2020.12.18 ON AIR

「78才とはとても思えないパワフルでソウルフルなドン・ブライアントの新譜」

You Make Me Feel/Don Bryant (Fat Possum Records CDSOL-5483)

ON AIR LIST
1.Your Love Is To Blame/Don Bryant
2.99 Pound/Don Bryant
3.A Woman’s Touch/Don Bryant
4.I Die A Little Each Day/Don Bryant
5.Walk All Over God’s Heaven/Don Bryant

4年前に74才でニューアルバム”Don’t Give Up On Love”を発表したドン・ブライアントが78才になった今年またニューアルバムをリリース!
高齢になるとまず声が出るのかという心配があるが、1曲目の最初の歌声を聞いて「バリバリやん」と78才の力強い歌唱にまず安堵。
安定した歌声で78才とは思えない。そして彼の実直な歌い方に「ああ、サザン・ソウル」と胸が熱くなる。
シャウトからファルセットまで喉がまったく衰えていないどころか歌の表現がまた深くなったように思える。
1曲目は新曲の”Your Love Is To Blame”。いまも曲を作る意欲が彼にはあり、それを最初に持ってくる誇りと気力に頭が下がる。
1.Your Love Is To Blame/Don Bryant
ドンは今更説明することもなく、60年代からメンフィス・ソウルの優れたソングライターとしても高く評価されている。ジョン・レノンが”One Of The Best Soul Records Of All Time”と言った名曲”I Can’t Stand The Rain”は奥さんのアン・ピープルズとの共作で、他にも”A Love Vibration”、”99 Pounds”など奥さんのアン・ピープルズに書いた曲があり、今回のアルバムではその”99 Pounds”が歌われている。
2.99 Pound/Don Bryant
今の曲は奥さんアン・ピープルズの1972年のアルバム”Straight From The Heart”に入っている。
70年代メンフィス・ソウルのトップ女性シンガーとして奥さんが売れた頃は、シンガーとしての活動は少し控えて裏方として彼女をサポートしていた。奥さんのアン・ピーブルズは素晴らしい歌手でチャーミングな女性で人気もすごくあり、70年代メンフィス・ソウルのクイーンだった。いまは病で彼女はリタイアしてしまい、もうステージを見ることもできないし、アルバムもリリースされない。でも、ドンはいい時も悪い時もずっと彼女に寄り添って生きてきた。そして、こうして長いアンとの人生の中で生まれて来る愛の歌をいまも僕たちに届けてくれている。

次の曲はドンが書いた新曲です
「何も育たない庭のように、家庭ではない家のように私は感じる。メロディのない歌のように、いつもひとりでいる男のように感じる。私に必要なものそれは女性のふれあいだ」僕はこの歌を聞いた時にひとりでいる中高年の男を思い描いた。死別したのか離婚したのか、理由はわからないが年老いてひとり暮らす男には燃えるような恋ではなくそっと手に触れてくれるような柔らかい愛が必要なのだ。静かにでも心のこもったふれあいが・・。
3.A Woman’s Touch/Don Bryant

1978年にO.V.ライトの来日公演がO.V.の体調不良ため中止になり、そのピンチヒッターとして来日したのがオーティス・クレイだった。O.Vへの期待が大きかったためにファンの間ではオーティス・クレイってどうなん?という感じで来日公園を迎えた。しかし、それは素晴らしいオーティスのソウル・ショーだった。自分が好きな、自分が信じた音楽にやはり間違いはないんだと確信させてくれたライヴだった。そのライヴでオーティスが歌った次の曲を作ったのがドン・ブライアントだ。
「列車が駅を出て行ってからぼくの人生は坂を下っていくようなものだ。流す涙に慰めもない。生きる気力を君はうばいさってしまった。君がいなくなってから僕は少しずつ死んでいくようなものだ。帰ってきてくれないか、ベイビー」 
4.I Die A Little Each Day/Don Bryant
本当にいい曲を作ります。
ドンはソウル・シンガーとしては大きなスターになった人ではなかったのですが、この晩年になってからの彼の頑張りは素晴らしいです。やっぱりいい曲を書く人でいい歌を歌う人です。
そして、今回のこのアルバムを後ろで支えているドラムのハワード・グライムス、オルガンのチャールズ・ホッジズ、キーボードのアーチー・ターナー・・とかってのメンフィス・サウンドの要たちが元気でいまも演奏していることが何より嬉しい。コロナが収まったらもう一度彼らと一緒に来日して欲しい、ドン・ブライアント。
もう一曲。
5.Walk All Over God’s Heaven/Don Bryant
78歳、現役。

