2020.04.24 ON AIR

ロバート・クレイ快心のニューアルバム
Robert Cray/That’s What I Heard (Nozzle Records 72098CD)

ON AIR LIST
1.Hot /Robert Cray
2.You’re The One/Robert Cray
3.My Baby Likes To Boogaloo/Robert Cray
4.Burying Ground/Robert Cray
5.You’ll Want Me Back/Robert Cray

今日は久しぶりに気持ちよく紹介できるブルーズのニュー・アルバムです。
ロバート・クレイ・バンドの名義の新しいアルバムが2/28に約3年ぶりにリリース。アルバムタイトル”That’s What I Heard”
プロデュースがドラマーのスティーヴ・ジョーダン。プロデューサーとしての彼の手腕には素晴らしい定評がありますが、どんな風に彼がロバート・クレイをプロデュースするかということにも興味が湧きます。
とにかく現在のブルーズシーンはギターばかり弾くプレイヤーが多い中、クレイは歌がしっかり歌える、歌で勝負できる数少ないブルーズマンです。
このアルバムはどの曲をON AIRしょうか迷うほどムダな曲がありません。
収録されている曲はクレイのオリジナルとカバーが半分ずつくらい。最初に聴いてもらうのはクレイのオリジナルです。
1.Hot /Robert Cray
タイトルどおりすごく熱い演奏でスティーヴ・ジョーダンのドラムが火吹いてますが、クレイの歌とギターもそれに煽られるように燃えてます。
少し60年代のR&Bのテイストもあっていい感じです。

クレイが初めて日本に来たのは、1984年ジョン・リー・フッカーのオープニング・アクトだったんですが、その四年前に”Who’s Been Talkin’”というアルバムでデビューして日本にくる前年83年にリリースされた”Bad Influence”がすごく評判になりました。そのアルバムに収録された”Phone Booth”と “Bad Influence”というクレイ自身のオリジナル曲もすごく新鮮でブルーズ界に新しいスターが登場したというムードがありました。
実はその初来日ジョン・リー・フッカーのオープニングアクトのあと僕と近藤房之助たちとクレイは一緒に短いツアーをやりました。そのツアー最中にいろいろ話しをしたんですが、彼は1953年生まれで僕より三つ年下だとわかり、まずそれにびっくりしました。自分より年下の黒人ブルーズマンが出てきたのか・・と。彼の話ではブルーズをやる前にジミ・ヘンドリックスなんかが好きでロックをやっていたらしいんですが、高校の卒業式のイベントにブルーズマンのアルバート・コリンズが来てその演奏を観てブルーズにハマったそうです。それでブルーズの話をしているとクレイは知らないことがいろいろあって、僕の方が彼に教えるというすごく変な感じになって・・・例えば日本のレコード店のカタログを見ていると僕にこのアルパムはいいのか、とかこのブルーズマンは誰とか訊いてくるんですよ。すごく熱心で・・だからその時はまだブルーズを勉強している感じでした。
今回のアルバムでは僕も大好きな偉大なブルーズシンガー、ボビー・ブランドの曲を取り上げてくれていて嬉しいです。
オリジナルは1961年に発表されたボビー・ブランドの名盤”Here’s The Man”に収録されてます。
2.You’re The One/Robert Cray
あまりアレンジしないでオリジナルを尊重した、ボビー・ブランドへのリスペクトが感じられるクレイのカバー。

ロバート・クレイは1980年のデビュー以来ずっとコンスタントにアルバムをリリースして、僕がこう言うのも偉そうですがいつも平均点はクリアするアルバムをリリースしています。でも、いつもどこかコントロールしすぎな感じがして悪く言うと面白みに欠けるというか、ブルーズの優等生というか・・・もうちょっと破れたところがあってもいいのに・・と思ってきました。
それが今回は上手さだけではなくクレイのソウルフルなものがすごく出てきたような感じがします。
次の曲は60年代のR&Bのカバーです。シンガーであり、ソングライターでありドラマーでもあったドン・ガードナーが歌った曲です。60年代のテイストがあるんですが、決して古くないいまの感じに仕上がってます。
3.My Baby Likes To Boogaloo/Robert Cray
かっこいいです。歌がやっぱりいいです。パワフルでソウルフルです。

