2019.07.12 ON AIR

シカゴ・ブルーズの名門レーベル「チェスレコード」の兄弟レーベル「チェッカー」の蔵出しブルーズ vol.1

Blues From The Checker Vaults (ONE DAY MUSIC  DAY2CD245) 
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ON AIR LIST
1.All My Love In Vain/Sonny Boy Williamson II
2.Come On Baby/Rocky Fuller
3.Trouble Trouble/Lowell Fulson
4.Rocker/Little Walter
5.Crazy For My Baby/Willie Dixon

今日聴くのはここ数年レコード店でよくみかけるONE DAYレコードというイギリスのレーベル、レコード会社のコンピレーションです。
タイトルが”Blues From The Checker Vaults”というのですが、チェッカーと言うのは有名なチェスレコードの子会社というか兄弟レーベルでブルーズからリズム&ブルーズのたくさんミュージシャンが所属してました。このVaultというのはワインなんかのお酒の地下貯蔵庫という意味とか、貴重品の保管室という意味がありますが、Blues From The Checker Vaultsというのは「チェッカーレコードの貴重な倉庫からのブルーズ」という意味でしょう。
面白いのはサニーボーイ、エルモア・ジェイムズ、リトル・ウォルター、ロウエル・フルソン、J.Bルノアといった有名ブルーズマンが収録されているのに彼らのヒットしたものではなく、あまり有名ではない曲が選ばれているところです。
まずはサニーボーイ・ウィリアムスン
南部ですごい人気のあった彼をシカゴのチェスレコードがレコーディングに迎えたときは、ギターにロバート・Jr.ロックウッド、マディ・ウォーターズ、ピアノにオーティス・スパン、ドラムにフレッド・ビロウという錚々たるメンバーで出迎えました。この曲は1959年チェスがリリースした”Down And Out Blues”に収録されています。
ステディなミディアム・テンポのシャッフルビートが堪りません。まさにシカゴ・ビートです。
1.All My Love In Vain/Sonny Boy Williamson II
サニーボーイは南部にいた頃のブルーズも素晴らしくて、このチェスレコードで録音したものにひけをとらない素晴らしさなんですが、Sonny Boy Williamsonという名前を広く知らしめたのはやはりこのチェス・チェッカー録音。

次はロッキー・フラーという名前のブルーズマンなんですが、このコンピレーションの中でもひときわダウンホーム感がたまらん感じで印象に残ります。実はこのロッキー・フラーさんはルイジアナ・レッドというブルーズマンの若き日の芸名でなんですが、プレイボーイ・フラーとかギター・レッドとかいろんな芸名を使って最終的にルイジアナ・レッドになりました。そのルイジアナも別にルイジアナの出身でもルイジアナで活躍していたわけでもないんですね。ええ加減と言えばめちゃええ加減ですがおもろいです。本人に「なんで?」と理由を聞きたいところです。
2.Come On Baby/Rocky Fuller

次はB.B.キングが尊敬したロウエル・フルソン。フルソンは40年代半ばからレコーディングしていて初期の頃の録音はかなりいなたいです。モダン・ブルーズ・スタイルでやりながらもそのイナタさが残っていて、それが彼の大きな魅力になってます。
次の曲もホーン・セクションも入ってモダン・ブルーズ仕立てなんですが、フルソンの武骨な歌とギターがどこかいなたい男っぽさを感じさせてくれます。
とにかく歌がいいです。
3.Trouble Trouble/Lowell Fulson
フルソンは今日のこのチェッカー・レーベルでは1954年から約10年間在籍して”Reconsider Baby”というチャート3位まであがるヒットも出しました。
このチェッカーのあとケントレコードに移籍して”Tramp””Black Night””Too Many Drivers”とブルーズの名曲を残しました。

