2017.11.17 ON AIR

シカゴ・ダウンホーム・ブルーズの極みスモーキー・スマザーズ

Smokey Smothers Sings The Backporch Blues/Smokey Smothers
(OLDAYS RECORDS ODR6216)

Smokey Smothers Sings The Backporch Blues/Smokey Smothers(OLDAYS RECORDS ODR6216)

ON AIR LIST
1.Come On Rock Little Girl/Smokey Smothers
2.I’ve Been Drinkin’ Muddy Watter/Smokey Smothers
3.I Ain’t Gonna Be No Monkey Man No More/Smokey Smothers
4.You’re Gonna Be Sorry/Smokey Smothers
5.Way Up In The Mountain Of KentuckySmokey Smothers

 

 

 

今日はどっぷりダウンホーム・シカゴ・ブルーズです。
実は今日聴いてもらうアルバムはブルーズの隠れた名盤と言われるスモーキー・スマザーズの「Smokey Smothers Sings The Backporch Blues」Backporch というのは家の裏口のポーチ、裏口のベランダみたいなことです。だから直訳するとスモーキー・スマザーズが歌う裏口ベランダのブルーズと鳴りますが、まあ裏口での噂話みたいなことでしょう。

1. Come On Rock Little Girl/Smokey Smothers
当時シカゴでいちばん売れていたジミー・リード・スタイルのブルーズですが、ゆったりとしたダウンホーム感がいいです
スモーキー・スマザーズと言う人はこれといったヒットもないですが、50年代にはハウリン・ウルフのバック・ギタリストで、アール・フッカーやボ・ディドリーともやっていました。

このアルバムは1962年にリリースされたのですが、62年というとマディ・ウォーターズやハウリン・ウルフのシカゴ・ブルーズの全盛がちょっと過ぎた頃で、このスモーキーはマディたちの次の世代のシカゴ・ブルーズマンで当時33才です。その下の世代、この頃20歳くらいだったのがマジック・サム、バディ・ガイ、オーティス・ラッシュでフレディ・キングが28才。もうシカゴにはいろんなタイプのブルーズ・ギタリストがめちゃたくさんいた頃です。それでそのフレディ・キングがこのアルバムで6曲参加しています。フレディとスモーキーのふたりのギターの絡み方が素晴らしくシカゴ・ブルーズのギターのお手本みたいな曲を聴いてください。
2.I’ve Been Drinkin’ Muddy Watter/Smokey Smothers

ギター二本がグイグイとドライヴしていくのをドラムが一緒にグルーヴしていくのですが、このドラムがフィリップ・ポールというこれまた名人で、フレディ・キングの大ヒット”Hide Away”ほかキング・フェデラルというレコード会社のスタジオ・ミュージシャン・ドラマーでいい曲にたくさん参加しています。ベースがいないのでドラムがすごく生々しく録音されていてドラムの人がシャッフルのリズムを研究するのにもこのアルバムはいいと思います。実はこのよく翌日にその大ヒット”Hide Away”がレコーディングされています。だから次世代のブルーズが生まれていく貴重な時代の録音です。
もう1曲フレディ・キングが参加している曲を聴いてみましょう
3.I Ain’t Gonna Be No Monkey Man No More/Smokey Smothers
生々しいサウンドでいいですね。60年代初期シカゴのブルーズクラブの風景が浮かんできます。
ピアノとかハーモニカとかホーンが入っていないのですごくギター・サウンドの作りがわかるし、彼の生まれ故郷南部ミシシッピーの匂いがやっぱりしてます。参加しているフレディ・キングがインタビューでジミー・ロジャーズのことを絶賛していましたが、フレディとかバディ・ガイとかマジック・サムがこういう伝統的なシカゴ・ブルーズギターを直接受け継いだ世代で、その後になるとやはりB.B.キング・スタイルのチョーキングを多様するモダン・ブルーズのスタイルになっていくんですが、彼らはしっかり南部スタイルも体得してます。
まあ、時代の流れとは言え、こういうギター二本、ドラムみたいな生々しい感じはなくなっていくんですが、どこかロック的で若い人たちも好きになるテイストを含んでます。ストーンズなんかはこのあたりをよく聴いていると思います。

