2021.08.20 ON AIR

私が愛するソウル・シンガー、O.V.ライトの魅力その3

A Nickel And A Nail And Ace Of Spades / O.V.Wright
(Back Beat/P-Vine PCD-7303-07)

ON AIR LIST
1.Ace Of Spades / O.V. Wright
2.A Nickel And A Nail / O.V. Wright
3.I Can’t Take It / O.V. Wright
4.Don’t Let My Baby Ride / O.V. Wright

前回まではなかなかヒットが出せないでいた1960年代のO.V.ライトの話をしましたが、70年代に入りO.V.の救世主のように現れたのがメンフィスのハイ・レコードのプロデューサー、ウィリー・ミッチェル。
そして、録音のバックを務めることになったバンド「ハイ・リズム・セクション」(ドラム:ハワード・グライムス、ベース:リロイ・ホッジズ、キーボード:チャールズ・ホッジズ、ギター:ティニー・ホッジス)を得たことでO.V.はやっと本領を発揮します。
「ハイ・リズム・セクション」の彼らは元々O.V.とはメンフィスでは顔なじみで、たぶんO.V.にも安心感と信頼の気持ちがあったと思います。
そして、1970年10月チャート11位まで上がる曲がリリース。
「オマエがどんなカードを出しても俺には勝てないんだよ。俺がスペードのエースなんだ。俺が一番強いんだ。オレを打ち負かすことできないんだよ。心の底から愛しているからどうか俺を打ち負かそうなんてしないでくれ」
30過ぎのO.V.ライト、そのパワフルな迷いのない素晴らしい歌を聴いてください。
1.Ace Of Spades / O.V. Wright
O.V.の代表的なアップテンポのダンス・ナンバー。パワフルでソウルがギュウと凝縮しているような歌で文句なしの素晴らしい曲です。このアルバムの前のアルバム”8Men And 4Women”と比べると格段と曲やサウンドのクオリティが上がり、少し古い60年代っぽかったのが新しい70年代の感じになっています。
やはり、プロデュースとバック・ミュージシャンの力、そして曲の力はすごいです。

今の曲もそうですが次の曲もサザン・ソウルの名曲であり、名唱です。
「以前は愛もたくさんの金も持っていた。でもどういうわけか俺はしくじってしまった。いま俺のポケットにあるのは5セントと釘だけだ。みんなに笑いかけて陽気にやっているけど持っているのは5セントと釘だけだ」こういう曲の内容が思いっきりブルーズな曲の表現が本当にリアルなO.V.ライトです。
1971年リリース
2.A Nickel And A Nail / O.V. Wright
この曲はR&Bチャートの19位まで上がりました。
ちょっとこれくらい重量感を持って濃厚なソウルを歌えるシンガーはいないし、これほど歌の内容にリアリティを出して歌えるシンガーもあまりいません。
このアルバムを初めて聞いた頃は全曲好きになって毎日これを聞いてました。ソウルの歌っていうとサム・クック、ソロモン・バーク、ジョニー・テイラー、ビル・ウィザースと好きな歌手はたくさんいるんですが、立ち上がれないくらい自分の心の奥底をやられた感じでした。サザン・ソウル、メンフィス・ソウルというと一番有名なのはオーティス・レディングということになるのでしょうが、O.V.は歌の奥深さ、上手さも説得力もO.V.ライトがトップだと確信しています。
3.I Can’t Take It / O.V. Wright
今の曲はオーティス・クレイも録音しています。クレイのバージョンもいいです。聴き比べてみてください。
このアルバムからバック・バンドとして参加しているハイ・リズム・セクションのメンバーの1人、キーボードのチャールズ・ホッジズと会ったときに彼が録音に参加した、アル・グリーン、アン・ピーブルズ、オーティス・クレイたちのことを聞きました。その時「O.V.ライトは?」と聞くと「彼は別格、特別だ」と言いました。それは歌手としてだけでなく存在としてメンフィスの音楽シーンでは特別なシンガーなのだという意味でした。どういう風に特別なのかもっと聞けばよかったのですが・・・。
でも、O.V.が歌っている曲を他のシンガーのものと比べてみるとなんとなくその意味がわかるような気がします。
4.Don’t Let My Baby Ride / O.V. Wright

結局、チャート20位内に入った曲が17曲あるのですが、そのほとんどはウィリー・ミッチェルがプロデュースしたものでした。
今回聞いたのは1972年にリリースされたO.V. Wrightのアルバム”A Nickel And A Nail And Ace Of Spades”でした。ソウルのアルバム特にサザン・ソウルのアルバムとしては屈指の一枚です。一生聞けるアルバムなので是非ゲットしてください。
音源はP-Vine RecordsからリリースされたBox Setからです。