあり、メロディも似ていてそれもめちゃテンポの速い曲なんですが、なにかテンポが早いこととクッカーは関係あるのでしょうか。ご存知の方ご一報ください。
でも、まあギターはめちゃ上手いです。ゲイトはピックを使わないで指で弾くんですが、たぶん親指、人差し指、中指の三本で弾いてるんですが、目に留まらないくらい早いです。こういうゲイトのギター奏法をその後のジョニー・ギターやアルバート・コリンズがマネしたというか引き継いだというか、テキサス・ブルーズ・ギターのひとつの伝統みたいになったわけです。

次は40年代ジャンプ・ブルーズの王様、ルイ・ジョーダンのたくさんあるヒット曲の中のひとつ。たぶん、ゲイトが音楽をやり始めた10代の頃の超人気ミュージシャンだったルイ・ジョーダン。ゲイトが流行らせた「ヒューストン・ジャンプ」と呼ばれたダンサブルなブルーズにもすごく影響があったと思います。
4.Ain’t Nobody Here But Us Chickens/Clarence Gatemouth Brown
長い間、このアルバムを知っていながら買わなくてゲイトマウスさんすんまへんでした。

2018.07.13 ON AIR

LPレコードで聴く50年代ニューオリンズの重鎮、デイヴ・バーソロミュー

Shrimp And Gumbo/Dave Bartholomew(Imperial 1566311)
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ON AIR LIST
1.Shrimp And Gumbo/Dave Bartholomew
2.An Old Cow Hand From Blues Band/Dave Bartholomew
3.Somebody New/Dave Bartholomew
4.That’ll Get It/Dave Bartholomew
5.No More Black Night/Dave Bartholomew

今日は4000曲もアレンジ、プロデュースしたと言われる、50年代ニューオリンズのプロデューサー、アレンジャー、作曲家、トランぺッター、バンドリーダーそして歌手でもあるデイヴ・バーソロミューのアルバム”Shrimp And Gumbo”をLPレコードで聴きます。
デイヴ・バーソロミューはどちらかというと50年代のニューオリンズ音楽のプロデューサー、アレンジャーという裏方の重要人物という印象ですが、自分のシングル、アルバムもリリースしてました。
1920年12月24日生まれの彼は地元ニューオリンズで最初トランぺッターとして活動してました。その後兵役に行き、兵隊時代には作曲やアレンジの勉強をしていたらしいです。
兵役を終えてニューオリンズに戻るとサックス・プレイヤーのアルヴィン・レッド・タイラーやリー・アレン、そしてドラムのアール・パーマーなど才能のあるメンバーを揃えたバンドを作り、いろんな歌手のレコーディングやライヴをやるようになります。
そこから偉大なファッツ・ドミノのヒット曲の大半を彼がプロデュースアレンジし、アール・キング、クリス・ケナー、シャリー&リーのプロデュースをしてデビューさせる話が始まります。
このバーソロミューの次の時代がアレン・トゥーサンの時代になりミーターズなどが出てくるんですが・・。

まず一曲Shrimp And Gumboから聴いてみましょう。レーベルはインペリアル。50年代録音のシングルを集めたアルバムです。
アルバム・タイトル曲でいかにもニューオリンズらしいファンキーな曲です。
1.Shrimp And Gumbo/Dave Bartholomew
シュリンプは小さな海老のことでニューオリンズのいろんな料理に出てきます。そしてガンボはもうニューオリンズの名物料理で魚介類とライスを煮込んだものです。タイトルを見ただけでああニューオリンズとわかります。

