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2019.03.15 ON AIR

LPレコードで聴くブルーズ名盤

ソウルの偉人オーティス・レディングの名作中の名作
OTIS BLUE/Otis Redding Sings Soul (Atlantic/Warner P-6043A)
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ON AIR LIST
1.Respect / Otis Redding
2.Ole Man Trouble/ Otis Redding
3.Shake / Otis Redding
4.Satisfaction / Otis Redding
5.I’ve Been Loving You Too Long/Otis Redding
LPレコードで聴くブルーズ名盤シリーズですが、今日はブルーズではなくソウルの名盤オーティス・レディングの「OTIS BLUE」を聴きます。アルバムタイトルが示すようにオーティスのソウルにはブルーズのテイストが色濃く入り込んでいます。
リリースされたのは1965年。オーティスの三枚目のアルバム。
LPのジャケットが金髪の白人女性の顔のアップなんですが、なぜこんなジャケットにしたのかまったくわかりません。白人女性にすればアルバムが売れるという目論見でもあったのでしょうか。

僕はブルーズやR&Bやソウル・ミュージックが好きになる前、まだロックを聴いていた頃に初めて聴いたソウル・シンガーがこのオーティス・レディングでした。なぜかというと1968年にオーティスは26歳という若さで飛行機事故でなくなり。その後にリリースされた”The Dock Of The Bay”がチャート1位になりラジオでよくかかっていたからです。それでなんかすごい歌手が死んだということでオーティスの他の曲もON AIRされて、それでいまから聴く”Respect”も知りました。
アレサ・フラクリンのバージョンで聴いている人も多いと思いますが、オリジナルはオーティス・レディング。
1.Respect / Otis Redding

いまの曲は1965年シングルでリリースされてチャート1位になった曲ですが、そのB面が次のOle Man Trouble。
オーティスは曲が書けるソウルシンガーで、このシングルの両方ともオーティスのオリジナルです。
ホーンセクションを含めた重厚なアレンジで、バックのMG’sの演奏もシャープでヘヴィで素晴らしい。
「自分はトラブル続きの男だから他の誰かを見つけて、オレから離れてくれ、見てのようにオレはには運もない。オレはこんな風に何年も生きてきた。オレといるとトラブルになるから」
2.Ole Man Trouble/ Otis Redding
R&Bチャート4位まで上がったOle Man Trouble。バックのMG’sの重さを感じさせるグルーヴがやはりオーティスの歌にぴったりです。

オーティスがリスペクトしていたシンガーはサム・クックでした。そのサム・クックが前年の64年に射殺されてなくってしまったのですが、トリビュート的な意味もあったのでしょうか、このアルバムでは”Change Gonna Come”,”Shake”,”Wonderful World”と三曲サムの曲をカバーしています。中でも僕は次のShakeが好きですが、バックのドラムのアル・ジャクソンのビートがもうドカドカで凄いし、ホーン・セクションと一体となってつくられたサウンドの中をオーティスが自由に飛び回っているフリーな感じもいいです。
3.Shake / Otis Redding

このアルバムがリリースされた1965年は、ロックではイギリスのビートルズが「ヘルプ」と「ラバーズソウル」をリリースした年で、ローリング・ストーンズがヒットした”Satisfaction”を収録したアルバム”Out Of Our Heads”をリリースした年です。黒人音楽と白人音楽が交流しはじめた頃でもあり、黒人が白人の曲を歌い、白人が黒人の曲を歌うのもふつうになっていきます。そういう時代の中、ギターのスティーヴ・クロッパーの提案でストーンズの”Satisfaction”をオーティスが歌うことになります。
ここでのオーティスの歌は原曲を更にパワフルにしてドライヴ感を増したものになりました。ミックやストーンズの連中はこの”Satisfaction”をどう思ったのでしょうかね。
4.Satisfaction / Otis Redding (side1-4)
やっぱりアル・ジャクソンのドラムの気持ちのいいビートに耳がいきます。

オーティスはソウル・ミュージックをあまり知らない人に聴かせても好きになり、ソウルつまり彼の魂を感じるという人が多くいます。テクニック的に歌の上手いシンガーとか何オクターブも声が出るシンガーは他にいると思うのですが、歌とはそもそもそういうものではなく自分の心を聴き手に伝えることだということをオーティスを聴いていると感じます。上手く歌ってやろうとかテクニックを聴かせてやろうではなくて、自分のソウル、魂をさらけ出すことが大事だと教えてくれます
次の珠玉のバラード。僕の知合いの何人かが英語がわからないけど、聴いているうちに泣いしまったという歌です。そこはもうオーティスのソウル・トゥ・ソウルです。
5.I’ve Been Loving You Too Long/Otis Redding

