2024.06.28 ON AIR

ブルーズ・ギター名人、アール・フッカーの名演が10インチレコードでリリース

Calling All Blues/Earl Hooker (Boss Card BS10-01)

ON AIR LIST
1.Blues In D Natural/Earl Hooker
2.Universal Rock/ Earl Hooker
3.Blue Guitar/Earl Hooker
4.The Leading Brand/Earl Hooker
5.Calling All Blues Earl Hooker

先週は新しいレーベル”Boss Card”から10インチレコードでリリースされたシカゴ・ブルーズマン、バスター・ベントンの”Spider In My Stew”を聞きましたが、今週はそのBoss Cardレーベルからの第2弾ギター名人アール・フッカーのアナログ10インチ盤”Calling All Blues”を聞きます。
まずは簡単なアール・フッカーのバイオから。1929年ミシシッピ州クラークディルに生まれですが1才でシカゴに来ているので完全にシカゴ育ちです。歌はほとんど歌わない人でしたが歌っているような素晴らしいギターインスト曲を発表し、マディ・ウォーターズはじめ多数の録音に参加するスタジオ・ミュージシャンでもありました。特に普通のレギュラー・チューニングで弾くスライド・ギターはもう神業と言ってよく、ウエイン・ベネット、アルバート・コリンズ、バディ・ガイ、オーティス・ラッシュなど同業ギタリストに尊敬されていました。
ではまず彼を代表するインストルメンタルの曲で70年代初めにイギリスのレッド・ライトニンというインディーズ・レーベルから出ていたアルバムのタイトルがこの曲の曲名でした。今日はそのオリジナル、チーフというレーベルから1960年に出されたシングルのアナログ10インチ盤での復刻です。
華麗でなめらかでもアグレッシヴなスライドギターの妙技を堪能してください。

1.Blues In D Natural/Earl Hooker

途中のオルガンはジョニー・ウォーカーというオルガン・プレイヤーなのですが、そのオルガンの音色とアール・フッカーのスライドギターの音色が抜群にマッチしているいいサウンドです。そして時にはスライドではなく普通の押し弦でも弾きます。その切り替えが見事というかいつ切り替えたのかわからない妙技でスライドギターをやる時に出がちな雑音もありません。
では次のアップテンポのダンス・ナンバー。グルーヴするバックのリズムがフッカーの見事なギター・ブレイを支えていますが、ベースがジャック・マイヤーズ、ドラムがフレッド・ビロウというシカゴ・モダンの黄金のコンビです。

2.Universal Rock/ Earl Hooker

バックが2ビートのリズムをまったくブレずにグルーヴを作り、そこにまた超リズムのいいフッカーのギターがスピード感を出しながら暴れまくっています。
ちなみにジョン・リー・フッカーとは従兄弟同士ですが、その芸風のあまりの違いに笑います。ジョン・リーはその声の存在感がブルーズ界で1,2を争うくらい素晴らしいものですが、ギターは色々弾けるわけではなく独自のブギとスローの2パターンくらいです。しかしそのリズム特にブギのグルーヴはワン&オンリーで、ブルーズ史に残るものです。しかし、その従兄弟のアール・フッカーはギター名人と呼ばれるこういう芸風です。
次の曲はアール・フッカーがスライド・ギターで影響を受けたロバート・ナイトホーク調のスライド・ギターで、オルガンが作る分厚いサウンドの中から重厚なスライド・ギターが聞こえて来ます。これもアール・フッカーを代表する曲。

3.Blue Guitar/Earl Hooker

実はこのインスト曲に歌詞をつけたマディ・ウォーターズの歌をかぶせたのが有名な”You Shook Me”というレッド・ツェッペリンもカバーした曲です。ちなみにこのアルバムの解説で吾妻光良くんがツェッペリンのジミー・ペイジが6弦ギターと12弦ギターが一つになったダブル・ネックギターを使っていたのはこのアール・フッカーの影響ではないかと書いています。
今日聞いてもらっているのはアナログレコードの10インチという大きさのものでリリースされたのですが、放送の都合上デジタルに変換して放送していますので、興味のある方はぜひアナログ10インチ盤で聞いてください。抜群に音がいい、つまり迫力がCDとは比べものにならないほどです。昔ローリング・ストーンズのキース・リチャーズはCD,MD、カセットテープ、レコードの中でどの音が好きですかと問われて「レコード」といい、その理由を「自分がスタジオで録音した時の音に一番近いのがレコードだから」と答えていました。
ぼくもそう思います。スタジオで演奏したリアルな音に近い、つまりミュージシャンが出したい音を最もそのまま再現しているのがアナログレコードだと思います。
ただし、前も言いましたが音の良し悪しはその人の感覚ですからデジタルの音がいいと感じる人もたくさんいると思います。