ここで、ちょっと歴史を振り返ると1863年のリンカーン大統領の「奴隷解放宣言」のあとからニューオリンズではジャズが生まれます。ジャズはクレオールと呼ばれる黒人とフランスやスペインとのミックスの人たちによって作られたと言われています。それはブルーズにラグタイムやゴスペルやミンストレルといったいろんな音楽の要素が合わさってできたものです。その流れの中でニューオリンズ生まれの有名なコルネット・プレイヤー、ルイ・アームストロングが人気を博して、やがて世界を駆け巡る偉大なジャズ・プレイヤーになっていきます。そして、ニューオリンズのジャズも全米から世界へ。40年代に入るとジャズは大所帯のビッグ・バンド・ジャズが盛んになり、そのジャズのビッグバンドに歌手を入れてクラブで演奏する内にジャズ・ヴォーカルではなくニューオリンズ独特のR&Bが生まれていきました。そこにはジャズの要素だけでなくニューオリンズの海の向こうのリズム、カリプソやルンバの要素が入り、もちろんブルーズのテイストも入ってます。当時の流行だったダンサブルなジャンプ・ブルーズの要素も強く入ってました。
そして、そのビッグバンドを作って仕切っていた1人がデイヴ・バーソロミューでした。
今日のこのアルバムShrimp And Gumbo1949年から62年までの録音が入ってますが、その間に彼はトミー・リッジリー、ファッツ・ドミノ、クリス・ケナーといった人たちをデビューさせ、ヒットさせニューオリンズR&Bの創始者のひとりとなったのです。

次の曲もいかにもニューオリンズという感じのわくわくするような曲です。デイヴ・バーソロミューこの時絶好調です。
2.An Old Cow Hand From Blues Band/Dave Bartholomew
途中のサックスソロはリー・アレン、ドラムはアール・パーマーと当時のニューオリンズの一流ミュージシャンが集まったバンドで、演奏のクオリティの高さは当然です。

次の曲は同じニューオリンズのスマイリー・ルイスが56年に録音したもののカバーです。バーソロミューはバックに女性コーラスを入れてよりポップな感じに仕上げてます。ニューオリンズのナイトクラブの雰囲気を楽しめる曲で、このテイクにはピアノに天才と呼ばれたジェイムズ・ブーカーが参加しています。「いつの日か僕が君を欲しいように君は僕を欲しくなる。でも、僕は新しい彼女と行くつもりだよ。いつの日か僕が流したように君は泣いてくれるのだろうか」
3.Somebody New/Dave Bartholomew
ちょっとカクテルでも飲みたくなるでしょう。チークダンスしたくなるでしょう。
ニューオリンズでも大きな会場でやる超有名ミュージシャンもいいんですが、小さなクラブでやっている地元ローカル・ミュージシャンでいい人がたくさんいるんですよ。そういう時になんか本当にその土地に旅しに来てよかったなぁと思います。
次の曲は1953年のニューオリンズではなくテキサス、ヒューストンの録音になっていて、名前は書いてないんですが参加ミュージシャンも全部テキサスです。ライヴツアーにテキサスへ行った時に録音したものでしょうか。そして、ヴォーカルだけセスタ・エアーズと名前があって調べたんですがミュージシャンではなく、地元テキサスのラジオのDJらしいです。まあまあええ声してます 。曲はジャンプ・ブルーズからロックンロールへ移っていく53年という時代を感じさせるダンサブルなブルーズです。
4.That’ll Get It/Dave Bartholomew
次はライナーを読むと1951年のチャールズ・ブラウンの大ヒット”Black Night”のアンサー・ソングと書いてあります。ウエストコーストのチャールズ・ブラウンの”Black Night”は遠くルイジアナ、ニューオリンズにもにも影響を与えてたんですね。ピアノとサックスの醸し出すムードがもう実にブルージーないい感じで、バーソロミューの歌も上手いわけではないんですがストレートで味があります。
5.No More Black Night/Dave Bartholomew

今日のディヴ・バーソロミュー・オーケストラのような50年代の楽団はみんなお揃いのスーツをぴしっと着て、靴もピカピカで、こざっぱりしたミュージシャンがきれいなクラブとかボールルームと呼ばれるダンスホールで演奏してました。