オーティス・レディングは他にもいいアルバムがありますが、今日ON AIRした「オーティス・ブルー」は機会があればゆっくり聴いてみてください。
ソウル・ミュージックという言葉はすごくいい言葉だと思います。魂の音楽・・・それをいつも感じさせてくれるオーティス・レディング

2019.03.08 ON AIR

LPレコードで聴くブルーズ名盤
Hoodoo Man Blues/Junior Wells’ Chicago Blues Band
(Delmark Records DS-9612)

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ON AIR LIST
1.Snatch It Back And Hold It/Junior Wells’ Chicago Blues Band
2.Ships On The Ocean/Junior Wells’ Chicago Blues Band
3.Good Morning School Girl/Junior Wells’ Chicago Blues Band
4.Yonder Wall /Junior Wells’ Chicago Blues Band
5.Hoodoo Man Blues/Junior Wells’ Chicago Blues Band

LPレコードで聴くブルーズ名盤シリーズ。今日は1965年リリースのジュニア・ウエルズの「Hoodoo Man Blues」というアルバムです。
レコード会社は「デルマーク・レコード」
メンバーはハーモニカとヴォーカルがジュニア・ウエルズ、ギターがバディ・ガイ、ベースがジャック・マイヤーズ、ドラムがビリー・ウォーレンの4人なんですが、この4人がシカゴのウエストサイドのクラブで出しているブルーズ・サウンドをそのままパックしたようなリアル・ブルーズの名盤です。ジャケット写真もかっこいいです。
まずはside.1の一曲目。ジュニア・ウエルズらしいファンキーなダンス・ナンバー
1.Snatch It Back And Hold It/Junior Wells’ Chicago Blues Band

ジュニア・ウエルズそしてバディ・ガイたちはこの録音当時30歳前後。1965年ですから50年代初期に盛り上がったマディ・ウォーターズ、ハウリン・ウルフたちの時代から10年以上は過ぎているわけです。
マディの時代ほどシカゴブルーズは盛り上がってはいなくて、主流はB.B.キング、フレディ・キングのようなアーバン、モダン・ブルーズに移っていく狭間にジュニアやバディそしてマジック・サム、オーティス・ラッシュたちは、少し取り残された感じになってしまった。
「オレの乗っている船は紙(Paper)でできている。それに乗っておれはひとりで七つの海を航海している。オマエにしてやることは何もない。なにもないんだ」と恐らく苦しい日々の生活を船の航海に例えて歌った次の曲はトラッドなシカゴ・ブルーズとモダン・ブルーズがミックスされ、しかもそこにシカゴのストリートの匂いが付け加えられたこれぞブルーズという曲です。
2.Ships On The Ocean/Junior Wells’ Chicago Blues Band
レコーディングのチャンスも少なくなっている60年代半ばのブルーズ・シーンでこういうドロっとした、アウトローなブルーズをクラブで彼らは毎晩演奏してたのでしょう。
全体のサウンド、グルーヴ、雰囲気がマディの時代のような一流の感じではなく、どこか二流っぽい、でも素晴らしくブルーズなテイストが感じられるこのアルバム。

次はサニーボーイ・ウィリアムスン1(ジョン・リー・ウィリアムス)がオリジナルのブルーズの有名曲です。曲名「Good Morning School Girl」「おはよう女学生」にいつもひっかかるんですが、このスクール・ガールというのはいまで言うJK(女子高生)のことでしょうか。内容がですね「おはよう可愛い女子高生、いっしょに家に帰ってもええかな。パパとママに学校の友達やって紹介してくれよ。ほかの子やダメなんや、君やないと。めちゃ好きなんよ」まあ、これナンパの歌ですよね。これをですね、当時30歳になっているジュニア・ウエルズが歌うのはどうなんでしょう。いまね、援助交際とかセクハラとかうるさい時代に絶対問題になるでしょう。原曲には「オマエにダイヤ買ってやるから、彼女になってくれ」という歌詞もあるんですが、絶対マズいでしょ、いまやったら。でも、この曲ヤード・バーズ、テンイヤーズ・アフターはじめすごくたくさんのミュージシャンにカバーされているブルーズ・スタンダードです。

