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2017.09.15 ON AIR

オールドスクールスタイルのシカゴ・ブルーズ
「The Cash Box Kings」の新譜”Royal Mint”

Royal Mint/The Cash Box Kings (Alligator Records ALCD 4976)
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ON AIR LIST
1.House Party/The Cash Box Kings
2.Flood/The Cash Box Kings
3.Build That Wall/The Cash Box Kings
4.Daddy Bear Blues/The Cash Box Kings
5.I Come All The Way From Chi-Town/The Cash Box Kings

 

 

 

今日は現在シカゴを中心に活躍する「キャッシュ・ボックス・キングス」のニューアルバム「ロイヤル・ミント」を聴いてみようと思います。
「キャッシュ・ボックス・キングス」は白人のハーモニカのジョー・ノセクが中心になって作られたバンドで2003年にアルバム・デビューしています。40年代50年代のオールド・スクールのシカゴブルーズを目指すバンドとして人気も定着し、アルバムもコンスタントにリリースしていて今回で8枚目か9枚目になると思います。途中から黒人のオスカー・ウィルソンをヴォーカルに据えてバンドの評判が一気に上がりました。やっぱりブルーズは歌ですからね。
今回の主なメンバーはドラムは曲によってケニー・スミスとマーク・ヘインズが叩き、ギターはビリー・フリンとジョエル・ピーターソン、ベースはブラッド・バーというのがキャッシュ・ボックス・キングスとしてクレジットされていて、あとそこにゲスト・ミュージシャンが数人参加していて、そのゲストには僕の友達のピアノのLeeちゃんが参加しています。
まずはジャンプ・ブルーズ的な賑やかなブルーズからアルバムは始まります。
1.House Party/The Cash Box Kings

ジャンプ・ブルーズの王様のルイ・ジョーダンに同じ曲名の曲があるんですが、それとは違ってましたが誰の曲なんでしょうか。確かエイモス・ミルバーンにも同じ曲名があったと思います。
一曲目でこれからパーティが始まるよっていう感じですね。
実は2ヶ月ほど前に僕のライヴのホームである東京のライヴハウスJIROKICHIで演奏終わったあとに流れてたのが次の曲で、僕は思わずハーモニカのコテツくんに「これってマディ・・?やないよね」と言ったくらい歌声もバックもオリジナルのマディに似ていて笑いました。バックのミュージシャンたちも腕利きで、コピー能力がすごいのでほとんどマディのオリジナルのシカゴ・ブルーズ・サウンドの雰囲気そのままのムードが出ています。マディ・ウォーターズやというてもだまされる人がいると思います。
典型的な50年代シカゴ・ブルーズのアンサンブルでシカゴ・ブルーズが大好きな方は「いいね」と気持ちが落ち着く一曲やと思います。途中でピアノ・ソロが出てきますが、ピアノはLEEが弾いてます。
2.Flood/The Cash Box Kings
オスカーさんはマディの息子ビッグビルモーガンフィールドよりいい感じです。
そして4曲目に突如ロックンロールというよりロカビリーな曲が出てきます。最初にオールドスクールスタイルのシカゴ・ブルーズを目指す「The Cash Box Kings」と言いましたので、これはどういうことなんや?と思う方もいると思いますが、前からこういうポップ・ロカビリー的なレパートリーがあるようです。
ちょっと唐突な感じがしないでもないです。こういうロカビリーのセンスはハーモニカのジョー・ノセクらしいのですが、この曲も彼のオリジナルで歌も彼が歌ってます。
3.Build That Wall/The Cash Box Kings

