2023.11.10 ON AIR

60年代にハーレムで誕生したグルーヴするリズム

Birth Of The Harlem Grooves On Fire(Fire/P-Vine 94045)

ON AIR LIST
1.Don’t Make Me Cry / Ti Mattison
2.People Sure Act Funny(When Thy Get A Lotta Money)/Titus Turner
3.Dig Yourself/Les Cooper & The Soul Rockers
4.The Squeeze(Part1)/Horace CooperAnd The Band
5.The Squeeze(Part2)/Horace CooperAnd The Band

今日ON AIRするアルバムはタイトルが”Birth Of The Harlem Grooves On Fire”
Birthは誕生でハーレムはニューヨークの黒人街、最後のFireはこのアルバムのレコード会社のレーベル名。つまり「ファイア・レコードが録音したハーレムでのグルーヴの誕生」ということになるのだが、ではグルーヴとは何かとなる。黒人音楽だけでなく最近は「この曲のリズムがグルーヴしている」とか「あのバンド、めちゃグルーヴしてる」とか言うようになりましたが、グルーヴとはまず「溝」という意味があります。そこからずっと続く溝から「うねり」つまり海の波のようなうねりだと僕は思います。そのうねりから音楽のビートのいわゆる「ノリ」も含めて、体が自然に動いて踊ってしまうようなリズムのことだと僕は解釈しています。つまりグルーヴしていないビートは僕なんかがやっている音楽ではダメな音楽ということになります。バンドのリズムが合っているだけでなく、そこに「うねり」がないとグルーヴしているということにはなりません。また、このグルーヴは演奏する人たち、バンドによって作られるグルーヴ感は違ってきます。グルーヴには素晴らしいという意味もあります。
まず、このアルバムの1曲目 1962年録音

1.Don’t Make Me Cry / Ti Mattison

実はこのアルバムはP-VineレコードのスタッフがFireレコードの音源からサックスのキング・カーティスやギターのコーネル・デュプリー、そしてドラムのバーナード・パーディが参加した、あるいはクレジットされてないがおそらく彼らであろう録音を選んだものです。その3人というのはソウル好きの方ならよく知っているアレサ・フランクリンのライヴアルバム「アメイジング・グレイス」の録音メンバーであり、60年代から黒人音楽に多大な貢献をした人たちです。
次は1962年の録音でシンガーとしてよりソングライターとして名前の通っているタイタス・ターナーが歌った曲。
ドラムはバーナード・パーディ、ギターはコーネル・デュプリー

2.People Sure Act Funny(When They Get A Lotta Money)/Titus Turner

この曲ようなラテンリズムのテイストが入った曲が1955年リリースのレイ・チャールズの”I Got A Woman”の大ヒット以降たくさん作られたのでしょう。レイの”I Got A Woman”のヒットは後の大大ヒット”What’d I Say”に繋がっていきます。タイタス・ターナーさん、曲調も歌い方もレイ・チャールズの影響が感じられる。レイ・チャールズがソウル・ミュージックを作ったひとりと呼ばれる所以もわかる。それにしてもパーディのこのラテンビートのドラムはすばらしい。
そしてレイ・チャールズの”What’d I Say”の影響を受けている曲が次の曲で、解説にはアイズレー・ブラザーズの”Shout”の影響もあると書いてあるが確かにその二つの大ヒットをミックスしたような曲。歌も歌うピアニスト、レス・クーパーとソウル・ロッカーズといういかにもなB級バンドの名前。こういうB級感が好きになれないと黒人音楽の本質にはなかなか迫れない。一流はもちろん一流で素晴らしいのは間違いないのですが、「これってパクリやないの」みたいなB級感が黒人のストリート・ミュージックでたくさんあります。これもドラムはバーナード・パーディ

3.Dig Yourself/Les Cooper & The Soul Rockers

50年代60年代はインストルメンタルのダンス・ナンバーのヒットがたくさんありました。ビル・ドゲットというオルガン・プレイヤーが大ヒットさせた曲で”Honky Tonk”というのがあります。この曲はオルガン奏者だけではなくギターやサックスでも演奏されるほど幅広く売れた曲でした。僕がこの曲を知ったのはブルーズ・ギターの名人、ロバートJr.ロックウッドが演奏したヴァージョンでした。クラブやダンス・パーティではシンガーが休憩する間の時間にそういうインストのダンスナンバーが不可欠でした。Honky Tonkとは安酒場という意味ですが、その”Honky Tonk”のメロディをギターで入れ込んでそこにキング・カーティスのサックスが強烈にブロウした曲が次の.The Squeeze。果物のレモンなんかを搾るスクゥーザーという調理器具がありますが、まさにエロティックな意味も備えた絞る、きれいにいうと抱きしめるという意味。ブルーズの歌詞にはよくSqueze Meというのもあります
これがパート1,2とあるのですが、キング・カーティスの炸裂するサックスを聞いてもらいたいので両方続けてON AIR!

4.The Squeeze(Part1)/Horace CooperAnd The Band

5.The Squeeze(Part2)/Horace CooperAnd The Band

ファンキーでグルーヴしてます。ギターソロもいいんですが、ギターのリズム・カッティングもたまりません。

50年代半ばから60年代にかけてブルーズがR&Bからソウル、ファンクになっていく時代に今日聞いてもらったようなダンサブルな、まさにグルーヴした音楽が黒人たちの間で流行っていました。つまり、踊れるようなリズムのグルーヴがあるというのがダンス・ミュージックの必須。
今日はファイア・レコードのハーレムでのグルーヴの誕生Birth Of Harlem Grooves On Fireでした。このアルバムなかなか面白いです。年末の宴会、パーティのBGMとしていかがでしょうか。ではまた来週、Hey Hey The Blues Is Alright