2018.07.06 ON AIR

LPレコードで聴くブルーズ/いまも歌い継がれる名曲を残した60年代のブルーズシンガー、トミー・タッカー

Hi-Heel Sneakers/Tommy Tucker (CHECKER LP-2990)
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ON AIR LIST
1.Hi-Heel Sneakers/Tommy Tucker
2.Just For A Day/Tommy Tucker
3.Hard Luck Blues/Tommy Tucker
4.It’s A Mighty Hard Way/Tommy Tucker
5.Long Tall Shorty/Tommy Tucker

「ハイヒール・スニーカーズ」という曲はブルーズの中では有名なので知っている方もいると思います。この曲はブルーズではバディ・ガイ、バイントップ・パーキンス、ビリーボーイ・アーノルド、マジック・サム、ロックではビル・ヘイリー、エルヴィス・プレスリー、ジョージ・サラグッド、フェイセズ、ソウルではスティービー・ワンダー、ティナ・ターナー、ジャズではラムゼイ・ルイスやジミー・スミス、カントリーではカール・パーキンス、他にもホセ・フリシアーノのカバーも有名です。
そのオリジナルが今日聴くトミー・タッカー。
60年代に活躍したR&Bシンガーでキーボード奏者でもあり、ソングライターでもあります。1933年に生まれ82年に亡くなってますから49年という短い人生でした。
そしてトミー・タッカーと言えば「ハイヒール・スニーカーズ」、「ハイヒール・スニーカーズ」と言えばトミー・タッカーと言われるそのヒット曲を聴いてみましょう。
1964年にチャートの11位。赤いドレスを着て、流行のウィグ被って、ハイヒール・スニーカーズという当時最先端の黒人おしゃれファッションで夜遊びに行く女性の歌です。
1.Hi-Heel Sneakers/Tommy Tucker
元々はブルーズのヒットメーカー、ジミー・リードの”Big Boss Man”という曲のビートをいただいたものですが、とにかく「イナタイ」です。
実は昔ニューオリンズへ行った時に、黒人がたくさん集まってる靴屋さんに入って「ハイヒール・スニーカーズありますか?」って訊いたら、「そんな古いもんあるわけないやろ」と笑われて「いまはジョーダンや」言われてナイキのエア・ジョーダンを持ってこられたことあります。
でも、最近また若い女の子の間でちょっと流行ってるそうです、ハイヒール・スニーカーズ。
いまやブルーズのスタンダード・ナンバーとなって歌い継がれる名曲ですが、この曲が有名過ぎてトミー・タッカーはいわゆる「一発屋」さんに思われているのですが、果たしてそうなんでしようか・・と今日はこのアルバムをじっくり聴いてみたいと思います。

トミー・タッカーはブルーズ、ジャズ、R&Bちょっとポップなものまでいろんなタイプの曲を録音しているのですが、次の曲なんかはSomething You GotとかI KnowのようなニューオリンズR&Bの匂いもあるファンキーなものでトミー・タッカーのパワフルな歌がすごくいいと思います。まさに60年代R&Bです。
2.Just For A Day/Tommy Tucker

彼の経歴を読んでみると彼のお父さんがローカルシーンのピアニストで、小さい頃から音楽はたくさん聴いていて音楽の成績はいちばんだったみたいです。彼は9人家族の中で育ったけれど高校生の頃に家が金銭的に苦しくなって学校を辞め働き始めます。それで以前から興味のあった音楽のあるホンキー・トンクでも働き始めピアノを覚えてローカルバンドに入ります。その頃はジャズを志向していたようで一時盲目のジャズ・サックス・プレイヤーのローランド・カークのバックでピアノを弾いていたこともあります。
それで本人はジャズの曲にもアプローチしていてこのアルバムにもジャズ・スタンダードの”Come Rain Or Come Shine”なんかも歌っているんですが、いまいちです。
1960年にはアトランティックレコード傘下のレーベルアトコからシングルを一枚出してますが、ヒットしなかったんですが、64年にチェスからの「ハイヒール・スニーカーズ」大ヒット!