次はチェッカーと言えば、まずリトル・ウォルター。1952年にリリースしたインストルメンタル曲”Juke”がチャートの1位になって”Off The Wall”とか”Tell Me Mama”とか”My Babe”とかちょっと新しいリズム&ブルーズ的なテイストもありつつヒットを出していくのですが、当時まだ20代前半。キャデラックに女の子たくさん乗せてシカゴの街を走り回ってたそうです。親分マディ・ウォーターズの言う事だけは聞いたそうですが、あとはもう傍若無人。喧嘩も絶えない奴やったそうです。
1954年 ギター、デイヴ・マイヤーズとロバートJr.ロックウッド、ベースはウィリー・ディクソン、ドラムにフレッド・ビロウ、そしてハーモニカ、リトル・ウォルターという50年代シカゴ・ブルーズ鉄壁のメンバーで録音されたまさにロックしてロールするインストナンバー。
4.Rocker/Little Walter
うーん、やはりこれだけハーモニカで豊かな表現をできるブルーズハーモニカ・プレイヤーはいないですね。そしてリズムの素晴らしさ。
当時、50年代のシカゴのチェスレコードの全盛というのは、やはりベーシストでソングライターであったウィリー・ディクソンのプロデューサーとしての功績なくしては語れません。とにかく時間に遅れてくる奴、二日酔いでくる奴、酒がないと演奏できない奴、やたらギャラのことばかり言うやつ、とにかく一筋ならではいかないブルーズマンたちを集めてレコーディングですから。そこにちょっとした新しいエッセンスを落とした録音を残しました。その縁の下の力持ちウィリー・ディクソンの歌を聞いてみましようか。
5.Crazy For My Baby/Willie Dixon

2019.07.05 0N AIR

いまも輝く60年代サザンソウルシンガー、ボビー・パウエルの名唱

In Time/Bobby Powell (P-Vine PLP-712)
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ON AIR LIST
1.In Time/Bobby Powell
2.C.C.Rider/Bobby Powell
3.It’s Getting Late In The Evening/Bobby Powell
4.Cry To Me/Bobby Powell
5.Into My Own Things/Bobby Powell

ボビー・パウエルを最初に聴いたのはサザン・ソウルが好きな友達に作ってもらったカセットテープでした。1970年代中頃だったか。
そのカセットはあまり有名ではないサザンソウル・シンガーたちの珍しいシングル盤を録音したもので、その中でもボビー・パウエルの歌がすぐに気に入りました。
それで彼のレコードを探したけれど、当時彼のアルバムに出会うことはなかったのだけど、1980年に日本のP-Vineレコードがジュエルというレーベルのリリースを始め、そこで初めてボビー・パウエルのアルバム、今日聴いてもらう”In Time”と出会った。
では、まず僕がそのカセットで心を揺さぶられたボビー・パウエルの名唱、名曲です。

1.In Time/Bobby Powell
サザン・ソウルの匂いがプンプンする名曲でバックのリズムとサウンドもすべてが南部の素晴らしいテイストに彩られています。P-Vineからアルバムがリリースされた80年頃、日本ではちょっとしたサザン・ソウル・ブームでサザンソウル・フリークスの間では「ボビー・パウエルいいよね。日本に来ないかな」と話題に昇りました。当時オーティス・クレイやO.V.ライト、アン・ピーブルズとかサザン・ソウルのシンガーたちが相次いで来日していたので期待しましたが、彼の来日はなかったです。

