2021.11.26 ON AIR

私が選んだブルース名唱15曲 その3
【BSR Playlist Archives】第3回 永井ホトケ隆(https://bsrmag.com/playlist/bsrplaylist3/)

ON AIR LIST
1.Turn On Your Love Light / Bobby Blue Bland
2.Night Life / B.B.King
3.Driving Wheel / Junior Parker
4.Tramp / Lowell Fulson

私がエッセイを連載している「ブルース&ソウル・レコーズ」誌をご存知の方もいると思いますが、その「ブルース&ソウル・レコーズ」のWEB版(https://bsrmag.com)というサイトがありまして、そこから「これぞブルーズの歌」というのを選んで欲しいと依頼されました。それでとても15曲では終わらないのですが15曲を選びました。それで前々回から選んだ曲をこの番組で聞いてもらっているのですが、今日が最後で3回目です。今日はモダン・ブルーズを4曲聞いてもらいますが、このシリーズはブルーズの歌を中心に選んでいます。まずはボビー・ブルー・ブランド
ブランドはB.B.キングと双璧のモダン・ブルーズのトップ・シンガーですが、モダン・ブルーズの大きな特徴の一つにゴスペルの影響というのがあります。曲作りもアレンジもそして歌もゴスペル・テイストの導入がはっきりわかる時代のブルーズで、それは現在も続くブルーズの大きな要素になっています。ボビー・ブランドはとてもふくよかな地声を持っていて包み込むような唱法と彼独自の「痰吐き唱法」とも呼ばれるシャウトを混じえてブルーズの微妙な歌の表現に長けています。ミディアムからスローの曲も素晴らしいのですが、私はこのアップテンポのはっきりとゴスペルテイストを感じさせる曲を今回ブルーズ名唱15曲に選びました。
バックの素晴らしい演奏に乗って最高のブルーズ・シンギングを聴かせるボビー・ブルー・ブランドの1961年の録音です。
1.Turn On Your Love Light / Bobby Blue Bland
踊らざるを得ないようなグルーヴするブルーズでこれを生で聴いたらぶっ倒れそうです。

次は今のブランドと双璧のB.B.キングです。B.B.キングがブルーズに残した功績はあまりに大きすぎて、B.B.以降のブルーズマン、ロバート・クレイ、バディ・ガイなどもほとんどがどこかでB.B.の影響を受けています。B.B.に素晴らしい歌が多すぎて選ぶのに本当に困ったのですが、やはりライヴで本領を発揮した歌を今回は選びました。
カントリー&ウエスタンのウィリー・ネルソンのオリジナルですが、見事に自分の歌、自分のブルーズにしてます。
「夜の生活は良くないってわかってるけどそれがオレの生活なんだ」とリアルなブルーズを聴かせてくれます。1967年のライヴ・アルバム”Blues Is King”からNight Life
2.Night Life / B.B.King

ブルーズにはボビー・ブランドのように楽器を弾かないで歌だけの人もいます。次のジュニア・パーカーもそうです。厳密にいうとジュニア・パーカーはハーモニカを吹くのですが、ハーモニカ・プレイヤーとしてよりもそのシンガーとしての資質がまず素晴らしい人です。少し高めの艶とハリのある美しい声で広い音域を自在に使って多彩な表現をします。
今まで私が出会った黒人のミュージシャンに「私はブルーズを歌っている」というと何人もに「オマエ、ジュニア・パーカー」を知ってるかと訊かれました。ブルーズシンガーと言えばジュニア・パーカーだと言った人もいます。日本ではギターとか楽器をしないで歌だけのブルーズマンはなかなか人気が出ないのですが、何度も言います「ブルーズはギター・ミュージックではなくヴォーカル・ミュージック」です。
I am her drivin’ wheel(オレは彼女の駆動輪だ)という歌詞にあるように彼女のために働いて金をつぎ込んでいる男の話。
1962年デュークレコードからリリース
3.Driving Wheel / Junior Parker

最後はモダン・ブルーズの先駆けで土着的なブルーズの良さも持ち合わせたブルーズマン、ロウエル・フルソン。昔、ロウエル・フルソンのアルバムを一緒に聴いていた友達が「この人って上手いの?」と私に訊いたことがありました。
そり言葉はまさにロウエル・フルソンの個性を表していると思います。今日今まで聞いた三人はブルーズを知らなくても何となく歌が上手い人というのがわかるシンガーです。ところがフルソンは歌もギターもゴツゴツしていて、ジュニア・パーカーのように流暢な歌ではないし、ボビー・ブランドのように包み込むような歌でもなく、またB.B.のように素人耳にもわかるソウルフルな感じでもないわけです。独特のフレイジングというか節回しがありますが歌い上げるようなことはなく、どこか戦前のカントリーブルーズの素朴さとか土臭さを感じさせる歌です。しかし、その歌に昆布のような深い味わいがありブルーズは歌が上手いとか下手とかいうテクニックの問題ではないのだとフルソンを聴くと思います。
1967年の作品ですでにソウルの時代に入っていた当時の黒人音楽に対応したファンキーな曲ですが、やはりイナたい味わいがたまらなくいいです。
4.Tramp / Lowell Fulson

三回に渡ってお送りしたブルーズ名唱。15曲全て紹介できませんでしたが、「ブルース&ソウル・レコーズ」のWEB版(https://bsrmag.com)にアクセスしていただければ、スポティファイで無料で全て聴くことができます。ぜひ訪ねてください。この番組のHPもご覧ください。