2020.12.11ON AIR

ブルーズの偉人、ジョン・リー・フッカーの初期三枚組CDリリース!vol.1

Documenting The Sensation Recordings 1948-1952/John Lee Hooker (ACE JLHBOX019)

ON AIR LIST
1.Boogie Chillen/John Lee Hooker
2.Hoogie Boogie/John Lee Hooker
3.Crawlin’ King Snake/John Lee Hooker
4.Huckle Up Baby/John Lee Hooker
5.I’m In The Mood/John Lee Hooker

コロナ感染が広がって趣味のレコード店巡りも自粛して、新しいアルバムをゲットするのはもっぱらネットになっている。ネットで検索していると後から「あんた、こんなアルバム好きやろ」みたいなお勧めがたくさん来るのには辟易するが・・。
今日On Airするジョン・リー・フッカーの初期の音源を集めた”Documenting The Sensation Recordings 1948-1952″というCD3枚組もネットで購入した。
実はこの3枚組に収録されている音源はすでにほとんど持っているが、未発表テイクも収録されているとのこと。この「未発表」に私のようなブルーズ馬鹿は弱くてそのテイクを聞きたいがためについつい買ってしまう。
しかし、こうしてまとまった形で丁寧なライナーも付いてリリースされると初期のジョン・リーのことがよく理解できてそれはそれでいい。
まずは1948年ジョン・リー・フッカーのデビューシングルであり、1948年R&Bチャート1位に輝いたこの曲から
1.Boogie Chillen/John Lee Hooker
ジョン・リー・フッカー、31才。デビュー曲で一位だからかなりラッキー男だ。実際、後期のアルバムに”Mr.Lucky”というのがあるのだが、48年のデビューから亡くなる2001年近くまで常に現役を続けシーンから消えたのかと思うとまた何かのきっかけで登場したり、タフでラッキーな人だと思うしそこが彼を好きな理由の一つでもあります。
この頃、ジョン・リーはドラム、ベース、キーボードを入れた編成でライヴをやっていたのをA&Rのバーニー・ベニスマンというおっさんはあえてジョン・リーの弾き語りで録音した。これが成功の大きな要素だった。ジョン・リーのギターと歌のグルーヴ感を生かすために足下にベニヤ板を置いてジョン・リーの足音をリズム楽器のように録音するという技あり一本。これが有名なジョン・リーの「フット・ストンプ・ブギ」の誕生だった。
いまの曲はワン・コード、コードがひとつしかなく、それで延々とブギをする・・彼の声の良さとフット・ストンブの音。グルーヴする踊れるワン・コードのブギというのがまず彼の売りになった。もう一曲このタイプの曲を聴いてみよう。
2.Hoogie Boogie/John Lee Hooker
語りが少し入っているが、基本インストの曲でジョン・リーのリズムのグルーヴ感がいかに素晴らしいかというのがよくわかる曲。ブルーズはダンス・ミュージックの一つだからダンスできる、踊れるグルーヴ、踊れるリズムの良さというのが重要だ。ジョン・リーは今のような弾き語りで抜群のリズム感があったことがわかる。
ライヴでは延々とこのブギを続けて、客を呪術的なリズムのループの中に取り込んで行ったのだと思う。ジョン・リーは40年代終わりのデトロイトのブルーズのグルーヴメイカーだった。