ボビー・パウエルは盲目のシンガーでピアノも弾きます。同じように盲目でピアニストのレイ・チャールズの影響をやはり受けているようで、次の曲なんかにそのテイストが少し感じられます。
昔からあるブルーズで最初の録音は1920年代半ばの女性シンガー、マ・レイニーですが、57年にR&Bシンガーのチャック・ウィリスがカバーしてR&Bチャートのトップになりました。とにかくたくさんのカバーがあります。C.C.Riderの表記もSee See Riderというのもあります。そこからEasyRiderにもなっています。
See See RiderやEasy Riderは尻軽女、尻軽男という意味や浮気者という意味があって、この歌は「尻軽女よ、自分のやったことを見てみなよ。オレを惚れさせといてなんやオマエには男がおるんやんか。なんやねん」という歌です。
ボビー・パウエルのこの曲はR&Bチャートの12位まで上がりました。レイ・チャールズやボビー・ブランドなどが歌いそうなゴスペル・テイストのブルーズになってます。
2.C.C.Rider/Bobby Powell
ボビー・パウエルの1965年録音の”C.C.Rider”
チャック・ウィルス、レイ・チャールズ、ジャズブルーズのジミー・ウィザースプーン、ロックンロールのジェリー・リー・ルイス、ロックではグレイトフル・デッド、ブルーズではレッド・ベリー、ビッグビル・ブルーンジー、ライトニン・ホプキンス、ミシシッピー・ジョン・ハート、そして僕の大好きなエスター・フィリップスとまだまだいるんですが、これだけカバーされている曲も珍しいです。このブルーズに共感する人が多いということですね。

次はいかにも60年代のソウルという曲で途中のサックス・ソロなんかも60年代ソウルのムードたっぷりです。ウィルソン・ピケットやソロモン・バークが歌いそうな曲です。
3.It’s Getting Late In The Evening/Bobby Powell

このジュエルからリリースされているボビー・パウエルのアルバムは元々もっと小さな「ウィット}というレコード・レーベルからリリースされていました。
アメリカには一攫千金をねらった本当に小さなレコード会社がたくさんあります。当然売れなくてシングル、2,3枚出して終わりというレーベルもあります。この「ウィット」というレーベルは60年代中頃に出来たのですが、このボビー・パウエルのヒットおかげで結構シングルをリリースしています。ちなみにレーベル名の「ウィット」とはプロデューサーのライオネル・ウィットフィールドからつけた名前だそうです。

ボビー・パウエルはルイジアナのバトン・ルージュの生まれでやはり最初は教会のゴスペル・シンガーとして歌を始めています。
60年代に入ってR&Bの世界でデビューするのですが、その頃は南部のサザンソウルもすごく活気があった時代でオーティス・レディングはじめ、サム&デイヴやウィルソン・ピケット、O.V.ライトと素晴らしい歌手がたくさんいた頃です。彼もそういったシンガーにひけを取らない素晴らしいシンガーだということが次の一曲でもわかります。
もう教会にいるような気分させられるゴスペル・テイストのソウル・ナンバーで盛り上がったときのパウエルのシャウトがダイナミックです。
4.Cry To Me/Bobby Powell

ボビー・パウエルは70年代半ばくらいまではチャートに上がるようなヒットも出していたのですが、1980年頃からゴスペルの世界に戻ってしまいショービジネスの世界からはすっかり足を洗ったようです。
まだ生きていると思いますが、歌えるなら一度ライヴを聞きたいシンガーのひとりです。
最後は70年代初期の録音なのでファンク・テイストも入った重量感のあるダンスナンバーです。
5.Into My Own Things/Bobby Powell
2012年にはP-VineレコードがCDでこのアルバム”In Time”をリリースしているのでまだ中古屋さんにあるかも知れません。探してみてください。いいアルバムです。

2019.06.28 ON AIR

LPレコードで聴く、50年代ニューオリンズのリズム&ブルーズの偉大なシンガー、スマイリー・ルイス

I Hear You Knocking/Smiley Lewis (Imperial/United Artists Records UAS30167)
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ON AIR LIST
1.I Hear You Knockin’/Smiley Lewis
2.Bumpity Bump/Smiley Lewis
3.Down Yonder We Go Ballin’/Smiley Lewis
4.Shame Shame Shame/Smiley Lewis
5.One Night/Smiley Lewis

