2021.10.08 ON AIR

追悼チャーリー・ワッツvol.1

the rolling stones single collection the london years (Abkco POCD-1938/40)

ON AIR LIST
1.I Want To Be Loved / The Rolling Stones
2.It’s All Over Now / The Rolling Stones
3.Little Red Rooster/ The Rolling Stones
4.Get Off Of My Cloud / The Rolling Stones
5.Satisfaction / The Rolling Stones

ローリング・ストーンズのドラマー、チャーリー・ワッツが亡くなったことを知ったのは8/25の朝早くだった。
チャーリー・ワッツの英文の訃報がリツイートされていくつも出てきた。「ウソだろ?」と思ったが次回のストーンズのツアーを辞退して病気の治療に専念するというニュースが一週間ほど前に出ていたので気になって検索を続けてみたらやはりそれは本当だった。僕がロックを聴き始めた頃、好きな二つのバンドはビートルズとストーンズだった。だから最初にビートの洗礼を受けたのはリンゴ・スターとチャーリー・ワッツのドラムということになる。
それで今回はストーンズのアルバムに残されたぼくが好きなチャーリーのドラムの曲を聴いてもらおうと思う。
ストーンズは何かと言うとミックやキースの話になるが、僕はローリング・ストーンズは結局チャーリー・ワッツだと思っている。ストーンズの要であり、心臓であり、チャーリーのドラムのドライヴ感無くしてキースとミックがどんな曲をやっても意味がないとさえ思う。実際ミックもキースもチャーリー以外のドラマーと仕事をしているが、結局ストーンズ以上の成果はないように思う。それは多分半世紀以上チャーリーのグルーヴで音楽をやってきたから、彼らの体にはチャーリーのグルーヴが染み付いているんだと思う。

僕がストーンズと出会ったのは1964年か65年頃。中学2,3年。毎月の少ない小遣いを貯めてストーンズの1st.アルバムを買ったのは65年、15歳の時だ。実はLPレコードを買ったのはビートルズが最初でストーンズは自分にとって2枚目のLPだった。その前にストーンズのシングル盤(Come On/I Want To Be Loved)を買っていて、Side:AのCome OnよりSide:BのI Want To Be Lovedが気に入ってB面ばかり聞いていた。そして、その4年後くらいにその曲のオリジナルであるマディ・ウォーターズの原曲を聞くことになるのだが、ストーンズを聞いた頃はそれがブルーズの曲であることもマディのカバーであることも知らなかった。そもそもブルーズなんて何のことやら何も知らなかった。ただただストーンズこの曲がかっこいいと思って聞いていた。
1.I Want To Be Loved / The Rolling Stones
ダンサブルな曲にしたかったのだろう、ストーンズはマディのオリジナルよりテンポを速くしている。チャーリーのドラムの音がすごく耳に残る曲で、ミック・ジャガーの歌が少し浮ついている感じだがチャーリーのドラムがうまく抑えている感じがする

次はストーンズがイギリスのチャートで初めて一位になった曲。ソウルのボビー・ウーマックのカバーだ。ほとんど原曲通りのカバー。ここでもチャーリーのドライヴするドラムが気持ちいい。
2.It’s All Over Now / The Rolling Stones
まだ若いキースのギター・ソロが気持ちが先走っているというか、どこかあたふたした感じがするが、チャーリーのドラムが揺るがないビートを打ち続けるのでビートは安定している。
知っている方も多いと思いますが、ローリング・ストーンズは黒人ブルーズの素晴らしさをイギリスで広めたい、たくさんの人に知ってもらいたいという意図があって結成されたバンド。ブルーズを真摯に研究していた感じがする。多分初期の音楽的リーダーであったブライアン・ジョーンズの意図だと思う。次の曲のオリジナルはマディと同じチェスレコードの看板、ハウリン・ウルフがオリジナル。
ブライアン・ジョーンズのスライドギターの美しくクールな音とチャーリーのハイハットとスネアのリム・ショットだけのステディなビートが素晴らしい曲。60年代中頃にイギリスでブルーズを志向するバンドがいくつもあったが、やはりストーンズはバンド・サウンドの作り方がまず頭抜けてうまい。全員が余計なことをしないでビートのグルーヴを作ることにまず専念している。
3.Little Red Rooster/ The Rolling Stones

初期のストーンズの曲でドラムが印象に残る曲といえば次のオリジナル曲。これも僕はシングル盤で買い本当によく聴いた。チャーリーが同じパターンをずっと続けそれをやることでドライヴ感を出しています。
4.Get Off Of My Cloud / The Rolling Stones
初期のオリジナル曲では一番好きだったかも。

次はストーンズの永遠の定番。この曲はみんな聴きすぎてドラムにあまり注意して聞いてないと思うけれど、今日はドラムを中心に聞いてください。ストーンズのライヴだと音がラウドでチャーリーのやったいることがはっきりわからないけど、この65年のオリジナル録音を聞くとチャーリーはただひたすら一つのパターンを叩いているだけで、それがどんどんドライヴしている感じです。
「No No No!」のとこでドラムだけになりますが、そこでいかにビートが生きているか、そしていかにスネアを強くヒットしているかわかります。
5.Satisfaction / The Rolling Stones
ずっと続く「タット!タット!タット!タット!」というこのチャーリーのドラム無くしてこの曲はない。
チャーリーはインタビューでドラム・ソロをやったりするのは好きじゃないと言ってますが、ソロをやらなくても印象に残るドラマーです。

チャーリーは子供の頃、一番最初に手にした楽器はバンジョーだったそうです。それからドラムに興味を持ち始めデューク・エリントンやチャーリー・パーカーが好きでジャズをやってました。その内にブライアン・ジョーンズもメンバーだったこともあるアレクシス・コーナー「ブルース・インコーポテッド」というバンドに入り、そこからブライアンが自分のブルーズ・バンドを作りたいということでストーンズに参加。
チャーリーはストーンズが休みの期間に「チャーリー・ワッツ・クインテット」という名前で好きなジャズのバンドをやっていてYouTubeで楽しそうな様子を見ることができます。
やっていることは違うんですが、チャーリーの場合、基本にあるドラムで一つのグルーヴを貫く姿勢はストーンズもジャズも同じです。

次回は今もロックの歴史に残るストーンズの名曲からチャーリーのドラムの魅力を聞いてみようと思います。