84年に一緒に日本を回った時に、毎晩演奏が終わると打ち上げがあるんですが、クレイはめっちゃ酒を飲む訳ではなく、すごく紳士的でもの静かに話をする人で、ある程度の時間がくるとさっとホテルに帰る真面目な人でした。来日黒人ブルーズマンの中にはすぐ日本の女性を口説きにかかったり、ずるずると飲んで泥酔したりする人を何人も観ていたんでちょっとびっくりでした。
長い時間をかけて真面目な彼は彼なりに中身の濃い音楽を作ってきたんやなと、このアルバムを聴いてちょっと感動しました。彼ももう66才です。B.B.キング亡き後先頭に立ってこれからのブルーズ界を引っぱっていって欲しいと思います。そういう風格が出来てきたような気がします。
次はゴスペルのセンセイショナル・ナイティンゲイルズの曲なんですが、センセイショナル・ナイティンゲイルズというのは1942年に結成されたゴスペル・カルテットの有名グループでゴスペルの話の中には必ず出てくる偉大なグループです。70年近くたったいまもたぶんまだ解散していないと思います。
このクレイの歌も熱いです。
4.Burying Ground/Robert Cray

もう一曲、カーティス・メイフィールドがオリジナル。1963年リリースされたカーティスがインプレッションズをやっていた初期の曲です
5.You’ll Want Me Back/Robert Cray
今日はロバート・クレイのニューアルバムThat’s What I Heardを聴いていただきました。ブルーズ界で久しぶりにお薦めのアルバムが出てきてすごく嬉しいです。是非ゲットしてください。

2020.04.17 ON AIR

blues.the-butcher-590213(ブルーズ・ザ・ブッチャー)
“Blues Before Sunrise”LPレコード・リリース特集

Blues Before Sunrise/Blues Before Sunrise(P-Vine Records PLP-6953)

ON AIR LIST
1.Blues Before Sunrise/blues.the-butcher-590213
2.Oooh-Whee-Baby/blues.the-butcher-590213
3.Dance With Me Henry/blues.the-butcher-590213
4.Willie And The Hand Jive/blues.the-butcher-590213
5.Justine/blues.the-butcher-590213

今日は手前味噌で悪いのですが、自分のバンド「ブルーズ・ザ・ブッチャー」のLPレコードが3/18にリリースされたので皆さんに聴いていただきます。
そして来月からリリースツアーが始まる予定だったのですが、コロナウィルス拡散防止のためとりあえずツアー第一弾が延期されました。
残念です。

去年「ブルーズ・ザ・ブッチャー」としての9枚目のアルバムとなるBlues Before SunriseをCDでリリースしたのですが、やはりLPレコードで出したくてリリースに至りました。それで今日はLPレコードの話をしながらアルバムをLPで聴いてもらおうと思うのですが、まず一曲聴いてもらいます。
アルバムのタイトル曲のBlues Before Sunriseなのですが、この曲は1960年にエルモア・ジェイムズがリリースした曲で夜明け前に彼女と別れて街を出ていくブルーズですが、スライド・ギターがやはりサウンドの要です。しかし、スライドギターは弾いていると気持ちいいのですが、難しいです。かのB.B.キングも一時スライドギターをやろうとしたのだけど断念したとインタビューで言ってました。では、アルバムA面の1曲目
1.Blues Before Sunrise/blues.the-butcher-590213

いまの若い人たちはもうデジタルの時代で音楽をダウンロードしたりストリーミングで聴いている人が多くて、CDも持っていないという人もいるんですよね。レコードというのはそのCDより前の時代のものですから、若い人たちにとってはすごくアナログなものに感じると思います。でも、僕はレコードがやはりいちばん音がいいと思います。音に対する感覚というのは人それぞれですから、僕の感覚を押し付ける気はないのですが、レコーディングするスタジオでの音をいちばん正確に表しているのがレコードだと思います。スタジオに広がる空気感をいちばん再現できているのがレコードです。
率直に言うとスマホやコンビューター、ヘッドホーンやイヤホーンで聞く音楽は本当の音を聴いてないことだと僕は思ってます。僕も電車に乗っている時にイヤホーンで聴いたりしますが、家にいる時は音響装置、ステレオで聴きます。音というのは空気の振動を伝わって聴こえるものですが、イヤホーンやヘッドホーンは直接耳に入ってくるので空気の振動がない。それだけでも違うのでできる限り自分の部屋でスピーカーから流れてくる音を耳で聞くのが自然だし、是非そうしてもらいたいです。
では、アルバムに収録されているメンバーのKOTEZくんが歌っている曲です。
2.Oooh-Whee-Baby/blues.the-butcher-590213

