2019.12.27 ON AIR

今年最後のON AIRは賑やかにニューオリンズのキング・オブ・パーティソング 、ヒューイ・ピアノ・スミスをレコードで!

Rock&Roll Revival/Huey “Piano” Smith (ACE 2021)
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ON AIR LIST
1.Don’t You Just Know It/Bobby Marchan And The Clowns(A-1)
2.High Blood Pressure/Bobby Marchan And The Clowns(A-3)
3.Rockin’ Pneumonia and the Boogie Woogie Flu/The Clowns(B-1)
4.Sea Cruise/Huey Piano Smith And Geri Hall(B-6)
5.Having A Good Time/Bobby Marchan And The Clowns(A-2)

今年もこの番組を聴いていただきありがとうございました。
今年は自分のバンド、ブルーズ・ザ・ブッチャーで新しいアルバム”Blues Before Sunrise”をリリースし、リリース全国ツアーも無事終わりました。
この番組は10月で13年目に突入しました。日本で唯一のブルーズ・ラジオ番組として、ブルーズとそのまわりのいい音楽、他のラジオ局がON AIRしない、ここでしか聴けないいい音楽をまた来年もON AIRします!
それでこの季節、みなさんも忘年会とかパーティも多いと思いますが、今年最後のON AIRはニューオリンズのパーティソングの王様、ヒューイ・ピアノ・スミスのアナログレコードで賑やかに終わりたいと思います。
まずはついついコーラスしたくなるこの曲から
1.Don’t You Just Know It/Bobby Marchan And The Clowns
ヒューイ・ピアノ・スミスは50年代のはじめにアール・キング、スマイリー・ルイス、ギター・スリム、ロイド・プライスといったニューオリンズの名だたるシンガーたちのバックでピアノを弾いていました。50年代半ばになって自分のバンドを作ろうとなったのですが、彼はピアニストで歌があまり旨くなかったのでバンドに歌手を入れて自分の曲を歌わせるというスタイルになりました。その最初のバンド、ザ・クラウンズにヴォーカリストで入ったのがボビー・マーシャン。
いまのも演奏者のクレジットがBobby Marchan And The Clownsになっていますが、Huey Piano Smith And The Clownsになっているものもあります。
いまのは1958年にポップ・チャートのトップ10に入り、R&Bチャートではトップ5まで上がる大ヒットでした。
当時は白人のラジオ局と黒人のラジオ局とON AIRされる曲が違ってたんですが、いまのDon’t You Just Know Itは白人黒人両方のラジオ局で流れたというめちゃウケの曲やったわけです。いま聴いてもこれは売れると思います。
それで実はいまの曲のシングルのもう片面の曲もヒットしまして、シングル両面ヒットということになりました。その曲が次のこれ!

2.High Blood Pressure/Bobby Marchan And The Clowns
歌はさっきと同じボビー・マーシャンですが、途中のヒューイさんのピアノ・ソロもグルーヴしていて素晴らしい。
最初のDon’t You Just Know ItはR&Rのテイストでしたが、いまのHigh Blood Pressureはいかにもニューオリンズ・リズム&ブルーズという曲で好きです。
今日聴いてもらってるアルバムは”Huey Piano Smith’s Rock&Roll Revival!”というタイトルでミシシッピー・ジャクソンにあったACEレコードがブームが去った60年代中頃にヒット曲をコンピレーションしてリリースしたものです。
ヒューイ・ピアノ・スミスがクラウンズを結成して最初にヒットした曲がこの番組でも何度かON AIRしてますが、「ロッキンニューモニア・アンド・ブギウギフリュ」
「オレはロックする肺炎とブギする風邪にかかってしまった」というめちゃくちゃな歌ですが、要するに音楽でハイになってるということでしょう。
3.Rockin’ Pneumonia and the Boogie Woogie Flu/The Clowns

