2021.10.15 ONAIR

追悼チャーリー・ワッツ vol.2

the best of the Rolling Stones /Jump Back(Virgin VJCP-25155)

ON AIR LIST
1.Honky Tonk Women / The Rolling Stones
2.Brown Sugar / The Rolling Stones
3.Harlem Shuffle / The Rolling Stones
4.Start Me Up / The Rolling Stones
5.Jumpin’ Jack Flash / The Rolling Stones

ローリング・ストーンズのドラマーだったチャーリー・ワッツが亡くなった衝撃に世界中のファンはもちろん、多くのミュージシャンも心を痛めネットには彼を追悼するメッセージがあふれています。彼と関わった人たちの多くは彼の紳士的で優しい人柄を語っています。ストーンズの方向性や展開について語るのはいつもミックとキースで「サイレント・ストーン」と呼ばれたチャーリーから多くを語られることはなかったのですが、クールなプロフェッショナルとしてそしてロックのドラムの典型の一つを作ったドラマーとして彼は永遠に音楽の歴史に残っていくでしょう。

今回はチャーリー・ワッツ追悼の2回目です。

69年7月にシングルでリリースされた”Honky Tonk Women”は脱退し亡くなってしまったブライアン・ジョーンズの後にミック・テイラーが参加した最初の曲。カントリー・テイストとアメリカ南部のスワンプロックのテイストが混じったストーンズを代表する曲。メンフィスの安酒場でジンをばか飲みする女と出会い二階の部屋でその女と寝たという話から始まるこの曲はチャート一位を獲得。カウベルからチャーリーの力強いドラムが入りキースのギターがリフを弾くイントロの匂いが最高の曲で、ストーンズの代表曲というだけでなくロックの名曲の一つ。そしてミック・テイラーが加入したことでストーンズがさらに前進した記念碑的な曲でもあります。
1.Honky Tonk Women / The Rolling Stones
時々音の隙間があってそこでグルーヴしているドラムが聞こえてくる瞬間が最高。エンディングまでずっとロックしている。

今の曲も次の曲もまずイントロでキースとチャーリーがグルーヴを作って始まっていて、これがストーンズの一つのパターンになっていました。
キースのコードを絡めたキレキレのイントロのギターが最高で、それを受けるようにチャーリーが入ってきます。つまりロックというのは器用に指が早く動かなくてもこの曲のようにカッコイイリフとグルーヴするビートがあればいいという見本のような曲です。まあ、ロックの王道のような曲です。
2.Brown Sugar / The Rolling Stones

次はドラムの録音状態、つまりドラムの音が素晴らしくいい音で録音されていてぼくの好みです。チャーリーは相変わらず余計なことはせずにずっと太いビートを打ち続けている。
これはカバー曲でオリジナルはR&Bの男性デュオ「ボブ&アール」が1963年にリリース。そんなに売れた曲ではなくてチャートの40位くらいまでしかいかなかったが、69年に再発された時にイギリスでチャートの9位まで上がってます。うまく言えませんがイギリス人好みの曲です。ストーンズの86年リリースのアルバム”Dirty Work”でカバーしましたがほとんどオリジナルと同じです。
3.Harlem Shuffle / The Rolling Stones
独特のムードのあるいい曲です。

初来日公演の一曲目のこの曲のイントロのギターとドラムですごく興奮したのをおぼえています。その来日公演をぼくは三日間見たのですが、その初日客電が消えるとゴーッという地響きのような歓声が客席から起こり、次の瞬間にキースのギターがそれを裂くように始まりドラムがズドン!と入る瞬間があまりにカッコよくて思わず「チャーリー」と三日間叫びました。
4.Start Me Up / The Rolling Stones

インタビューでも饒舌ではなくステージでも全面に出てくることはなく、いつも淡々と後ろでドラムを叩いてバンドサウンドを支えてきたチャーリーの姿に感銘を受けてきた人も多いと思います。スーツとネクタイを愛用して他のメンバーとは違うおしゃれな人でもありました。
5.Jumpin’ Jack Flash / The Rolling Stones
ジャズが好きだったチャーリーが全くサウンドやグルーヴの表現が違うストーンズの音楽を本当はどう思っていたのか・・・とても興味深いところです。

一度ミックが「チャーリーは俺の専属ドラマー」と言った時にチャーリーはミックに「お前が俺の専属シンガーだ」と言ったことがあったそうです。ミックの不遜な図々しい言葉がぼくも嫌いですが、チャーリーはじつに的確なお返しの言葉を言ったと思います。実際、チャーリー以外のドラマーでミックがいい歌を歌ったことなんて一度も聞いたことがない。チャーリー無くしてミック、あなたはないし、ストーンズもない。なぜならチャーリーはストーンズの心臓だからだ。その心臓が止まったことでストーンズは終わったと僕は思ってます。
チャーリー・ワッツの冥福を祈り、たくさん楽しませてくれたことに感謝の言葉を言いたいと思います。
ありがとう、チャーリー・ワッツ