「オレは這い回る王様蛇さ、オレの穴は誰にも使わせないぜ。くたばる日までオレは這い回るのさ。お前の窓を這い登り、ドアに這い上り、床を這い回る、くたばる日までな。オレは王様蛇」蛇をセクシャルな象徴として題材にしているジョン・リーを代表する曲。
3.Crawlin’ King Snake/John Lee Hooker
ジョン・リー・フッカーについてざっと説明。
ジョン・リーは1917年ミシシッピーのクラークスディルあたりの生まれ。このクラークスディルという地名はたびたびブルーズの話に出てくるが、いわゆるミシシッピー・デルタと言われる綿花の栽培で栄えた地域。
ジョン・リーの義理のお父さんは地元のブルーズマンで最初にギターを買ってくれて教えてくれたのもその義父。かたや実のお父さんは教会の牧師さんで母親も敬虔なクリスチャン。当然ジョン・リーも教会で歌っていた。つまり、子供の頃から教会の音楽と世俗のブルーズ、両方に彼は慣れ親しんでいたわけだが、次第にジョン・リーはブルーズをやりたくなってしまい、14才の時に家出します。日本だと中学二年です。家出してメンフィスへ行ったが連れ戻されます。そして二度目の家出でシンシナティに行き、そこから43年にデトロイトにたどり着きます。デトロイトはのちに「モータウンレコード」で有名になるがモーター・シティと言われ、ご存知のように自動車メーカーがたくさんあった大都会。1940年代当時は最先端の街のひとつ。当然夜のクラブなどもたくさんあり音楽が栄えた街でした。そこで彼は昼の仕事をしながら夜クラブに飛び入りしたり、ハウスパーティで歌ったりしていた。ハウス・パーティでジョン・リーの歌を聞いて「こいつ、ええなぁ」と思ったのがレコード屋を経営しているエルマー・バービーという男。このエルマーが「こいつ、なかなかええで」と同業者のパン・アメリカン・レコード・カンパニーのA&Rのバーニー・ベニスマンにデモテープを聞かせた。彼はまずジョン・リーの声に惹かれたというのがわかる声の良さを確かにジョン・リーは持っている。「こんな声聞いたことがない」と言ったベニスマンのレコードレーベル名が「センセーション」なので今回のアルバムタイトル”Documenting The Sensation Recordings “になっています。このバーニー・ベニスマンがジョン・リー・フッカーを世に出した人です。
この時はジョン・リーにとりあえず2000ドル(20万くらい)を渡してレコーディンク゜となりました。当時のブルーズマンにすればかなりの金額だと思います。ベニスマンの期待の度合いがわかる。

次はデビューの翌年1949年の録音で、基本は同じジョン・リー・スタイルのブギだが、ちょっとしたポップス性も感じさせる曲。1949年というとブルーズからR&Bに移行していく時代。そういうR&Bのポップなテイストを彼は次の曲で出している。まあ、どこがポップやねんと思う人もいるかもだが・・。
4..Huckle Up Baby/John Lee Hooker
ジョン・リーは意外とその時代に流行っている曲とか新しい音楽の流れを知っていて、そういうテイストを自分の曲に入れ込んでいる。そういうところも彼がブルーズマンとして長く活躍できたところだと思う。どちらかというと不器用なブルーズマンでいろんなことができるタイプではなかったのだが、彼はそういう自分をよく知っていたように思う。

5.I’m In The Mood/John Lee Hooker
今日聞いたのは三枚組なのでこのジョン・リー・フッカーまたそのうちON AIRします。これからジョン・リー・フッカーを知りたい方にはお勧めのボックスセットです。
僕は輸入盤を買いましたが、P-Vineレコードからの日本版もあります。

2020.12.04 ON AIR

Black Lives Matterに連動してリリースされた差別、貧困、格差を訴える曲

Freedom And Justice(P-Vine PCD-24982)

ON AIR LIST
1.Wake Up / Willie Rodgers 
2.Cummins Prison Farm / Calvin Leavy
3.Let’s Make A Better World / Earl King
4.No More Ghettos IN America / Stanley Winston