ヒューイ・スミスが所属したエースレコードの社長のジョニー・ヴィンセントがひどい奴で、ヒューイ・スミスが録音した次の歌のテイクに白人のティーンエイジャーだったフランキー・フォードというシンガーの歌をかぶせて無断で発売するという・・・いまなら考えられませんが。まあ、黒人がヒットさせた曲を白人シンガーに歌わせてもっとヒットさせるというやり方はよくありますが(黒人のビッグママが歌ったHound Dogをプレスリーに歌わせるというような)、でも同じテイクの上に違うヴォーカリストかぶせてしまうというのは、ヒューイ・スミスもめちゃ気分悪いです。そんなことがあって社長のヴィンセントとはうまくいかなくなるんですが、嫌なことがあっても彼の信条は「くよくよしない」やったそうで、明るい歌をたくさんつくりました。
これまたすごく印象に残るいい曲でヴォーカルはヒューイ・スミス(おっさん、歌えるやん!)とゲリー・ホールのデュオです
4.Sea Cruise/Huey Piano Smith And Geri Hall
ヒューイ・ピアノ・スミスが活躍した50年代のニューオリンズはR&Bの全盛期で、リトル・リチャードやファッツ・ドミノなどを筆頭にヒューイ・ピアノ・スミス、ロイド・プライス、ギター・スリム、アール・キングなど個性的で才能のあるミュージシャンが次次に出て、録音するスタジオのミュージシャンもこのアルバムにも入っているドラムのアール・パーマー、ベースのフランク・フィールズはじめピアノのアレン・トゥーサン、ジェイムズ・ブーカー、ギターのドクター・ジョン、サックスのリー・アレン、アルヴィン・タイラーなど素晴らしいミュージシャンが揃っていました。本当にいい時代だったと思います。
5.Having A Good Time/Bobby Marchan And The Clowns

今年も大きな病気もなくアルバムを作り、ツアーとライヴをたくさんできて幸せな1年でした。年を重ねてくるともう大きな望みはなく元気でいつまでも自分の音楽をやれていい音楽を聴けたら、それでもういいかなと最近思います。そして、この番組を続けられれば最高です。いい年末年始をお過ごしください。Hey! Hey! The Blues Is Alright!

2019.12.20 ON AIR

永井ホトケ隆が選ぶブルーズスタンダード集 vol.6
テキサスブルーズ

The Original Peacock Recordings/Clarence”Gatemouth”Brown (ROUNDER CD 2039)

The Original Peacock Recordings/Clarence”Gatemouth”Brown (ROUNDER CD 2039)

Blues After Hours/Pee Wee Crayton (CROWN/P-Vine PCD-3028)

Blues After Hours/Pee Wee Crayton (CROWN/P-Vine PCD-3028)

21BLUES GIANTS BLIND LEMON JEFFERSON/Blind Lemon Jefferson (P-Vine PCD-3759)

21BLUES GIANTS BLIND LEMON JEFFERSON/Blind Lemon Jefferson (P-Vine PCD-3759)

ON AIR LIST
1.Okie Dokie Stomp/Clarence Gatemouth Brown
2.She Walks Right In/Clarence Gatemouth Brown
3.Blues After Hours/Pee Wee Clayton
4.Matchbox Blues/Blind Lemon Jefferson
5.See That My Grave Is Kept Clean/Blind Lemon Jefferson

前回、前々回のこの「ブルーズスタンダード集」ではテキサスからウエストコーストへ移っていったT.ボーン・ウォーカー、ジョニー・ギター・ワトソンなどの名曲を取り上げたのですが、
今回はテキサスから離れなかった「ヒューストン・ジャンプブルーズ」のポス、クラレンス・ゲイトマウス・ブラウンから聴いてみましょう。

1910年生まれのT.ボーン・ウォーカーの14才年下がゲイトマウスで、そのゲイトより更に10才くらい年下がアルバート・コリンズ、ジョニー・ギター・ワトソン、そして少し下のジョニー・コープランドと続き、その後に現在も活躍する白人のジミー・ボーン、そして弟スティーヴィー・レイ・ボーンと続きます。テキサスはブルーズギタリストの宝庫。
ゲイトマウスのアグレッシヴなギターが炸裂しているブルーズギター・インストルメンタルの名曲です。
1954年録音
1.Okie Dokie Stomp/Clarence Gatemouth Brown

ギターのフレイズ、グルーヴ感などいま聴いてもまったく古さを感じさせない素晴らしさ。ゲイトマウスは基本的にT.ボーン・ウォーカーの流れを汲むブルーズマンですが、本人はインタビューで「T.ボーンの影響は受けてない」と言い張ってましたが、どう聴いても影響はあります。
いまのOkie Dokie Stomp曲はギター名人のコーネル・デュプリーの1974年のヒットアルバム「Teasin’」でカバーされていますが、デュプリーも同じテキサスの後輩です。
ゲイトマウス・ブラウンは1940年代後半から50年代後半まで約10年間、ピーコック・レコードから怒濤のようなヒューストン・ジャンプ・ブルーズを送りだし、1966年にはテキサスのダラスのテレビ局で放送されていた「The Beat」という番組のハウスバンドのリーダーもやってました。
50年代テキサス、ルイジアナあたりではゲイトマウスの影響を受けたミュージシャンは多かったと思います。