では、典型的なスロー・ミディアム・テンポのシカゴ・ブルーズ・スタイル
4.You’re Gonna Be Sorry/Smokey Smothers
この間もコンサートの最後にブルーズのセッションがあったのですが、ほとんどのギタリストが今日聴いてもらっているようなウォーキング・ベースをーのパターン(ガッガ・ガッガ・・・)をギターで弾かないんですね。自分がソロを弾いている以外の時は適当にコードを鳴らしているだけなんですよ。でも、ブルーズのギターの絡みというのは今日聴いてもらっているようにいろいろあるんですよ。ブルーズ・ギターはソロを弾くだけではダメなんですよ。だから先日のセッションもぼくだけがずっと、ガッガ・ガッガ・・・ってリズムを弾くことになるわけです(笑)そのガッガ・ガッガ・・・がブルーズのリズムの命なんですよ。だから、ブルーズ・ギターを志向する方にはこういうアルバムとかエディ・テイラー、ジミー・ロジャースなんかをたくさん聴いて欲しいです。
5.Way Up In The Mountain Of KentuckySmokey Smothers
このアルバムは日本のオールデイズ・レコードからCD化されてリリースされています。

2017.11.10 ON AIR

Blues Guitar Instrumental-2

img01

Truckin’ With Albert Collins/Albert Collins (MCA MCAD-10423)

img02

The Original Peacock Recordings/Clarence “Gatemouth” Brown(ROUNDER CD 2039)

img03

Steady Rollin’ Man/Robert Jr.Lockwood (P-Vine PCD 1863)

img04

House Of The Blues vol.1(JIMCO JICK89690)

img05

Blues After Hours/Pee Wee Crayton (P-Vine PCD-3028)

ON AIR LIST
1.Frosty/Albert Collins
2.Okie Dokie Stomp/Clarence “Gatemouth” Brown
3.Steady Groove/Robert Jr.Lockwood
4.Elmore’s Contribution To Jazz/Elmore James
5.Blues After Hours/Pee Wee Crayton

先週に引き続き今回もブルーズ・ギターのインスト特集。
今日はまずブルーズギタリストの宝庫テキサスから1962年録音、ミスター・テレキャスター、アルバート・コリンズの軽快なこの曲
1.Frosty/Albert Collins
アルバート・コリンズは58年にデビューしているのですが、前回のアール・フッカーと同じであまり歌が上手くなくて、この人こそブルーズギターのインストで有名になった人です。初めて聴いたアルバムには歌も入っていたのですが、「コリンズってギターええけど歌あかんなぁ」というのが一致した意見でした。でも、ギターは唯一無比、彼しか弾けないブルーズ・ギターでありその切れ味のいいギター・サウンドもフレイズも彼だけのものです。というのもギターのチューニングがFマイナー・チューニングといわれる独特の変則チューニングで、やはりそのチューニングにしないとコリンズのサウンド・テイストは出ない。
まあ、ブルーズマンは音楽学校なんかで習うわけもないので、みんな自己流で個性的です。僕がブルーズを好きなところがそこなんです。
歌は上手くないと言いましたが、でも途中からかなりがんばって歌をよく歌ってなんとなく彼流の歌というのができあがっていくところがまたブルーズの面白いところです。

次はアルバート・コリンズのテキサスの先輩です。クラレンス・ゲイトマウス・ブラウン
年は10才くらいゲイトマウスが先輩なのでたぶんテキサスのヒューストンのクラブでコリンズは憧れてみていたと思います。テキサスは録音として残っているいちばん古い30年代のブラインド・レモン・ジェファーソンからT.ボーン・ウォーカー、ライトニン・ホプキンス、そしてゲイトマウス・ブラウン、アルバート・コリンズ、ジョニー・ギター・ワトソン・・・と優れたギタリストがたくさん輩出された土地です。
ゲイトマウスは一時は「ザ・ビート」というテレビ番組のハウスバンドのリーダーをやっていて、テキサスあたりではそうとうブイブイ言わせてたと思います。
2.Okie Dokie Stomp/Clarence “Gatemouth” Brown
コーネル・デュプリーもカバーしたブルーズ・インストの名曲Okie Dokie Stompでした。

