2018.10.26 ON AIR

追悼:アレサ・フランクリンの偉大さ vol.1
アレサのヒット曲


Aretha Franklin/The Very Best Of Aretha Franklin vol.1(Atlantic/RHINO/Waner Music WPCR-26221)

20181026-2

ON AIR LIST
1.Respect/Aretha Franklin
2.I Never Loved a Man (The Way I Love You)/Aretha Franklin
3.Chain Of Fools/Aretha Franklin
4.You Make Me Feel Like A Natural Woman/Aretha Franklin
5.Think/Aretha Franklin

去る8月16日に偉大な女性ソウル・シンガー、アレサ・フランクリンが亡くなりました。
ツイッターはじめSNSには世界中から追悼のメッセージが溢れて、テレビのニュースでも取り上げられ改めて多くの人が彼女の存在の大きさを確認したと思います。
60年代から70年代の黒人女性シンガーたちにとってアレサはまさに尊敬しうる、ソウル・ミュージックの女王でしたが、結局いまもアレサに代わるソウルの女王と呼ばれるシンガーはいないと思います。
多くの女性シンガーが影響受けたシンガーとしてアレサの名前を上げていますが、それは音楽的にだけでなく自立した女性として、意見や意志をしっかりもった女性としても彼女は尊敬の対象でした。
アレサが表舞台に登場した60年代半ば、当時高校生だった僕は毎晩夜になるとラジオの洋楽番組を聴いていました。お目当てはビートルズやストーンズなどのロックバンド。そんな中時折ヒットチャートに入ってくるシュプリームスのようなポップな黒人ソウルもありましたが、サザン・ソウルやディープソウルと呼ばれるような強烈な黒人らしさをもった曲はほとんどチャートには出てきませんでした。ところがある日、新しい黒人シンガーの紹介ということで流れたのがアレサ・フランクリンのこの曲だった。
「あなたが欲しいものはあげてるし、あなたが必要なものもあげてるよね、でも、家に帰ってきたらわたしをリスペクトして、私に敬意を払って、R.E.S.P.E.C.T(リスペクト)それがどんな意味があるのか考えてほしい、T.C.B.(Take Care Of Your Bussiness/ちゃんとしっかりしてね)
私がいなかったらどうするの」
1967年R&B POPチャート両方で1位の大ヒット
1.Respect/Aretha Franklin
この曲はその2年前1965年にオーティス・レディングがヒットさせていて、アレサはカバーをした訳ですがこれがなんとミリオン・セラー。アレサはオリジナルの歌詞も少し変えているのですが、オリジナルのオーティスは”I just lost my song. That girl took it away from me.”と、「僕の曲は彼女に取られてしまった」つまり、あの曲はもうアレサの曲だと言ったそうです。実際この歌はアレサが歌うことで夫婦間のことだけでなく、当時の黒人女性の権利についての主張としてもとらえられました。

今日はアレサのまず忘れられないヒット曲(これがまたたくさんあるのですが・・・)を聴いてみようと思います。
アレサのヒット曲のほとんどは60年代から70年代のアトランティック・レコードに在籍した時期にリリースされたもので、プロデューサーはジェリー・ウェクスラー。彼はアレサがその前に在籍していたコロンビアレコードの頃から、アレサのレコードを作りたいと強く思っていてコロンビアとの契約が切れると真っ先に契約を申し出たそうです。
そして、ニューヨークに住むアレサをアラバマの田舎街のマッスルショールズのフエイムスタジオに連れていってレコーディング。アレサはニューヨークに素晴らしいミュージシャンがいるのになんでこんな田舎へ来なきゃアカンのか・・・と思ったそうです。
でも、マッスルショールズにはジェリー・ウェクスラーの狙い通りの彼女にぴったりのサウンドがありました。
アレサの最初のヒット曲です。
2.I Never Loved a Man (The Way I Love You)/Aretha Franklin
この曲のヒット以降、60年代のほとんどはマッスルショールズのキーボードのバリー・バケット、ギターのジミー・ジョンソン、ベースのデビッド・フッド、ドラムスのロジャー・ホーキンスというメンバーで録音が行われました。
翌年1968年には”Lady Soul”というアルバムがリリースされるのですが、このアルバムのタイトル「レディ・ソウル」「淑女のソウル」という呼び名が本当に当時のアレサにふさわしいものでした。この頃のアレサは曲だけでなく、衣装や喋る内容もそうですがセクシーさとか色っぽさで売るのではなく、男性と対等のひとりの人間としての歌として扱ってほしいという想いがあったと言います。品格のようなものを大切にしていたと思います。
そのLady Soulの一曲目、僕はこの曲がめちゃめちゃ好きです。
自分ひとりが彼女だと思っていたら男にはチェーンでつながっている玉のようにいろんな女(Fools)がいて、自分はそのひとりでしかなかったという歌。でも、このチェーンはね、いつか切れるてしまうよ。・・・まあ、その男に「ええ加減にせえよ」という強い歌です。
3.Chain Of Fools/Aretha Franklin
この歌をアレサは当時の旦那だったテッド・ホワイトに向けて歌ったと言われている。曲が売れて有名になって幸せになっていくように見えていたアレサの私生活は、実はアレサが稼いだお金目当てで女遊びをするしかも暴力もふるう旦那によって幸せではなく、アレサは酒浸りになっていたといわれてます。
でも、このアルバム”Lady Soul”にはもうひとつアレサが生涯歌った名曲、彼女がそんな幸せでない私生活を送りながらも自堕落にならない立派な女性でいたいという思いをこめたこの歌があります。
4.You Make Me Feel Like A Natural Woman/Aretha Franklin
キャロル・キングとキャロルの当時の旦那さんだったジェリー・ゴフィンが作った名曲です。
「あなたに会うまでは辛くて悲しい日々だったけど、あなたと出会ってからは私の心は穏やかになっていく。そして、あなたは私をナチュラル・ウーマンにしてくれる、つまり自然な女、ありのままの自分にあなたはしてくれる」という歌ですが、実はこの歌の「あなた」はひどい旦那のデッド・ホワイトではなく、アレサは神様をあなたとして歌ったと言われています。
そういう言われて聴くと確かにこの歌から感じるゴスペル・テイストは、そういうことなのかと納得です。ラブソングではない何かをこの歌は含んで歌われたんですね。
そして、同じ68年にはもう一枚素晴らしいアルバム”Aretha Now”がリリースされています。
ブルーズ・ブラザーズの映画でソウル・フード店の女将の役で登場したアレサ。ぴったりでした。うだつの上がらない旦那役のマット・マーフィもぴったりでした。そのシーンで歌われたこの歌。「私たちはお互いに必要なんだからもうすこしあんた、考えてくれへんか」
これはアレサのオリジナルです。
5.Think/Aretha Franklin
こうして聴いてくるとアレサはどうしょうもない、ひどい自分の旦那に向けて歌の中で訴えたり、怒ったり、嘆いたりし、どこかで神様に救いを求めて歌っていたのかも知れません。

来週はこの番組らしくブルーズ・テイストのアレサの歌声を聴きたいと思います。