次の曲は僕がブルーヘヴンというバンドを組んでいた時にレパートリーしていた曲なんですが、僕がゲイトマウスの曲を歌うきっかけになったのはそのブルーヘヴンのギタリストであった吾妻光良くんの影響でした。
吾妻くんからはゲイトマウスだけでなくヒューストン・ジャンプ・ブルーズからジャンプ・ブルーズ全体の面白さを教えてもらったように思います。
では、ブルーヘヴンで録音もした曲でゲイトマウスの名曲として取り上げました。
2.She Walks Right In/Clarence Gatemouth Brown
ゲイトマウスは78年のボビー・ブルー・ブランドと一緒に来日して以来、何度か日本に来ました。本人は「オレはブルーズだけでなくアメリカン・ミュージックをやっているのだ」と言って、フィドル(バイオリン)を弾いてカントリー&ウエスタンの類をやるのですが、僕はゲイトマウスのブルーズを聴きたかった。他のアメリカン・ミュージックは他の人から聴きます・・と言いたかった。

テキサス出身のブルーズマンと言えば、ピー・ウィー・クレイトンもそうです。彼のライヴをアメリカと日本で何度か観たのですが、ギターが上手いのか下手なのかわからない不思議な人でした。
失礼ですが「ヘタウマ」という評価も日本のブルーズ・ファンの間にはありました。実際「おっ!すごい!」と思わせるプレイをした後になんかグダグダになったギターソロ弾いたりする人でした。
でも、次の曲は彼が残したブルーズのスタンダードでしょう。
3.Blues After Hours/Pee Wee Clayton
ギター・スタイルは明らかにT.ボーン・ウォーカーの影響です。ゲイトマウスもそうですが、やはりT.ボーンの影響はテキサス、ウエストコーストでは強烈に大きかったんですね。というより全国的ですね。
考えてみれば当時メンフィスにいたB.B.キングもT.ボーン、ロックンロールのキング、チャック・ベリーもT.ボーン、そしてスライドギターで有名なエルモア・ジェイムズがスライドを弾かないでレギュラーで弾いているソロにも明らかにT.ボーンの影響があります。だから、「モダン・ブルーズギターの父」がT.ボーン・ウォーカーだと言われるのは間違いのないことです。
では、そのT.ボーンは誰の影響を受けていたのかという話になりますが、彼が10代の頃のテキサス・ブルーズマンのトップにいて、全国的にも知られていたのがブラインド・レモン・ジェファーソンでした。
もちろんエレキギターが生まれる前の時代、1920年代にテキサスのダラスを中心に活躍したブラインド・レモン・ジェファーソンは当時最も売れたブルーズマンです。
4.Matchbox Blues/Blind Lemon Jefferson
1893年生まれのブラインド・レモンは盲目でした。昔のカントリー・ブルーズマンにブラインドと名前につく人が多いのですが、例えばブラインド・ブレイク、ブラインド・フィリー・マクテル、ブラインド・ウィリー・ジョンソンなどブラインドとつくブルーズマンは盲目です。
一説では、昔の黒人たちが貧しくて妊婦の栄養状態が悪いために盲目の子どもが多く生まれたともいわれています。でも黒人で盲目でも食べて生きていかなければならないので、ギターや楽器を覚えて音楽を生活の糧にしょうとした黒人は多かったのです。ブラインド・レモンはボクサーとしてリングに立ったこともありました・・・盲目なのに・・・。半ば笑い者にされていたのかも知れません。そう思うと切ないです。
でも、1920年代はじめにパラマウントレコードからレコーディングを始めるとすごい人気になり29年までに100曲を録音しています。つまり、黒人ブルーズマンとして彼は最初のレコーディング・スターだったのです。
そのプレイにライトニン・ホプキンスはじめ故郷テキサスの多くのブルーズマンが憧れましたが、T.ボーンは目が見えないブラインド・レモンの手を引いて世話をし、時には一緒にプレイをしてもらったらしいです。
次の曲は「ひとつ頼みがあるんだ。オレの墓をきれいにしておいてくれないか」というもうすぐ死んでしまうという男をテーマにした宗教的な歌。
5.See That My Grave Is Kept Clean/Blind Lemon Jefferson
彼はブルーズだけでなく宗教的なスピリチュアル、ワークソング、バラッドなどいろんなジャンルの音楽を歌いました。そして、そのギターと歌は後続のミュージシャンに大きな影響を残しました。彼は盲目ではありましたが、アメリカ中を旅していろんな街で歌いました。パラマント・レコードがシカゴにあったために途中からその地に住んでいました。そしてシカゴが吹雪きに見舞われた夜、ブラインド・レモンは道がわからなくなったのか道端で凍死しているのが見つかりました。1929年。36才でした。