僕とKOTEZくんはツアー最中に全国にあるレコード店によく行くのですが、中古盤ですごく安くていいレコードを売っている店に出会うと嬉しいですね。レコードの時代からCDの時代になっていく頃、CDの方が音がいいというフレコミだったのですが、僕は納得できなかったですね。CDの音は確かに輪郭がしっかりしているというかシャキシャキしていて歯切れ良く聴こえるんですが、そのクリアさがすごく疲れると僕は思いました。膨らみがないというかさっき言ったような空気感がないんですね。だからCD録音に向いている音楽もあると思うのですが、ブルーズとかR&Bとかジャズなんかはやはりレコードがいいですね。
あとはCDはかなり長い時間録音できるのですが、レコードのLPは片面がだいたい20分前後。この20分で一度レコードを裏返さないといけない時間で少し耳が休まるんですね。CDで90分くらい収録時間があるアルバムなんか最後の方はもう聴いてないですもんね。そこまで音に対して集中する持続力はないんですよね。
では、今回のアルバムにもゲストで入ってくれたうつみようこさんの歌を聴いてみましょう。
3.Dance With Me Henry/blues.the-butcher-590213

音楽をながらで聞くという習慣が普通になってしまっている現在ですが、本当は家の部屋で珈琲とかお酒飲みながらスピーカーから流れて来る音楽をゆっくり聴いて欲しいですね。
僕は朝がいちばん音楽を聞く時間になっています。ロックのレコードなんかは大きな音で聴きたいので心の中で「近所のみなさん、すんまへん」と言いながら大きな音で聴いてます。
それからレコードを聞くためのステレオが高いのではと思っている人がいるかも知れませんが、いまは安いのも出てますからまず試しに買ってみてください。それで気に入ったら少しずつ高い、いいステレオを買っていけばいいと思います。そして、レコードはCDよりかさばるし収納も大変なんですが、やはり音の良さと大きなジャケットは魅力的です。聴かない時は部屋のインテリアにもなりますから、レコードのジャケットは。CDやと小さ過ぎてね、ダメですけど。
では今回のレコードが出来てきた時にこの曲がすごくパワフルに録音できているのが嬉しかったです。沼澤くんのドラムがもうドカンドカンです。
4.Willie And The Hand Jive/blues.the-butcher-590213

レコードには僕らが作っているロング・プレイいわゆるLPというのがあって大体直系30センチ、片面25分くらい録音できます。あとはEPと言われる小さいもので直系17センチほどで7分くらい収録できます。あとはドーナッツ盤とかシングルレコードと言われるEPと同じサイズのものがあります。ドーナッツ盤というのはジュークボックスでかけるために作られたと言われているのですが、まあレコード会社の押しの曲を入れていろんなお店のジュークボックスで流してプロモーション的に使われていたわけです。

今日は僕のバンド「ブルーズ・ザ・ブッチャー」のLPレコード”Blues Before Sunrise”を聴いていただきました。3/18にP-Vineレコードからリリースされています。Amazonやネットで買うことも出来ます。
ウィルスが抑制されてまたライヴが再開されれば、僕らのライヴでも販売しています。メンバー全員サインいたします。
この番組のホーム・ベージにもLPレコード出していますのでご覧になってください。

2020.04.10 ON AIR

永井ホトケ隆が選ぶブルーズ・スタンダード曲集vol.15

戦前Country Blues vol.1

The Complete Blind Willie Johnson(Columbia/Sony Music C2K52835)

The Complete Blind Willie Johnson(Columbia/Sony Music C2K52835)

King Of The Blues Entry2/ Blind Blake (P-Vine PCD-2253)

King Of The Blues Entry2/ Blind Blake (P-Vine PCD-2253)

ON AIR LIST
1.It’s Nobody Fault But Mine/Blind Willie Johnson
2.Dark Was The Night, Cold Was The Ground/Blind Willie Johnson
3.Let Your Light Shine On Me/Blind Willie Johnson
4.Blind Arthur’s Breakdown/Blind Blake
5.Diddie Wa Diddie/Blind Blake
6.Black Dog Blues/Blind Blake

