2018.10.12 ON AIR

追悼:愛すべき、忘れがたいブルーズマン、レイジー・レスター

They Call Me Lazy(OLDAYS 6208)

They Call Me Lazy(OLDAYS 6208)

blues stop knocking'(Antone's TMG-ANT 0051)

blues stop knocking'(Antone’s TMG-ANT 0051)

 

ON AIR LIST
1.They Call Me Lazy/Lazy Lester
2.I Hear You Knockin’/Lazy Lester
3.I’m Not A Fighter/Lazy Lester
4.I Love You Baby/Lazy Lester
5.Lonesome Highway Blues//Lazy Lester
 

大好きなブルーズマン、レイジー・レスターが亡くなってしまった。
好きなミュージシャンの訃報ばかりで気が滅入る。自分が好きだった音楽が、もうライヴでは聴けなくなり、残された音源だけになってしまうのはやはり寂しい。
レイジー・レスターは今年5月に公開された映画「I AM THE BLUES」でその元気な姿を観たばかりだった。映画が製作されたのは2015年だったからすでに三年が経っていたのだけれど、ボビー・ラッシュ、バーバラ・リン、キャロル・フラン、リトル・フレディ・キングなどみんな高齢者なんだけど、レイジー・レスターは飄々として陽気でお茶目で元気な様子だった。

芸名は怠け者のレスターだが、本名はレズリー・カーズウェル・ジョンソンと立派な名前だった。1933年生まれ。ルイジアナのバトンルージュの近くで生まれ育った。南部ルイジアナで育ったのになぜか好きになったのがシカゴ・ブルーズのジミー・リードとリトル・ウォルター。当時ジミー・リードとリトル・ウォルターは全国的なヒットを出していたからルイジアナにいても影響を受けたのでしょう。
「ルイジアナ四天王」と呼ばる4人がいて、ロンサム・サンダウン(寂しい夕暮れ)スリム・ハーポ(すらっとしたハーモニカ吹き)、ライトニン・スリム(すらっとした稲妻さん)それにこの怠け者レスターさんですから・・。どうもレコード会社エクセロの社長のジェイ・ミラーが芸名つけるのが好きらしくて「ああ、君、今日からレイジー・レスターで行くで」みたいな感じやったらしいです。
本人は「オレ、別にそんなに怠け者やないで」って言うてます。
ですが、「みんなはオレのこと怠け者っていうねん」という名刺がわりの一曲です
1.They Call Me Lazy/Lazy Lester
こののんびり感。いいですね。
1956年、レスターさん23才の時にエクセロ・レコードに初めて録音します。
前も彼を特集した時に言ったのですが、初レコーディングに至った経緯がほんまかと思うくらい面白いんですが、
まだデビューする前に一日の仕事を終えて(普通の仕事を朝起きて夕方までしてたんでしょう)レスターさんはバスに乗って家に帰ろうとしました。そしたらバスにライトニン・スリムさんが偶然乗ってたんです。スリムさんはレコーディングに行くのにバスに乗ってたのですが、たぶんギターを持ってたんでしょ。その頃スリムさんはちょい売れしてまして、レスターさんは声をかけました。「ええ、すごい!あのライトニン・スリムさんですか・・どこへいかはるんですか」と訊くと、スリムさんが「いまから録音でスタジオへ行くんや」するとレスターさん「ついて行っていいですか」と突っ込みました。まあ、50年代のルイジアナのクロウリーいう田舎街ですからのんびりしたもんです。「まあ、ええけどな・・」とスリムさんに言われて「ラッキー」とばかりにスタジオへついていきました。
そしたら、その日ライトニン・スリムの録音でハーモニカ吹く奴が時間になってもなかなかスタジオに来なかったので、レスターさんは「あの~、僕ハーモニカ吹けるんですよ」と売り込んだんです。エクセロ・レコードの社長のジェイ・ミラーがスリムさんに「スリム、さっきからおるけど誰やねん、こいつ」「いや~。オレもよう知らんのですがバスに乗ってたらついてきたんですよ。君ほんまにハーモニカ吹けるんか・・」「吹けます、吹けます」
それで初レコーディング。それでしばらくそのライトニン・スリムさんのバックでハーモニカとして活躍することになったというほのぼのとした話です。
それで56年初めて自分のレコーディング。それがいまのThey Call Me Lazy。
レイジー・レスターにはロックン・ロールに繋がるビートがあります。歌のテンションは高くなくてダウンホームなんですがバックのビートがステディなロックなんですよ。もう踊るしかないやろみたいなダンサブルなリズムがあります。ダウンホームな歌とバックのステディ・グルーヴの組み合わせがエクセロレコードの魅力のひとつです。
2.I Hear You Knockin’/Lazy Lester
かっこいい曲です。
レスターさんはすごくヒットした曲はないんですが、いい感じのダウンホームとファンキーがミックスされたブルーズを歌った人だった。
エクセロというレコード会社はシカゴブルーズのような重さはなく、ウエストコーストのような洒落た感じもなく、テキサスのようにアグレッシヴでもないんですが、同じレーベルのスリム・ハーポもストーンズなんかに人気のあったブルーズマンですし、ストーンズの新しいアルバムでHoo Doo Bluesをカバーされたライトニン・スリムもエクセロレーベルのブルーズマンなんですが、ダウンホームでありながらビートはしっかりしてファンキー、そしてどこかポップ感があるという微妙なさじ加減はエクセロレコードならではです。
次の曲は60年代のイギリスのビート・グループ、「キンクス」がカバーしています。
3.I’m Not A Fighter/Lazy Lester
自分の彼女にしょかなと思っていたらら体のデカイ強そうな男が出てきて、僕は愛の男で戦う男やないんよ。I’m Not A Fighter。レイジーで怠け者やしね。まあ、ライオンみたいに吠えることも蜂みたいに刺すこともできるけど僕の血の中にはウサギの血が入ってる、つまり優しい?っていうことでしょうか。
70年代レイジー・レスターの名前は聞かなくなり、一時期リタイア状態で80年代にはもう亡くなっているという話もありましたが、87年に「何言うてんねん。オレは生きてるよ」とばかりにアルバム”Lazy Lester Rides Again”で復活、2000年には来日もしました。第7回のパークタワーブルーズフェスでした。
これから聞いてもらうのは2001年にアントンズ・レーベルからリリースされた”Blues Stop Knockin’というアルバムでファビラス・サンダーバードのジミー・ボーンほかアントンズ界隈のミュージシャンたちがバックをしています。
歌の途中でレスターさんの笑声が出るくらい楽しさが満載の曲で、踊り出したくなるような実に気持ちのいいビートが続きます。
4.I Love You Baby/Lazy Lester
映画で見たレイジー・レスターさんは怠け者というより、優しい人でした。顔つきみてもねほのぼのした感じで笑顔がいい感じでした。
最後にダウンホーム、レイドバック・ブルーズの極めつけみたいなブルーズを聞いてください。こういう感じは本当に普段の生活のリズムがこうやないと演奏できないやろと思える曲です。
5.Lonesome Highway Blues//Lazy Lester
夕暮れのハイウェイをぼろい車で走っている感じでした。
映画「I AM THE BLUES」はもう公開が終わってますが、DVD化されていないのでしょうか。それともまだ日本でリリースされてないのかいるんでしょうか。
もし、DVD化されたら是非観てください。レイジー・レスター、本当に愛すべき、忘れられないブルーズマンでした。寂しいです。