2020.11.13 ON AIR

映画”The Making Of Motown”公開記念モータウン・レコード特集vol.2

The Motown Box(Shout/Motown B0074AW43A)

ON AIR LIST
1.Shot Gun/Jr.Walker & The All Stars
2.This Old Heart of Mine/The Isley Brothers
3.I Heard It Through The Grapevine/Gladys Knight & The Pips
4.Ain’t No Mountain High Enough / Marvin Gaye & Tammi Terrell
5.A Place In The Sun/Stevie Wonder

先週に引き続き九月に公開された映画”The Making Of Motown”の公開記念でモータウン・レコード特集の2回目
1960年にベリー・ゴーディという黒人社長によって設立されたモータウンは黒人によるインディーズレーベルとして始まったわけですが、60年代が終わる頃には最も成功したレコード会社の一つになっていました。とにかく60年代中頃からのモータウン・レコードのヒット連発は破竹の勢いでした。当時イギリスのビートルズの世界的な人気に対抗できるのはアメリカではモータウンくらいでした。それはモータウンが黒人による黒人音楽のレーベルででしたが、白人にも受け入れられるように様々な点で考えられていたからです。その辺は映画のネタバレになるので・・。

60年代の初期のモータウンのヒット・シンガー、グループというとスモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズ、テンプテーションズ、スプリームス、メリー・ウエルズ、マーヴェレッツ、フォー・トップスあたりですが、そのあたりとはちょっと毛色の違うグループもありました。次の曲などはモータウンにしてはどこかいなたい感じがします。
曲名のショット・ガンは元々ダンスの一つの名前でそういう振り付けのダンスがあるそうです。当時は「マッシュポテト」とか「モンキー」「ドッグ」とかいろんなダンス・スタイルが考え出されました。
1965年のリリースでR&Bチャートは一位、ポップチャートは四位まで上がるヒットになりました。
典型的なパーティ・ソングですが、イントロのショットガンのピストルの音からドラムとジュニア・ウォーカーのサックスがなだれ込むように入ってくるところがかっこよくて斬新です。ジュニア・ウォーカーの歌もうまいというわけではないのですが、パワーがあってサックスと同じで歯切れのいい歌です。
1.Shot Gun/Jr.Walker & The All Stars
余談ですが、この「ショット・ガン」を僕はウエストロード・ブルーズバンドの84年のアルバム”Junction”で録音しています。
サックスというとジャズのイメージがありますが、R&Bのサックスというのが40年代のルイ・ジョーダンあたりから流行って60年代にはキング・カーティス、メイシオ・パーカーなどR&Bでも人気のサックス・プレイヤーが出てきました。

次のグループ、アイズレー・ブラザーズはすごく息の長いソウル・ファンク・グループで、モータウンに入る前から”Shout”とかビートルズがカバーした”Twist&Shout”のヒットがあったグループで、モータウンを辞めた後も”It’s Your Thing”などファンクのヒットを出しています。モータウンには60年代半ばに三年ほど在籍してました。その時に出したヒットが今から聴く”This Old Heart Of Mine”
「ぼくの干からびた心は何度も傷ついてきたんだ。君がぼくを愛していない、戻って来ないのではないかと不安なんだ」途中で「一緒に居られるのは一週間に一回」って出てくるんですが、不倫ですかね。
2.This Old Heart of Mine/The Isley Brothers
この曲はロッド・スチュアートのカバーも有名です。
66年アイズレー・ブラザーズがモータウンに残した唯一の大ヒットですが、アイズレーは二年でモータウンを辞めてしまいます。
モータウンは確かにヒット曲をたくさん作れる有能な作詞、作曲家チームとアレンジャー、プロデューサーがいましたが、必ずしもモータウンに入ったミュージシャンがみんなそのやり方に満足していたわけではなく、アイズレー・ブラザーズのように短期間で辞めたグループとか、オーディションを受かったもののデビューできなかったミュージシャンもいるし、1,2曲のシングルのリリースだけでモータウンから離れたミュージシャンもいます。
次のグラディス・ナイト&ピップスもモータウンレコードにいた頃は聞いてもらう一曲しか代表曲がなく、モータウンを辞めてからグループのキャリアを作った人たちです。
では邦題は「悲しいうわさ」「君はもう僕を愛していないという悲しいうわさを聞いたよ。嫌なうわさだ。君の心にはぼくはもういないんだ」
3.I Heard It Through The Grapevine/Gladys Knight & The Pips
72年までモータウンレコードに在籍したグラディス・ナイト&ピップスでしたが、73年にブッダ・レコードに移籍して大ヒット「夜汽車でジョージアへ」や「つきせぬ思い(I’ve Got To Use My Imagination)」といった代表曲をたくさんリリースして70年代中頃には有名ソウル・コーラスグループとなりました。

次は男女のソウル・デュオで僕がいちばん好きな曲です。マービン・ゲイとタミー・テレルの”Ain’t No Mountatin High Enough”ですが、タイトルは高すぎる山なんてない、「越えられない高い山なんてない」ということだと思います。「もし、僕のことが必要なときは電話してくれ、君がどこにいようと、どんなに遠くにいようと、ぼくは駆けつけるから心配しなくていい。越えられない高い山なんてない。渡れない谷も渡れない川もない。」
1967年、当時の映像を見るとどう見ても二人は恋人どうしに見えます。タミーは可愛いし、マービンはいい男、曲は切ないし、売れるでしょ、これは。
4.Ain’t No Mountatin High Enough / Marvin Gaye & Tammi Terrell
夫婦のソウル・デュオ、アシューフォード&シンプソンが作った曲です。

次のスティービー・ワンダーはダイアナ・ロスやスモーキー・ロビンソン、マービン・ゲイと並んで長くモータウンに在籍したひとりですが、60年代にデビューした頃はまだリトル・スティービー・ワンダーという芸名でした。

1966年僕は高校一年でしたが、ラジオからこの曲が流れてくる前にDJの方が歌詞を説明してくれました。
「みんなに太陽が当たる、希望の持てる場所があるんだ。生きている間にその場所を探そう」という歌詞が今も好きです。メロディも最高です。いろいろと不安だった年頃、夜中にラジオから流れてきたこの曲は今もずっと胸に残って居ます。僕と同じ年、スティーヴィ・ワンダー16歳の時のヒットです。
「陽の当たる場所」
5.A Place In The Sun/Stevie Wonder
60年くらいこの曲を聴いているんですが、このコロナ感染の厳しい現在聴くとなんか泣けてきます。いい未来があると思わせてくれるいい曲です。
途中の語りが「うまくいかない時あなたが悲しく感じる時、いつもあなたに思い出して欲しい・・太陽の当たる場所を」いいですね。
来週もこのモータウンレコードの続きをやります。