アルバムの4曲目になっていきなりいまの曲が来て、ここで「このアルバムのコンセプトはなんやねん」という感じになる人もいると思います。とくに初めてキャッシュボックス・キングスを聴いた人は・・。箸休め的な感じでちょっとテイストの変った曲を入れるのだったら8曲目に入っている同じノセクさんが歌っている次のようなブルーズの曲で充分箸休めになると思うのですが、どうでしょう。
典型的なブルーズ・バラッドでちょっとジャズ・テイストというこの曲が、アルバムのコンセプトも守りつつ充分に箸休めになっていると思います。
4.Daddy Bear Blues/The Cash Box Kings
Leeのピアノ・ソロもバッキングのギターも見事です。
次はジョン・リー・フッカー・スタイルの曲で、ビリー・フリンとジョエル・ピーターソンのふたつのギターが本当に上手い。あえて希望を言うならもう少しミシシッピ的なアーシーな破壊力欲しいですね。ギター、上手すぎます。でも、歌がやはりいいので聴いてしまいます。
5.I Come All The Way From Chi-Town/The Cash Box Kings
現在のブルーズのあり方はすごく多様になっていて例えばキャッシュボックス・キングスのように、40,50年代の全盛期のシカゴブルーズをリメイクスするようなオールド・スクールなグループもあれば、今年グラミーのコンテンポラリーブルーズ部門を受賞した「ファンタスティック・ネグリート」のように歌詞の内容に現代のブルーズを入れ込んで、サウンド的にはファンクやロック、ヒップホップの要素を柱にブルーズを塗りこんでいるような人たちもいるし、ケブ・モのように戦前ブルーズを踏襲しながら弾き語りのブルーズをやる人、ロバート・クレイのようにソウルよりになっている人、ノース・ミシシッピー・オールスターズのようにルーツにブルーズを持ってオルタナティヴ・ロックをやる人、あと白人のブルーズロックなバンド、そしてバディ・ガイのように毎回違うものをやる人・・・いろいろいるんですが、何を指してブルーズというのか難しくなっています。
僕自身はシカゴ・ブルーズに固執するとか、ニューオリンズものだけとかという限定する気持ちもないし、オーソドックスなブルーズを守ろうという気持ちもないです。僕はブルーズ・ザ・ブッチャーでメンバーが好きな曲を毎回ある程度コンセプトを決めて、自分たちのバンド・サウンドで成り立つものということだけ意識しています。もちろん。個人的には出来てないこともたくさんあります。
ブルーズという音楽は昔に生まれたものですが、古い音楽ではないです。その音楽が新しいか古いかというのはブルーズを演奏する人が、聴く人が「オレ、古い音楽やってるんだよね」とか「古い音楽聴いてるんだ」と思えばもうそれは古いです。でも、昨日新しいものは今日には古いし、昨日古かったと思ったものが今日新しく思えるものもあります。僕はブルーズは、僕がやっているブルーズはいつもずっと新しいと思ってやってます。だからことさら新しさを意識してアルバムを作ったり、演奏することもないし、古いくていいものだから残そうという気持ちもないです。
また、ことあるごとに自分なりのブルーズへの気持ちはこの番組で言っていきたいです
今日はシカゴのいまのバンド「キャッシュボックス・キングス」の新譜ロイヤル・ミントを聴きました。

2017.09.08 ON AIR

ミシシッピー・ブルーズのバックボーンをもつ
オルタナティヴ・ロックバンド”North Mississippi Allstars”の新譜「Prayer For Peace」

Prayer For Peace/North Mississippi Allstars(Sony Legacy SICP5329)

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ON AIR LIST
1.Stealin/North Mississippi Allstars
2.Deep Ellum/North Mississippi Allstars
3.You Gotta Move/North Mississippi Allstars
4.Miss Maybell/North Mississippi Allstars
5.Bid You Goodnight/North Mississippi Allstars

 

 

 

今日は「ノース・ミシシッピ・オールスターズ」の新譜”Prayer For Peace”を聴いてみようと思います。オールスターズというてもメンバーはふたりなんですけどね。
このバンドはルーサー・ディッキンソンとコーディ・ディッキンソンの兄弟で作られたバンドで、ルーサーがギターリストとヴォーカル、コーディはドラムスですがピアノやプログラミングもこなします。ルーサーはブラック・クロウズというバンドにも参加しているので知っている方も多いと思います。
1996年にベーシストのクリス・チューと3人で結成され、2000年に”Shake A Hands With Shorty”というアルバムでデビュー、そのアルバムがグラミーのコンテンポラリー・ブルーズ部門にノミネートされて最初から評判になっていたバンドです。バンドの名前のようにミシシッピで育った彼らはフレッド・マクダウエルやR.Lバーンサイドといった南部の黒人ブルーズマンの影受けたのですが、若いのでパンク的なものやジャム・バンドの影響も受けつつ普遍的な音楽を求めてきました。でも、ブルーズの影響はありますが、ブルーズバンドではないです。