次は50年代から60年代サニーボーイ・ウィリアムスン、リトル・ウォルターはじめ偉大なブルーズマンの録音で見事なサポートをしてきた間違いなくブルーズ・ギター名人のひとり、ロバート・Jr.ロックウッド
ロックウッドは何度か来日したのでライヴを見ましたが、すごく自然に楽に弾いているのでなんか簡単そうに見えるんですが、これがカバーしょうと弾いてみるととんでもなく難しいんですよ。ブルーズの一流のスタジオ・ミュージシャンですからワザがたくさんあるんですよね。複音で弾くソロとかコードワークの洗練されているところとか、でもジャズまでいかないあくまでもブルーズ。その中でのパターンがほんとに多くてリズム・ギターからソロまでブルーズギターの教科書みたいな人でブルーズギターをやる人は一度はここを通らないといけないというブルーズマン
3.Steady Groove/Robert Jr.Lockwood
いまでも初めて来日した時の最初のギターの音が僕の頭の中では忘れられなく残っています。

エルモア・ジェイムズは歌もギターもすぐに「あっ、エルモアや」とわかるやはり個性的なブルーズマンです。ギターも歌もすごいエネルギーを出している人ですが、インスト曲はあまりなくていまから聴いてもらうのがいちばん彼の有名インストかも知れません。50年代から60年代へだんだんスライド・ギターを弾く人が減っていったのですが、
エルモアの影響力はすごくて昔はイギリスのジェレミー・スペンサーはじめ、デュアン・オールマン、ボニー・レイット、そしてデレク・トラックスとロック系のギタリストにも大きな影響を与えた人です。
4.Elmore’s Contribution To Jazz/Elmore James
僕もオープンDチューニングでエルモアの曲をスライドしますが、すごく攻撃的な気持ちになります。彼の演奏の中にある暴力性みたいなものにロックのミュージシャンが共感するのではないかと思います。

最後はゲイトマウス、アルバート・コリンズと同じテキサス出身のブルーズマン、ピーウィー・クレイトン。やはり、この人もテキサス流のワイルドなギターが持ち味ですが、テキサスからウエストコーストへ移ったのでウエストコースト風のややジャズがかったプレイもやります。ルーツはやはりテキサスからウエストコーストへ流れたT.ボーン・ウォーカーですね。聴いてもらう曲はもうブルーズ・インストの定番中の定番。
5.Blues After Hours/Pee Wee Crayton
前回と今回はブルーズ・ギターのインスト大会でしたが、いつも言ってますけどねブルーズは歌ですからね。基本は歌いながらブルーズギターを弾くというスタイルがいちばんです。ブルーズギターだけ弾くというのは反則ですよ。
でも、またそのうちギター特集もしますよ。

2017.11.03 ON AIR

Blues Guitar Insrumental-vol.1

img05

Blues Guitar Hero/Freddy King (P-Vine PCD-799)

img01

The Slide Guitar bottles,knives&steel (columbia records CK 46218)

img02

The Guitsr Wizard/Tampa Red (sony records srcs7393)

img03

T-Bone Blues/T-Bone Walker (Atlantic Records 8020)

img04

Blue Guitar/Earl Hooker (P-Vine Records PCD-24045)

ON AIR LIST
1.Hide Away/Freddy King
2.Guitar Rag/Sylvester Weaver
3.Things ‘Bout Comin’ My Way/Tampa Red
4.Blues In D Natural/Earl Hooker
5.Two Bones and a Pick/T-Bone Walker