今日は50年代ニューオリンズ・リズム&ブルーズの代表的なシンガー、スマイリー・ルイスさんです。
今日聴くスマイリー・ルイスを武骨な男っぽいジャンプ・ナンバーのシンガーとして好きだったのですが、改めて聴いたらバラードにも独特の哀愁があることに気づきました。
スマイリー・ルイスさんは本名”Overton Amos Lemons”というのですが、いつもニコニコだったのでスマイリーって呼ばれたかどうかそれはわかりませんが、確かにいろんな写真見るとほとんど笑ってます。
1913 年ルイジアナの生まれでスマリーさんはギターも弾きますが、録音ではほとんど弾いてないです。ニューオーリンズR&Bシンガーとしては、ファッツ・ドミノと双璧のスマイリー・ルイスは1947年にレコード・デビューし、1949年からインペリアル・レコードで録音を始めて後世に残る曲をたくさん録音しました。エルヴィス・プレスリーがヒットさせた「One Night」もスマイリーがオリジナルです。

まずはスマイリー・ルイスと言えばこの曲、1955年R&Bチャート2位の大ヒット”I Hear You Knockin'”
「だいぶ前にオレを残して出ていったオマエがいまドアを叩いている。ノックしているのは聴こえてるけどね部屋には入れないよ。いままでいた男のところに戻ればええやん。オレは行かないでくれと頼んだよ。でもオマエはさいなら言うて出てった。いままでおったとこに戻った方がええんとちゃうか。オマエはオレとは合わへんねん。ノックしているのは聴こえてるけど、部屋には入れへんよ」
昔出ていった女が戻ってきたけど、オマエなんか部屋に入れへんよという仕返しの歌ですね。こういう歌がチャートの2位になるというのは、共感する人が多いんでしょうね。
1.I Hear You Knockin’/Smiley Lewis
同じニューオリンズのファッツ・ドミノや、イギリスのデイヴ・エドモンズなどカバーもたくさんある名曲”I Hear You Knockin’”

スマイリー・ルイスさんはジャンプ・ナンバーでの豪快な歌いっぷり人気のシンガーでしたが、次の曲はジャンプ・ジャズ・ブルーズの名シンガー、ビッグ・ジョー・ターナーの「シェイク、ラトル&ロール」と同じような曲調です。「シェイク、ラトル&ロール」は1954年のチャートナンバー1の大ヒットですから、影響を受けるのも当然かと思います。
2.Bumpity Bump/Smiley Lewis
こういう曲を聴くとリズム&ブルーズがロックン・ロールのベースになっていることがよくわかります。
僕のバンド「blues.the-butcher-590213」のKOTEZくんが新しいアルバムの録音に選んできたのが次の曲です。
ニューオリンズのマーチングのファンキーなリズムがルーツになっている楽しい曲です。ライナーノーツにはdelightful country dance feel(楽しい田舎のダンスの感じ)と書いてありますが、まさにそんな感じです。
3.Down Yonder We Go Ballin’/Smiley Lewis

50年代当時のニューオリンズのR&Bの録音の多くは、プロデューサーでありアレンジャーでありソングライターのデイヴ・バーソロミューのオーケストラによって演奏されていました。ドラムにアール・パーマーやロバート・フレンチ、ベースがフランク・フィールズ、ビアのにヒューイ・スミスとかホーンセクションはリー・アレン、アルヴィン・タイラー、そしてデイヴ・バーソロミューなど当時のニューオリンズの最強メンバーなのでリズムもサウンドも最高です。
次の曲はスマイリーさんにとってはI Hear You Knockin’に次いでヒットした曲でした。強力なリズムの渦を楽しんでください。
4.Shame Shame Shame/Smiley Lewis

では最後にもう一曲。エルヴィス・プレスリーがカバーしてヒットさせた曲。
5.One Night/Smiley Lewis

1961年にインペリアルからオーケー・レコードに移籍。しかし、その後ヒットは出なかった。
1966年にスマイリー・ルイスはニューオーリンズで53歳で亡くなりました。若かったです。残念です。

