2020.06.12 ON AIR

忘れがたいミュージシャン、ナット・キング・コール

Nat King Cole Vol.3 /Nat King Cole(東芝EMI TOCP-9101)

Nat King Cole Vol.3 /Nat King Cole(東芝EMI TOCP-9101)

The Roots Of The Songs"A Tribute To Nat King Cole"/Nat King Cole (ODR 6467-68)

The Roots Of The Songs”A Tribute To Nat King Cole”/Nat King Cole (ODR 6467-68)

ON AIR LIST
1.Caravan/Nat King Cole
2.Stardust/Nat King Cole
3.QUIZAS, QUIZAS, QUIZAS/Nat King Cole
4.Unforgettable/Nat King Cole
5.Love/Nat King Cole

自分が洋楽を初めて聞いたのはいつ頃だろうと振り返ってみたら、たぶん自分の親父がレコードをもってよく聞いていたこの歌手だったのではと思う。自分は小学校低学年。10才くらいだったか。

1.Caravan/Nat King Cole
元々はジャズのデューク・エリントンが彼の楽団のトロボーン・プレイヤー、ファン・ティゾールと作った曲です。歌詞はあとからつけられました。エリントンの原曲も中南米のテイストのあるリズムとメロディでしたが、このキング・コールのバージョンはよりテンポを早くして更にラテンのリズムを強くしてます。当時はアフロ・キューバン・ジャズと呼ばれました。歌はもちろんですが全体の演奏のクオリティが素晴らしく高くてグルーヴ感にあふれてます。途中のキング・コールのピアノ・ソロも絶品。
キング・コールは黒人ですから、僕は早くから黒人音楽を聞いていたことになるのですが、当時は子供ですから黒人も白人もわからなかったのは当然です。
ナット・キング・コールはいわゆるジャズシンガーにカテゴリーされるミュージシャンですが、ジャズから更にポップス寄りの歌がヒットしたことで有名になった人です。ホーギー・カーマイケルが1927年に作り、その後歌詞がつけられた超有名曲です。本当にたくさんのシンガーがカバーしていますが、僕はこのキング・コールの歌がいちばん好きです。
もう珠玉の歌声です。
2.Stardust/Nat King Cole
僕の親父が1960年頃にどういうつもりでナット・キング・コールを買ってきていたのかわからないんですが、ひとつには最初に聴いた「キャラバン」のようなアフロ・キューバンのラテン系音楽が当時流行っていてクラブやキャバレーに行くとバンドがそういうのを演奏して、それでいいなと思って買ってきたのだと思います。
当時グランドキャバレーと呼ばれる大きなキャバレーがあり、何故か親父に連れられて行った記憶があります。その時オーケストラをバックにラテンの曲を歌っていたのが坂本スミ子さんとアイ・ジョージさんでおふたりとも歌が素晴らしかった覚えがあります。
次の曲もラテンの曲です。
3.QUIZAS, QUIZAS, QUIZAS/Nat King Cole

次の曲もたくさんのシンガーがカバーしてますが、1991年にナット・キング・コールの娘のナタリー・コールが、亡くなったお父さんの音源に自分の歌をオーバー・ダビングしてこの曲を録音して、翌92年グラミー賞の”Song Of The Year”を受賞したことを覚えている方もいると思います。
「忘れられないあなた、どこにいても忘れられないあなた。心から離れない愛の歌のように、いままでのどの人よりもあなたを思う気持ちが心にあふれる」
聞いてもらうのはキング・コールの1951年のオリジナルです。
4.Unforgettable/Nat King Cole

ナット・キング・コールが白人にまで人気を得たことはのちの黒人シンガー、例えばサム・クックが成功の道を登る指標となりました。まずスーツとかタキシードで身なりをしっかりして、ヘアースタイルもこざっぱりする、そして歌うときの発音も黒人のなまりを出さずきれいな発音で歌うこと。黒人独特のジョークやそぶりもしないこと。サムはこれを肝に銘じて成功への階段を上がって、白人の高級クラブ「コパ・カバーナに出演するところまでたどり着きましたが、キング・コールはラスベガスの超有名クラブでその前にそういうライヴをやっています。白人層も巻き込んだキング・コールの成功は1950年代当時画期的なものでした。
1964年、もう誰もが知っている、日本語バージョンもあるスタンダード曲です。この曲が最後のヒット曲となり翌65年にナット・キング・コールは絶頂期だったのに45才で亡くなりました。肺がんでした。
5.Love/Nat King Cole
1930年代最初はジャズ・ピアニストとして活躍していたのですが、1937年にピアノ、ベース、ギターという編成でナット・キング・コール・トリオを結成して、その時にあるクラブのオーナーに歌も歌ったらどうだと言われて、本人はあまり気が進まなかったが歌うとこれがすごい人気でスターダムを駆け上がりました。

うちの亡くなった親父も聞いていたナット・キング・コールは、自分の子供時代を思い出させる僕にはちょっと切ない音楽です。親父がお酒と女の人が好きだったのであまり一家団欒な家庭ではなかったのですが、日曜の午後なんかに親父の部屋から聴こえてくるナット・キング・コールはロマンティックでいいものでした。
ナット・キング・コールは僕にとってUnforgettableなミュージシャンですが、うちの親父も僕にとってはいろんな意味でUnforgettableな人です。