3.Good Morning School Girl/Junior Wells’ Chicago Blues Band
シカゴではリトル・ウォルターがハーモニカの音をアンプを通してだすアンプリファイドが主流になっていく中、ジュニアはアンプを使わないでヴォーカル・マイクに生の音のまま吹くというサニーボーイ・ウィリアムスン1のやり方で吹くことも多かったです。僕がアメリカでジュニアを見た最後、彼が亡くなる二年前くらいの時もアンプは使ってなかったです。アンプを使わないハーモニカの音の方が僕は好きです。
同時代のウォルター・ホートン、ジェイムズ・コットン、キャリー・ベルとはまた違うジュニア独特のハーモニカ・プレイがあり、改めてジュニアのハーモニカがいいなぁと思います。

次の曲はエルモア・ジェイムズ、ジュニア・パーカー、フレディ・キングなど本当にたくさんのカバーがあります
4.Yonder Wall /Junior Wells’ Chicago Blues Band

1998年にジュニア・ウエルズは亡くなったのですが、ざっと振り返ると34年にブルーズのメッカでもあったメンフィスに生まれ、10代のはじめにシカゴに移ってルイス・マイヤーズやフレッド・ビロウとバンドをつくり、52年にマディ・ウォーターズのバンドに誘われて加入、53年にレコーディング・デビューして”Little By Little”,”Messin’ With The Kid”といったファンキーなブルーズをシカゴ・ブルーズに吹き込んだ。そして、58年頃からコンビを組んだわけではないけれど、バディ・ガイとともに演奏することが多くなり互いの録音にも参加して、初来日もふたりでやってきました。これといった大きなヒット曲はなかったけれどシカゴのブルーズクラブをそのまま持ち込んだようなライヴはやっぱり、リアル・ブルーズで素晴らしかったです。僕が最後に観たときもファンキーなブルーズと独特のドロッとしたスローブルーズでブレないブルーズを聴かせてもらいました。
最後にアルバム・タイトル曲を聴いてください。

5.Hoodoo Man Blues/Junior Wells’ Chicago Blues Band

今日のLPレコードで聴くブルーズ名盤は1965年デルマーク・レコードがリリースしたジュニア・ウエルズの「Hoodoo Man Blues」を聴きました。CDでもリリースされているので是非ゲットしてじっくり聴いてみてください。

2019.03.01 ON AIR

LPレコードで聴くブルーズ名盤

TRAMP/Lowell Fulson(KENT 520/5020)

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ON AIR LIST
1.Tramp/Lowell Fulson
2.Black Night/Lowell Fulson
3.Two Way Wishing/Lowell Fulson
4.Get Your Game Up Tight/Lowell Fulson
5.Pico/Lowell Fulson

今日はブルーズの偉人、ローウェル・フルソンのケント・レコード時代にリリースされた名盤「TRAMP」をLPレコードで聴きましょう!1967年のリリース。
ローウェル・フルソンはB.B.キングがリスペクトしていたモダン・ブルーズの巨人で、いい曲をたくさん残していますが、その大半はこのケント・レコードに所属していた頃に録音されたもので、だからローウェル・フルソンというとケント時代をまず聴かないと・・となります。
このケント・レコードという会社には50年代から60年代、B.B.キング、アイク&ティナ・ターナー、エタ・ジェイムズ、ジョン・リー・フッカー、Z.Z.ヒルなどが所属して素晴らしいブルーズをたくさん残しました。

まずは僕もレコーディングしているこのアルバムのタイトル曲「TRAMP」を聴きましょうか。僕はウエストロード・ブルーズバンド時代といまやっているブルーズ・ザ・ブッチャーと二回この曲を録音しているくらい好きなんですが、いなたモダンというか、すごく洗練されているわけではないんですがそのファンキーさはいまもすごく新しさを感じます。
ちなみにトランプと言ってもアメリカの大統領のドナルド・トランプと違いますよ、スペルがまず違います大統領はTRUMPつまりカードのトランプと一緒ですが、この歌のトランプはTRAMP、意味は放浪者、浮浪者という意味です。「浮浪者って呼んでもいいよ、オレはきちっとした服も着てないし、ハットも被ってない、お金はないけどオレは愛の男よ」
1.Tramp/Fulson
ファンキーなんですがダウンホームなイナタさがある面白い曲で67年のR&Bチャート5位まで上がったヒットでした。ちなみにファンクの帝王ジェイムズ・ブラウンがファンク・ミュージックを確立したとされる”Cold Sweat”をヒットさせたのが同じ1967年。いかにローウェル・フルソンがアップ・トゥ・デイトな音楽をブルーズでやっていたかということです。ブルーズ史上にとってこのヒットはかなり画期的でした。
しかし、元々フルソンは弾き語りのカントリー・ブルーズを歌っていました。バンド編成になってからもどこかその弾き語り時代のアーシーな土着性を感じさせたり、ダウンホーム・テイストが抜けないのが特徴で朴訥な感じが男っぽくって僕は好きです。

