2022.06.24 ON AIR

現代のロックの女王になったボニー・レイットの新譜

Just Like That/Bonnie Raitt (Redwing RW R081)

ON AIR LIST
1.Waitin’ For You To Blow/Bonnie Raitt
2.Made Up Mind/Bonnie Raitt
3.Blame It On Me/Bonnie Raitt
4.Just Like That /Bonnie Raitt

ボニー・レイットは私とほぼ同年齢だから中高生の頃にはフォークだけでなくフォーク・ロックの影響を受けていたと思う。ボブ・ディランがアコギからエレキに移り、バーズやバッファロー・スプリングフィールド、CSNYなど、もちろん白人女性なのでカントリー&ウエスタンのテイストもあったと思う。そして彼女は大学生の時に黒人ブルーズマンのフレッド・マクダウェルやハウリン・ウルフに強い影響を受けて大学をドロップアウトしてミュージシャンの世界に入っていく。つまり彼女の中にはデビューの時点でフォーク、フォークロック、カントリー、ブルーズのテイストが詰まっていた。それらの音楽を約半世紀、彼女はしっかり煮込んでいろんなミュージシャンとのコラボで様々な音楽を吸収し、でも根幹は変わることなく50年が過ぎてボニー・レイットはアメリカ音楽のトップの領域で現役の女性シンガーとして唯一無二の存在となった。自分のバンドをしっかり持ち、ツアーをやりレコーディングをするという近年の彼女の淡々とした活動ぶりは本当に素晴らしい。そして、今回新しいアルバム”Just Like That”を四月にリリースした。1971年にファースト・アルバムがリリースされ今回が通算21作目。

今回私はこのアルバムをLPレコードで買ったのだが、B面の1曲目のファンキーなこの曲がまず気に入りました。

1.Waitin’ For You To Blow/Bonnie Raitt

かっこいい曲です。ボニーのバンドは大体メンバーがいつも決まっているのですが、昨年キーボードのマイク・フィネガンが癌で亡くなりまして、グレン・パッチャというキーボード・プレイヤーが参加しています。ギターはジョージ・マリネリだったのですが、ケニー・グリーンバーグという新しいギタリストが多くの曲に参加しています。プロモ・ビデオとかテレビ出演の最近のボニーの映像を見ていると2人とも参加しています。
ドラムはリッキー・ファター、そしてベースも変わらずジェイムス“ハッチ”ハッチソン、この2人が安定のグルーヴ出しています。
次の曲はボニーらしいどっしりした8ビートの曲です。

2.Made Up Mind/Bonnie Raitt

ボニー・レイットはドラッグや酒に溺れながら音楽をやっていた日々もありました。そういうパーティみたいな毎日の生き方が音楽をやる上で必要なんだと思っていたと語っていますが、それがあまり意味もないことに気づき軌道修整しました。それが80年代半ばのことですからかなり長い間酒とドラッグに溺れていたんですね。でも軌道修正できたのは本当に良かった。そして、89年「ニック・オブ・タイム」で3部門のグラミー賞を獲りました。本当に素晴らしいアルバムでした。その後の来日公演、私も行きました。その時「売れてなかった時はずっと1人でコーヒー・ショップや小さな店を回って演奏していた。今またバンドを持って日本来られて本当に嬉しい」とMCしていました。
ドラッグや酒に溺れていた日々も今となっては全く無駄ではなかったと僕は思います。彼女の今の歌の中に、その声の中にその時の苦しさや悔しさが生きていると思います。
次の曲がめちゃくちゃいいです。89年の「ニック・オブ・タイム」に収録されていた”Too Soon To Tell”に似たムードの曲。
ブルージーなオルガンの音色から始まり目の前で歌っているような彼女の声と気だるい彼女のスライド・ギターの音色がたまらない曲です。

3.Blame It On Me/Bonnie Raitt

こういう雰囲気の曲はなかなかできないです。やはり熟練のミュージシャンたちです。いいバンドですね。

フレッド・マクダウェルからスライド・ギターを教えてもらった頃から半世紀以上が過ぎて、ボニーは今やスライド・ギターの名手となりました。他の誰も弾けない彼女の個性あふれるスライドギターの音色は彼女の歌に美しい色づけしています。絶対に無理をしない自分のスタイルで落ち着き払ってギターを弾き、歌う様子は本当に見事です。
彼女は結婚も離婚もあり、レコード会社との戦いもありました。今彼女がコンスタントにアルバムをリリースしてライヴツアーを続けている姿は励みになります。
最後にフォーキーなアルバム・タイトル曲”Just Like That”

4.Just Like That /Bonnie Raitt

ボニーは早くから人種差別や性差別反対運動に参加し、戦争に反対の立場も明確にしています。また貧しい人たちの救済、核廃絶や環境汚染問題にも積極的に関わって来ました。自分にギターとブルーズを教えてくれた師匠ともいうべきフレッド・マクダウェルやシピー・ウォーレンスのお墓の建立にも資金を提供しています。社会的、政治的にも自分の考えがはっきりある女性ですが、音楽でも自分のスタイルがこれからどんどん円熟していくと思います。昔も今も美しい女性ですが、生き方も美しい人だと思います
ボニーは三月から九月のニューアルバムのリリースツアーを全米で行なっている最中です。来日して欲しいですね。いいアルバムですよ、”Just Like That”