4.The Leading Brand/Earl Hooker

ブルーズですがとてもメロディアスなテーマを作り歌えるような覚えやすいメロディというところがこの「ギターを歌わせるギタリスト」アール・フッカーの真骨頂と言えます。

5.Calling All Blues /Earl Hooker

このオルガンの重厚な音をバックにしたディープなサウンドの中から聞こえてくるギターやハーモニカの音で作られる独特のアンサンブルもアール・フッカーのセンスだと思います。
普通のレギュラー・チューニングによるスライドギターの教科書のようなアール・フッカーの妙技を今日は聞いてもらいました。もしこのアルバムに興味を持った方がいたら限定生産なので早めにゲットしてください。

2024.06.21 ON AIR

新しいレーベル”ボス・カード”からの最初のリリースはむせ返るような濃厚ブルーズ10インチ

Spider In My Stew/Buster Benton (Boss Card BS10-02)

ON AIR LIST
1.Spider In My Stew/Buster Benton
2.The Foot Ball/Buster Benton
3.This Is Th Reason/Buster Benton
4.Dangerous Woman/Buster Benton
5.Good To The Last Drop/Buster Benton

5月29日にボス・カードという新しいレーベルからアナログ10インチ6曲入りでリリースされたのが、今日紹介するシカゴのブルーズマン、バスター・ベントンのアルバム『Spider In My Stew』
このアナログ10インチレコードですが持ってみると重いんですよ。重いレコードは音がいいと言いますがその通りの分厚い音です。

まずバスター・ベントンを紹介すると1932年にアーカンソー州生まれ、1996年に亡くなっています。享年64才です。59年頃にアーカンソーからシカゴに出てきて。60年代にシカゴでバンドを結成してローカルのマイナー・レーベルでレコーデングをし始めましたが、これと言ったヒットもないまま70年になってしまいます。その売れなかった時代はしばらく自動車の整備工として働いていたこともあるそうです。それが1971年に「ウィリー・ディクソン・ブルーズ・オールスターズ」に参加し、そのバンドをバックにウィリー・ディクソンのプロデュースで録音したのが今から聞いてもらう1973年録音の『Spider In My Stew』
「シチューの中に蜘蛛が入ってる。俺はなんて不幸なんだ。俺はお前のことを信じているのにベイビーなにが起こったんだ。誰が俺のシチューに蜘蛛を入れたのか。ベイビーなんかおかしいな。飲み物を飲むのも怖いし、何か一口食べるのも怖い。女たちが怖くて夜も眠れやしない」

1.Spider In My Stew/Buster Benton

いやすごいブルーズです。もう熱々でシチューが煮えたぎってる感じです。でも、そこに蜘蛛が入ってる。誰が入れたんやろと疑心暗鬼になり最初は嫁さんかなと思ったんですが、最後の歌詞のGot me scared of all my women, I can’t even sleep at night(女たちが怖くて夜も眠れやしない)というくだりで他にも女おるんやんかということがわかります。
この曲がリリースされた73年頃はあまりブルーズ・シーン全体がパッとしない時期でしたが、この曲はリアルな、パワフルなブルーズとしてすごく評判になりました。
バックがハーモニカにキャリー・ベル、ギターはマイティ・ジョー・ヤング、ピアノにラファエット・リーク、ドラムにビリー・ダヴェンポートと当時のシカゴの精鋭たちです。
次はファンク・テイストの語りの入ったダンスナンバーです。

2.The Foot Ball/Buster Benton

今回このアナログ10インチのアルバムを紹介している理由のひとつはめちゃ音がいいからです。じつは昔リリースされた同じ曲のLP盤を持ってるのですが比べものにならないほど今回の10インチは音が分厚いです。ただ10インチなので全部で6曲です。でもブルーズという音楽が持つ猥雑さとかの生活の匂いやストリートの匂いが音から漂ってくる感じがします。まあ、今日聞いてもらってるのはON AIRするために私がアナログからデジタルに落としているのでそのあたりの音のリアルさは是非アルバムをゲットして感じてもらいたいです。次はバスター・ベントンの歌手としての良さが出ている曲です。こういうソウル・バラードも歌える歌手です。