かなり前にブルーズ・ギターのインストルメンタル特集のリクエストをいただきまして、今週と来週はそれにお答えしょうかと思います。
いつも言ってるんですが、ブルーズという音楽はまず歌があってのものです。ギターという楽器はブルーズの歌をサポートする役割でとして始まったものです。ところが日本では歌わないでブルーズギターだけ弾きたいという人が多いです。僕は歌いながらギターを弾いた方がギターも上手くなると思います。でも、ブルーズの録音が始まった1920年代からギターのインスト曲は録音されていて、やはりギター名人と呼ばれるギタリストがいたことも確かです。でも、念を押しますがブルーズは歌ありきです。それをわかった上で今日と来週のブルーズ・ギター・インストを楽しんでください。

ブルーズ・ギターというのが世界的に認知されロック・ミュージックの世界にも影響を与えたはじめのきっかけを作ったのは、やはりブルーズ界の3大キング、B.B.キング、アルバート・キング、フレディ・キングだと思いますが、B.B.とアルバートはギターのインストルメンタルのヒットというのはありません。あくまでも歌と一緒に弾くブルーズギターでの人気なのですが、フレディはエレキ・ギターでのブルーズ・インストを何曲もヒットさせたブルーズマンです。
たぶんブルーズ・ギターのインスト曲でいちばん有名な曲のひとつだと思いますが、フレディ・キングの1961年この曲から今日はスタート!
1.Hide Away/Freddy King
この曲が有名になったのはエリック・クラプトンがジョン・メイオール&ブルースブレイカーズ時代にカバーしたことも大きかったです。フレディはギターのインスト曲をかなりたくさん録音していてざっと想い出せる曲だけでも、San-Ho-Zay、The Stumble、Just Pickin’、Side Trackedとあり、ギター・インストのアルバムもリリースしています。
60年代当時はヴェンチャーズなどギター・インストが全米で流行っていたこともあったと思います。フレディはサーフィンやホットロッドのような曲までブルーズ・インストで出しています。こういうブルーズマンはフレディくらいだと思います。
フレディは自由自在の名人ですが、録音に参加した当時のキング・フェデラル・レコードのレコーディング・ミュージシャンたちがみんな上手いです。

では、録音で残されているブルーズ史上いちばん古いインスト曲は何かと探してみました。たぶんこれではないかと思います。
1923年、シルヴェスター・ウィーバーというギタリストが”Guitar Blues”と”Guitar Rag”という曲を録音しました。それがブルーズ史上初のカントリー・ブルーズ曲であり、初めてスライド・ギターが録音された曲と言われています。ウィーバーはサラ・マーティンとかヘレン・ヒュームズといった20年代に人気のあった女性シンガーのバックでギターを弾き人気になったギタリストです。
2.Guitar Rag/Sylvester Weaver
すごくギターの音色がいいですよね。フォーク的であり、なんか童謡みたいな感じもするのんびりした曲でいいですね。