以前このブルーズ・スタンダード曲の特集のテキサス編でON AIRしたブラインド・レモン・ジェファーソンというブルーズマンがいましたが、そのブラインド・レモンとほぼ同時代、1920年代にテキサスのいろんな街のストリートで歌っていたブラインド・ウィリー・ジョンソンの名曲をまず聴きたいと思います。
ブラインド・ウィリーは幼い頃に父親と喧嘩した継母が腹いせにブラインド・ウィリーの顔に洗剤をかけたために目が見えなくなってしまいました。彼は7才でした。でも、盲目となった彼はピアノやギターを覚えて主に教会で歌っていました。大きくなると「エヴァンジェリスト」と言ってギターを弾きながら歌い、神様の教えを広める伝道師になりました。なので彼が歌ったほとんどはゴスペルであり、スピリチュアルズと呼ばれる賛美歌の類でしたが、その歌声やギター・プレイなど音楽的な影響はブルーズにも及びました。とくに彼のスライドギターはかのスライドギターの名手ライ・クーダーをして「彼ほどの優れたスライドギター・プレイヤーは出て来ないだろう」と言わしめた。では、彼が初めてレコーディングした1927年の録音です
「家にちゃんと聖書があるのに読まなかった自分が悪いのだ。聖書をちゃんと読まなければ魂は救われないのだ」
1.It’s Nobody Fault But Mine/Blind Willie Johnson

ライ・クーダーが映画「パリ・テキサス」の映画音楽で使ったのがこのブラインド・ウィリー・ジョンソンの”Dark Was The Night, Cold Was The Ground”という曲でした。非常に印象的にこの曲が使われていて映画の彩りに大きな役割を果たしていました。そして、1977年にアメリカの航空宇宙局(NASA)が地球外生命体に聴かせる目的でベートーベンやチャック・ベリーの曲とともにこのブラインド・ウィリーのこの曲も無人惑星探査機「ボイジャー」に搭載され宇宙に発射されました。だからいまもこの曲は宇宙を漂っているのです。
いろんなことをイマジネーションできる素晴らしい曲です。
2.Dark Was The Night, Cold Was The Ground/Blind Willie Johnson
アメリカのNASAは粋なことをしました。いつの日かどこかにいる宇宙人がブラインド・ウィリーの曲を聴いたら・・と思うだけでなんかいいですよね。
ブラインド・ウィリーの精神はぶれることがなく彼は貧しかったのですが、終生教会やストリートでゴスペルを歌い続けました。
もう一曲彼の強烈なヴォーカル。「神様、あなたの光で私を照らしてください」
3.Let Your Light Shine On Me/Blind Willie Johnson

次はいまのブラインド・ウィリー・ジョンソンとはまったく違うブラインド・ブレイクです。
1920年代東海岸から南部そして北部のニューヨークなどでも活躍したギター名人、ラグタイム・ギターの名人、ブラインド・ブレイク。彼もまた盲目でした。
本当に素晴らしい演奏がたくさん残っているのでどれをブルーズスタンダードに選ぼうか迷うところです。ギター名人だけにギター・インストルメンタルの曲も多く、その中でもまた選ぶのが難しいのですが、僕が最初にブラインド・ブレイクを聴いたときに「これはえぐい!」と感動した曲をまず聴いてください。
4.Blind Arthur’s Breakdown/Blind Blake
見事としか言いようがないギター・プレイです。ギター・フレイズの豊かさと的確さ、リズムの正確さとギター一本で踊らせるグルーヴ感、これは確かにウケる、売れる音楽です。ビッグ・ビル・ブルーンジーなどフォロワーがたくさんいますが、このブレイクの右に出る人はいません。このギター・スタイルをギター・ラグと言います。元々はラグタイムピアノをギターでやろうとしたところから始まっているのですが、ブラインド・ブレイクはジャズの要素もちょっと入り小粋でダンサブルなラグ・タイムになってます。
次の曲は僕の昔からの友達でもある大阪の有山じゅんじくんが日本語の歌詞をつけて歌っているので、それで知っている人も多いと思います。
5.Diddie Wa Diddie/Blind Blake
こういうラグタイム・ギターで聴かれるメロディやビートには、同時代のブルーズマンのロバート・ジョンソンやチャーリー・パットンとは違う明るさ、ファンキーさがあることに気づきます。ラグタイムという音楽は基本的にダンスミュージックなんですね。まあ、いまのクラブ・ミュージックや一昔前のディスコ・ミュージックと同じものです。どれだけ早く正確に弾けるかとかどれだけ多彩なフレイズを弾けるかというのをギタリスト同士で競いあうこともあり、その中からこのブラインド・ブレイクのような超テクニシャンのギタリストが出てきたわけです。
それにしても正確なだけでなく踊らせるグルーヴ感が素晴らしいです。
次の曲はブラインド・ブレイクの曲の中ではブルーズの濃度が高い曲ですが、こういうスタイルはこのあと30年代に活躍するビッグ・ビル・ブルーンジィなどが活躍したシティ・ブルーズに引き継がれていきます。
6.Black Dog Blues/Blind Blake
いまのブラック・ドッグつまり黒い犬というのは不幸の象徴の言葉として使われています。「黒い犬がずっと着いてきてオレにつらい思いをさせ幸せな家も失った。おまえはずっとオレの心の中にいる。でも、さよならブラックドッグ、オレはオマエの悪運から逃げることにするよ」
さっきの明るいラグタイムとは違う憂いがあります。
今日はブラインド・ウィリー・ジョンソンとブラインド・ブレイクの曲の中から僕がブルーズのスタンダードと思う曲を選んでみました。同じ1920年代に黒人として生まれ、しかも目が見えず盲目というハンディを抱えながら生きたふたりの音楽のテイストはまったく違うものですが、そのハンディをもろともせず生き抜きこんな素晴らしい音楽を遺したことに心打たれます。

