2023.10.13 ON AIR

ブルーズ・ライヴ名盤 vol.7

イギリスはじめヨーロッパのミュージシャンに大きな影響を与えたライヴ「アメリカン・フォーク・ブルーズ・フェスティバル」

The Original American Folk Blues Festival (Polydor)

ON AIR LIST
1.We’re Gonna Rock/Memphis Slim
2.I Wanna See My Baby/T.Bone Walker
3.Let’s Make It Baby/John Lee Hooker
4.Hey Baby/Shakey Jake
5.I’m In Love/T.Bone Walker

60年代中頃にイギリスのロックがビートルズを筆頭に盛り上がりアメリカにまで飛び火して、多くのイギリスのミュージシャンたちがアメリカで売れたことを「ブリティッシュ・インベンジョン(British Invasion)」と言うのですが、ブリティッシュ・インベンジョン(イギリスの侵略)と呼んだくらいイギリスのロック・ミュージシャンたちの動きが活発でした。
ビートルズと並びその大きな動きのひとつがローリング・ストーンズやアニマルズ、ゼム、ヤードバーズといったブルーズをルーツに求めたバンドの活躍でした。いわゆるブリティッシュ・ブルーズも同時に盛り上がりそれはやがてエリック・クラプトンのクリームやジミ・ヘンドリックスといった新たなロックの元にもなりました。その火種のひとつが60年代最初にイギリスやヨーロッパをツアーして本物のブルーズを生で聞かせた「アメリカン・フォーク・ブルース・フェスティバル」というコンサートの開催でした。恐らくこの企画で初めて黒人ブルーズに接したヨーロッパ人も多かったと思います。これはブルーズだけでなくロック・ミュージックにも非常に重要な出来事で、ヨーロッパとりわけイギリスのロックに与えた影響はかなり強かったと思います。
今回のブルーズ・ライヴ名盤は”The Original American Folk Blues Festival 1962”
最初に開催されたのは1962年。ライヴ音源が残っているのはその62年のドイツ、ハンブルグのスタジオにお客さんを入れて開催されたものです。
まず、一曲
メンフィス・スリムがピアノとヴォーカル、ギターがT.ボーン・ウォーカー、ベースがウィリー・ディクソン、ドラムがジャンプ・ジャクソンというメンバー

1.We’re Gonna Rock/Memphis Slim

今のはメンフィス・スリムが得意としていたブギの曲で彼のブギ・ピアノの素晴らしさも存分に披露されています。スリムのピアノやT.ボーンの素晴らしいギターソロに自然と拍手が起こってます。
このライヴ・バンドでギタリストはT.ボーン・ウォーカーだけなのでメンフィス・スリムだけでなく、ジョン・リー・フッカーやサニー・テリーとブラウニー・マギーのバックもやるというとても珍しい貴重な音源になってます。
では、そのT.ボーンが歌っている曲を

2.I Wanna See My Baby/T.Bone Walker

お客さん、めちゃ盛り上がってます。やはり当時にしたらエレキ・ギターということもありますが、T.ボーンのギターの素晴らしいプレイには盛り上がるでしょう。
次の組み合わせはこのアルバムの中で最も貴重かも知れません。同じブルーズといってもフィールドは広くてジャンルも多いですからなかなかセッションする機会がないブルーズマン同士もいます。このジョン・リー・フッカーのバックでT.ボーンがギターを弾いているなんてこのアルバムしかないかも知れません。

3.Let’s Make It Baby/John Lee Hooker

曲のパターンと歌詞はジョン・リーの代表曲「ブーン・ブーン」なんですが”Let’s Make It Baby”なんて違う曲名をつけているところにジョン・リーのしたたかさを感じます。それにしてもワン・コードのブルーズなのか3コードなのか2コードなのかわからなくてT.ボーンも「おいおい!どうなってんねん」いう感じでしょうね。でも、これがジョン・リー・フッカーですから。

次はハーモニカ・プレイヤーのシェイキー・ジェイク。彼はマジック・サムの叔父さんでサムとの共演が多かったのでサムのアルバムなんかで知っている人も多いと思います。
歌っている曲は・・・これリトル・ウォルターの”Everything’s Gonna Be Alright”やんかとツッコミ入れたくなりますが、タイトルはHey Babyになっています。バックの演奏がさすがのクオリティです。

4.Hey Baby/Shakey Jake

メンフィス・スリムのピアノ、ギターがT.ボーン・ウォーカー、ベースがウィリー・ディクソン、ドラムがジャンプ・ジャクソンというメンバーによるバッキングのリズムとサウンドがグルーヴしているので、フロントのミュージシャンがだれになってもクオリティのある演奏になってます。1962年というこのライヴが録音された時代ではまだこういう安定したブルーズが楽しめたということですね。

もう一曲T.ボーンのテイクがすばらしいので聞いてください。ギター、歌とも彼でしかできないプレイでやはりモダン・ブルーズギターの父です。

5.I’m In Love/T.Bone Walker

ともかく縦横無尽に惹かれるT.ボーンのギターとドライな歌声がたまりません。
こういういい演奏をしたことでお客さんの評判もよく、「来年も来てくれないか」という要請があったのだと思います。またヨーロッパに行った黒人ブルーズマンたちもたくさんの人たちに歓迎され、演奏もじっくり聞いてくれたので満足だったのでしょう。ここから「アメリカン・フォーク・ブルーズ・フェスティバネル」はシリーズ化されて続くことになります。
次回は翌年1963年のコンサートをライヴ名盤でとりあげたいと思います。