まず一曲聴いてみましょう。この曲で60年代終わりから70年代のサザンロックやザ・バンドを想い出す方もいるかも知れません。オリジナルは1920年代にメンフィス・ジャグ・バンドが録音したものでジャグの有名曲です。
1.Stealin/North Mississippi Allstars
僕はサウンドを聴いてすぐにザ・バンドを想い出しました。
いつも言われて本人たちは嫌かもしれないけれど、彼らのお父さんは60年代からスタジオ・ミュージシャンやプロデューサーとして活躍し、まあライヴもやってましたが、有名なジム・ディキンソン。フロリダのスタジオ・バンドの「ディキシー・フライヤーズ」のキーボードで、アレサ・フランクリンやリタ・クーリッジ、デラニー&ボニー、ローリング・ストーンズのアルバムにも参加してます。自分のソロも出しています。
お父さんは2009年に亡くなられてますが、お父さんが残した功績が大きくていつもお父さんの名前を出されてしまう「ノース・ミシシッピ・オールスターズ」
彼らは楽器もいろいろこなすし、サンプリングもつかうので音楽のテイストはひとつではないので、いまのStealinみたいな曲が続くわけではないんです。スライドギターがフーチャーされた次の曲なんかはもろサザン・ブルーズロックです。
2.Deep Ellum/North Mississippi Allstars
スライド・ギターもうまいんですが、聞くところに依ると物心ついて音楽に興味を持った頃からふたりとも近所の子供とかと遊ばないでスタジオでいろんな楽器をさわって演奏してたらしいです。まあ、音楽オタクっぽいですよね。その音楽オタクみたいなミュージシャンは最近多いんですが、いろんな機材買って自宅録音で自分でひとり録音を楽しむっていう。僕なんかはそういう気持ちが全然ないのでよくわからないし、音楽は何人かでつくるのが楽しいし、録音のノウハウもないですしね。そういう人たちの感じはよくわからないです。

次はローリング・ストーンズもかってカバーしたミシシッピの偉大なブルーズマン、フレッド・マクダウェルのカバーです。
「貧乏人だろうが、金持ちやろうが、ストリートの女だろうが、警官だろうが、誰もが神様が決めた時には動かなければならない」
僕は神様が決めた時にはあの世に行かなければいけないという意味だと解釈しています。
3.You Gotta Move/North Mississippi Allstars
僕はこの曲のカバーに関してはストーンズに軍配を上げます。ノース・ミシシッピも悪くないですけど、リズムのアレンジがあまり好きではないというか、この曲に合ってないような気がします。
元々ディキンソン一家はテネシーに住んでいたんですが、兄弟が10代になった頃北ミシシッピに引っ越したんですよ。そこではジュニア・キンブロウやRL. バーンサイドといった地元のアーシーな黒ブルーズマンたちがヒル・カントリー・ブルーズというもうめちゃ泥臭いブルーズをやっていて、彼らはその影響をすごく受けたわけです。
次はその彼らのルーツのひとつであるヒル・カントリー・ブルーズのテイストでワン・コードで延々とグルーヴが繰り返されるブルーズ。
僕はこういうの大好きです。
4.Miss Maybell/North Mississippi Allstars
今日このNorth Mississippi AllstarsをON AIRしたひとつの理由は、6月から自分バンドのツアーで全国まわっているんですが、僕と同じか少し下の世代の人たち、まあ音楽好きと自称しているおっさんたちとライヴのあとに一緒に飲んだりするんですが、そのおっさんたちがブルーズもロックも含めて昔の音楽しか聴いていない人たちが多いのにちょっとびっくりしています。
音楽を聴くのはパワーいるんですよ。何か素晴らしい音楽を見つけようと昔はしていたのに年取って来るとライヴにも行かないし、あまり新しい人のアルバムも聴かないっていうおっさんが多いです。新しいものを聴いてないのに批判的だったり、無視したりというのはどうかと僕は思うわけです。やっぱり聞いてみてそれでいろんな人たちと音楽について話したりするのが楽しいです、僕は。話してると意見が合わなかったりすることも多いですけど、そういう聞き方、考え方もあるのかと思うことも多いです。それが音楽を聴く楽しみ方のひとつではないでしょうか。家でYouTubeばかり見ていてはダメです。それで音楽を知った気になったらダメです。
最後はアーロン・ネヴィルほかいろんな歌手が歌っています。トラッドなスピリチュアルズ・ソングです
5.Bid You Goodnight/North Mississippi Allstars

