2016.07.22 ON AIR

Bob Dylan 新譜”Fallen Angels” スタンダード・カバーアルバムに込められた想い

Fallen Angels/Bob Dylan (Columbia 88985316001) アナログレコード
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ON AIR LIST
1.Young At Heart/Bob Dylan
2.All The Wayt/Bob Dylan
3.Skylarkt/Bob Dylan
4.On a Little Street in Singaporet/Bob Dylan
5.Come Rain Or Come Shinet/Bob Dylan

 

 

 

 

今日は5/25にリリースされたボブ・ディランの新譜”FALLEN ANGELS”をアナログレコードで聴きましょう!今回もレコードの中に小さなカードが入ってまして、そこにデジタル用にダウンロードする番号が書いてありまして、デジタルで聴きたい人はまあ自分でダウンロードやってくれという、まあ最近レコードを出しているミュージシャンはみんなそうなんですが、すっかりこういう形が定着しました。
前作『シャドウズ・イン・ザ・ナイト』の続編のような内容で、ディランは再びジャズ・スタンダードのカバー・アルバムをリリース。
今回も自分のバンドと一緒にレイドバックしながら繊細なサウンドとゆったりしたグルーヴの中、ディランは気持ち良さそうに歌っています。
まずは一曲目、このアルバムの1曲目、フランク・シナトラが1953年に大ヒットさせた曲です
「もしも、君の心が若ければおとぎ話のようなことも本当になって起こるかも知れない。君の心が若ければ不可能に思えることにもむかうことができる。もし、その夢が破れて粉々に散ってしまっても笑っていられる。過ぎ行く毎日がますますエキサイティングになる。そして君の心に愛が生まれ始めるか、生まれるかも知れない。君の心が若ければ・・・」
Young At Heart

ディランは数年前にラジオの番組をやっていたんですが、選曲からDJもすべて自分でやって流し、一曲一曲について自分の思いや思い出を語っていました。On Airされる曲はブルーズからR&B,カントリー、ソウル、ファンク、ジャズ、スタンダードとアメリカン・ミュージックすべてでしたが、その曲に対する見識もあるし自分の思いもたくさんあってその語りを聞いているだけで素晴らしいものでした。そして、その時もフランク・シナトラについて語っていたのを覚えてますが、こんなにシナトラに影響されているとは思わなかったです。今回はすべてシナトラが歌った曲ではないですけど、やはりシナトラからジャズ・スタンダードへの道を知ったのだと思います。
「誰かがあなたを愛してくれるなら、ずっと愛してくれなければダメだよ。君を元気づけてくれる誰かが必要な時、君のそばにずっといる人じゃないとダメだよ。僕はずっと君のことを好きだけどね」
All The Way

次の曲はアメリカの偉大なポピュラー・ミュージックの作曲家であるホーギー・カーマイケルが書いた曲です。ホーギー・カーマイケルはレイ・チャールズが大ヒットさせた”Georgia On My Mind”そして永遠の名曲”Star Dust”、ブルージーな”Rockin’ Chair”そしてこれから聴いてもらうSkylarkと、いまも歌い継がれている曲がたくさんあります。ディランも子供から少年期にかけて彼の曲をたくさん聴いて、鼻歌のように歌っていたと思います。このスカイ・ラーク(ひばり)はホーギーが作曲、作詞がこれまたアメリカの偉大な作詞家ジョニー・マーサー
「(空を飛ぶひばりに向かって)ひばりよ、何か僕に言いたいことはないのか。教えてくれないか、僕の恋人になる人がどこにいるのか。霧がたちこめる草原でキスを待っている人はいなかったかな」すごくロマンティックな歌ですが、ディランはこういう歌も好きなんですね。
Skylark

僕の父親はジャズは聴いてなかったんですが、ナット・キング・コールやプラターズのレコードを買ってきては聴いてました。それは僕が小学生の頃のことなんですが、ラテン・ミュージックも流行っていて、僕はどういうわけかおやじに連れられてグランド・キャバレーと呼ばれる大きなキャバレーにおやじに連れられていって、坂本スミ子さんとアイ・ジョージさんがラテンを歌われるのを見ました。それはそれは素晴らしかったです。
ラジオでもジャズ・スタンダードやラテンミュージックが流れてましたが、アメリカにいるディランは小さい頃にもっともっとそういう歌をたくさん聴いてたんでしょう。
次の歌もシナトラが歌っている曲でなんか異国情緒がある曲です。寂しげな顔したすてきな女性とシンガポールの小さな通りで出会い恋に落ちたムードのある歌です。
On a Little Street in Singapore

年を取って来たディランは自分が愛したアメリカのポップ・ミュージックの中から消えていきそうないい曲を残したいでしょうね。歌のひとつひとつに彼の愛着をすごく感じます。そして、前回と同じようにディランのバンドのメンバーが素晴らしいサウンドを作っていることも大切なポイントで、本当にいいバンドです。本来、ホーンセクションが入っているところを自分たちの楽器だけで遜色のないサウンドを作っているところも素晴らしい。

これもいまも歌い継がれているスタンダード曲です。
「君のことが好きや、他の誰かが君を好きになるよりも好きや。雨が降っても、空が晴れても。山のように高く、河のように深く君が好きだ。曇りの日もあれば、太陽が輝く日もある。お金がある時もあればない時もある。でも、僕は君と一緒にいる。雨が降っても晴れてもね」
Come Rain Or Come Shine

今年75才になるディランがこれからどうなっていくのか、どんなアルバムをリリースしてくるのかすごく興味のあるところです。
アメリカではもう新しいツアーが始まっていると思います。ツアーを一緒に回るのはメイヴィス・ステイプルズだそうです。来年は是非、ふたりで来日して欲しいですね。