今年のアメリカはコロナ感染の問題だけでなく、人種差別問題の「Black Lives Matter」(以下BLM)の運動に揺れてます。この「黒人の命も大切」という人種差別反対運動は2012年くらいから始まっていたのだけど、今年5月にミネアポリスで黒人のジョージ・フロイドさんが白人警官による過剰な取り調べで首を足で押さえつけられて窒息死するという事件から運動が再燃したことは皆さんもご存知だと思います。その時のフィルムをニュースで見た方もたくさんいると思いますが、フロイド氏が「呼吸ができない」と訴えているにも関わらず、無抵抗な彼に対して白人警官が続けた行為はやはり過剰なものでした。その後、別の街でも黒人が白人警官に拳銃で撃たれる事件が勃発してBLMの運動はますます大きくなっていきました。こういう黒人あるいは有色人種に対する一部の白人の差別意識は今に始まったことではなく、黒人を奴隷としてアフリカから連れて来た時から始まっていることです。全ての白人がそういう差別意識を持っているわけではないのですが、ここ数年のトランプ政権になってからそれがひどくなって来た気がします。
そんな折に最近P~Vineレコードからリリースされた今回のコンピレーションアルバム「Freedom And Justice」「自由と正義」
過去、いろんな黒人ミュージシャンが差別や貧困、格差について歌った曲を集めたものでソウル、ファンク、ブルーズ、ゴスペルと多彩な選曲になっています。
まずはアルバムの一曲目、先日この番組のゴスペル特集でもON AIRしたゴスペルカルテット「ソウル・スターラーズ」の60年代後半メンバーだったウィリー・ロジャースが歌う”Wake Up”
「同胞を愛することを学ぼう、同胞を信じよう、目を覚まそう、手遅れになる前に」というメッセージを強烈なファンク・ビートに乗せた一曲
1.Wake Up / Willie Rodgers 
ストレートなメッセージもさることながら曲としてもかっこいい、60年代からのファンクの流れを感じさせるいい曲です。
いまの曲はウィリー・ロジャースがソウル・スターラーズから独立してソロになった71年最初のシングルのB面としてリリースされた曲ですが、さすがゴスペル出身の強力な歌です。

ブルーズでも表現のスタイルは違うのですが、昔からプロテストのメッセージが出されている曲はありました。
次に聴いてもらうのは。今日のこのアルバム「Freedom And Justice」をリリースしたP-Vine レコードが創立された最初のアルバムとして出されたものです。カルヴィン・リーヴィーの「カミンズ・プリズン・ファーム」そのタイトル曲を聴いてみましょう。
「アーカンソーの向こうのミズリーで生まれた」から始まるこのブルーズは貧しいがゆえに盗みをして刑務所でひどい目に遭う毎日を歌ったもの。刑務所の看守によって行われていた虐待を告発した歌でもありました。何度聞いても衝撃を受けます。途中の突き刺すようなギターソロも印象的です。

2.Cummins Prison Farm / Calvin Leavy

人種差別の問題は単に人種のことだけでなく黒人層の貧困と格差の問題もからんでいます。白人との所得の格差や例えば表沙汰にならない賃金や昇進の格差がずっとなくならないんですね。露骨ではない目に見えない差別は本当にたくさんあるのがアメリカの社会です。
普段から行われているこういう人種の差別や格差の問題が表面化すると必ず暴動が起こります。そういう暴動には銃を持った警官だけでなく、暴動を押さえこむために軍隊まで出動するのがアメリカです。警官が犯人をすぐ銃で撃つというようなことは日本では考えられません。実は僕はロスにいた時に警官に銃を向けられたことがあります。それはハリウッドで起きた強盗事件の犯人の車が僕が乗っていたキャデラックと同じような車だったらしくて、何人もの警官に取り囲まれて車を止めるように指示されてドアから外へ手を挙げて出て、車の屋根に両手を載せて動かないでじっとしていたのですが、ものすごく怖かったです。変な動きをしたらアメリカの警官はすぐに銃を撃つと聞いていたので本当に恐怖でした。
でも、そういう社会、すぐに銃が出てくる社会になっているアメリカという国が本当に大嫌いです。アメリカにある音楽や文化は好きなのに残念です。
銃社会をやめられない民主国家ってあり得ないです。

次の歌は希望のある歌です。「倒れている隣人がいたら助け起こしてあげよう。お互いに助け合って自由の鐘を鳴らそう。みんなで助け合ってより良い世界にしょう」
こういう歌が生まれて来るアメリカは大好きなんですけどね。ニューオリンズの大好きなミュージシャン、アール・キング
3.Let’s Make A Better World / Earl King

最後の曲はほとんど知られていない歌手で、あまりにも情報がないのでこのアルバムをリリースしたP-Vineレコードの担当の方に聞いてみました。
でも、やっぱりどういうミュージシャンなのか実態がよくわからなくて、分かったのは全部でシングルを3枚だしている。それだけです。
もうアメリカにゲットーはいらないという歌で、ゲットーというのは貧しいアフリカン・アメリカンやラテン子系、アジア系のアメリカンが住んでいる地域のことです。スパイク・リーの映画「Do The Right Thing」の舞台になっている街のようなところです。犯罪も起こりやすく、治安も悪いところが多いです。つまり、この歌のゲットーはもういらないというのは貧しさや格差への告発です。

