2021.08.27 ON AIR

ゴスペル界の先駆者として多くの人に愛されたシスター・ロゼッタ・サープ

Sister Rosetta Tharpe/The Original Soul Sister (PROPER PROPERBOX51)

ON AIR LIST
1.Rock Me /Sister Rosetta Tharpe
2.This Train /Sister Rosetta Tharpe
3.Trouble In Mind /Sister Rosetta Tharpe
4.Didn’t It Rain / Sister Rosetta Tharpe
5.Strange Things Happening Every day /Sister Rosetta Tharpe

今日はリスナーのマメザウさんという方からリクエスト頂いたシスター・ロゼッタ・サープをOn Airします。
ゴスペルだけでなくジャズやブルーズなど他のジャンルとの共演も多かった女性ゴスペル・シンガーの大人気者、シスター・ロゼッタ・サープ
歌だけでなくギターを弾く女性シンガーのパイオニアでもあり、彼女は男性ギタリストも顔負けのギター名人でもある。しかし、彼女が活躍を始めた40年代特にゴスペル界はとても保守的で女性シンガーがギターを弾いて歌うことにも批判的で、教会以外の劇場やナイトクラブ、テレビなどでもゴスペルを歌う彼女に対する批判も多くありました。
とにかくいろんな意味でシスター・ロゼッタ・サープはゴスペル界のパイオニアでした。
1915年にアーカンソー州で生まれたロゼッタのお母さんはゴスペル・サーキットでは「マザー・ベル」と呼ばれる名の知れたシンガーでした。6才でギターをマスターした彼女は子供の頃から母とゴスペル大会で歌っていた根っからのゴスペル・シンガーです。ちなみに彼女が属したキリスト教のプロテスタントの一派サンクティファイド派は早くからコルネットやピアノ、ギターなどの楽器を取り入れることやその時流行っている音楽の要素を取り入れることを良しとした一派でした。もちろん教会でいろんな楽器を持ち込むことに批判的な人たちもたくさんいました。
その後シカゴに移住し独特のビブラートやフレイジングの歌とブルーズから影響を受けた卓越したギターの技とパフォーマンスで人気が出たロゼッタは1938年デッカ・レコードからデビュー。
そのデビュー曲は有名なゴスペル曲”Precious Lord”を作ったトーマス・ドーシーが書いた”Rock Me”
この曲はゴスペルで初めてのミリオンセラーです。
神様に「私たちの愛のゆりかごで私を揺らしてください。そして私をあなたの祝福された家に連れていってください」
1.Rock Me /Sister Rosetta Tharpe

Rock Meと同時に録音されたのが次の彼女のオリジナルの”This Train”
途中で彼女が弾く素晴らしいギター・ソロもよく聞いてください。
2.This Train /Sister Rosetta Tharpe
この曲はのちにブルーズのリトル・ウォルターが歌詞を変えて歌ってチャート一位になった”My Babe”の元歌でもあります。このあたりにもブルーズとゴスペルが密接した関係にあることがわかります。
今の二曲がスマッシュ・ヒットしてロゼッタの才能に目をつけたのが当時の黒人音楽のスーパー・スターのキャブ・キャロウェイや白人のジャズプレイヤー、ベニー・グッドマン。
彼女の古い映像が今YOUTUBEで見ることができますが、シンガー&ギタリストとしての才能だけでなくその存在とパフォーマンスがとてもファンキーで、それまでのゴスペルシンガーのイメージとは違うショー的な楽しさがあります。そのあたりにショー・ビジネスの人たちが惹かれて共演を申し込んだのだと思われます。

次はブルーズのトラッドな曲です。
3.Trouble In Mind /Sister Rosetta Tharpe
ラッキー・ミリンダー楽団とは何年も一緒にツアーを回ったり、レコーディングしてジャズ的な歌やブルーズも歌ったのですが、実はその間も彼女は本来のゴスペルをやりたいと思っていたようです。
次の”Didn’t It Rain”はマヘリア・ジャクソンなどゴスペル・シンガーがよく歌う曲で、「雨は降らなかったのか」というタイトルですが、これは40日40夜雨が降り続けたという聖書の創世記にある「ノアの箱船」の話をルーツにしたものです。神様が正しく生きない人間を戒める為に40日40夜ずっと雨を降らせ、ノアの家族と動物など生き物だけは箱船で生き残るという話です。ここにもブルーズとの関連があり、マディ・ウォーターズのブルーズ”40Days And 40 Nights”もこの話を元にしています。そして、黒人音楽、特にゴスペルはやはり聖書を理解していないとわからないことが多いです。
4.Didn’t It Rain / Sister Rosetta Tharpe
1947年録音 一緒に歌っていたのはゴスペル・シンガーでありピアノ・プレイヤーでもあるマリー・ナイト

エルビス・プレスリーやキース・リチャーズ、エリック・クラプトンなども彼女に影響を受けたと語っていますが、彼女は“God Mother Of Rock & Roll”「ロックンロールの母」とも呼ばれてロックンロールの殿堂入りもしています。
シスター・ロゼッタはゴスペルの世界からは非難もされましたが、ゴスペルという音楽を白人にも知らしめた最初の黒人女性ゴスペルシンガーでもありました。そして彼女のあとを追うように同じゴスペルシンガーのクララ・ウォードがナイトクラブでゴスペルを歌うことを始めました。もちろんマヘリア・ジャクソンのようにそういうショー・ビジネスの世界では歌わないゴスペル・シンガーも多くいます。
でも、やはり黒人音楽の根っこを掘っていくとブルーズやジャズそしてゴスペルは同じ土地の同じ水を吸って互いに影響しあいながら大きくなっていったのだと思います。
もう一曲
「不思議なことが毎日起こっている。神様は聖なる光で暗闇に明かりに与える。目の見えない者に視力を与えた」
イントロと途中のギターソロもすごいですが、とても親しみやすいメロディと掛け合いのコーラスなどあって多くの人に受けたのがわかります。
歌詞が違えば普通にR&Bとしてヒットするような曲ですが、実際ビルボードのチャートのトップ10に入りました。ゴスペル曲が普通のチャートに入るのは本当に珍しいことです。
5.Strange Things Happening Every day /Sister Rosetta Tharpe
毎日不思議なことが起こると神様の力を賛美した歌です。

まだまだいい曲がたくさんあるシスター・ロゼッタ・サープなのでまたON AIRします。You Tubeで彼女の映像がいくつか出ていますのでぜひ見てください。本当に素晴らしいです。