一曲ストレートな彼のブルーズを聴いてみようと思うのですが、ブルーズ・シャウターとして40年代から50年代に活躍したロイ・ブラウンのヒットを歌っています。これはもう悲しい歌詞で「道端の岩がオレの枕、冷たい地べたがオレのベッドで、ハイウェイがオレの家もう死んだ方がいい。お袋は死んだし、オヤジはオレを家から追い出した。靴があるだけで服の着替えもない」というまさにブルーズな曲です
3.Hard Luck Blues/Tommy Tucker
ストレートでパワフルでいい歌です。もう何曲かヒット曲があったらもっと有名になれる人だったと思います。まあ、シングル1枚出して消えてしまうシンガーも多いこの世界ですから、こうしてアルバムまで出せたのは売れた方なのかも知れません。

彼は自分で曲も作る人でオリジナル曲で「毎日毎晩働いて金を稼ぐために生きていくのはほんまにしんどい」という歌です。
4.It’s A Mighty Hard Way/Tommy Tucker
いい曲だと思うんですが、これもそんなにヒットしなかったんですね。
トミー・タッカーが活躍していた60年代半ばといえばすでにビートルズもデビューして、イギリスのロックバンド次々にアメリカでもヒット出していく時代で、黒人音楽は完全にソウルとファンクの時代になっていくんですが、そういう流れには乗れなかったんですね。66年に一度音楽界から去ってしまって違う仕事をしていたんですが、70年代に入って再び音楽の世界に現れます。でも、レコーディングのチャンスには恵まれず晩年は寂しいものだったらしいです。

「ハイヒール・スニーカーズ」のような大ヒットが出るとやはり「柳の下にどじょうが二匹」的なことで同じような曲をリリースします。それが次の曲なんですが、「ハイヒール・スニーカーズ」の時よりもバンドがタイトでゴージャスになっているのが面白いです。でも、ヒットしませんでした。どじょうは二匹いなかったんですね。でも、歌はすごくいいと思います。同時代のR&Bシンガー、ドン・コヴェイがオリジナル・シンガーですが、60年代にイギリスのロック・グループ「キンクス」がヒットさせたので知ってる人も多いと思います。
この曲のリズム・パターンも基本的にHi-Heel Sneakersとほぼ同じで60年代半ばこのパターンが流行ったんですね。この曲はイギリスのキンクスなどがカバーしています。
5.Long Tall Shorty/Tommy Tucker

一曲しかヒットがなかったトミー・タッカーですが、いまもこの曲が歌い継がれていると知ったら嬉しかったでしょうね。
今日は60年代の「Hi-Heel Sneakers」の素晴らしいR&Bシンガーそしてソングライターだったとトミー・タッカーでした。

2018.06.29 0N AIR

アメリカンロックの偉大なひとり、ライ・クーダーの新譜

THE PRODIGAL SON / Ry Cooder(Fantasy Records / Hostess HSU-10202)

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ON AIR LIST
1.Straight Street/Ry Cooder
2.Prodigal Son/Ry Cooder
3.Nobody ‘s Fault But Mine/Ry Cooder
4.I’ll Be Rested When The Roll Is Called/Ry Cooder

今日は5月にリリースされたライ・クーダーのニューアルバム”THE PRODIGAL SON”
ライ・クーダーは60年代からブルーズ、ジャズ、カントリー、テックス・メックスなどアメリカの様々なルーツ・ミュージックを探求しながら、メキシコ、キューバ、ハワイアンなどワールド・ミュージックにも精通。その様々な音楽を自分のフィルターを通してアルバムを作り続けてきただけでなく、映画音楽でも高い評価を得ている才人なのはみなさんご存知だと思います。