4.No More Ghettos IN America / Stanley Winston
こういうアメリカの人種差別の話をしたり、関連の音楽を聴く時に必ず考えなくてはいけないのは「では自分自身は日常の中で、この日本に住んでいて誰に対しても差別の気持ちはないのか、人種はもちろん性別、体格、容姿、所得などで知らないうちに差別の気持ちが自分の中で起こっていないか」ということだと思います。

2020.11.27 ON AIR

ルーツ・ミュージックを大切にするミュージシャンたちで作られたアルバムがやっとリリース!

New Moon Jelly Roll Freedom Rockers Volume.1 (BSMF-2711)

ON AIR LIST
1.Let’s Work Together/New Moon Jelly Roll Freedom Rockers(feat.Jim Dickinson)
2.Pony Blues/New Moon Jelly Roll Freedom Rockers(feat.Alvin Youngblood Hart)
3.K.C.Moan/New Moon Jelly Roll Freedom Rockers(feat:Charlie Musselwhite)
4.Shake It And Breake It/New Moon Jelly Roll Freedom Rockers(feat:Jimbo Mathus)

「ニュームーン・ジェリーロール・フリーダム・ロッカーズ」
この長い名前のバンドは2007年に「ノース・ミシシッピ・オールスターズ」のルーサーとコーディのディッキンソン兄弟とジンボ・マシス(元スクイレル・ナット・ジッパーズ)がセッションをしたことから始まったもので、そこにハーモニカのチャーリー・マッセルホワイトとギターと歌のアルヴィン・ヤングブラッド・ハートが参加し、更にディキンソン兄弟の父である亡きジム・ディキンソンが加入したものです。いわゆるルーツ・ミュージック系のミュージシャンたちで作られているわけですが、聴いてもらう「ニュームーン・ジェリーロール・フリーダム・ロッカーズvol.1」を2008年に録音したのですが、翌年このバンドのプロデュースも兼ねていた父親のジムが亡くなり、この音源はリリースされずにいました。それを今回カナダのレコード会社「ストーニー・ブレイン・レコード」が息子のルーサー・ディッキンソンに話をもちかけてリリースとなりました。
これは日本のBSMFレコードからリリースされています。

ブルーズ、カントリーなどルーツ・ミュージックを熟知している白人ミュージシャンたちで、アルヴィン・ヤングブラッドハートだけ黒人なんですが、あまり黒人を感じさせないミュージシャンです。
最初に60年代から70年代活躍したウエストコーストの白人ブルーズバンド”Canned Heat”が1970年にヒットさせた曲ですが、元々はあの大ヒットブルーズの”Kansas City”を歌ったウィルバート・ハリソンが1959年にヒットさせた曲です。
「旅する道がずっと坂道が続く時、物事が上手くいかない時にみんなで力を会わせてがんばろうよ。2分や3分、2時間や3時間が僕らの人生でそんなに問題だろうか。誰かを幸せにしてあげよう。誰かに微笑みをあげよう。力を合わせてがんばろう。そして人生を価値のあるものにしょう」すごくポジティヴな曲でいまの時代にフィットしている曲ではないでしょうか。歌っているのはジム・ディッキンソン。
1.Let’s Work Together/New Moon Jelly Roll Freedom Rockers(feat.Jim Dickinson)
歌っているジム・ディッキンスンは1941年生まれですから、キャンド・ヒートが今の曲をヒットさせた頃をよく知っていたのではないでしょうか。
シカゴ・スタイルのチャーリーのハーモニカがいいです。彼は歌もハーモニカも無理のない。でも深いプレイができる人で好きなプレイヤーです。