次も66年にチャートに上がったヒット曲ですが純正ブルーズです。こういう曲をチャートに上げる実力を持っている骨太のブルーズマンなんです、ロウエル・フルソンは。
「昔はオレのものやったけどいまは新しい男がおるんやろ。昔は仕事が終わったあともふたりで仲良くやっていたもんや。それがいまでは家に帰るとオマエは疲れているか家にいない。ああ真っ暗な夜」
2.Black Night/Lowell Fulsom
ほんまにええ声してます。ぐっと低音へ行ったときに声の膨らみがあるんですね。本人もそこが売り物やったのか時々その低音を出すんですよ。
もうひとつ、いつも思うのはフルソンのギターなんですが、つっかかるような弾き方で、武骨で不器用に聴こえるんですが時々めちゃ難しいフレイズをさらっと弾くんですよ。うまいのかうまないのかどっちやねんみたいなギターで面白いです。
このアルバムのスタジオ・ミュージシャンのクオリティの高さは相当なものです。大げさなアレンジはないんですが本当にビート中心のいい演奏です。
ブルーズ・バンドやっている方は是非じっくりこのアルバム聴いてみてください。
3.Two Way Wishing/Lowell Fulsom

今日聴いているローウェル・フルソンのアルバム”Tramp”は、僕がブルーズを好きになり始めた頃に買ったアルバムですが、当時毎日聴いているうちにミディアムテンポのシャッフルの曲がなんか塩昆布みたいにブルーズの味が出きてクセになりました。さっきのブラック・ナイツもそうですが、次の曲のミディアム・テンポのグルーヴ感もめちゃくちゃ気持ちいいです。
4.Get Your Game Up Tight/Lowell Fulsom

次の曲はインストルメンタルなんですが、これ最初の”Tramp”のオケをそのまま使ってますよね、使ってますよね!とフルソンに聴きたいです。でも、同じオケだとしてもファンキーな印象に残るいいインストなんですよ。
5.Pico/Lowell Fulsom
やっぱり同じオケ使ってるみたいです。まあ、違ってたとしてもリズムのパターンはまったく一緒です。でも、いいんですね。この詐欺みたいな感じが・・。このアルバムは67年にTrampが大ヒットしたのでその頃のシングルを集めてLPにしたんですが、Trampはその後オーティス・レディングとカーラ・トーマスのデュオに歌詞を変えてカバーされたり、ジョー・テックスが歌ったり、ずっと時が過ぎて今度は80年代終わりから90年代にかけてヒップホップでサンプリングされました。やはり時代が変ってもTrampという曲の中になくならないファンクの普遍性があるんだと思います。
もし、レコードでこのアルバムを見つけたら絶対ゲット!です。

2019.02.22 ON AIR

97歳でグラミーを獲得したブルーズピアニスト、
パイントップ・パーキンス

Pinetop’s Boogie Woogie/Pinetop Perkins (Antone’s Records 74210)
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ON AIR LIST
1.Kidney Stew/Pinetop Perkins
2.Pinetop’s Boogie Woogie/Pinetop Perkins
3.High Heel Sneakers/Pinetop Perkins
4.Going Down Slow/Pinetop Perkins

