黒人音楽の殿堂アポロ劇場を描いた名著「黒人ばかりのアポロ劇場」の再版にちなんでJames Brown/Live At The Apollo を聴く
James Brown/Live At The Apollo
ON AIR LIST
1.MC/Introduction
2.Think/James Brown
3.Cold Sweat/James Brown(3:30cut out)
4.Kansas City/James Brown
5.Bring It Up/James Brown
ニューヨークのハーレムにある黒人音楽の有名老舗劇場「アポロ・シアター」
そのアポロ・シアターで繰り広げられたライヴを幼い頃から見ていたアポロの経営者の息子、ジャック・シフマンが書いた本”The Story Of Harlem’s Apollo Theatre”の翻訳本が新たに改訂されて出版されました。
タイトルは「黒人ばかりのアポロ劇場」翻訳されたのは武市好古さん。実は1973年に初版本が出版されてそれも持っているのですが、今回買い直して読んで見たら73年の時とは違う思いが湧いてきました。
とにかく「アポロ劇場」は黒人ミュージシャンにとって格別な場所でここで観客にウケなければダメという、エンターテイメントのランクが高い劇場で30年代からブルーズ、ジャズ、R&B、ソウル、ファンクといった音楽だけでなくコメディやミュージカル、ダンス、お笑いといった黒人エンターテイメントの殿堂です。ここで録音された素晴らしいライヴ・アルバムもいくつかありますが、今日は私が初めてアポロ劇場を知ったアルバムでもあり、聴いてもらうジェイムズ・ブラウンの素晴らしさを知ったアルバムでもある。ジェイムズ・ブラウンの名盤”James Brown/Live At The Apollo”を聴きながらアポロの話をしたいと思います。
まずは一曲
司会のMCから曲に入って行くライヴ感も楽しんでください。1967年6月25日のニューヨーク、ハーレムのアポロ・シアターへ
1.MC/Introduction
2.Think/James Brown
J.B.と一緒に歌っていた女性シンガーはマーヴァ・ホイットニー。彼女の強烈な歌声も印象に残りますが、J.Bの歌とバックのグルーヴがタイトに繰り出すスピード感がすごいです。
僕は初めてこのアルバムを聴いた時まだロックを聴いていたんですが、ロックにはないこのタイトなリズムや気持ちのいいグルーヴ感に虜になりました。ほぼ毎日このアルバムを聴いてました。
そして、そのあとにブルーズにハマってどんどんと黒人音楽の世界に入って行きました。だからこのアルバムは自分の記念碑的アルバムです。
J.B.は「ファンクの王様」ですが、そのJ.Bのファンクが完全に確立された曲が次の”Cold Sweat”
これを初めて聴いた時は自然と体動いて、リズムの渦の中に入ってる気持ち良さをすごく感じました。
3.Cold Sweat/James Brown(3:30cut out)
もうJBのあまりのカッコよさに今でもホレボレします。今でもこんなすごい演奏できるミュージシャンってそんなにいないと思います。
1962年にもJ.Bはアポロでのライヴ・アルバムをリリースしていて。これが2枚目です。
アポロの話をします。まずはニューヨークのハーレムという黒人たちが住む地域があり、そこではアポロができる前からベッシー・スミス、キャブ・キャロウェイ、ルイ・アームストロングなど黒人一流ミュージシャンたちが活躍し夜な夜な素晴らしいライヴが繰り広げられていました。アポロができる前から「コットン・クラブ」、ラファイエット劇場とかハーレム・オペラハウスなどクラブ、劇場がたくさんありましたが、時代の流れや景気などでなかなか長く続けるのは難しいことだったようです。そんな中、1930年代に開かれたアポロは黒人のための劇場で同胞の黒人観客にウケるかウケないか、ここでは観客の厳しい目がありました。そして有名なアマチュア・コンテストのイベント「アマチュア・ナイト」からも有名ミュージシャンが生まれている。エラ・フィッツジェラルド、ルース・ブラウン、グラディス・ナイト、ジャクソン5などアポロのアマチュア・ナイトに出演しています。
この本「黒人ばかりのアポロ劇場」にも書かれていますが、どんな有名なミュージシャンでもアポロのステージに上がる時はすごく緊張するといいます。それはやはり同胞に受け入れられるかどうかということが、それからの活動の源にもなるからでしょう。
次はブルーズのKansas Cityのカバーですが、J.B流のリズムとサウンドのアレンジがめちゃクールなかっこよさ。
4.Kansas City/James Brown
実は僕は三回アポロに行ってますが中に入ったことがないんです。70年代中頃に二回行ったんですが、その頃は経営が上手くいってなかったのかアポロがずっと閉められていた時期で、そのあと再開されて90年代にニューヨークにレコーディングに行った時も訪ねましたがその時は休みの日で、悔しかったのはその3日後がB.B.キングのライヴだったという・・・。
「黒人ばかりのアポロ劇場」にはステージからは見えない舞台裏の話(ギャラのことやステージ前のミュージシャンの姿など)が生き生きと書かれています。
ビル・コスビーはじめコメディアンたちのイタズラや辛辣な話も出てきます。ぜひ、ブルーズはじめ黒人音楽ファンには読んでもらいたい一冊です。
ではもう一曲、J.Bのクールなファンクを。
5.Bring It Up/James Brown
実はJBは4年前の1963年にアポロでライヴレコーディンしたアルバムも素晴らしいです。J.Bはいい演奏ができるアポロが好きだったんでしょう。