2019.06.21 ON AIR

ブルーズの偉人、ライトニン・ホプキンスの初アルバムを聴く

Strums The Blues/Lightnin’ Hopkins (Liberty/東芝EMI LLR-8189)
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ON AIR LIST
1.Katie Mae/Lightnin Hopkins
2.Feel So Bad/Lightnin Hopkins
3.Let Me Play With Your Poodle/Lightnin Hopkins
4.Short Haired Woman/Lightnin Hopkins
5.Sis Boogie/Lightnin Hopkins

 
今日はライトニン・ホプキンスのファースト・アルバムです。
1982年に70才で亡くなるまでにたくさんのレコーディングをしました。恐らくレコーディングが最も多いブルーズマンのひとりだと思います。しかし、「ライトニンに駄作なし」と言われるほどどのアルバムを聴いても聞き応えがあり、たくさん録音がありますが打率はすごくいいです。
僕のようにライトニンのアルバムを見つけるとついつい買ってしまうライトニン・フリークがたくさんいますが、それだけ魅力があるということです。
アルバムごとにすごく違うということはありません。アルバムのコンセプトがあるとかではなく、弾き語りか、デュオか、バンド形態か、エレキかアコギかくらいの違いでどれを聴いてもいつものライトニンがアルバムにいるわけです。でも、なぜかアルバムを見つけると買ってしまう・・・まあ病気です。ライトニン病・・。
それでその数多いライトニンのアルバムから今日は彼の最初のアルバムです。アルバムと言ってもシングルを集めたものです。

まずは彼の代表曲と言われている1946年の録音
1.Katie Mae/Lightnin Hopkins
1946年という古い感じがまったくしない。すごく生き生きしたブルーズですね。
次も同じセッションで録音された曲でピアノが参加していますが、昔からライヴでデュオを組んでいたサンダー・スミス。ちなみにサンダー・スミスと名乗っていたのでライトニンと名乗ったそうです。サンダーはカミナリ、ライトニンは稲妻というわけです。
2.Feel So Bad/Lightnin Hopkins
いまの曲どっかで聴いたことあると思ったのですが、マディ・ウォーターズが歌っている”I Feel So Good”とメロディ似てます。

この録音の頃ライトニンは30半ばですからまだ声が若いです。いい声してます。この声を聴きたくて僕はライトニンのアルバムを次々買ってしまうんですね。声もいいのですが、ギターのリズムがいいんです。次のアップテンポの曲にはドラムが入ってますが、ギターのリズムがすごいのでドラム要らなかったかもと思います。
次の曲は「あの長くちぢれた毛をしている可愛いプードルと遊びたいなぁ。オレはオマエのプードルと遊びたいんや」と何回も歌ってますが、まあプードルは女性のことでしょう。オマエのプードルですから誰か他の男の彼女か、嫁さんでしようか。
3.Let Me Play With Your Poodle/Lightnin Hopkins

ライトニンも子どもの頃は普通の黒人の子どもと同じように農園で朝から夕暮れまで働かされていたんですが、同じテキサスのブルーズの偉人ブラインド・レモン・ジェファーソンを見て「オレもブルーズやりたい」となって、いとこのテキサス・アレキザンダーとこのアルバムのピアノのサンダー・スミスと酒場で演奏し始めてます。
運よく最初の録音のシングルから売れてライトニンにとっては思わぬ大金が入ってきて、金使いも荒かったようです。
では、そのヒットした曲でこれもライトニン生涯の代表曲でもあります。

4.Short Haired Woman/Lightnin Hopkins
ひとりの弾き語りでこれほどギターがスリリングにグルーヴする感じはなかなかないです。ライトニンの独壇場です。
最初にヒットした曲があって図に乗ったライトニンはレコード会社との契約など無視して、他のレコード会社からレコーディングの誘いがあると次々録音してお金をもらうわけです。完全に契約不履行ですが、そもそも契約なんてどういうことかもわかってなかったと思います。それに当時の黒人ブルーズマンのレコーディング契約なんてレコード会社に有利になっていて、最初にまとまったお金を渡すだけで、その後売れてもブルーズマンには金が入ってこないのがほとんどですから・・。
ライトニンと同じくらいたくさんアルバムを出しているジョン・リー・フッカーも別名、偽名を使って他のレコード会社と契約してお金もらってるんですが、ライトニンの場合は別名も偽名も使わないところがすごいです。全部ライトニン・ホプキンスですから。
では、次の曲でもライトニンのギターの素晴らしいスピード感が聴けます。単音のソロのところでも、ブレイクして歌だけになったところでも、ずっとリズムが刻まれているようにグルーヴが続く素晴らしい曲です。
5.Sis Boogie/Lightnin Hopkins