次は「スライド・ギターの魔術師」と呼ばれたタンパ・レッド。1928年に”It’s Tight Like That”をヒットさせて以降ギタリストとしてだけでなく、ソングライターとしても素晴らしい才能があり亡くなるまでに300曲以上をレコーディングしているブルーズギター名人です。
さっきのシルヴェスター・ウィーバーの「ギター・ラグ」から約10年後の1934年の曲です。
使っていたギターは金属製のリゾネーター・ギターでナショナルというメーカーのトライ・コーン、いまでも高価なギターですが当時もかなりの高級品でした。
タンパはお金持ちやギャングのパーティで演奏するのにも呼ばれて、ギャラもよかったんでしょうね。いつもスーツをちゃんと着た身なりもいい人でした。
3.Things ‘Bout Comin’ My Way/Tampa Red
タンパ・レッドは聴いてもらってわかるようにすごく繊細で丁寧な演奏で、モダンなところとどこか土着性も兼ね備えて独特なスライド・ギターで、多くのスライド・ギタリストは一度はこのタンパ・レッドのギターを学んでいます。次はそのタンパのスライド・ギターを継承したやはりギター名人のひとりです、アール・フッカー。
アール・フッカーはシカゴ・ブルーズのスタジオ・ミュージシャン的な存在で、南部からシカゴにやってくる土着的なブルーズマンとはちょっと違うR&B的な、またはロック的な要素も持ち合わせた先進的でファンキーなギタリストでワウワウやエフェクターも早くから使った人です。豪快だけど繊細なギターで、やはり名人でしょう。
いまから聴いてもらう曲はオルガンを加えたR&B的な当時にしてはモダンなサウンドです。
4.Blues In D Natural/Earl Hooker
アール・フッカーはブルーズの巨人ジョン・リー・フッカーの従兄弟なんですが、ふたりの芸風のあまりの違いに笑ってしまいます。まあ、アール・フッカーは歌がね、上手くなかったのでギターへ行ったんでしょうね。でも、アメリカン・フォーク・ブルーズ・フェスティバルの映像で楽屋で歌ってるシーンが出てくるんですが、やはり歌は大好きなんだと思います。彼のギターは歌ってますから。
最後はモダン・ブルーズ・ギターの父と呼ばれるT.ボーン・ウォーカーのインストを聴こうと思います。さっきからどのインスト曲もそうなんですが、ギターが歌ってるんですよね。だから適当にアドリブを弾いているのではなく、ここのコーラスでこのフレイズでテーマはこのメロディとちゃんと決まってるんですよ。だから、よくあるセッションでダラダラとギター・ソロを弾く人たちとはかなり違うわけです。次のT.ボーンの曲なんかは本当にしっかり構成もなにもかもアレンジされた素晴らしいインスト曲です。もうひとりのギターはT.ボーンの友達でジャズギタリストのバーニー・ケッセル。ふたりの名人のギターのからみもお楽しみください。
5.Two Bones and a Pick/T-Bone Walker
ギタリストふたりもめちゃ上手いですが、バックのミュージシャンも本当にため息でるくらい上手いです。
今日はブルーズ・ギターのインスト特集でしたが、まだまだ聴いてもらいたい曲があるので来週もブルーズ・ギター・インストお送りします。

2017.10.27 ON AIR

50年代ウエストコースト・ブルーズの悲運のピアノ・ブルーズマン、ロイ・ホーキンス

The Thrill Is Gone/Roy Hawkins (P-VINE PCD-3055)
img01

ON AIR LIST
1.The Thrill Is Gone/B.B.King
2.The Thrill Is Gone/Roy Hawkins
3.Highway 59/Roy Hawkins
4.Why Do Everything Happen To Me/Roy Hawkins
5.Hawk Shuffle/Roy Hawkins
6.Blues All Around Me/Roy Hawkins

 

 

 

今日はまずこれを聴いてください。
1.The Thrill Is Gone/B.B.King
B.B.キングで大ヒットしたブルーズ”The Thrill Is Gone
でも、このオリジナルを作り歌ったのが今日聴いてもらうロイ・ホーキンスというピアノを弾くブルーズマンだということはあまり知られていません。B.B.キングはこの曲でグラミー賞を獲得して世界のBBとして羽ばたき、B.Bのステージでは必ず演奏され、B.B自身も「この曲が私を有名にしてくれた」と語った曲です。しかし、ロイ・ホーキンスは長くアルバムもリリースされず悲運のうちに人生を閉じました。オリジナルのロイ・ホーキンスは40年代から50年代に活躍したブルーズマンで”The Thrill Is Gone”はB.B.がヒットさせる19年前1951年にこの曲のオリジナルをリリースしました。
2.The Thrill Is Gone/Roy Hawkins
元々曲調がマイナーということもありますが、B.B.のカバーに比べると暗い感じがします。それはこのロイ・ホーキンスの持っている声がヘヴィでダークということもあります。
曲の内容は「ひどい目に合わされて来た女と別れて、いつの日かオマエは後悔するだろう。まだ未練はあるけどオレは自由になった。すべては終わったんだよ」ホーキンスとB.Bは多少歌詞が違うんですが、ホーキンスの方は未練とか辛かった思いが強い気がしますが、B.B.の方が別れて自由になったんだというアピールが強く僕は感じます。

