2024.03.01 0N AIR

特集「ダウンホーム・ブルーズとは・・・」vol.1

見事なダウンホーム・ブルーズのコンピレーション・アルバム,CD4枚組全108曲

“DOWN HOME BLUES-CHICAGO 3”

ON AIR LIST
1.Black Spider Blues/Robert Lockwood Jr
2.Bring Me Another Half Pint/Sonny Boy Williamson I
3.County Jail Blues/Big Maceo
4.I’m A Highway Man/Big Joe Williams

僕もこの番組で「ダウンホーム・ブルーズ」とか「ダウンホームなムード」とかよく言いますが、ダウンホームって何だ?と思っている人もいると思います。ざっくり言えばダウンホームというのは黒人(アフリカン・アメリカンの人たち)にとってのホーム・故郷、南部のことで、ダウンホーム・ブルーズは故郷の香りのするブルーズのことです。特に40年代50年代は南部のミシシッピ、アラバマ、アーカンソー、テキサス、ルイジアナといった南部の州からより良い生活を求めてシカゴやデトロイト、ニューヨークなど北部の都市に移り住んだ黒人たちがたくさんいてそんな彼らが南部の香りのするブルーズを懐かしんで望んだということです。

それで今回聴くのはWienerworld(ウィンナ・ワールド)というレコード会社から最近リリースされているその名も“DOWN HOME BLUES-CHICAGO 3”
以前に1と2がリリースされていてそれも紹介しましたが、また素晴らしいコンピレーション/選曲でVol.3の登場です。
こういうコンピレーション、つまり編集ものは編集する人のセンスが反映されるところが面白いところですが、このシリーズはとてもセンスがいいです。そしてダウンホーム・ブルーズがどんな音楽か聴いてもらえるコンピ盤です。
CD4枚組全108曲ですからめちゃ聞き応えあります。まずCD-1の1曲目を聞いてみましょうか。74年に来日して70年代の日本のブルーズ・ムーヴメントの大きなきっかけを作ったロバート・ロックウッドJrの若き日の録音です。
1941年ロックウッド26歳の録音です。曲名がブラック・スパイダー・ブルーズ(黒い蜘蛛のブルーズ)「お前は嫌な黒い蜘蛛だ。お前の蜘蛛の巣が町中に張られている。俺はお前の蜘蛛の巣を引き裂いてしまう赤い蜘蛛を手に入れるつもりさ」多分黒い蜘蛛は嫌な、意地の悪い女性のことで赤い蜘蛛はいい女性のことなんでしょう。

1.Black Spider Blues/Robert Lockwood Jr

ロバート・ロックウッドJrは有名なロバート・ジョンソンの義理の息子、つまりロックウッドのお母さんがロバート・ジョンソンの恋人だったわけです。それでロックウッドはジョンソンにギターを教えてもらった唯一のブルーズマンなんですが、随所にそのロバート・ジョンソンの影響があります。
次はサニーボーイ・ウィリアムスン
ブルーズ史上にはサニーボーイ・ウィリアムスンという名前のハーモニカ・ブルーズマンが二人いることは何度も話してきましたが、どちらかというと後から出てきた本名ライス・ミラーのサニーボーイ2の方が話題になることが多いのですが、ブルーズ・ハーモニカ・プレイヤーとしての功績はサニーボーイ1(本名ジョン・リー・ウィリアムスン)もかなり大きなものがあります。まだハーモニカの音をアンプを通していない生の音の時代ですが、ハーモニカのテクニック、残した楽曲の素晴らしさなどは2より大きいかも知れません。リトル・ウォルターもジェイムズ・コットンもジュニア・ウエルズもシカゴで活躍したハーモニカ・プレイヤーはみんな彼の影響を受けています。
曲はのちにジミー・ロジャースが吹き込んだ”Sloppy Drunk”(大酒飲み)の元歌ですね。

2.Bring Me Another Half Pint/Sonny Boy Williamson I

バンドのビートが生き生きスウイングしてます。ぼくは最近アンプを通したハーモニカよりこういう生のハーモニカの音の方が好きになってきました。やっぱりハーモニカ本来の柔らかい音がするんですよ。
次はたくさんのピアニストに影響を与えた偉大なブルーズ・ピアニスト、ビッグ・メイシオ。曲名が「カウンティ・ジェイル・ブルーズ」ですから郡の刑務所に入れられた歌ですが、何で刑務所に入れられたかは歌われてなくて「奴ら(たぶん白人)がやってきてオレを刑務所に入れたんや」と始まり「刑務所にいて人生のほとんどの時間が過ぎていく」と嘆いてます。昔は、いや今も白人による黒人に対する不当な扱いは日常茶飯事ですからこういうブルーズが歌われるのも当然だったのでしょう。

3.County Jail Blues/Big Maceo

ロバート・ロックウッドJr、サニーボーイ・ウィリアムスン1,ビッグ・メイシオとシカゴ・ダウンホーム・ブルーズの大物が続きましたが、次はかのボブ・ディランが憧れた放浪のブルーズマン、ビッグ・ジョー・ウィリアムス。
自分で作った9弦ギターは来日したときに僕も日比谷野音で間近で見させてもらいましたが、何がどうなってどんなチューニングなのか見ても演奏を聴いてもさっぱりわからない代物でした。彼には”Highway 49”という有名なブルーズがあるのですが、このアルバムに収録されているのも放浪のブルーズマンらしい「俺はハイウェイマン」と歌った放浪もの。「俺はハイウェイマン、つまり放浪の男。行くのを邪魔しないでくれ」

4.I’m A Highway Man/Big Joe Williams

歌声も豪快な放浪のフルーズマンらしいタフでラフなビック・ジョー・ウィリアムス。彼の名曲”Baby Please Don’t Go”は僕も去年リリースしたブルーズ・ザ・ブッチャーのアルパム”I Feel Like Going Home”でカバーさせてもらいました。
今日はダウンホーム・ブルーズのコンピレーション・アルバム,CD4枚組“DOWN HOME BLUES-CHICAGO 3” の1枚目を聞きました。
レアな音源も入ってCD4枚組全108曲で6000円ちょっと。英文ですが詳しい解説と写真のブックレットも付いているのでそんなに高くないと思います。来週もダウンホーム・ブルーズに親しんでいただきたいのでCDその2を紹介します。