このライトニンの最初のアルバムのタイトルは”Strums The Blues”つまり「ブルーズをかき鳴らす」です。それはいいのですが、ジャケット写真が白人の手がギターを弾いている写真なんですよ。ライトニンの手じゃないんですよね。しかも、ジャケットの裏の解説の最初にはLightnin Hopkins Is A True Folk Singerと書いてあるんですよ。Blues Singerではないんです。ジャケットの白人の手の写真も、そして裏に「フォークシンガー」と書いてあるのも白人に売れるようにというレコード会社の思惑が見て取れます。当時の黒人の置かれていた社会的な立場がよくわかるジャケットです。ひどいです。
ライトニンは黒人で純正のブルーズマン以外の何ものでもないです。
偉大なライトニン・ホプキンスの初期の録音集”Strums The Blues”を今日は聴きました。

2019.06.14 ON AIR

LPレコードで聴くR&Bのゴッド・ファーザー、ジョニー・オーティスのクオリティの高いキャピトル・レコード時代

The Capitol Years/Johnny Otis (Capital/Bug C1-92858,92859)
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ON AIR LIST
1.Willie And Hand Jive/Johnny Otis
2.Castin’ My Spell/Johnny Otis
3.Until We Meet Again(Bye Bye Baby)/Johnny Otis
4.Hum-Ding-A-Ring/Johnny Otis
5.Why Don’t You Do Wright/Johnny Otis(

今回聴いてもらうこのアルバム”The Capitol Years/Johnny Otis”はLP レコード2枚組です。
ジョニー・オーティスと言えばこの曲を真っ先に想い出す”Willie And Hand Jive”。この曲は有名曲でエリック・クラプトンも「461オーシャン・ブールバード」でカバーしていますが、ポップな要素もあり1958年にポップ・チャートの9位になった大ヒット。ジョニー・オーティスのいちばんのヒット曲となりました。今日はまずその曲から。

1.Willie And Hand Jive/Johnny Otis

ジョニー・オーティスは両親がギリシア人からアメリカに移民してきて、彼はカリフォルニアで生まれました。育ったのが黒人と同じエリアだったので自然と黒人音楽が身についてしまったようです。音楽に目覚めた頃は、カウント・ベイシーのようなジャズ・オーケストラが好きだったようです。最初に覚えた楽器はドラムですが、ピアノも弾くし作曲もするし歌も歌うし・・とにかくジョニー・オーティスの肩書きというのがめちゃたくさんあるんですが、ざっと挙げてみます。singer, musician(ドラム,ピアノ、ビブラホーン), 作曲家, arranger, bandleader, talent scout, disc jockey, record producer, television show host,, author, journalist, minister そして コンサートの興行主。最後のコンサートの興行主というのは40年代終わりくらいから自分がスカウトしてプロデュースしたミュージシャンたちをつれて「ジョニー・オーティス・ショー」というパッケージ・ショーを組んで全米をツアーしました。前にこの番組でもジョニー・オーティス・ショーのライヴ盤をON AIRしましたが、それも最高です。
エスター・フィリップスやエタ・ジェイムズをスカウトしてデビューさせたのもジョニー・オーティスです。そして、ビッグ・ママの大ヒット「ハウンド・ドッグ」のプロデュースも彼です。