二曲目、アルヴィン・ヤングブラッド・ハートが歌う偉大なデルタ・ブルーズのチャーリー・パットンの1929年に録音した「ポニー・ブルーズ」
ヤングブラッドハートはルーサー・ディッキンソンとは「サウス・メンフィス・ストリングバンド」というのを組んでアルバムを出したこともある気心の知れた仲です。
2.Pony Blues/New Moon Jelly Roll Freedom Rockers(feat.Alvin Youngblood Hart)
ヤングブラッドハートは1963年の生まれですから僕より13才も若くて生まれがカリフォルニアのオークランドなんですが、親戚がミシシッピーにいたそうでそれで遊びに行くうちに古いミシシッピ・ブルーズに興味をもって歌い出したみたいです。デビューは96年。でも、このアルバムで何故かジミ・ヘンドリックスの”Stone Free”を取り上げているのですが、まあ60年代生まれの都会の黒人なのでそういうロックにも興味はあったんでしょう。
黒人ですがヒップホップとかラップに行かずルーツ・ミュージック好きという人も出てくる時代が90年代くらいでした。こういう黒人ミュージシャンは白人オルタナ系のディッキンソン兄弟と気が合うんでしょうね。

このアルバムは参加したミュージシャンがそれぞれ自分が録音したい曲を持ち寄って作られているので曲目がバラエティに富んでいます。それでもバラバラな感じがしないのはブルーズというしっかりしたルーツがみんなあるからでしょう。次の曲も1929年の古い歌です。オリジナルはメンフィス・ジャグ・バンド。いまもいろんなジャグバンドやフォーク系のミュージシャンによくカバーされています。歌とハーモニカはチャーリー・マッセルホワイト、肩の力の抜けた彼のプレイがいいです。
3.K.C.Moan/New Moon Jelly Roll Freedom Rockers(feat:Charlie Musselwhite)

次の曲を歌っているジンボ・マシスという人はこのアルバムで初めて知りました。彼はスクイレル・ナット・ジッパーズというバンドを90年代の中頃に結成して、戦前のニューオリンズ・ジャズとかハーレム・ジャズのようなサウンド・コンセプトで人気が出たようです。彼は辞めたようですがスクイレル・ナット・ジッパーズはまだ継続して活動しているみたいです。このあたりのいわゆるルーツ系の白人のバンドの動きに僕は疎いのでよくわからないのですが・・・。マシスは90年代終わり頃からチャーリー・パットンなどカントリー・ブルーズに入りこんでいき、今回のアルバムで共演している「ノース・ミシシッピ・オールスターズ」のふたりとやり始めてます。
聴いてもらうのも1929年のチャーリー・パットンのカバーです。
4.Shake It And Breake It/New Moon Jelly Roll Freedom Rockers(feat:Jimbo Mathus)

9月18日に日本のBSMFレコードからリリースされた「New Moon Jelly Roll Freedom Rockers Volume.1 」を聴いてもらいました。ブルーズとかラグタイム・ミュージックとか古いアメリカの音楽のテイストがミックスされたアルバムでしたが、どうでしたか。ヴォリーム1とタイトルされていてヴォーリーム2が来年春にリリースされるようです。リリースされたらまた聴いてみましょう!今日もリモート録音でした。

2020.11.20 ON AIR

映画”The Making Of Motown”公開記念モータウン・レコード特集vol.3

ABC/The Jackson5 (Motown/Polygram POCT-1945)

What’s Going On/Marvin Gaye (Motown 530 022-2)

Innervision/Stevie Wonder (Motown/Polydor POCT-1810)

The Motown Box(Shout/Motown B0074AW43A)

ON AIR LIST
1.ABC/ The Jackson5
2.What’s Going On / Marvin Gaye
3.Living For The City/ Stevie Wonder
4.Stop! In The Name Of Love / The Supremes

モータウンレコードの軌跡を追った映画”The Making Of Motown”の公開が始まり、それに合わせて60年代のモータウンレコードの曲をここ二回聞いてきたのですが、今日は60年代の終わりからです。映画を観ていただけるとわかるのですが、60年代のモータウンはもう工場のように曲やミュージシャンの管理をしっかりして質のいいもの(歌、演奏、音質、歌詞、振り付け、ふだんの仕草まで)を、しかも黒人にも白人にも受け入れられるポップス性のあるヒットをたくさん作ることに邁進したわけです。
その路線の最後に登場するのがジャクソン5です。
1969年には当時10歳だったマイケル・ジャクソンをリード・ヴォーカルにした「ジャクソン5」はモータウンからデビューシングルの”I Want You Back”を出して、すぐに一位を獲得。次の70年の二弾目のこの曲も一位になりました。
1.ABC/ The Jackson5
最初はジャクソン5とモータウンレコードの関係は良かったのですが、3年くらいするとずっとアイドル売りをされていることや、自分たちの作った楽曲がアルバムにとりあげられない不満からジャクソン5はモータウンを辞めて1975年にCBSに移籍してしまいます。そのあとモンスター、マイケル・ジャクソンの世界的な活躍が始まるわけですが、モータウンが逃した魚は大きかった・・ですね。