2020.04.03 ON AIR

永井ホトケ隆が選ぶブルーズ・スタンダード曲集 Vol.14
ジャンプ&ジャイヴ・ブルーズ-2

The Very Best Of Big Joe Turner(RHINO R2 72968)

The Very Best Of Big Joe Turner(RHINO R2 72968)

Pete Johnson 1938-1947 /Pete Johnson (document DLP-535)

Pete Johnson 1938-1947 /Pete Johnson (document DLP-535)

Ain't Nobody's Business/Jimmy Witherspoon (Crown/ビクターVIP-5007M)

Ain’t Nobody’s Business/Jimmy Witherspoon (Crown/ビクターVIP-5007M)

ON AIR LIST
1.Honey Hush/Big Joe Turner
2.Shake, Rattle And Roll/Big Joe Turner
3.Roll’em Pete/Big Joe Turner&Pete Johnson
4.Ain’t Nobody’s Business/Jimmy Witherspoon
5.Good Rockin’ Tonight/Wynonie Harris

前回のジャンプ・ブルーズ特集はほとんどキング・オブ・ジャンプ・ブルーズのルイ・ジョーダンで終わってしまいました
今日最初に聴いてもらうジョー・ターナーはジャンプ・ブルーズ・シンガーとして名を馳せた人です。背も高く体重もあったので”ビッグ”ジョー・ターナーと呼ばれることもあります。
ジョー・ターナーは30年代から70年代まで長く録音が続いた珍しいシンガーです。ブルーズを聴き始めた頃はジャンプ・ブルーズという認識がなく、ジョー・ターナーがカウント・ベイシーやアート・テイタム、デューク・エリントンなどジャズ・ミュージシャンと共演していることが多かったのでジャズ・シンガーだと思ってました。彼が初期にコンビを組んでいたピアノのピート・ジョンソンもブギウギ・ピアノの名手でしたが、ジャンルわけではジャズですが、この辺の人たちはジャンル分けが難しいです。
結局、ジョー・ターナーはジャズ、ブルーズ、R&B、ロックンロールと常にその時代の音楽に乗っかって歌いつづけました。でも、本人の歌い方は何も変わってないのですが・・。

まずは1953年R&Bチャート1位を獲得したブルーズ・スタンダードと呼ぶのにふさわしい曲。タイトルがハニー・ハッシュですから彼女に静かにしてくれと言ってるわけです。
「オレが家に帰ったらいろいろうるさいこと言うのやめてくれるか、おまえはあれやこれやずっと喋ってる」まあありがちな夫婦の光景ですが、仕事で疲れて家にやっと帰ってきたと思ったら嫁はんがガミガミうるさいこというのに辟易している歌ですが、何とこの曲ジョー・ターナーの奥さんが作詞しているとのこと、作曲が旦那のジョー。ほんまに嫁はんが書いたとしたらえらい出来た、物わかりのええ嫁はんですがな。
1.Honey Hush/Big Joe Turner

次の曲もR&Bチャートの1位。ロックン・ロールの始まりの曲とも言われている大切な曲ですが、ブルーズと言えばブルーズ、R&Bと言えばR&B、ロックンロールと言えばロックンロールな曲です。
この曲がビル・ヘイリー、エルヴィス・プレスリー、バディ・ホリーなど白人のR&Rシンガーに多くカバーされたことも彼の名前が知られることになった要因のひとつでした。いまでもこの曲をビル・ヘイリーの曲だと思っている人も多いのですが、オリジナルはこれです!

