2024.04.26 ON AIR

レイ・チャールズのブルーズ

“The Genius Sings The Blues” & “Yes Indeed!”

ON AIR LIST
1.The Midnight Hour/Ray Charles
2.Night Time Is The Right Time/Ray Charles
3.I’m Movin’ On/Ray Charles
4.Lonely Avenue/Ray Charles
5.Hard Times/Ray Charles

いろんな分野で才能のある人のことを「天才」とか英語で「ジニアス」とか言いますが、僕はあまりそう呼ぶのが好きではないです。もちろん才能があることはわかるんですが、天才と呼ばれるのは桁外れに才能がある人のことで普通は才能よりもかなり努力している人のことだと思います。安易に天才という言葉を使うのはその人の努力を見ていないようで好きではないです。でも、今日聞いてもらうレイ・チャールズは天才だと思います。しかも努力の人でもありました。
実際彼がステージに呼び出される時のMCでは”Ladies & Gentleman,Genius Ray Charles”と呼ばれています。

今日はそのレイ・チャールズのブルーズ時代の素晴らしい曲を聴いてみようと思います。レイがまだ自分のオリジナルのヒットを出す前、彼は50年代ウエストコースで売れていたピアノのブルーズマン、チャールズ・ブラウンみたいになりたいと思いチャールズ・ブラウンのような曲を作って歌ってました。そのチャールズ・ブラウンの影響がもろにわかるブルーズを聴いてみましょう。
1952年アトランティック・レコードでの最初のセッションで録音された曲です。

1.The Midnight Hour/Ray Charles

ジャズ・テイストのブルーズです。レイには悪いのですがこれと言った特徴のない曲です。40年代から50年代はまだレイの才能が開花する前で同じ黒人で広く人気のあったチャールズ・ブラウンやナット・キング・コールなどが彼の目標だったんですね。
次は大手のABCレコードに移籍する直前にアトランティック・レコードから1959年にリリースされたシングルです。このブルーズのテイクでは完全にレイ・チャールズらしさが出ています。つまりゴスペル・テイストが溢れていてブルーズがR&Bに移行していく新しさが感じられます。イントロのサックスの切り込み方もブルージーでカッコいいし、途中から歌うレイのバック・コーラス「レイレッツ」の女性シンガー、マージー・ヘンドリックスの強烈な歌声も忘れられません。

2.Night Time Is The Right Time/Ray Charles

今の曲は60年代にレイ・チャールズ大好きシンガー、イギリスのジ・アニマルズのエリック・バードンが録音してます。ぼくは中学生の頃、最初にこの曲を聞いたのはそのエリック・バードンが最初でした。
レイ・チャールズには50年代にリリースしたブルーズをコンピレーションした”The Genius Sings The Blues”というブルーズ・アルバムがありその中に入っている次の曲が好きで何回かトライして歌ったのですがなかなかうまく歌えない曲です。バックの演奏も難しい曲です。オリジナルはカントリー&ウエスタンの有名シンガー、ハンク・スノウです。

3.I’m Movin’ On/Ray Charles

カントリー・ウエスタンのオリジナルなんですがブルーズであり、ゴスペルでありR&Rっぽくもあるというクールな曲です。今のも1959年のリリースですがやはりすでにレイ・チャールズのサウンドが出来上がってます。
1954年にレイは”I Got A Woman”という曲をリリースするのですが、それが彼を有名にした曲でブルーズをベースにしながら新しいR&Bサウンドと彼の素晴らしい歌唱が花開いた曲です。
次の曲は名ソング・ライター、あの「ラストダンスは私に」のドク・ポマスが書いた曲です。
「君がこの街からいなくなってから寂しい日々だ。部屋には窓が二つあるが陽は差さない。泣きたいよ、死にたいよ。私は寂しい通りに住んでいるよ」

4.Lonely Avenue/Ray Charles

レイ・チャールズは60年代に”Georgia On My Mind”はじめ数えきれないくらい後世に残る曲を発表しました。白人のカントリー&ウエスタンの曲も自分流のゴスペル・マナーで歌い、アレンジしてゴスペルのようにするんですが、でもどこかに白人にも受けるようにポップス性を残したアレンジやサウンドにするという技。
次のハード・タイムズはレイ・チャールズ自身が作った曲で曲も詞も素晴らしいブルーズ曲です。
「おふくろが亡くなる前にオレに言った。私は天国へ逝く時が来たけど神様へのお祈りを忘れるんじゃないよ。辛い時期がやってくるから」
ジャズ風のテンション・コードを混じえて醸し出すフルーズのムードはレイ・チャールズならではの重さ。そして見事なサックスのソロ。やはりレイは偉大です。

5.Hard Times/Ray Charles

こういう曲はムードがすごく大切なんですが、コードをそのまま弾いてもレイの歌声もそうなんですが全体のサウンドがなかなかこんな感じにはならないんです。歌声のテイスト、ピアノのタッチ、サックスの音色とフレイジング、ドラムやベースのバックアッブ。短い曲ですがすごく難しい曲です。

今日はレイ・チャールズのブルーズアルバム”The Genius Sings The Blues”と”Yes Indeed!”という二枚のアルバムから選曲しましたが、レイの音楽が如何にフルースとゴスペルに根ざしているかがわかる二枚です。
是非ゲットして聞いてみてください。
実はまだあまり発表できないのですが先日、盟友のギターの山岸潤史がニューオリンズから帰って来ましてと盟友のヴォーカリスト上田正樹、そしてコーラスのYoshie.Nに入ってもらって四人でレイ・チャールズの曲をアコースティックで少しレコーディングしました。またリリースされる日にちがわかったら番組で紹介します。それから一言、先場所の大相撲で優勝した青森五所川原出身のタケル富士、素晴らしかったです。おめでとうございました。相撲ファンとしては本当に気持ちのいい力士の登場を喜んでます。また国技館に見に行きます。