今日聴いてもらうアルバムはThe Thrill Is Gone/Roy Hawkins”というアルバムです。
1949年から1955年まで約6年間のロイ・ホーキンスが売れていた当時のシングルを集めたものです。ロイ・ホーキンスはピアノ・ブルーズマンで40年代後半ウエストコースト、カルフォルニアのオークランドのクラブで歌っていたところをスカウトされて初めて録音したのが1948年。50年代に入ってモダン、RPMといった黒人レーベルに録音をはじめ、いまのThe Thrill Is Goneともうひとつ大きなヒット”Why Do Everything Happen To Me”を出してウエストコーストのブルーズ・シーンで有名に。後輩のレイ・チャールズ もかなり影響を受けています。
40年代後半というと同じピアノ・ブルーズのチャールズ・ブラウンやモダンブルーズギターの父、T.ボーン・ウォーカーがめちゃ売れていた時代でウエストコースト・ブルーズ花盛りの時代。このロイさんにもそのふたりの影響がありますが、そのT.ボーンがギターで特別参加している曲です。もうイントロから「ああ、T.Bone・・・」とわかります。
3.Highway 59/Roy Hawkins
めちゃくちゃT.ボーンのギターがいいですね。ホーキンスの歌がちょっとT.ボーン風になってるのがおもろいです。ダンサブルなジャンプ・ブルーズですが、この時代のスタジオ・ミュージシャンってみんなめっちゃ上手い。
次は1950年R&Bチャート2位まで上がったヒットですが、これはホーキンスのオリジナルではないです。実はこの曲のレコーディング直前にロイ・ホーキンスは交通事故にあって右腕が使えなくなってしまい、以降は代わりのピアニストがスタジオに来て録音をすることになります。それで次の曲が皮肉にも「どうしてオレにばっかいろんなことが起こるんだろう。寂しく、心は悲しみにあふれている。一日中変なことがたくさん起きる。まるでオレのやっていることがすべて悪いことのようだ。悪運がオレに襲いかかるのでオレはまためげてしまう」
すごく重いブルーズですが、チャートの2位まであがりました。
4.Why Do Everything Happen To Me/Roy Hawkins
まさにブルーズっていう感じの曲ですが、この曲がチャートの2位まであがったということは、この歌に共鳴する人たちがたくさんいたということです。つまり、なんでオレばっかりうまいこといかんのやろと思っていた黒人の人たちがいたんですね。さっき聴いてもらったダンサブルな曲でクラブで憂さを晴らすんだけど、実際生活に戻るとブルーなことばかりという人たちがたくさんいたんですね。
次はホーキンスが事故に遭う前、まだ右腕が使えた頃のインスト曲でこういう早い曲も弾けた人ですから辛かったでしょうね。

5.Hawk Shuffle/Roy Hawkins
ホーキンスはピアニストとして片腕が使えなくなっても曲をつくる力と歌が歌えたことで、その後も録音は続くんですが、だんだんとお酒に溺れてしまい、最後のレコーディングは1961年でそのあと音楽をやめて亡くなるまで家具屋で働いていたそうです。
亡くなったのは1974年。B.B.がThe Thrill Is Goneでグラミーを獲得した三年後です。聴いたんでしょうかね、B.B.ヴァージョンを。たぶん聴いたでしょうね。ラジオでも流れていたし・・・。どんな気持ちで聴いたんでしょうね。

6.Blues All Around Me/Roy Hawkins
ブルーなロイ・ホーキンスらしい曲「オレの家は墓場やでベッドは墓石、ベイビーすぐ帰ってきてくれんかな、オレのまわりはブルーズばっかや、めっちゃブルーでどうしたらええねん」
今日は才能がありながら不運にみまわれた50年代に活躍したブルーズマン、ロイ・ホーキンスを聴きました。