3.This Is Th Reason/Buster Benton

次は再びヘヴィ・ブルーズです。ベントンの歌を中心としてバンド全体のサウンドとグルーヴがこれぞブルーズという感じで迫ってきます。ぜひ大きな音で聞いてください。歌のバックでオブリガードのギターを弾いているのはマイティ・ジョー・ヤング。そう、マジック・サムの録音にも参加しているギターの名手です。やはりすごく存在感あります。バスター・ベントンまだ41才当時、シカゴ・ブルーズの中堅ブルーズマンとしてまだまだ上を狙っていたんでしょう。

4.Dangerous Woman/Buster Benton

キャリー・ベルのハーモニカがいいいですね。
糖尿病を患っていたベントンは1993年に病氣のため右足を切断するという不幸に見舞われましたが、実はその10年前にもう片方の足の一部を失ってました。満身創痍な状態でしたが、死ぬまでブルーズの演奏はやめませんでした。
決してビッグネームのブルーズマンではなかったけれど、今聞いてもブルーズにとって大切なリアル感が彼の歌にはあります。

5.Good To The Last Drop/Buster Benton

実は今回このボス・カードというレーベルを立ち上げ、私が今ブルーズ・ザ・ブッチャーでアルバムをリリースしているP-Vine レコードの創始者である日暮泰文さんが5/30に亡くなられました。私は70年代最初からお付き合いがあり、そんなに頻繁にお会いしていたわけではないですが、日本にブルーズという音楽を紹介しブルーズという音楽が持つ意味を雑誌や書籍で表現されてきた大切な人でした。本当に残念です。日暮さんのご冥福をお祈りいたします。
来週はこのボス・レーベルの第二弾スライド・ギターの名人、アール・フッカーをON AIRします。

2024.06.14 ON AIR

ブルーズと共に歩いた故小出斉くんを悼む

Walking Alone With The Blues/Hitoshi Koide(SouthSide Records)

ON AIR LIST
1.You Don’t Have To Go/Hitoshi Koide
2.The Moon Is Rising/Hitoshi Koide
3.If I Get Lucky /Hitoshi Koide
4.Broken Heart/Hitoshi Koide

ブルーズに興味があり音楽雑誌を読んだり、ブルーズのサイトを訪ねたり、またブルーズのアルバムを持ってる人なら小出斉という名前を見たことがあるはずです。またブルーズバンド、ローラー・コースターやハーモニカ道場などライヴの場で小出くんの演奏を聴いたことがある人も多いと思います。彼はブルーズ・プレイヤー、ギタリストでありながら、膨大で正確なデータを盛り込んだ「ブルース・CDガイド・ブック」やブルーズの歌詞を説明した「意味も知らずにブルースを歌うな」などブルーズ関連の書籍を残したライターでもありました。また多数のブルーズアルバムのライナーノーツも書いてきました。その小出くんが今年の1/28に66歳で亡くなってしまいました。改めてご冥福を祈ります。

小出くんと知り合ったのは僕が70年代後半からやっていたブルー・ヘヴンというバンドで、それまでのギターの吾妻光良くんがバンドを辞める際に代わりに紹介してくれたのが小出くんでした。吾妻くんは小出くんとは同じ早稲田大学の軽音楽同好会の先輩後輩という間柄でした。「後輩でちゃんとブルーズを弾ける奴を紹介します」と吾妻くんが言って連れてきたのが小出くんでした。最初はあまり喋らなかった彼は「寒い新潟生まれなので口が重い」と笑いながら自分で言っていました。その頃から彼がブルーズのレコードをたくさんコレクトしていることは有名でした。そんな彼が当時好きなのはダウンホームなシカゴ・ブルーズから戦前カントリー・ブルーズでした。

今日は昨年リリースされた小出くんの弾き語りソロアルバム”Walking Alone With The Blues”を聴きながら彼を追悼したいと思います。まず一曲。これもシカゴ・ダウンホームブルーズのビッグスター、ジミー・リードの有名曲