パイントップ・パーキンス 1913年ミシシッピ生まれ、2011年テキサス、オースティン没 享年97歳

先週は映画「サイドマン」に取り上げられた3人のブルーズマンの中のギターのヒューバート・サムリンを特集しましたが、今日はその中のピアニスト、パイントップ・パーキンスです。
1960年代終わりマディ・ウォーターズ・バンドでマディの右腕となって活躍していたピアノのオーティス・スパンがソロ活動に入ったために、スパンの後釜としてパイントップはマディバンドに入りました。その後マディが亡くなるまで在籍し、マディの晩年のアルバムにも参加していました。
今日取り上げるパイントップ・パーキンスのソロ・アルバム「パイントップス・ブギウギ」は1992年にテキサス、オースティの「アントンズ」レコードからリリースされています。
録音に参加したメンバーがいまから思うとすごいメンバーで、ギターにマット・マーフィ、ジミー・ロジャース、ヒューバート・サムリン、ルーサー・タッカーともうブルーズの一流ギタリストがずらり、ハーモニカもジェイムズ・コットン、キム・ウィルソン、ドラムには映画「サイドマン」でもピックアップされたウィリー・スミス、そしてハウンドドッグ・テイラーの右腕テッド・ハーヴィ、ほかにも精鋭のミュージシャンが参加しピアノと歌のパイントップをサポート。メンバーみただけでも悪かろうはずはないアルバムです。
では、まず一曲目 ”Kidney Stew”ですが、キドニーとは腎臓のことで、豚とか牛の腎臓を使ったシチューですから、「ホルモンのシチュー」のようなものになりますが、キドニー・ビーンズ日本語でいうインゲン豆も同じスペルでキドニー豆でその豆を使ったシチューというのもあります。オリジナルはジャズ・ブルーズのクリーンヘッド・ヴィンソン
1.Kidney Stew/Pinetop Perkins
気持ちのいいブルーズでした。いま気づいたのですが、いまのギターにデューク・ロビラードとクレジットされていて「誰やったかな・・」と考えていたんですが、この人ルームフル・オブ・ブルースにいて、そのあとファビュラス・サンダーバードにジミー・ボーンのあとに加入した人ですね。ちょっとジャズ風味のギターがよかったですね。

次はパイントップの看板曲でパイントップの見事なブギウギ・ピアノとバックのマット・マーフィとルーサー・タッカーの名人芸のギター、コットンのファンキーなハーモニカ、そしてドラムはテッド・ハーヴィ 極上のブギウギ・ブルーズをどうぞ
2.Pinetop’s Boogie Woogie/Pinetop Perkins

次のハイヒール・スニーカーズのオリジナルシンガーはトミー・タッカー。「赤いドレス着て、ハイヒール・スニーカー履いて、ウィグ被っておしゃれして今晩遊びに行こうよ」というダンス・ナンバーで、いまやブルーズのスタンダード曲のひとつです。
ハーモニカはキム・ウィルソン、ヒップなギターソロはヒューバート・サムリン
ウィリー・スミスとカルビン・ジョーンズのリズム隊がステディなリズムを繰り出していて最高です。
3.High Heel Sneakers/Pinetop Perkins

パイントップは南部ミシシッピーに生まれ、最初はギターを弾いていたそうですが、アーカンソー州のヘレナのナイトクラブで女性にナイフで腕の腱を何ヶ所か切られてしまってギタリストへの道をあきらめたそうです。。でも、怪我が治ったあと今度はピアノをめちゃ練習したらしいです。よくわからないんですが、ギタリストからピアノに変るというのが・・・ピアノの方が難しいと思うのですが、ドクター・ジョンも手を怪我してギターからピアノに転向したのですが・・やれるかなオレもピアノ・・。
それでパイントップは40年代なかばにはロバートナイト・ホークと南部を放浪したり、サニー・ボーイ・ウィリアムスンのラジオ番組「キングビスケットタイム」に出たりして、それから50年代半ばにシカゴに腰をおろしました。

最後の曲はドラムとふたりだけで歌うGoing Down Slow。
オリジナルは30年代から40年代に活躍したセントルイス・ジミー。41年に流行ったこの歌をパイントップは南部で放浪していた頃に聴いたのかも知れません。これは自分の死を暗示した曲です「もし私がよくならなかったとしても、私は楽しんだよ。私の健康は悪くなっていく。私はゆっくりと終わっていくんだよ。母にはちゃんとやってると手紙を書いてくれ。そして私の罪を許してくれと伝えてくれ」
4.Going Down Slow/Pinetop Perkins