2.Shake, Rattle And Roll/Big Joe Turner
Shakeは揺らす、Rattleはガタガタ走るみたいな意味で、Rollは転がす・・でまあ男女の営みのことなんですが、これをみんなで”SHAKE, RATTLE AND ROLL”と歌って盛り上がるパーティ・ソングです。
1954年頃になるとリトル・リチャードやチャック・ベリーが人気になりアメリカ全土でR&Rのブームが起こるわけですが、ジョー・ターナーはオレもロックン・ロールになるんか・・まあええかとばかり飄々とブームの中に入っていきました。
同じアトランティック・レコードに所属していたルース・ブラウンもブルーズ・シンガー、R&Bシンガー、ジャズ・シンガーといろいろレッテルをつけられ最後にロックン・ロールの殿堂入りをした時は「ブルーズでもR&BでもジャズでもR&Rでもになんでもええよ。好きに呼んで」と言ってました。

他にも”Flip,Flop and Fly”などこの手のタイプの曲がいくつかあるのですが、この頃はブルーズ、R&B,R&Rのジャンルの線引きが難しいです。
ちょっと話が戻りますが、ビッグ・ジョー・ターナーは元々カンザス・シティで活動をしていていまから聴いてもらうピアニストのピート・ジョンソンとコンビを組んでいました。30年代のカンザス・シティはカウント・ベイシーやジェイ・マクシャンと言ったジャズマンがたくさんいて歓楽街もあり賑やかなところでした。サックスのチャーリー・パーカーもこの土地の生まれです。そのカンザスシティでビッグ・ジョー・ターナーとピート・ジョンソンは夜な夜な演奏していたわけですが、彼らが有名になったのは1938年ニューヨークのカーネギーホールで「スピリチュアル・トゥ・スイング」というコンサートで評判になったからです。
では、ジャンプ・ブルーズの名シンガー、ビッグ・ジョー・ターナーとブギウギ・ピアノの名人ピート・ジョンソンの歴史的な演奏です。
3.Roll’em Pete/Big Joe Turner&Pete Johnson

さっき名前の出た同じくカンザス・シティが活躍していたジェイ・マクシャンのオーケストラにヴォーカルとして入ったのがジミー・ウィザースプーンでした。今日名前が出ている人たちはジャズのカテゴリーに入れられていることも多いので、しかもオーケストラをバックに歌っていることからブルーズファンでも馴染まない人も多いのですが、次のブルーズをじっくり聴いてみてください。コントロールされた歌の中にじわじわと出てくるブルーズの熱さがあるのですが・・・どうでしょうか。
「頭がおかしくなってショットガンで彼女を撃っても、オレのやったことだからほっといてくれ。チキンとダンプリング(日本語に訳すとだんごですかね、肉だんごもあれば甘いパイで包んだものもあります)を食べてしまって次の日に食べるものがなくてもオレのやったことやからほっといてくれよ。日曜に一日中教会にいたのに、次の月曜にはずっとキャバレーで飲んだくれてる。でもオレのやったことやからほっといてくれよ」
僕が生まれて初めてレコーディングした曲もこの歌でした。
1948年R&Bチャートの1位になったジミー・ウィザースプーンのまぎれも無いブルーズスタンダード。
4.Ain’t Nobody’s Business/Jimmy Witherspoon

30,40年代のジャズ・オーケストラには専属の歌手がいてオーケストラの演奏の途中に何曲か歌うコーナーがありました。ダイナ・ワシントンはライオネル・ハンプトンの楽団に、エラ・フィッツジェラルドはチック・ウエッブ楽団に、いまのジミー・ウィザースプーンはジェイ・マクシャンのオーケストラにそして次のワイノニー・ハリスはラッキー・ミリンダー・オーケストラの専属歌手をしていました。そういうオーケストラが入る立派なナイト・クラブがあり、ジャズやブルーズにも活気があった時代でした。
次の大ヒット曲は1948年。ロックン・ロールに繋がっていく曲だということがわかります。元々ロイ・ブラウンの曲ですが、ヒットしたのはワイノニー・ハリスのこのバージョン。
5.Good Rockin’ Tonight/Wynonie Harris
ワイノニーはやはりジョー・ターナーに似てますよね。基本的な歌い方がシャウターと呼ばれる声が大きい歌手なんですが、40年代50年代のホーンセクションが入ったジャズ・オーケストラをバックに歌うには歌声が大きくないと聴こえなかったのでみんな声がデカイです。マイクもいまのように性能もよくなかったし、モニターはないしPAシステムもまだまだ貧弱な時代ですからね。
僕が歌い始めた70年代最初の頃もモニターはまだなかったですね。だから僕も声はでかいです。いまはヴォイス・トレーニングなんかがあって大きな声の出し方も教えてもらうのでしょうが、僕らの時代はそんなものはなかったのでとにかく毎日大きな声で歌ってました。