1.You Don’t Have To Go/Hitoshi Koide

この小出くんのソロ弾き語りアルバム”Walking Alone With The Blues”は昨年5/8にリリースされ、小出くんはひとりでアルバム・リリースツアーをやっていました。頑張ってるなと思ってたのですが・・残念です。

振り返るとブルー・ヘヴンというバンドを一緒にやっていた時、車でツアーすると車中で聴くテープをメンバーみんなが持ってきたものです。その時小出くんが持ってきて私が初めて聴いたのがロバート・ナイト・ホークでした。スライド・ギターの名手でブルーズをたっぶり含んだ重い、でも輝きのあるギターの音色がすごく印象に残り「小出、これ誰?」と聴くと「ロバート・ナイトホークです」と言うから「ナイトホーク・・夜鷹か」と笑った想い出があります。
スライドギターはやってませんが、そのナイトホークの曲です

2.The Moon Is Rising/Hitoshi Koide

ギターもいいんですが、小出くんの歌がすごくいいです。
ロバート・ナイトホークはじめ、エディ・テイラー、ジミー・ロジャースなどダウンホーム・ブルーズマンの魅力を僕に教えてくれたのが小出くんでした。70年代後期、モダン・ブルーズ・ギターに傾倒する日本人ギタリストが多い中で小出くんはしっかりしたウォーキン・ベースを弾き、僕らが「ラジオ・ヴォイス」と呼んでいたちょっとくぐもった声でダウンホームなブルーズを歌っていました。
ブルーヘヴンに参加してもらった時、自分もバンドも方向がロッキン・ブルーズに向いていてダウンホーム・ブルーズが好きな小出くんには辛い思いをさせたかなとずっと思っていた。その話をしないまま彼は逝ってしまいました。
次の曲はアーサー・クルーダップがオリジナルですが、小出くんのこのアレンジは自分で考えたものでしようか。

3.If I Get Lucky /Hitoshi Koide

ライターとしての小出くんにもその人柄が出ていて必ずそのアルバムのいいところ、そのミュージシャンのいいところを見つけて書いていました。そして何より彼がライナーノーツや本を書くときに聞くのはもちろん、ブルーズのことを調べる量が半端なくていつも読んでいて信用できる文でした。彼がいなくなってブルーズのライナーや文をこれから誰が書いていくのだろうかと思います。
文も音楽にもやはりその人の人柄が出るもので小出くんの優しい人柄がこのアルバムにも溢れています。時折、アグレッシヴになる時もあるのですがそれは小出くん自身が自分を変えようとした気持ちの表れのように感じます。
そして66年の人生の中でミュージシャン小出斉として最も嬉しかったのは、恐らく敬愛する偉大なブルーズマン、ロバート・Jr.ロックウッドと共演し録音できたことだったのではないでしょうか。そのロックウッドの曲をこのアルバムでも録音しています。ミュージシャンとライターという二つの看板を小出くんはこれからどうしようとしていたのか・・・本当に日本のブルース・シーンに大切な人を失くしてしまいました。
最後になってしまいましたが、このアルバムで私がいちばん好きになった曲です。最初は夢のように始まった彼女とのことが結局他の男と去ってしまい、傷ついた自分の心だけが残されたという歌です。

4.Broken Heart/Hitoshi Koide

1/28に66歳で亡くなってしまった小出斉くんの追悼をしました。
小出くんはこの弾き語りソロアルバムをリリースしてこれからたくさんやりたいこともあっただろうし、彼のブルーズの見識をライナーノーツや書籍にもっとたくさん残して欲しかったと思います。
自分より年下の仲間に先に逝かれるのは本当に辛いです。
このアルバム”Walking Alone With The Blues”本当にいいアルバムです。
ぜひゲットして聞いてみてください。

2024.06.07 ON AIR

初夏になると聴きたくなるニューオリンズ・ミュージック

ON AIR LIST
1.IKO IKO /Dr.John
2.IKO IKO/The Dixie Cups
3.Jock-O-Mo/Sugar Boy Crawford
4.Going To The River/Fats Domino
5.Tipitina/Professor Longhair