パイントップは97歳まで生きたんですが、その年2011年、亡くなる直前にドラムのウィリー・スミスと「Joined At The Hip」というアルバムを作ってなんとグラミー賞のトラディショナル・ブルーズ部門でグラミーを獲得しました。そのアルバムではウィリー・スミスはドラムではなくてハーモニカと歌をやってまして、ドラムは息子のケニー・スミスが叩いてます。
パイントップの97歳でのグラミー受賞というのはグラミー史上最年長の受賞でした。その時のグラミー会場での様子も映画「サイドマン」に出てくるのですが、晩年も晩年ですがなんかすごく良かったなぁって感動しました。いつもスポットライトが当たっているわけではなく、人生の大半はマディのバックだったり誰かのバックをやってきたパイントッブ・パーキンスですが、でもこのアルバムでもすごくいいピアノと上手いというわけではないけれどいい味の歌を歌っていて、昔からの仲間や若いミュージシャンに囲まれてブルーズマンとして素晴らしい人生を全うした気がします。
もし、見つけたらこのアルバム「Pinetops Boogie Woogie」ゲットしてください。いいアルバムです。

2019.02.15 ON AIR

ハウリン・ウルフのサイドマンとして名曲を残したギタリスト、
ヒューバート・サムリン

Tribute To Mr.Hubert Sumlin

The Real Folk Blues/Howlin Wolf (Chess/MCA MVCM-22019)

The Real Folk Blues/Howlin Wolf (Chess/MCA MVCM-22019)

The Back Door Wolf/Howlin Wolf (Chess/MCA CHD-9358)

The Back Door Wolf/Howlin Wolf (Chess/MCA CHD-9358)

Heart&Soul/Hubert Sumlin (Blind Pig BP7 3389)

Heart&Soul/Hubert Sumlin (Blind Pig BP7 3389)

 

ON AIR LIST
1.Killing Floor/Howlin’ Wolf(guitar:Hubert Sumlin)
2.Love Me Darlin’/Howlin’ Wolf(guitar:Hubert Sumlin)
3.Do The Do/Howlin’ Wolf(guitar:Hubert Sumlin)
4.Coon On The Moon/Howlin’ Wolf(guitar:Hubert Sumlin)
5.Old Friends/Hubert Sumlin

去年の暮れに「サイドマン」というブルーズの映画が公開されました。映画の内容はいろんなブルーズマンのバックで主役を支えてきたサイドマンの話なんですが、シカゴブルーズの大物ハウリン・ウルフのギタリストのヒューバート・サムリン、マディ・ウォーターズのピアニストとして長くバックを務めたのパイントップ・パーキンス、そしてやはりマディのドラマーを務めたウィリー・スミスの3人が中心になってるのですが、主役ではない、メインのスポットライトは当たらない彼らの音楽を支える気持ちや精神を知るとてもいい映画でした。

今日はその3人の中からヒューバート・サムリンです
ヒューバート・サムリンはミシシッピー生まれですが、育ったのはウエストメンフィスで若い頃からハーモニカのジェイムズ・コットンたちとつるんでブルーズを演奏してました。それが1954年に当時のメンフィスのブルーズの大物ハウリン・ウルフに声をかけられて一緒にシカゴに移り住みます。ウルフは一旗あげにシカゴに向かったのですが、若いヒューバートにこいつは才能があると思ったのでしょう。それからウルフが亡くなるまでヒューバートはほとんどウルフのサイドマンとして活躍します。

2011年に80歳でヒューバートは亡くなったのですが、やはり間違いなく一流のブルーズギタリストでした。

ヒューバート・サムリンのギターというとまず想い出すのはやはりハウリン・ウルフの右腕として録音した「Killing Floor」という曲ですが、イントロと途中に出てくる曲のテーマのようなフレイズはヒューバート特有のシャープな切れ味です。
1.Killing Floor/Howlin’ Wolf(guitar:Hubert Sumlin)
いまの曲はジミ・ヘンドリックスがアメリカに凱旋帰国した最初のコンサート「モントレーポップフェスティバル」の一曲目に演奏したのですが、そのジミヘンはじめエリック・クラプトン、キース・リチャーズなどロックギタリストでヒューバート・サムリンのギターが好きな人が多いです。それはヒューバートのギターがロックしていて幅広く上手い人ではないけれどすごく印象に残るギターを弾く人だからでしょう。

次の曲はハウリン・ウルフのChange My Wayという1975年にリリースされたアルバムに入っているのですが、録音はほぼ10年前の1964年。リリースされた75年はレコード会社のチェスが倒産寸前で、まあ結局はその直後会社が身売りされてしまうのですが、60年代にウルフが録音した過去のシングルを集めてアルバムにしてなんとか金稼ぎをしょうとチェスはしたんでしょう。でも、収録されている曲はどれも素晴らしくて、ヒューバートのギターもギラギラに冴えてます。
2.Love Me Darlin’/Howlin’ Wolf(guitar:Hubert Sumlin)
いまの曲で多用されていたフレイズの最後の音をキュッと鳴らすのもヒューバートのギターの特徴です。