2017.10.20 ON AIR

シカゴ・ブルーズの裏の立役者、素晴らしいソングライター、
アレンジャー、プロデューサーそしてベーシストのウィリー・ディクソン

I AM THE BLUES(Sony Music MHCP-422)
img01
ON AIR LIST
1.Hoochie Coochie Man/Muddy Waters
2.Spoonful/Howlin’ Wolf
3.Little Red Rooster/Willie Dixon
4.Wang Dang Doodle/Koko Taylor
5.My Babe/Little Walter

 

 

 

 

ビートルズにはジョージ・マーティンという素晴らしいプロデューサーがいて、彼が「5人目のビートルズ」と呼ばれるほど重要な人物だったことはよく知られています。やはりひとつの音楽やバンドやミュージシャンが世に出るには、そのミュージシャンの力だけでなく周りのプロデューサー、マネージャー、ソングライターの力が必要です。今日は40年代から60年代シカゴ・ブルーズのソングライター、プロデューサー、ベーシストとして活躍したウィリー・ディクソンを取り上げます。言わばシカゴ・ブルーズのジョージ・マーティン的役割を担った人です。
ウィリー・ディクソンは1915年ミシシッピー、ヴィクスバーグの生まれ。その後シカゴに移り住み、若い頃プロのボクサーでイリノイ州のヘヴィ・ウエイトのチャンピオンにまでなった人でした。でも、マネージャーと金銭トラブルでボクサーをやめてミュージシャンに転向したのが1930年代半ば。貧しい黒人が一攫千金を狙えるのはスポーツ選手かミュージシャンという構図はいまもあまり変ってないですね。
ミュージシャンになった最初はデュオを組んだり、トリオだったり・・ブルーズとポピュラーをやっていたみたいですが、のちに「チェスレコード」を興すチェス兄弟が経営しているクラブで演奏している時にチェス兄弟と仲良くなりました。それで彼らがレコード会社を立ち上げた時に専属のベース・プレイヤーとして雇われることになりました。1948年頃のことです。そして、ディクソンには演奏だけでなく、作詞作曲とアレンジャーとしての才能があることがわかりチェス・レコードの重要なミュージシャンそして製作スタッフとなります。
そして、ソングライターとして大きなヒットを出した最初がマディ・ウォーターズのこのブルーズでした。1954年。
1.Hoochie Coochie Man/Muddy Waters

ブルーズの名曲のひとつですが、この曲のエロティックな歌詞は当時女性に人気が出てきていたマディ・ウォーターズを見て、ウィリー・ディクソンが彼のために作った曲だったそうです。こういう下ネタの歌詞を黒人の女性たちが笑いながら、かけ声入れながら聴いて腰ふって踊っている・・・そういうブルーズが作りだす生活文化が僕はとってもいいと思います。日本ではすごくそういう歌を毛嫌いする人もいるし、無視する人もいますが、歌ですからね。おおらかに聴いて欲しいです。
まずブルーズは人間に起こるすべてを歌う音楽ですから。
このヒットからディクソンは同じチェス所属のハウリン・ウルフの”Evil”、リトル・ウォルターの”My Babe”とヒットを連発していきます。ちなみにウィリー・ディクソンが作ったそれ以外のブルーズの名曲をざっと上げてみます。マディ・ウォーターズの”Tiger In Your Tank”,”I’m Ready”,”The Same Thing” ,”You Shook Me”そして、ハウリン・ウルフの”Spoonful”,”Little Red Rooster”,”Back Door Man”,リトル・ウォルターの”Too Late”、ココ・テイラーが歌った”Wang Dang Doodle”,オーティス・ラッシュの”I Can’t Quit You Baby”・・・とまだまだあるのですが・・つまり、ウィリー・ディクソンの曲なくしてあの黄金期のシカゴ・ブルーズは語れないのです。
もちろん、ベーシストとしても録音に参加しその場でアレンジを考えたり、音のアンサンブルやグルーヴのアイデアを出したりとアレンジャーとプロデューサー的な役割もしました。
だから、レコーディングのクレジットとしてはプロデューサーはチェス兄弟になっていますが、実質的にスタジオでそういう役割をしていたのはディクソンだと思います。
では、彼が作った中でも僕が格別に好きな曲です
「たったスプーン一杯のダイヤやスプーン一杯の金、たったそれだけのためで争いごとが起きる。オレはスプーン一杯のオマエの愛で満足だけどね」
ハウリン・ウルフでヒットしてクリームがカバーしました。
2.Spoonful/Howlin’ Wolf