他にもいい曲たくさん入ってます。ノース・ミシシッピ・オールスターズのニューアルバムPrayer For Peace。いいですよ。

2017.09.01ON AIR

かって黒人音楽のメッカだったメンフィスの黒人音楽の継承を
伝えようとする映画”Take Me To The River”

Take Me To The River/Sound Track (CSAZ-0001)

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ON AIR LIST
1.Push And Pull/Bobby Rush featuring Frayser Boy
2.Ain’t No Sunshine/Bobby Bland featuring Yo Guti
3.Wish I Had Answered/Mavis Staples And North Mississippi All Stars
4.If I Should Have Bad Luck/Charlie Musselwhite and The City Champs

 

 

 

この春に”Take Me To The River”(約束の地、メンフィス)という映画が公開されました。かってソウルやブルーズの拠点だったメンフィスの音楽を振り返りながら、次の新しい世代が音楽の町メンフィスを受け継いでいくという内容でした。映画は感動するところもたくさんあり、亡くなったボビー・ブランドやオーティス・クレイの姿を見るだけでおっさんはウルウルしてしまいました。でも、メンフィス・ソウルの重要なシンガー、アル・グリーンやアン・ピーブルズが出てこないのはなぜか・・と、まあ不満な点もありましたが、メンフィスの音楽事情を知ってもらうのにはいい映画でした。今日はその映画のサントラ盤を聞いてみようと思います。先週ON AIRしましたチャーリー・マッセルホワイトもこの映画に出てきます。

まずは今年グラミーを受賞したボビー・ラッシュから聞きたいと思います。
歌っているのはメンフィスのR&Bに偉大な功績を残したルーファス・トーマスの曲で70年代のダンス・ナンバー
ボビー・ラッシュにぴったりの選曲です。
ボビー・ラッシュ フィーチュアリング フレイザー・ボーイ
1.Push And Pull/Bobby Rush featuring Frayser Boy
実はいま聴いてもらったようにほとんどの曲の途中でラップが入るんですよ。僕は別にラップを嫌いなわけではないんですが、もし、レジェンドと呼ばれるミュージシャンと若いミュージシャンをコラボするならそれは別にラップでなくてもいいだろうと思う。ラッパーではなくて若い歌手、ちゃんとしたシンガーがレジェンドたちの歌をどう引き継いで歌って行くかということなら僕はもっと興味が持てたと思う。
次は僕がいちばん「これはラップいらんやろ」とちょっとムカッとした曲でボビー・ブランドの”Ain’t No Sunshine”。曲は70年代にビル・ウィザーズがヒットさせたブルーズっぽい曲でビルも素晴らしいんですが、ボビー・ブランドもビルに負けないくらいいい歌を自分のアルバムで残してました。それを聴けると思ったらこれにまたすぐラップが入ってくるんですよ。ブランドはブルーズの世界の中でThe Manまさにこの男こそブルーズの男と言われた偉大なシンガーです。そこにラップはいらないです。ブランドの音楽を本当に愛しているならラップなんか要りません。ここは僕はっきり言うときます。ちょっと怒ってます。でも、聴いてもらわなわからんので聴いてください。ボビー・ブランドフィーチュアリング ヨ・ガッティ
2.Ain’t No Sunshine/Bobby Bland featuring Yo Guti
ボビー・ブランドは2013年に亡くってますが、この撮影の時もすでに車いす状態で録音している。それでスタジオに来てからラップと一緒にやると言われたような感じ。それもまったく面識のないラッパー。ブランドは優しいし、もう病気の身だし・・で「ラッパーとやるのはイヤだ」とは言えないでしょう。フィルムも回っているし。僕が監督なら、ブロデューサーなら絶対にブランドの歌だけで撮りました。言っておきますが、ラッパーの人たちにはなんの罪もないです。プロデュースの問題です。
今度ボビー・ブランドのAin’t No Sunshineのスタジオ盤いつか流しますよ。

それで次も大大大好きなメイヴィス・ステイプルズですが、彼女はオルタナティヴな白人の兄弟のロックバンド「ノース・ミシシッピ・オールスターズ」をバックに歌ってます。ラップはなしです。こういうコラボが正解やと思います。メイヴィスにもラップはいらないです。本当にレジェンドと読んでいるシンガーの歌を継承するなら、そのレジェンドの歌を壊さない無理をしないコラボのやり方が正しいと想います。
3.Wish I Had Answered/Mavis Staples And North Mississippi All Stars
ノース・ミシシッピの連中はメイヴィスの歌と音楽を実によく調べて、研究して、彼女の歌を引き立たせるサウンドを出しているしメイヴィスもご機嫌で歌ってます。これが若い人たちとコラボすることではないのでしょうか。