1920年代のブラインド・レモン・ジェファーソンからT.ボーン・ウォーカーやライトニン・ホプキンスへ、そしてゲイトマウス・ブラウン、アルバート・コリンズ、ジョニー・ギター・ワトソン、ジョニー・コープランド、そしてジミー・ボーン、スティーヴィー・レイボーンへ・・・とテキサスはまさにブルーズギタリストの宝庫です。そして、そこから生まれた名曲、スタンダードも多かったわけです。

2019.12.13 ON AIR

ルイジアナ・ミュージックで必ず出会うケイジャンとザディコの楽しさ

The Best Of Cajun & Zydeco (NOT NOT2CD358)
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ON AIR LIST
1.Jambalaya/Moon Mullican
2.Vinton High Society/Hackberry Ramblers
3.Paper In My Shoe/Boozoo Chavis
4.Squeeze Box Boogie/Clifton Chenier
5.Ay-Tete-Fee/Clifton Chenier
6.La Louisianne/Vin Bruce

前からルイジアナ固有の音楽であるケイジャン・ミュージックとザディコ・ミュージックの特集をやりたいと思っていたら、偶然先日レコード店で”The Best Of Cajun & Zadeco”を見つけたので今日はそれを聴きながらケイジャンとザディコについて話してみたいと思います。
ニューオリンズの音楽、近年亡くなったアレン・トゥーサンやアート・ネヴィル、ドクター・ジョンはじめニューオリンズの音楽を好きになると自然と同じルイジアナ州のケイジャン・ミュージックとザディコ・ミュージックに出会うことになります。

まずケイジャンというのはライターの文屋章さんたちが編纂した「ニューオリンズ・ミュージック・ガイドブック」によると、「カナダのアーケイディア地方に済んでいたフランスの移民たちが、1700年代後半にルイジアナの南西部に移り住んで原住民のネイティヴ・インディアンとの混血が進み、インディアンとアーケイディアが合わさったということで「ケイジャン」と呼ばれるようになったそうだ。それでルイジアナにはケイジャン料理とかケイジャン音楽というものが生まれた。
フランス系ですから白人の音楽でアコーディオンとフィドル(バイオリン)が必ず入っていて、そこにギターやピアノなんかも入ることがあります
まずケイジャン・ミュージックで有名なこの曲を聴いてみましょうか。
1.Jambalaya/Moon Mullican
まあなんとものんびり感たっぷりの曲で、同じ白人音楽のカントリー&ウエスタンと同じようなテイストを感じますね。そのカントリー&ウエスタンに対しても僕は知識が薄くて、一度どっぷり聴かなくてはと思っているのですが・・・。
タイトルのジャンバラヤというのはご存知の方も多いと思いますが、ケイジャン料理のひとつで香辛料が効いたお米の煮込み料理ですが、ニューオリンズへ行ったときもケイジャン料理はよく食べたのですが、ケイジャン・ミュージックはあまり進んで聴かなかったんですね。
では、ケイジャン・ミュージックで最も有名なバンドのひとつ「ハックルベリー・ランブラーズ」を聴いてみましょうか。1933年に結成されてフィドル、ギター、ベース、アコーディオンと言う編成でフランス語で歌っていたのですが、途中から英語でも歌うようになったそうです。でも、曲のタイトルやミュージシャンの名前などで読めないものがあり、よくよく見るとフランス語というのがケイジャンにはよくあります。やはり元々フランス人の末裔ですからフランス特有のプライドはあるのかも知れません。
2.Vinton High Society/Hackberry Ramblers
いまのハックルベリー・ランブラーズというバンドは有名なバンドでこのアルバムにも4曲収録されています。2000年にもアルバムをリリースしてますが、まだバンドが継続しているかどうかはわかりません。