70年代に入ると鉄壁のヒット・メーカーだったモータウンにもいろいろと異変が起こります。
設立された1960年から10年間は怒涛のようにヒット曲をチャートに送りこみ、所属ミュージシャンも増えて大きな会社に成り、黒人が企業したレコード会社としてはいちばん大きな有名なレコード会社になりました。そして、社長のベリー・ゴーディは70年代に入ると、当時彼の愛人でもあったダイアナ・ロスの映画を作ったり、テレビ番組を製作するためにニューヨークとロスに支社を作りました。まあ音楽だけでなく商売を手広くしたわけです。社長のゴーディは映像のメディアに力を入れて、音楽のプロデュースはノーマン・ホイットフィールドという右腕がやるようになりました。
実はそれまでたくさんのヒット曲を作り出していた作詞作曲チームのホーランド=ドジャー=ホーランドの三人が社長と印税のことでもめて辞めてしまったのです。つまり、お金に対する要求がスタッフやミュージシャンから出てきて体制が少し揺らいでくるわけです。
そして、マービン・ゲイやスティービー・ワンダーのように自分で作詞作曲してプロデュースも自分でやりたいというミュージシャンが出てくるようになりました。その背景には公民権運動、ベトナム戦争反対運動、人種差別撤廃運動など様々な政治社会の動きがあり、マービンやスティービーはそういうことに対する自分の考えを音楽で表現したい、いつまでも恋愛の歌ばかり歌っていられないと思い始めたわけです。それで売れることが第一主義の社長のゴーディと対立することもあり、次第にモータウンはミュージシャンの意向を取り入れないとどうしょうもなくなってしまい、ゴーディが完全に掌握することは無理になっていきました。
そして、社長のゴーディが売れないと言ったマービンの曲が黒人音楽の歴史に残る画期的なアルバムとなり、1971年セールスもR&Bチャートで一位、ポップで二位を獲得します。自分自身による作詞作曲そしてマービン自身のセルフ・ブロデュース作品であり、ベトナム戦争に反対の意思を表明したこの曲の衝撃は大きかったのを僕も覚えています。
2.What’s Going On / Marvin Gaye
このあたりから社長のベリー・ゴーディ自身も音楽の流れが単にヒット曲を出すだけではいけなくなってきていることを感じ始め一線から少しずつ離れていくのですが、そのあたりは映画をごらんください。

60年代にヒットを出してツアーもやっていたミュージシャンたちは特に南部にツアーに行くと人種差別を強く感じるわけです。モータウンがあったデトロイトは大きな都会で南部ほどの差別はか感じていなかったと思います。
それでよくよく自分の周りの都会の暮らしを見てみると、都会で暮らす黒人の生活も低賃金で貧しく、頭が良くても一流と言われる会社に就職することができないわけです。つまり黒人は努力してもずっと報われない生活が続くのかという怒りと、自分たちがそれを変えなければいけないという思いをスティービーは次のこの歌に託しました。

3.Living For The City/ Stevie Wonder
しかし、アメリカの人種差別は今もこの頃と何も変わっていないと最近のBlack Lives Matterのニュースを見ていると思います。
この曲は1973年のアルバム「インナーヴィジョン」に収録されているんですが、その73年頃僕はもうブルーズにどっぷり浸かっていてサザン・ソウルには興味があったのですが、モータウンにはあまり興味がなくなっていきました。だからスティービーとかマービンのアルバムは聴いてましたが、モータウン全体は聴いていませんでした。
三週に渡って映画「”The Making Of Motown”」の公開を記念して聴いて来ました。最後ということでぼくにとってのモータウンはやっぱりシュプリームスなんですよ
中学三年の頃でシングルで買った初めてのシュプリームスです。
5.Stop! In The Name Of Love / The Supremes

多分映画はDVDもリリースされると思います。是非ご覧ください。
三回に渡ってお送りした映画「The Making Of Motown」の公開を記念してモータウンレコードの特集でした。