ブルーズ・ギター名人、アール・フッカーの名演が10インチレコードでリリース
Calling All Blues/Earl Hooker (Boss Card BS10-01)
ON AIR LIST
1.Blues In D Natural/Earl Hooker
2.Universal Rock/ Earl Hooker
3.Blue Guitar/Earl Hooker
4.The Leading Brand/Earl Hooker
5.Calling All Blues Earl Hooker
先週は新しいレーベル”Boss Card”から10インチレコードでリリースされたシカゴ・ブルーズマン、バスター・ベントンの”Spider In My Stew”を聞きましたが、今週はそのBoss Cardレーベルからの第2弾ギター名人アール・フッカーのアナログ10インチ盤”Calling All Blues”を聞きます。
まずは簡単なアール・フッカーのバイオから。1929年ミシシッピ州クラークディルに生まれですが1才でシカゴに来ているので完全にシカゴ育ちです。歌はほとんど歌わない人でしたが歌っているような素晴らしいギターインスト曲を発表し、マディ・ウォーターズはじめ多数の録音に参加するスタジオ・ミュージシャンでもありました。特に普通のレギュラー・チューニングで弾くスライド・ギターはもう神業と言ってよく、ウエイン・ベネット、アルバート・コリンズ、バディ・ガイ、オーティス・ラッシュなど同業ギタリストに尊敬されていました。
ではまず彼を代表するインストルメンタルの曲で70年代初めにイギリスのレッド・ライトニンというインディーズ・レーベルから出ていたアルバムのタイトルがこの曲の曲名でした。今日はそのオリジナル、チーフというレーベルから1960年に出されたシングルのアナログ10インチ盤での復刻です。
華麗でなめらかでもアグレッシヴなスライドギターの妙技を堪能してください。
1.Blues In D Natural/Earl Hooker
途中のオルガンはジョニー・ウォーカーというオルガン・プレイヤーなのですが、そのオルガンの音色とアール・フッカーのスライドギターの音色が抜群にマッチしているいいサウンドです。そして時にはスライドではなく普通の押し弦でも弾きます。その切り替えが見事というかいつ切り替えたのかわからない妙技でスライドギターをやる時に出がちな雑音もありません。
では次のアップテンポのダンス・ナンバー。グルーヴするバックのリズムがフッカーの見事なギター・ブレイを支えていますが、ベースがジャック・マイヤーズ、ドラムがフレッド・ビロウというシカゴ・モダンの黄金のコンビです。
2.Universal Rock/ Earl Hooker
バックが2ビートのリズムをまったくブレずにグルーヴを作り、そこにまた超リズムのいいフッカーのギターがスピード感を出しながら暴れまくっています。
ちなみにジョン・リー・フッカーとは従兄弟同士ですが、その芸風のあまりの違いに笑います。ジョン・リーはその声の存在感がブルーズ界で1,2を争うくらい素晴らしいものですが、ギターは色々弾けるわけではなく独自のブギとスローの2パターンくらいです。しかしそのリズム特にブギのグルーヴはワン&オンリーで、ブルーズ史に残るものです。しかし、その従兄弟のアール・フッカーはギター名人と呼ばれるこういう芸風です。
次の曲はアール・フッカーがスライド・ギターで影響を受けたロバート・ナイトホーク調のスライド・ギターで、オルガンが作る分厚いサウンドの中から重厚なスライド・ギターが聞こえて来ます。これもアール・フッカーを代表する曲。
3.Blue Guitar/Earl Hooker
実はこのインスト曲に歌詞をつけたマディ・ウォーターズの歌をかぶせたのが有名な”You Shook Me”というレッド・ツェッペリンもカバーした曲です。ちなみにこのアルバムの解説で吾妻光良くんがツェッペリンのジミー・ペイジが6弦ギターと12弦ギターが一つになったダブル・ネックギターを使っていたのはこのアール・フッカーの影響ではないかと書いています。
今日聞いてもらっているのはアナログレコードの10インチという大きさのものでリリースされたのですが、放送の都合上デジタルに変換して放送していますので、興味のある方はぜひアナログ10インチ盤で聞いてください。抜群に音がいい、つまり迫力がCDとは比べものにならないほどです。昔ローリング・ストーンズのキース・リチャーズはCD,MD、カセットテープ、レコードの中でどの音が好きですかと問われて「レコード」といい、その理由を「自分がスタジオで録音した時の音に一番近いのがレコードだから」と答えていました。
ぼくもそう思います。スタジオで演奏したリアルな音に近い、つまりミュージシャンが出したい音を最もそのまま再現しているのがアナログレコードだと思います。
ただし、前も言いましたが音の良し悪しはその人の感覚ですからデジタルの音がいいと感じる人もたくさんいると思います。
4.The Leading Brand/Earl Hooker
ブルーズですがとてもメロディアスなテーマを作り歌えるような覚えやすいメロディというところがこの「ギターを歌わせるギタリスト」アール・フッカーの真骨頂と言えます。
5.Calling All Blues /Earl Hooker
このオルガンの重厚な音をバックにしたディープなサウンドの中から聞こえてくるギターやハーモニカの音で作られる独特のアンサンブルもアール・フッカーのセンスだと思います。
普通のレギュラー・チューニングによるスライドギターの教科書のようなアール・フッカーの妙技を今日は聞いてもらいました。もしこのアルバムに興味を持った方がいたら限定生産なので早めにゲットしてください。