では、このアルバムのもうひとつの音楽ザディコを聴いてみましょうか。ザディコはまあまあ得意分野です。と言うのもざっくり言うといまケイジャン・ミュージックにアフリカ黒人系のR&Bのテイストを混ぜたものです。だからケイジャンよりビートが強くてグルーヴ感が黒人音楽系です。サウスルイジアナやイーストテキサスのフランス文化圏で育ったアフリカ系黒人たちが作った音楽がザディコ
では、そのザディコのよく知られた曲のひとつでザディコ・ミュージックの創始者のひとりブーズー・チェイヴィズが1954年に録音してヒットした曲

3.Paper In My Shoe/Boozoo Chavis
さっきのケイジャンの曲に比べると急にブルーズ・テイストというかR&Bテイストが出てきて、リズムも強くなってます。一曲目のジャンバラヤと比べると歌がまず違いますよね。まあ、人種による表現の違いがはっきり出てますね。
では、ザディコと言えば「キング・オブ・ザディコ」と呼ばれたクリフトン・シェニエ。
彼はトラッドなザディコにブルーズやニューオリンズのR&Bを融合させ、すごくダンサブルな音楽を作ったパイオニアでアコーディオン・プレイヤーです。
そもそも僕の時代の人たちはアコーディオンは歌のバックの楽器。子どもの頃に横森良三さんというアコーディオン奏者の有名な人がいて、その人が歌のコンテストなんかで歌のバックで弾いていた印象しかない。それをブルーズのソロ楽器として聴いたときにはびっくりしました。でも、なんともいなたカッコいいんですよ。
4.Squeeze Box Boogie/Clifton Chenier
ザディコ音楽はダンスナンバーが多いのですが、サウンドが厚いアコーディオンという楽器をアグレッシヴなリズム楽器的に使っているところが実にカッコいいです。他にもロッキン・ドプシー、バックフィート・ザディコとか女性のクイーン・アイダとか有名どころがいます。
もう一曲聴いてみますか、クリフトン・シェニエ。

5.Ay-Tete-Fee/Clifton Chenier
最後はケイジャン・ミュージックのヴィン・ブルースを聴いてみましょう。50年代にコロンビアレコードからコンスタントにリリースしていた人で、かなり売れていたようでナッシュヴィルにあるカントリー&ウエスタン有名なラジオ番組「the Grand Ole Opry」にも出ている。彼はスムース&ジェントル・ヴォイスと呼ばれる声をしているんですが、カウボーイ映画のワン・シーンで流れるような歌を聴いてください。
6.La Louisianne/Vin Bruce
ヴィン・ブルースは1932年生まれで今年87才・・・もう歌ってないかな。でも、いまも健在なのでルイジアナあたりで活動しているかもしれません。

白人のケイジャン・ミュージックと黒人のザディコは互いに影響し合いながらルイジアナのローカル・ミュージックとしていまも親しまれています。ブルーズとソウルのような黒人音楽もそうですが、白人の音楽の影響は受けているし、白人の方も当然黒人の音楽の影響を受けて現在まで着ているわけで、そう考えると音楽の世界の中では差別はないんですがね。
今日はNOTレコードからリリースされているThe Best Of Cajun & Zydecoを聴いてみました。

2019.12.06 ON AIR

期待される黒人女性ブルーズ・シンガー、クリスタル・トーマス

Don’t Worry About The Blues/Crystal Thomas (SPACE 021)
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On Air List
1.I’m A Fool For You Baby/Crystal Thomas
2.Can’t You See What You’re Doing To Me/Crystal Thomas
3.The Blues Ain’t Noting But Some Pain/Crystal Thomas
4.I Don’t Worry Myself/Crystal Thomas

 

