2020.06.19 ON AIR

Sam Cooke-1
いまも歌い継がれ、語り継がれるサム・クック

(Keen 86106)

(Keen 86106)

 

ON AIR LIST
1.You Send Me/Sam Cooke
2.Ain’t Misbehavin/Sam Cooke
3.Lover Come Back To Me/Sam Cooke
4.(I Love You) For Sentimental Reasons /Sam Cooke
5.(What A )Wonderful World/Sam Cooke

ブラック・ミュージックを聴いていると必ずサム・クックという名前に出会います。そして、R&Bとかソウル・ミュージックを聴き続けているとそこにはサム・クックが残した音楽的な遺産がたくさんあることを知ることになります。
この番組でも以前、サム・クックの特集をやったことがありますが、今年に入ってサムがゴスペルからR&Bに移ってキーンレコードでリリースしたソロ・アルバム5枚がボックスセットでリリースされました。彼がポップ、R&B、ジャズを歌った初期の録音になります。『The Complete Keen Years 1957-1960』というタイトルですが、最初の『Sam Cooke』(1958年)、『Encore』(1958年)、『Tribute To The Lady』(1959年)、『Hit Kit』(1959年/編集盤)、『The Wonderful World Of Sam Cooke』(1960年)の五枚です。
それを記念して今日から三回に渡ってサム・クックの特集をやってみようと思います。
まずはその一枚目アルバムタイトル「Sam Cooke」に収録されている1957年の大!大!大ヒット。R&Bチャート、ポップチャートともに1位になったこの曲です。
1.You Send Me/Sam Cooke

サムはキーンレコードに入る前にスペシャルティ・レコードと契約していたのですが、それはリード・ヴォーカルとして抜擢された「ソウル・スターラーズ」というゴスペル・カルテットでのレコーディングでした。このグルーブはサムの前にR.H.ハリスという素晴らしいリード・シンガーがいて、実はサムはそのハリスを尊敬していて歌い方の影響も強く受けていました。「ソウル・スターラーズ」は元々人気のあるグループでしたが、サムが加入してからサムは若いしハンサムなので若い人たちとくに若い女性ファンがたくさんつくようになりました。それはゴスペルの世界ではちょっと珍しいことで、そういう人気が出たこともサムがいつかR&Bというポップ・ミュージックに行きたいと思った理由だったのでしょう。それで最初はそのスペシャルティレコードの社長の反対を押し切って偽名でR&B曲を発表したのですが、それは誰が聴いてもサムとわかる歌でした。そしてポップシーンへ出る気持ちが次第に強くなって、スペシャルティからキーンレコードに移籍ということになりました。キ
キーンレコードでリリースした曲はジャズスタンダードの曲が多くて僕は昔そんなに好きではなかったです。まあ、いまもすごく好きというわけではないのですが、やはり歌が上手いのでついつい聴いてしまいます。
次の曲もジャズやポピュラーシンガーがよく取り上げる曲です。
「一緒に話をする人がいないんだ。ひとりっきりだ。一緒に散歩する人もいない。まあ売れ残りってわけさ。でも、だからと言って悪さはしない。愛は君のために取ってあるから。売れ残りという表現が”But I’m happy on the shelf”棚の上で僕は幸せだ。この表現がいいですね。要するに君のことを本当に愛しているからもう他の女と火遊びみたいなことはしないんだという歌です。
2.Ain’t Misbehavin/Sam Cooke
いまの曲はオリジナルがファッツ・ウォーラーで、他にもジャズのビリー・ホリディ、エラ・フイッツジェラルドなどが歌ってます。
次の曲もビリー・ホリディ、エラが歌っていますが、よく知られたジャズ・スタンダード。邦題が「恋人よ、我に帰れ」。
こういうジャズ・スタンダードをサム・クックはなぜたくさん歌ったかということですが、サムの先輩で白人にも受けてすごい人気を博したのがナット・キング・コール。前回やったジャズシンガーでありピアニスト。キング・コールはとにかく声がよくてクールナーと言われる歌う方で、あまり派手にシャウトしたり、大声で歌ったりしないスタイルの歌い方でウケました。あと歌の英語の発音も白人的で黒人独特の発音をしないということもあったと思います。サムもそのキング・コールが歩んだ道を目指したんだと思います。そのために白人の洒落たクラブで歌っても通用するジャズスタンダードをたくさん歌ったのだと思います。
3.Lover Come Back To me/Sam Cooke

何を歌っても上手いです。でも、僕はやっぱりサムの本領はここではない気がします。でも、それはいまだから言えることで当時とにかく上を目指していこうとしていたサムにとって、こういう歌を歌うことがいちばん有効だったのでしょう。この当時、サムは若者向けには若い人たちも手軽に買う事ができるシングルで出して、お金を持っている大人たちに向けてアルバムを出してました。
次の歌も有名スタンダードで、ナット・キング・コール、エラ・フィッツジェラルド、珍しいところではリンダ・ロンシュタットが歌ってますが、サムのこのバージョンもいい感じです。
「心からあなたのことが好きなんだ。信じて欲しい。僕の心はあなたのものだ。毎朝あなたのことを想い、毎晩あなたのことを夢見る。あなたがいる時はいつでも私はひとりじゃない」
4.(I Love You) For Sentimental Reasons /Sam Cooke
I Love You・・・・と何回も出てくるんですが、それがいいですよね。
もう一曲聴いてみましょう
次の曲はこのキーンレコードでの最後のアルバム、アルバムタイトルの一部にもなっていますサム・クックの自作の素晴らしい曲です。
「歴史のことはよく知らないし、生物学もよくわからない。
科学の本のこともよく知らないし、フランス語も勉強してるけどよく知らない
でも、自分が君を愛していることはわかってる
君が僕のことを愛してくれていたら、すごく素敵な世界になるよ
地理のことも三角法なんかよくわからない
代数学のことなんかよく知らない 何の為に計算尺を使うのか知らない
でも、1タス1が2だってことは知ってるさ、そしてその1が君だったならとても素敵な世界になるだろう」
5.(What A )Wonderful World/Sam Cooke
いまアメリカでアフリカン・アメリカンの方が白人の警察官に不当に殺された事件が発端で、人種の問題の暴動が全米各地で起きています。
実はサム・クックがこの一見ラブ・ソングを実は人種の歌として作ったのではないかという話があります。「君が僕のことを愛してくれていたら、すごく素敵な世界になるよ」そして「1タス1が2だってことは知ってるさ
そして、その1が君だったなら とても素敵な世界になるだろう」という1は黒人でもうひとつの1は白人のことだという人がいます。