新しいアルバム「THE PRODIGAL SON」はスピリチュアルズとゴスペルを取り上げていて宗教色の濃いアルバムになってますが、そこはさすがライ・クーダー、すべて自分のテイストにしてしまってます。

まずアルバムの一曲目を聴いてみましょう。オリジナルはゴスペル・グループの「ピルグリム・トラべラーズ」が1950年代にヒットさせた曲です。ピルグリム・トラべラーズは1930年代にテキサスで結成され、その後ロスアンジェルスで活動した40年代後半から50年代にかけてのゴスペルを代表するグループ。レイ・チャールズも憧れたグループです。
歌詞の内容は「前に住んでいたところにいた悪魔にとりつかれていたけど、神様がそこから出て行くようにと言われたので引っ越した。引っ越していまは真っすぐな通りに住んでいる」真っすぐな通り(ストレート・ストリート)というのは真っすぐに生きるということなんでしょうね。
1.Straight Street/Ry Cooder
いいですね。ソウルフルででも無理なく、淡々としていて僕はこういう感じ好きです。この曲はまっすぐに生きるというライ・クーダーの声明なのではないでしょうか。

次の曲はアルバム・タイトル曲の「ザ・プロディガル・サン」
今回、このタイトルを見た時に真っ先に頭に浮かんだのが20年代から30年代に活躍したロバート・ウィルキンスの「プロディガル・サン」。
邦題が放蕩息子で、ローリング・ストーンズがアルバム「ベガース・バンケット」でカバーしていました。
でも、このライのバージョンはザがついていて「ザ・プロディガル・サン」。曲も歌詞もまったく違います。
でも、曲の題材はもともと同じ聖書に出てくるもので、父親から結構な金をもらった息子の弟の方が、明日のことも顧みずに散財してやりたい放題する。でも、弟は財産をすべて使い果たしてボロボロになって家に戻って来る。その戻って来た放蕩息子の弟を父親はあたたかく迎える。それを見た兄が僕はおとうさんの元で地道に働いてきた。弟はあんなにやりたい放題やって金を使い果たして帰ってきた。その弟をどうして温かく迎えられるのか、と父に訊くと「いなくなって、死んだと思っていた息子が、オマエの弟が生きて帰ってきたのだから温かく迎えて喜ぶのは普通だろう」と言う。この例えは父親は神様で弟はいろいろ罪を置かす私たち人間。父である神様の大きな愛情を表している話とされている。
2.Prodigal Son/Ry Cooder
ライ・クーダーがは1970年にリリースした初めてのソロ・アルバムで盲目のエヴァンジェリスト、ブラインド・ウィリー・ジョンソンの”Dark Was The Night,Cold was the ground」を録音して、それは映画「バリ、テキサス」でもとても印象的に使われていた。ライがブラインド・ウィリーのスライド・ギターと彼の音楽性に影響されているのは有名だが、今回再びそのブラインド・ウィリーも録音したゴスペルのトラッド”Nobody ‘s Fault But Mine”を収録している。
「誰のせいでもない、誰のせいでもない、この自分のせいだ。家には聖書があるのに、聖書を読まないからオレの魂は迷ってしまった。誰のせいでもない聖書をちゃんと読まなかった自分のせいだ」
3.Nobody ‘s Fault But Mine/Ry Cooder
バックにバイオリンが不安な音を奏でながら少しヘヴィなライの歌声、そして美しく鋭いスライド・ギターの音。スライド・ギターの腕はやはり絶品です。録音の状態も完璧ではないでしょうか。こういうのは白人ではもうライ・クーダーの独壇場ですね。オリジナルのブラインド・ウィリーの原曲に新たな息を吹き込んだ感じがします。