次の曲で一緒にデュエットで歌っているのはマーシィ・リーというシンガーで、ちょっと調べてみましたがこのジョニー・オーティスとの録音しかないみたいです。ファンキーなダンス・チューンですがまさにジョニー・オーティスの真骨頂です。
2.Castin’ My Spell/Johnny Otis

当時ナット・キング・コールやフランク・シナトラも抱えていたメジャーのキャピタルレコードはメジャーな会社でスタジオのクオリティやエンジニアの腕がいいのか音がいいです。そして録音がいいだけでなく演奏がいいです。
このアルバム、すべてドラムが”ミスター・バック・ビート”アール・パーマー、ベースがカーティス・カウンス、この人はウエストコーストのジャズ系のベーシストです。そして、ギターがジミー・ノーラン、この人は知っている人も多いと思いますが、ジェイムズ・ブラウンのバンドにいて”Cold Sweat”や”I Got The Feelin’””Lickin’ Stick”など60年代のジェイムズ・ブラウンの代表曲のほとんどはこのジミー・ノーランです。たぶん、こういうスタジオ・ミュージシャンをやっていて、JBのバンドに誘われたのだと思います。それでジョニー・オーティスもウエストコーストということでウエストコーストの有名ブルーズマン、チャールズ・ブラウン・タイプのスロー・ブルーズを録音しています。と言うか、メロディはチャールズ・ブラウンの大ヒット”Driftin’ Blues”そのまんまですが・・サウンドの感じも・・
ジミー・ノーランのギターのバッキングが最高です。ちょっとしか出てこないギターソロも最高です。
「また、会う日までさよなら」という最初の”Bye Bye Baby”なんか歌詞もメロディも歌い方もチャールズ・ブラウンで笑ってしまいます。
3.Until We Meet Again(Bye Bye Baby)/Johnny Otis
いまのジミー・ノーランの短いギター・ソロでしたが、いい音色でいいフレイズであれだけですごく印象に残るもんなんですね。もちろんバッキングの丁寧なプレイは素晴らしいです。

ジョニー・オーティスは1957年から59年まで二年間キャピタル・レコードに在籍しました。大ヒット”Willie And Hand Jive”以外、キャピタルでは大きなヒットは出なかったのですが、彼の作るファンキーな音楽はブルーズ、ジャンプ・ブルーズ、リズム&ブルーズ、ロックンロールと当時の黒人音楽すべての要素をもっていて50年代R&Bの躍動を感じます。
では、一曲ロックン・ロール・タイプの曲を。
4.Hum-Ding-A-Ring/Johnny Otis
Ding-A-Ringいうのは鐘の音なんかがジャラン、ジャランもとかカンカンいう音のことで、Humいうのはハミングのことでもありますが、ガヤガヤいう意味もあって、まあわいわい騒ぐ様子のことでしょうか。
ドラムがステディで力強くてストレートで余計な音がない・・もうめちゃくちゃ気持ちいい。歌と演奏そして録音のクオリティが高いのでヒット曲がなくてもこのアルバムは聞き応えがあります。しっかりアレンジもされていてこの50年代後期のジョニー・オーティスは本当に素晴らしいです。
最後の曲はこの番組で以前ON AIRしましたが、40年代のはじめの女性シンガーのリル・グリーンが歌った曲です。「なんであんたしっかりせんの。もっとお金稼いできてや」いう歌でスローの曲ですが、それをジョニー・オーティスはインストでラテン調のファンキー仕立てにしています。原曲を知っているとちょっとびっくりのアレンジです。
5.Why Don’t You Do Wright/Johnny Otis

2012年に90才でジョニー・オーティスは亡くなりましたが、晩年は牧師さんになって社会奉仕の仕事などもやっていたそうです。
今日はギリシア系の白人でしたが魅了されたR&Bに夢中になり、最後はリズム&ブルーズのゴッド・ファーザーと呼ばれ、アメリカの音楽に大きな貢献をしたジョニー・オーティスのキャピタル・レコード時代の曲をLPレコードで聞いてみました。