今日はまずこの曲を聴いてください。

1.IKO IKO /Dr.John

ドクター・ジョンの名盤”GUMBO”の一曲目に収録されている「アイコ・アイコ」
”GUMBO”は1972年にドクター・ジョンが地元ニューオリンズの音楽をカバーしたアルバムです。僕はこのアルバムで初めてニューオリンズ音楽に触れました。この曲自体はボビュラーに広まってCMにも使われたことがあるので知ってる方も多いと思います。
実際にヒットしたのは1965年のニューオリンズの女性3人のコーラス・グループ「ディキシー・カップス」でチャートの20位まで上がりました。
そのディキシー・カップスのバージョンを聴いて見ましょう。

2.IKO IKO/The Dixie Cups

素朴な「アイコ・アイコ」でいいですね。ディキシー・カップスはとてもキュートなコーラスを聞かせてくれるグループでこの番組でも特集したことがありますが、1964年にチャート1位になった”Chapel Of Love”(涙のチャペル)や”People Say”などヒット曲がありニューオリンズ音楽には欠かせないグループです。
それで今の「アイコ・アイコ」には実はもっと前に原曲がありましてそれがシュガー・ボーイ・クロフォードという同じニューオリンズのシンガーが歌った”Jock-O-Mo”です。
このJacko Moという曲は歌詞の内容がよくわかりませんが、ニューオリンズのマルディグラ・インディアンと呼ばれる先住民たちのチャントと呼ばれる民族的な反復される掛け声を元にしているものです。チャントは日本の民謡でもあるみんなが繰り返し反復して歌うものと同じです。世界の民族音楽にチャントはあります。
ではシュガー・ボーイ・クロフォード

3.Jock-O-Mo/Sugar Boy Crawford

Jock-O-MoからIKO IKOになったわけですが、ロックバンドのグレイトフル・デッドや同じニューオリンズのマルディグラ・インディアンのグループ「ワイルド・マグノリアス」などがカバーしています。それで少し前にニューオリンズの大きなイベントである「ジャズ・ヘリテイジ・コンサート」が開かれていたのでニューオリンズのお馴染みの曲を聴いてみたいと思います。
まずいつもこの曲を聴くと初めてニューオリンズに行った時に一緒に旅行した川田さんという友達のことを思い出します。彼は友達でもありましたがとても信頼できる人でぼくの後見人みたいな人でした。二人でニューオリンズのホテルに荷物を置いて真っ先に行ったのがミシシッピー・リバーが見える場所でした。とにかくブルーズの歌詞にもよく出てくる川と言えばミシシッピ川で、その大きな川の流れを見て二人で感慨に耽ったものです。ファッツ・ドミノの次の曲もおそらくミシシッピ・リバーを想定して作られたものだと思います。彼女が街から出て行ってしまい、フラれてもう川に飛び込んで死んでしまいたという絶望した悲しい歌です。最後のI’m Tired Of Living In Misery(虚しい気持ちで生きることに疲れた)という一節が辛いです。
楽しい歌が多いファッツ・ドミノにしては珍しい悲しい歌です。

4.Going To The River/Fats Domino

「ブルーベリーヒル」「ファットマン」「Ain’t That A Shame」いファッツ・ドミノはヒット曲も多く、ニューオリンズという枠を超えてアメリカではポピュラーな存在で国宝級のミュージシャンなのですが、日本ではそれほど評価されていない気が今もします。70年代に来日してくれた時も本当にお客さんが少なくて僕はファッツに申し訳ない気持ちでステージを見ました。

同じニューオリンズのピアニスト、シンガーであるプロフェッサー・ロングヘアはアメリカ国内でさえ正当な評価を受けられませんでした。アレン・トゥーサン、ドクター・ジョンはじめニューオリンズのミュージシャンたちには尊敬されてましたが。一時は音楽をやめてギャンブラーになってしまったほどでした。ブギやブルーズにニューオリンズのセカンドライン、そしてルンバやカリプソなど南米の音楽をミックスしたプロフェッサーが作った音楽の素晴らしさがなかなか広く伝わりませんでした。でも晩年は多くのミュージシャンやファンの支えもあってジャズ・フェスティバルで復帰しヨーロッパへのツアーしました。今もプロフェッサー・ロングヘアを讃えるピアニストたちのライヴが毎年ニューオリンズで行われています。

5.Tipitina/Professor Longhair

この曲名からつけられたティピティーナスというクラブがニューオリンズにあってさっき言ったプロフェッサー・ロングヘアを讃えるピアニストたちのライヴはそこで開かれています。
こういうゆったりした曲を聴くとニューオリンズへ行きたくなりますね。