ライ・クーダーはブルーズも当然好きなのですが、昔からスピリチュアルズやゴスペルといったアメリカの宗教歌も好きで、いままでもよく取り上げています。
今回はそういうゴスペルやスピリチュアルズとライの音楽性がうまく融合したアルバムだと思います。
最後にもう一曲
20年代から30年代に活動したブラインド・ルーズヴェルト・グレイヴスの曲です。ルーズヴェルト・グレイヴスは先ほどのロバート・ウィルキンスと同じようにブルーズもゴスペルも歌った人です。
4.I’ll Be Rested When The Roll Is Called/Ry Cooder

2018.06.22 ON AIR

珍しいブルーズ・シングル盤をコンピレーションした最新盤
Do The Blues 45s! vol.2 ~the Ultimate Blues 45s Collection~
[ THINK RECORDS THCD-537 ]

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ON AIR LIST
1.Pickin’ Heavy/Joe Scott And His Orchestra
2.I Tried/Larry Davis
3.Don’t Change Your Mind/T.B.Fisher
4.Hop Stroll/Jerry McCain And His Harmonica
5.Red Headed Woman/Baby Face
6.Five Spot/Otis Spann

去年、ブルーズの珍しい、レアなシングルだけを集めた「Do The Blues 45s! 」というCDアルバムがリリースされてかなり評判になりました。リリースしたのはレコード店ディスクユニオンのレーベルTHINK RECORDSです。
今日はその第二弾がリリースされたので聴いてみます。
僕も時々ブルーズのシングル盤を買いますが、ブルーズのシングル盤の世界というのがまた深い世界でハマるとちょっと抜け出せなくなり、中にはかなり高価なシングルもあるので気をつけないとあかんのですが・・・。
でも、シングル盤の音の良さというのがあり、まず同じ曲、同じテイクでもLPに比べるとシングルは音圧が高いので迫力という点ではシングルです。それと50年代、60年代は黒人音楽はシングルの時代でLPというのはシングルを何枚か出して売れた時に、シングルをまとめてLPにしていたわけです。だから当時の黒人の人たちがブルーズをどういう感じで聴いていたのか知るにはやはりシングルです。
それで今日聴いてもらう「Do The Blues 45s! vol.2」をコンピレーションしたのは、vol.1もそうでしたがレコード店ディスク・ユニオンでブルーズとソウルの担当をしている秋元さんと言う方です。

ではまず一曲、インストルメンタルの曲が何曲か収録されているのですが、最初に聴いて「ああ、これかっこいい」と思った曲です。
誰が弾いているのかわからないですが、ギターがすごくいいです。そして、バンド全体のグイグイくるグルーヴ感もたまりません。
1.Pickin’ Heavy/Joe Scott And His Orchestra
ジョー・スコットさんはホビー・ブランドやジュニア・パーカーのアルバムでアレンジャーをやっていた人で、ブランドもパーカーも彼がいなかったらあんなに素晴らしい録音にはなっていなかったかもと言えるほど、大きな役割をしたひとです。ボビー・ブランドには歌い方もアドバイスしたそうです。それでジョー・スコットさんは自分のオーケストラを持っていて、それで録音もやりナイトクラブの仕事もするという当時のテキサスの黒人ショービジネスのフィクサーみたいな人です。

次は僕も歌っている”Texas Flood”のオリジナル・シンガー、ラリー・ディヴィスです。1958年のデューク・レコードに録音したシングルです。それでこの曲のアグレッシヴなギターがすごくかっこよくてラリー・ディヴィス本人かと思ったら、ディヴィスは歌だけでギターは後にシカゴでメロウ・ブルーズ・ジニアスと呼ばれたフェントン・ロビンソンだそうです。僕はシカゴ時代のフェントンよりこの録音の方が断然好きです。ギター・スタイルが変っていったんですね・・・おもろいです。
2.I Tried/Larry Davis
歌もギターもバンドのグルーヴもめちゃいいです。これそのままシングル盤で聴いたら相当気持ち上がりますよ。