次のチャーリー・マッセルホワイトの映画の場面はめちゃ面白かったです。
プロデュースする側がインストの曲を用意して録音を始めるんだけど、なかなかいいテイクが取れなくてたぶんチャーリーも気に入らなくて、結局チャーリーは普通にブルーズやるんですが、それがすごくいいんですよ。バックはソウル・ジャズを演奏しているシティ・チャンプというメンフィスのバンド。
チャーリーの素晴らしいハーモニカから始まります。
4.If I Should Have Bad Luck/Charlie Musselwhite and The City Champs
バックのダウンホームなシャッフル・リズムと途中のギターソロも素晴らしい。いかにもスタジオのジャム・セッションというムードたっぷり出ていていいですよね。
つまりこういうことなんですよ。ブルーズのような赤裸裸な音楽にラップを加える必要はないんですよ。このシンプルな音楽の中でお互いに音のやり取りをするのがブルーズです。ラップいれてもそれは付け加えるだけでやり取りではなく、つまりコラボやないんですよ。
結局、僕自身がブルーズを歌っていても「こんなに歴史のある、深い、楽しい音楽がなぜもっとたくさんの人たちに聴かれないのだろうか」と思います。でも、聴いてもらいたいからブルーズに何か加えたり、変に換えてみたりということはしたくないです。ブルーズは生身のままがいちばんいいということを僕は確信しています。つまり、Real Bluesということです。

2017.08.25 ON AIR

淡々とブルーズ・ハーモニカと生きて来た
チャーリー・マッセルホワイトのデビュー・アルバム

Charlie Musselwhite/Stand Back!Here Comes Charley Musselwhite’s South Side Band(Vanguard VMD79232)

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ON AIR LIST
1.Chicken Shack/Charley Musselwhite
2.Help Me/Charley Musselwhite
3.My Baby/Charley Musselwhite
4.39th And Indiana/Charley Musselwhite
5.Strange Land/Charley Musselwhite
予備6.Early In The Morning/Charley Musselwhite

 

 

 