今日は日本のブルーズ・ファンの間で最近ちょっと評判になっている女性ブルーズシンガー、クリスタル・トーマス
現在テキサス、ルイジアあたりで活動を続けている女性ブルーズシンガー。
1977年の生まれというから43才です。
以前この番組でテキサスの現在活躍する女性ブルーズシンガーたちを集めた「ブラッデスト・サキソフォンfeat.テキサス・ブルーズ・レイディズ」というアルバムを紹介した時に僕もイチオシで彼女の歌をON AIRしました。
そのクリスタル・トーマスのソロ・アルバムです。過去に一枚自主制作でアルバムを発表していますが、これが初ソロと言ってもいいと思います。アルバム・タイトルが”Don’t Worry About The Blues” 「ブルーズを心配しないで」ボーナストラックを含めて15曲収録されています
まずは一曲
1.I’m A Fool For You Baby/Crystal Thomas
タイトな演奏をバックにクリスタルが持ち前のいい歌声で気持ちのいい唄を歌ってます。
彼女の声は厚みのある豊かな声で、しかもよく通るんですね。ブルーズを歌う女性にありがちなガナったり、シャウトを多用するようなところがなくてナチュラルでいいです。
途中のギターソロはジョニー・モーラー、若い頃からテキサス、オースティンのブルーズクラブ「アントンズ」に出入りしてた叩き上げで、ファビュラス・サンダーバードに在籍したこともあり、自らのアルバムもリリースしているギタリスト。ドラムはジョニーの弟のジェイソン・モーラー。
このアルバムの売りはクリスタルの歌はもちろんですが、ベースにチャック・レイニーとキーボードとギターでラッキー・ピーターソンが参加しているところなんですが、そのラッキー・ピーターソンのオルガンとチャック・レイニーのベースがディープなファンク・テイストを作っているのが次の曲。
2.Can’t You See What You’re Doing To Me/Crystal Thomas
いまのは元々アルバート・キングの曲で「オマエ、オレに何してんのかわかってんのか。オレはふたつも仕事して金全部家に入れてる。そやのにオマエはオレと別れて元のさやに収まろうとしてのやぞ」と怒ってる歌ですが、クリスタルさんはアルバートほどドスが効いてなくてまだ可愛い。
クリスタルさんは43才だそうで、どういう経緯でブルーズを歌うようになったのか知らないのですが、南部にはまだまだブルーズを歌っている人はたくさんいます。でも、なかなかメイン・ストリームに出てくる人が少ないです。
スローの曲ではジャニス・ジョップリンのOne Good Manが収録されているのですが、それよりもいまから聴いてもらうブルーズ・バラード的なものの方が彼女に合っている気がします。
3.The Blues Ain’t Noting But Some Pain/Crystal Thomas

今回のアルバムの選曲をどういう経緯でやったのかわからないのですが、彼女自身のオリジナルが二曲、マディ・ウォーターズで有名なMojo Workinにさっき聴いたアルバート・キングやジュニア・パーカーのブルーズに、いま聴いてもらったのがあまり知られていないオルガン・プレイヤーのシャーリー・スコットの曲と、普段彼女が歌っている曲を歌ったのか、プロデュースサイドが用意したのかわからないのですが、全体のサウンドのテイストはファンク仕立てです。
昨年、日本のジャンプ・バンド、ブラッデスト・サキソフォンのテキサス録音盤”BLOODEST SAXOPHONE feat. TEXAS BLUES LADIES / I JUST WANT TOMAKE LOVE TO YOU”にテキサスの女性シンガーの一人として参加して、そのアルバムもこの番組でOn Airしました。確かに他の参加シンガーにはない独自の個性があり僕もいいなと思いました。だから、彼女への期待はすごく大きいのですが、以前シメキア・コープランドが登場した時に僕はすごく期待したのですが、シメキアもいまひとついいプロデュースのアルバムがないままいまに至っています。やはりプロデュースが大切です。
4.I Don’t Worry Myself/Crystal Thomas

いいアルバムですが、僕は今回の彼女のこのアルバムにすごく満足したわけではなく、もうひとつガツンとくるものが欲しい気がします。声もいいし、ナチュラルな感じも好きのですが、全部聴いてしまうとやや平坦で何か物足りないものを感じます。例えばジャニスのカバーを歌っていますが、ジャニスは歌が上手いとか下手とかの問題ではない、他の歌手にはない圧倒的な、有り余る気持ちのある歌を残しました。たぶん僕が感じているその物足りなさはそういうことではないかと思うのですが。あふれる気持ちが感じられたらええかなと。でも、また違うタイプのアルバムをつくれば彼女の個性がもっと出てくるのかも知れません。プロデュースの問題かなぁ・・・。偉そうにすんまへん。