ウィリー・ディクソンはピアニストのメンフィス・スリムとのデュオ・アルバムとかコンピレーション・アルバムで歌ったものとかあるのですが、自分の名義で歌ったものとしては1969年にCBSレコードから出されたアルバム”I Am The Blues”が有名です。
タイトルがすごいですけどね”I Am The Blues”、「オレがブルーズだ」
このアルバムは全編自分の作った有名曲を自分で歌ったものですが、一曲聴いてみましょう。サム・クックもローリング・ストーンズもカバーした曲です。
3.Little Red Rooster/Willie Dixon
このアルバムのメンバーを見ると歌とベースが本人ウィリー・ディクソン、ハーモニカがウォルター・ホートン、ギターがジョニー・シャインズ、ピアノがサニーランド・スリムとラファエット・リーク、ドラムがクリフトン・ジェイムズ。1969年ですからまだいい時代のシカゴ・ブルーズのメンバーが残っています。

ディクソンが次のココ・テイラーに作ったWang Dang Doodleという曲は「面倒なことはやめて、みんなで大騒ぎして楽しもうよ」という意味のパーティ・ソングですが、この曲もいまだに歌いつがれている曲です。
ディクソンが作る曲のひとつの特徴は土着的な要素がありながら、覚えやすいR&B的なテイストが入っているところで、この曲なんかはゴスペル的な感じもあります。

4.Wang Dang Doodle/Koko Taylor
ウィリー・ディクソンは40年代終わりからチェスレコードで働いていたのですが、57年にチェスを離れてもっとマイナーなコブラ・レコードでマジック・サム、オーティス・ラッシュ、バディ・ガイといった当時の若手ブルーズマンを売り出してます。これはチェスが当時ブルーズよりR&BとR&Rが流行出したのでそちらへ方向を向けたからでした。でも、2年でコブラが倒産し再びチェスに戻るのですが、その間に若手がデビューするきっかけを作ったのでした。
60年代に入ると黒人音楽の主流はソウル・ミュージックへと流れていくので裏方としてのディクソンの役割は減りました。でも、その60年代にはヨーロッパとくにイギリスのロック・ミュージシャンがブルーズを始めて、ブルーズ・ブームがありディクソンはブルーズマンたちをまとめてコンサート・プロデューサーのような役割で渡欧して活躍しました。
ウィリー・ディクソンの曲作りのミソというのは、どこかにちょっとポップな要素があり、ブルーズの曲にしては覚えやすいメロディがあるというところです。次の曲なんかはもう鼻歌で歌えるくらいメロディがあるブルーズです。
5.My Babe/Little Walter

今日はシカゴ・ブルーズの偉大なソング・ライターであり、アレンジャー、プロデューサー、ベーシストだったウィリー・ディクソンを振り返りました。
1992年にウィリー・ディクソンは77才で亡くなりました。彼なくして50年代60年代のシカゴ・ブルーズの隆盛はなかったし、今日聴いてもらったようにブルーズの名曲をこんなに残した人もいません。
面倒見も良かったんだと思います。シカゴのブルーズマンには信頼されていて晩年82年には自分の印税を元に、ブルーズの音楽的遺産を残したり、若いブルーズマンを育てる目的の「ブルーズ・ヘヴン・ファンデーション」という非営利組織を作って、それはいまも活動しています。

最後にウィリー・ディクソンが残した有名な言葉を「The Blues Is The Roots,Everything Else Is The Fruits/ブルーズは音楽の根っこで、他のすべての音楽はその根っこの木に出来た果実だ」本当に名言だと思います。