チャーリー・マッセルホワイトはアメリカのブルーズ・シーンで1960年代から活躍している白人のハーモニカ・プレイヤーで、この前公開された映画「Take Me To The River」にも登場して気取らない人柄で、いい感じのブルーズを演奏していました。また、シンディ・ローパーの「メンフィス・ブルーズ」というアルバムでかなりフューチャーされシンディと来日公演もしました。映画のブルーズ・ブラザーズ2000にも出演してましたし、トム・ウェイツのレコーディングによく参加しています。まあ、ちょっとブルーズ好きな方なら名前は知ってる人も多いと思います。
そのチャーリー・マッセルホワイトのデビュー・アルバムStand Back!Here Comes Charley Musselwhite’s South Side Band。リリースは1967年。当時は同じシカゴの、やはり同じ白人のブルーズ・ハーモニカ・プレイヤーのポール・バターフィールドの方がデビューが少し早くて65。バターフィールド・バンドには人気のギタリスト、マイク・ブルームフィールドが参加していたことや、ボブ・ディランのバックをポール・バターフィールド・ブルーズバンドがやったこともあって、当時はチャーリー・マッセルホワイトはちょっと注目度が低かった。でも、アルバムはバターフィールドに負けないとてもいいアルバムです。まずは一曲、インストルメンタル曲で
1.Chicken Shack/Charley Musselwhite
いいですね。たまらんですね、この軽快なシャッフル・ビート!
このアルバムはドラムがシカゴブルーズ・ドラムの名人フレッド・ビロウ、ベースがジェイムズ・コットンの録音はじめブルーズのセッションに多く参加しているボブ・アンダーソンと、リズム隊がまず素晴らしい。ギターのハーヴィ・マンデルは知っている人も多いと思いますが、有名なところではローリング・ストーンズのアルバム「ブラック&ブルー」に参加。あとはイギリスのジョン・メイオール・ブルーズブレイカーズ、そしてウエストコーストのキャンドヒートとブルーズ系のバンドを渡り歩いてますが、ソロアルバムもたくさんある素晴らしいギタリストです。
このレコーディング・セッションは白人と黒人が混じった白黒混合のセッションで、60年代でもブルーズの世界では人種の壁はあまりなかったことがここでもわかります
次は演奏を含めチャーリーが大きな影響を受けただろうサニーボーイ・ウィリアムスン2の曲をカバーしています。
2.Help Me/Charley Musselwhite
チャーリーは1944年生まれですから、現在73才。ミシシッピ生まれですが3才の時にメンフィスへ引っ越して、そのメンフィスでブルーズの洗礼を受けるのですがプロとしてハーモニカを演奏するという気持ちはなくて他の仕事をしてました。でも、メンフィスの景気が悪くなったので18才の時に仕事を求めてシカゴへ行ったそうです。だからシカゴへブルーズを演奏するために行ったのではなくて普通に職を求めて行ってるんですね。そのシカゴでたまたまマディ・ウォーターズのライヴに飛び入りしたのがきっかけでだんだんライヴをやるようになったらしいです。
それでうまいこと行くようになって67年22才の時に今日聴いているアルバム”Stand Back”を録音することになったわけです。そのシカゴ時代にリトル・ウォルターやシェイキー・ホートン、サニーボーイと名だたるブルーズマンを生で聴き、教えてももらってるわけです。彼がクラブでたったひとりの白人ということもよくあったそうですが、60年代にすごいですよね。たぶん修羅場はたくさんくぐっていると思います。でも、そういう黒人ブルーズマンに可愛がられたり、友達になったりできたのは彼の人柄がいいからでしょう。
次はフレッド・ビロウの見事なドラムをベースにファンキーなブルーズが繰り広げられてます。
3.My Baby/Charley Musselwhite
かっこいい曲でしたね。
アルバムを出したことでいろんなところから仕事の依頼くるようになって、カルフォルニアから一ヶ月の仕事の依頼が来て、行ってみたら仕事もたくさんあって居心地がよかったのでそのままカルフォルニアに住み着いてしまったというお気軽なマッセルホワイ。初めてハーモニカだけで生活できるようになったらしいです。
次はエルモア・ジェイムズの”It Hurts Me Too”のインストルメンタル・バージョンみたいな曲ですが、マッセルホワイトの情感にあふれたハーモニカ・プレイがたっぷり聴けます。バックのハーヴィ・マンデルのギターも素晴らしいです。
4.39th And Indiana/Charley Musselwhite
インタビューを読んでいると、マッセルホワイトは子供の頃一人っ子でお父さんもいなくてお母さんとふたりで生活していたみたいです。その寂しさをやわらげてくれたのがブルーズを聴くことだったそうです。いまの曲のハーモニカにある情感はそういうところに由来してるのかも知れません。
黒人の音楽ブルーズの中に白人が入っていくのもそれはそれで大変だった60年代という時代ですが、チャーリーはあまりそういうことは苦にしていなかったみたいです。
一時期は酒浸りの生活でアルコール中毒になったりもしたそうですが、いまはお酒もやめて元気でいろんなブルーズフェスにも参加し、いろんなミュージシャンのレコーディングにも呼ばれています。ひょっとすると彼にとっていまがいちばんいい時かも知れません。もう一度来日して欲しいです。
彼は2012年にシンディ・ローパーのツアーで来日した時にブルーズ&ソウルレコード誌のインタビューでこう言ってます。「ブルースは落ち込んだ時には癒しとなり、嬉しいときには友達になるいつもブルースは私達みんなのためにそこにあるのさ」いい言葉ですね。

2017.08.18 ON AIR

メンフィスのソウルシンガー、ドン・ブライアント、
46年ぶり74才のニューアルバム”Don’t Give Up On Love”を聴く

Don’t Give Up On Love/Don Bryant (FAT POSSUM RECORDS FP 1607-2)

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ON AIR LIST
1.A Nickel And A Nail/Don Bryant
2.Don’t Give Up On Love/Don Bryant
3.How Do I Get There?/Don Bryant
4.One Ain’t Enough/Don Bryant

 

 

 

 