今日はジャズ、プルーズ、R&B、ロックンロールのジャンル分けが難しくなった、そして白人が黒人音楽に近づいてきた時代の歌、ジャンプ・ブルーズを聴きました。ジャンプ・ブルーズのミュージシャンはまだまだいるんでまたやります。

2020.03.27 ON AIR

永井ホトケ隆が選ぶブルーズスタンダード曲集 vol.13
ジャンプ&ジャイヴ・ブルーズ-1

Louis Jordan 1939-1954/Louis Jordan (MCA ビクターMVCM618)

Louis Jordan 1939-1954/Louis Jordan (MCA ビクターMVCM618)

The AnthologyLouis Jordan (ONE DAY MUSIC Day2CD118-1,2)

The AnthologyLouis Jordan (ONE DAY MUSIC Day2CD118-1,2)

The Blues Brothers Original Sound Track/The Blues Brothers (Atlantic 16017-2)

The Blues Brothers Original Sound Track/The Blues Brothers (Atlantic 16017-2)

ON AIR LIST
1.Let the Good Times Roll/Louis Jordan
2.Minnie The Moocher/Cab Calloway
3.Choo-Choo Ch’ Boogie/Louis Jordan
4.Saturday Night Fish Fry /Louis Jordan (fadeout)
5.Caldornia/Louis Jordan

いままでテキサスブルーズとかシカゴブルーズとかミシシッピブルーズとか地域単位のブルーズの括りでブルーズスタンダード曲集をやってきましたが、今回はブルーズのジャンルのひとつであるジャンプ&ジャイヴ・ブルーズからスタンダード曲を選んでみようと思います。
なぜ地域的な分類ができないかと言えば、ひとつにはジャンプ&ジャイヴ・ブルーズの流行が全米的な全国区なものだったからです。時代的に言うと40年代。そして40年代のジャンプ&ジャイヴ・ブルーズの流れが50年代に流行るR&B,R&Rの土台になっていった。そして、B.B.キングたちの50年代から60年代のモダン・ブルーズの土台にもジャンプ&ジャイヴ・ブルーズは重要な音楽でした。
では、ジャンプ&ジャイヴ・ブルーズとは何かと言えば、まずジャンプ・ブルーズというのは、ジャズのスイングやブルーズのブギのビートの上にホーンセクションを加えダイナミックかつダンサブルにしたブルーズのことです。ジャイヴというの元々「おふざけ」とか「からかう」「だます」という意味があり軽妙なウィットのある歌詞を歌うことです。ジャンプ・ブルーズに面白いジャイヴな歌詞をつけて歌うことが多かったことからジャンプ・ジャイヴ・ブルーズと言ってます。
では、まずそのジャンプ&ジャイヴ・ブルーズのボスとも言える、代表的なミュージシャン、ルイ・ジョーダン。
「さぁ、楽しくやろうぜ」というパーティ・ソング。
1.Let the Good Times Roll/Louis Jordan
この曲聴いたことがある方もいると思いますが、1980年公開の「ブルーズ・ブラザーズ」の映画でジョン・ベルーシがムショから出てきてアパートでレコードを聴くシーンで流れたのがこの曲です。
そして、その「ブルーズ・ブラザーズ」の映画に登場したのがルイ・ジョーダンの先輩にあたり、30年代から40年代黒人音楽のエンターテナー王様として君臨したキャブ・キャロウェイ。キャブはジャイヴという黒人独特の言い回しで喋ったり、歌ったりしながら、肩幅が広く丈が長いズート・スーツで髪を振り乱して踊りました。
映画にも出演する30年代最高の黒人スターでもあり、ルイ・ジョーダンのノヴェルティな面白い歌詞はこのキャブ・キャロウェイから来ています。
今日はキャブを代表するこの曲を彼も出演した映画「ブルーズ・ブラザーズ」のサントラ・アルバムから聴いてください。
2.Minnie The Moocher/Cab Calloway
こういう面白いというかウィットに富んだ音楽はブルーズ中に古くからあり、黒人音楽のひとつの伝統です。ただ、キャブやルイ・ジョーダンのエンターテイメントは楽しい面白いだけでなく、素晴らしい音楽性や演奏力に裏打ちされていることです。
1990年だったと思いますが、僕はニューオリンズでキャブ・キャロウェイのステージを見ることが出来ました。バックはジャズのイリノイ・ジャケーのオーケストラでドクター・ジョンやチャールズ・ブラウンが先に出て、トリにキャブが出てきて姿を現すと会場の客もミュージシャンもそこにいた全ての人たちがスタンディング・オベーションでキャブを迎えました。アメリカのエンターテイメントにおいては国宝級の偉大な人というのがよくわかる光景でした。
いま聴いてもらった二曲でも少しわかるようにバックグラウンドはジャズなのですが、大衆芸能としてのジャズというのがアメリカにはありまして、芸術としてジャズを追い求めたチャーリー・パーカー、マイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーンたちとは立ち位置が違います。日本のジャズにはこのエンターテイメントとしてのジャズを追い求めた人があまりいません。しかもルイ・ジョーダンが流行っていた40年代日本は戦争に明け狂っていたのでジャンプブルーズがあまり入って来なかったという事情もあります。
さて、ブルーズ・スタンダード・ヒット曲の王様ルイ・ジョーダンに戻りますが、次の曲などはブルーズの伝統的なブギのリズムを使ったつい歌いたくなる楽しい歌です。
3.Choo-Choo Ch’ Boogie/Louis Jordan