次は初めて知った名前でT.B.Fisherですが、テキサスのブルーズマンらしいです。編集した秋元さんもよくわからないらしいです。
曲の感じはスリム・ハーポの”Rain In My Heart”のようなルイジアナ哀愁バラードで、ハーモニカも柔らかい音で歌もゆったりしていてなかなかのダウンホーム・ブルーズバラードです
3.Don’t Change Your Mind/T.B.Fisher
T.B.Fisher・・知らんけどいいですね。知らんけどね。とにかく収録されている曲がみんな短い。どの曲も三分以内ですぐ終わります。それがまた昔のシングルならではでもうちょっと聴きたいなというところで終わってしまう。こういうシングル、1枚とか2枚とかで終わったブルーズマンに興味持ち始めてシングル買い始めると・・だんだんオークションみたいな世界に入り込んで迷宮のブルーズシングル盤の世界になり、やがて暗黒の宇宙SP盤の世界になっていきます。楽しいと思いますが気をつけてください。もう底なし沼ですから。

次は僕が大好きな南部の、サザン・ハープのジェリー・マッケーンです。最初に出てくるハーモニカの音からしてめちゃいいです。最初のメロディというかリフはバスター・ブラウンの大ヒットFunny Maeで、途中のストップ・タイムのところではフレディ・キングの”Hideaway”からいただいたみたいな感じですが、全体のゆったりしたグルーヴ感とハーモニカの音色がたまりません。
4.Hop Stroll/Jerry McCain And His Harmonica

先日このアルバムを最初買った時にざぁ~と聴いていたんですが、次の歌が出てきた時に「あれ?サニーボーイ・ウィリアムスンか」と思ったんですが、よく聴くとサニーボーイほど恐ろしさはないんですが・・。見たらベイビー・フェイスでした。黒人音楽でベイビー・フェイスと言たら80年代からプロデューサーであり自身もシンガーのいまも活躍する人気者ですが、ブルーズの世界でベイビー・フェイスといえば50年代シカゴ・ブルーズのドラマー、ベイビー・フェイス・リロイのことです。この曲のハーモニカもギターも上手いんで誰かと思ったらなんとギターはジミー・ロジャースとマディ・ウォーターズ、ハーモニカはリトル・ウォルターという黄金のシカゴブルーズのメンバーで驚きです。どうやら所属していたチェスレコードには内緒の金稼ぎで裏の仕事で録音したらしいです。ありがちな話ですが・・・。ギターが繰り出すゴリゴリしたリズムの感じと表情豊かなハーモニカの伸びる音、まさにシカゴブルーズ全盛時のサウンドとグルーヴで最高です
5.Red Headed Woman/Baby Face

ワイルドなギターから始まる次もインスト曲なんですが、シカゴ・ブルーズピアノのオーティス・スパン名義の曲です。それでギターがふたり入っているのですが、ひとりがシカゴ・ブルーズのギタリストとして名のあるジョディ・ウィリアムスともうひとりはなんとB.B.キングだそうで、たぶんソロを弾いているのもB.B.だと思うのですが、オーティス・スパンのシングルでB.B.キングがギターだけ弾いてるなんて曲があることに驚きです。
そして短いですがスパンのアグレッシヴなプレイも聞き物です。
6.Five Spot/Otis Spann
このアルバム「Do The Blues 45s! vol.2 ~the Ultimate Blues 45s Collection~」は、本当に個性的な曲ばかりで選曲された秋元さんのセンスの良さに感激しました。

このアルバムの選曲、最高です。パーティとか宴会のBGMに使ってもらうと盛り上がると思います。ブルーズのシングル盤の世界は奥深いのですが、もしどこかで見つけたら一枚買ってみてください。僕はフレディ・キングのハイダウェイのシングル持ってるんですが、LPの3倍くらい音がいいです。CDとかLPで聴いていたのとはまた違う生々しい音に出会えます。