20才半ばの頃に愛聴していたメンフィスの「ハイレコード」のコンピレーションアルバムに”Don’t Turn Your Back On Me”という心に残る曲があった。それを歌っていたのがドン・ブライアント。当時彼のソロ・アルバムを見つけられなくてそのコンピ・アルバムでしか名前をみることはなかった。
そして、その後メンフィス・ソウルの女王、アン・ピーブルズの名曲”I Can’t Stand The Rain”という曲を書いたのが、ドン・ブライアントだということを知った。
実はドンはソングライターとしても活躍している人だった。そして、そのアン・ピーブルズの夫だということもわかり、アンが好きだった僕はちょっとがっかりしたもんだ。なんて、がっかりしても仕方ないのだが。
そのドン・ブライアントが今年に入ってなんと、46年ぶりのソロ・アルバムをリリース。74才です。自分の中では長く過去のシンガーのイメージだったのでそのニュースに驚きましたが、聴いてみてその素晴らしさに更に驚きました。伝統あるメンフィス・ソウルというのを久しぶりに聴いた思いがします。

昨年の来日公演がものすごくよかったと後から聞いて、そしていま新しいアルバムを聴いてライヴを聴けなかったことをものすごく後悔しています。

1曲目は同じメンフィス「ハイ・レコード」のソウルの偉人、O.V.ライトが歌った名曲。「昔、オレには愛も金もあったよ。でも、いまポケットにあるのはニッケル(5セント)とネイル(釘)だけだ。友達は知らないけどね、オレは失敗したんだよ。愛も金もなくていまあるのは5セントと釘だけだ。何も出来ないんだ。そして、オマエにはもう愛していないと言われた」
何もかも失った男の胸の内を歌ったドン・ブライアントの熱唱です。
1.A Nickel And A Nail/Don Bryant
すごい歌の熱です。74才とは思えないソウルフルな歌でした。

実は1969年に「プレシャス・ソウル」というアルバムを彼はリリースしていたのだけど、あまり日本で出回ってなくて僕がゲットしたのは70年代の終わりだった。でも、そのアルバムではウィルソン・ピケットやサム&デイヴのカバーを歌ってるなぁ・・くらいであまり彼独自の印象がないものだった。それがいまから4年くらい前にシングル・コレクションというCDで出て、それを聴いてやっぱりいいシンガーだなと思っていた矢先の今回のアルバム・リリース。
次は今回のアルバムのタイトル曲、典型的なサザン・ソウル・バラード
2.Don’t Give Up On Love/Don Bryant
「愛に傷ついたり、愛なんていらないと思ったり、でもあきらめたら得られないよ、君を励ましてあげたい、愛をあきらめるな」Don’t Give Up On Love!やっぱりいいです。こういうサザンソウル。
ソウル・シンガーによくある経歴ですがお父さんはゴスペル・グループのシンガー。ドン・ブライアントも5才から教会で歌っています。なので次のような曲はもう十八番。ドン自身が書いたゴスペル曲です。
How Do I Get There?「どうやったらそこにたどりつけるのか」
3.How Do I Get There?/Don Bryant

この前来日したスペンサー・ウィギンスもそうですし、このアルバムにも参加しているキーボードのチャールズ・ホッジズもそうですが、みんな音楽の基盤は教会。チャールズは神父さんでもあるし、アル・グリーンも教会をもっている神父さん。その教会という場所、子供の頃からそこで歌い演奏し、プロになってからも何かと教会に行く・・そして、年取ってからも教会へ・・つまり彼らにとってずっと心の拠り所は教会。そういう場所があることを僕はとっても羨ましく思います。
さて、このアルバムをずっと聴いていると重量感のあるどっしりとしたビートを出すドラムに気づきます。ドラマーはメンフィス・ソウルの伝説のドラマー、ハワード・グライムス。今回僕がこのアルバムをゲットする気持ちになったひとつのポイントはそのハワード・グライムスでした。派手にドカドカ叩かず自分を抑え歌いやすいビートを出してくれるドラマーです。
では、そのハワードの絶妙なミディアム・テンポのグルーヴが素晴らしい一曲を聴いてみよう。
4.One Ain’t Enough/Don Bryant

70年代僕はずっと南部のソウルが好きでハイレコードやスタックス・レコード、ゴールド・ワックスといったレーベルの音楽を聴いていた。いまこのドン・ブライアントの新しいアルバムを聴いていて本当にこういうソウル・ミュージックと出会えてよかったと思う。
また、ドン・ブライアントが来日してその生の歌声を聴かせてくれたことを待ちます。