ルイ・ジョーダンは最初ジャズのチック・ウェッブのオーケストラでサックスを吹いていました。そして、自分がサックスを吹いて歌うバンド「ティンパニー・ファイヴ」を結成したのが1938年。30才の時です。そして39年から15年くらいデッカというレコード会社に所属してヒット曲を連発し、R&Bチャート1位の曲がなんと18曲もあります。彼の曲もポップで覚えやすくていいのですが、歌詞が黒人たちの日常生活をうまく捉えたもので次の曲なんかもそうです。タイトルが日本語に訳すと「土曜の夜は魚のフライ」
イントロが「ニューオリンズへ行ったことがあるなら知ってるやろけど、土曜の夜になったら大騒ぎや」と始まりますが、つらい仕事に明け暮れるウィークデイを終わって、土曜の夜に誰かの家でハウスパーティをやるんだけど、安くて美味しい魚のフライが必ずパーティに出てきます。それで「土曜の夜は魚のフライ」これもチャート1位。
4.Saturday Night Fish Fry /Louis Jordan (fadeout)

次の曲もチャート1位
カルドルニアという自分より彼女が背が高くて、何にも食べなくて痩せてるんだけど彼女がめちゃ好きやという歌ですが、これ太ってる女の人が多かったアメリカの黒人社会でどうなんでしょう。カルドルニアなんて名前ないやろと思うんですが、あだ名ですかね。日本やとケメコみたいなことでしょうか。B.B.キングは1999年にルイ・ジョーダンのトリビュート・アルバムを出すくらいルイが好きやったんですが、この曲ももちろん歌ってます。
5.Caldornia/Louis Jordan
思い起こせば、B.B.キングのショーでは今日一曲目に聴いてもらったLet the Good Times Rollが一曲目に歌われることも多かったです。B.B.はトリビュートアルバムでルイ・ジョーダンの写真を載せて彼について短い文を書いているのですが、その中で「ルイ・ジョーダンは最初のラッパーだった。彼のライムはあなたを笑わせてくれて、そして踊らせてくれる」と書いてます。確かにいまの曲なんかラップですよね。
ルイの次の時代に流行ったチャック・ベリーのR&Rのあの軽妙な、ノヴェルティな歌詞はあきらかにルイの影響です。そして多くの50年代R&Bもルイの影響をたくさん受けました。

今日はジャンプ・ジャイヴ・ブルーズのスタンダード曲を聴くつもりが結局あまりにヒット曲の多いルイ・ジョーダンで終わってしまいました。来週はロイ・ブラウンやワイノニー・ハリスなどのジャンプ・スタンダードをお送りします!