2020.11.20 ON AIR

映画”The Making Of Motown”公開記念モータウン・レコード特集vol.3

ABC/The Jackson5 (Motown/Polygram POCT-1945)

What’s Going On/Marvin Gaye (Motown 530 022-2)

Innervision/Stevie Wonder (Motown/Polydor POCT-1810)

The Motown Box(Shout/Motown B0074AW43A)

ON AIR LIST
1.ABC/ The Jackson5
2.What’s Going On / Marvin Gaye
3.Living For The City/ Stevie Wonder
4.Stop! In The Name Of Love / The Supremes

モータウンレコードの軌跡を追った映画”The Making Of Motown”の公開が始まり、それに合わせて60年代のモータウンレコードの曲をここ二回聞いてきたのですが、今日は60年代の終わりからです。映画を観ていただけるとわかるのですが、60年代のモータウンはもう工場のように曲やミュージシャンの管理をしっかりして質のいいもの(歌、演奏、音質、歌詞、振り付け、ふだんの仕草まで)を、しかも黒人にも白人にも受け入れられるポップス性のあるヒットをたくさん作ることに邁進したわけです。
その路線の最後に登場するのがジャクソン5です。
1969年には当時10歳だったマイケル・ジャクソンをリード・ヴォーカルにした「ジャクソン5」はモータウンからデビューシングルの”I Want You Back”を出して、すぐに一位を獲得。次の70年の二弾目のこの曲も一位になりました。
1.ABC/ The Jackson5
最初はジャクソン5とモータウンレコードの関係は良かったのですが、3年くらいするとずっとアイドル売りをされていることや、自分たちの作った楽曲がアルバムにとりあげられない不満からジャクソン5はモータウンを辞めて1975年にCBSに移籍してしまいます。そのあとモンスター、マイケル・ジャクソンの世界的な活躍が始まるわけですが、モータウンが逃した魚は大きかった・・ですね。

70年代に入ると鉄壁のヒット・メーカーだったモータウンにもいろいろと異変が起こります。
設立された1960年から10年間は怒涛のようにヒット曲をチャートに送りこみ、所属ミュージシャンも増えて大きな会社に成り、黒人が企業したレコード会社としてはいちばん大きな有名なレコード会社になりました。そして、社長のベリー・ゴーディは70年代に入ると、当時彼の愛人でもあったダイアナ・ロスの映画を作ったり、テレビ番組を製作するためにニューヨークとロスに支社を作りました。まあ音楽だけでなく商売を手広くしたわけです。社長のゴーディは映像のメディアに力を入れて、音楽のプロデュースはノーマン・ホイットフィールドという右腕がやるようになりました。
実はそれまでたくさんのヒット曲を作り出していた作詞作曲チームのホーランド=ドジャー=ホーランドの三人が社長と印税のことでもめて辞めてしまったのです。つまり、お金に対する要求がスタッフやミュージシャンから出てきて体制が少し揺らいでくるわけです。
そして、マービン・ゲイやスティービー・ワンダーのように自分で作詞作曲してプロデュースも自分でやりたいというミュージシャンが出てくるようになりました。その背景には公民権運動、ベトナム戦争反対運動、人種差別撤廃運動など様々な政治社会の動きがあり、マービンやスティービーはそういうことに対する自分の考えを音楽で表現したい、いつまでも恋愛の歌ばかり歌っていられないと思い始めたわけです。それで売れることが第一主義の社長のゴーディと対立することもあり、次第にモータウンはミュージシャンの意向を取り入れないとどうしょうもなくなってしまい、ゴーディが完全に掌握することは無理になっていきました。
そして、社長のゴーディが売れないと言ったマービンの曲が黒人音楽の歴史に残る画期的なアルバムとなり、1971年セールスもR&Bチャートで一位、ポップで二位を獲得します。自分自身による作詞作曲そしてマービン自身のセルフ・ブロデュース作品であり、ベトナム戦争に反対の意思を表明したこの曲の衝撃は大きかったのを僕も覚えています。
2.What’s Going On / Marvin Gaye
このあたりから社長のベリー・ゴーディ自身も音楽の流れが単にヒット曲を出すだけではいけなくなってきていることを感じ始め一線から少しずつ離れていくのですが、そのあたりは映画をごらんください。

60年代にヒットを出してツアーもやっていたミュージシャンたちは特に南部にツアーに行くと人種差別を強く感じるわけです。モータウンがあったデトロイトは大きな都会で南部ほどの差別はか感じていなかったと思います。
それでよくよく自分の周りの都会の暮らしを見てみると、都会で暮らす黒人の生活も低賃金で貧しく、頭が良くても一流と言われる会社に就職することができないわけです。つまり黒人は努力してもずっと報われない生活が続くのかという怒りと、自分たちがそれを変えなければいけないという思いをスティービーは次のこの歌に託しました。

3.Living For The City/ Stevie Wonder
しかし、アメリカの人種差別は今もこの頃と何も変わっていないと最近のBlack Lives Matterのニュースを見ていると思います。
この曲は1973年のアルバム「インナーヴィジョン」に収録されているんですが、その73年頃僕はもうブルーズにどっぷり浸かっていてサザン・ソウルには興味があったのですが、モータウンにはあまり興味がなくなっていきました。だからスティービーとかマービンのアルバムは聴いてましたが、モータウン全体は聴いていませんでした。
三週に渡って映画「”The Making Of Motown”」の公開を記念して聴いて来ました。最後ということでぼくにとってのモータウンはやっぱりシュプリームスなんですよ
中学三年の頃でシングルで買った初めてのシュプリームスです。
5.Stop! In The Name Of Love / The Supremes

多分映画はDVDもリリースされると思います。是非ご覧ください。
三回に渡ってお送りした映画「The Making Of Motown」の公開を記念してモータウンレコードの特集でした。