ハウリン・ウルフはヒューバート・サムリンを自分の息子のように可愛がっていたそうで、ヨーロッパでツアーをする時もイギリスでエリック・クラプトンやスティーヴ・ウィンウッドたちとレコーディングする時も必ずヒューバートを参加させることがウルフの条件だったという。

次の曲Do The Doなんかはイギリスの60年代ブルーズ・ブームでみんなが好きだった曲だったと想います。
リズムもサウンドも曲のムードももちろんウルフの歌もサムリンのギターもみんなロックしてますから。
3.Do The Do/Howlin’ Wolf(guitar:Hubert Sumlin)
いやワイルドな曲ですがやはりウルフの歌とサムリンのギターの中にあるアグレッシヴなテイストがすごいです。

1976年にハウリン・ウルフは65歳で亡くなったのですが、最後のアルバムとなったのがその3年前に録音されたThe Back Door Wolfというアルバム。すでにウルフは病に冒されて身体は弱ってましたが、最後の力を振り絞るように歌っています。その最後までやはりヒューバートはウルフの右腕としてバックをしっかり務めています。
やはりウルフにはヒューバートがいなければということをしっかり焼き付けたウルフのラスト・レコーディングでした。では、そのアルバムから僕が一番好きな曲でCoon On The Moon。Coonというのはスラングで黒人の蔑称でいい言葉ではないですが、黒人が自分たちでわざと自分たちをそう呼ぶときは黒人であることに誇りを持ってるということです。Coon On The Moon/月の黒人。韻を踏んでます。
「子供の頃は南部で育った。中古の服を着て大きな屋敷の裏に住んでた。時代は変ったオレたちも月に行くかも。奴ら白人はオレたちと一緒に遊ばなかったし、オレたちは学校にも行けなかった。年とるまで綿花を摘んでいたもんだ。時代は変ってオレたちも月へ行く。毎日ブーツを履いてたけど新しい靴を履くんだ。ある朝目覚めたら黒人が月にいるかもよ」
4.Coon On The Moon/Howlin’ Wolf(guitar:Hubert Sumlin)
いまの曲が入っているウルフのラストアルバム「The Back Door Wolf」を聴いているとすごいウルフの気迫のようなものが伝わってきます。そして、最後までブレずに自分のブルーズスタイルを貫き通したウルフに感動し、その最後のアルバムでもウルフの歌に的確なギターを弾いているヒューバートにも心打たれます。

実はヒューバート・サムリンはソロ・アルバムを10枚以上出しているのですが、いかんせん歌があまりよくなくて今回もソロ・アルバムをいろいろ聴いてみたのですが・・それで一曲だけ1989年にリリースされた彼のソロ”Heart&Soul”から聴いてみましょうか。ハーモニカにヒューバートのメンフィス時代からの仲間ジェイムズ・コットンが参加しています。この時ヒューバート58歳、コットンはちょっと下で54歳。
ふたりのことを歌った曲でしょうか

5.Old Friends/Hubert Sumlin
ヒューバート・サムリンはボスだったウルフが亡くなってからしばらく仕事がなくて困っていたようで映画「サイドマン」にはその頃の話も出てきます。自分が主役ではなくてそれを支える立場にいる仕事をしている人たちは音楽でなくてもたくさんいます。でも、いまに残るウルフの歴史的なブルーズの名作はこのサムリンなくして絶対に生まれなかったものです。時に一生懸命やったことの賞賛を受けるのはバックやサイドで支えた人たちでなくて、主役の人だけということも多いと思います。でもやはりしっかり見ている人はいて「サイドマン」のような映画ができるんですね。
サムリンが長くウルフのバックを務めたのはウルフが自分のバンドのサイドマンを大切にしたからです。そして、ウルフが亡くなってから晩年サムリンは再評価を受けていろんな賞を受けたり、大きなコンサートにも呼ばれました。なかなかいい晩年だったように思えます。映画の中でドラマーのウィリー・スミスが言うんですよ「貧しくても楽しくないとね」って笑いながら・・素敵な言葉でした。
映画「サイドマン」もし機会があれば是非ご覧下さい。