2016.08.12 ON AIR

歌い継がれるブルーズ、ベッシー・スミスからダイナ・ワシントンへ

the bessie smith songbook/Dinah Washington(PolyGram 862663-1)
レコード

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ON AIR LIST
1.After You’ve Gone/Dinah Washington(SIDE A-1)
2.Careless Love/Dinah Washington(SIDE B-1)
3.Back Water Blues/Dinah Washington(SIDE B-2)
4.Me And My Gin/Dinah Washington(SIDE B-4)
5.You’ve been a good old wagon/Dinah Washington(SIDE A-5)

 

 

 

少し前にソウルの女王、アレサ・フランクリンのブルーズを特集した時に、アレサが尊敬していたシンガーとして名前の出たダイナ・ワシントンを今日は聴いてみようと思うのですが、ダイナもすごくたくさんアルバムのある人ですが、今日はthe bessie smith songbookというダイナが尊敬していたベッシー・スミスのカバー集のアルバムから聴きます。ダイナ・ワシントンは「ブルーズの女王(The Queen Of The Blues)と呼ばれ、ベッシー・スミスは「ブルーズの皇后(Empress Of The Blues)」と呼ばれたシンガーですから、今日は女王が皇后のブルーズを歌っているアルバムを聴くことになるわけです。
今日最初の歌もその自立の感じが少し出ている曲かな・・・。
これはいにしえも、いにしえ1918年にベッシーが歌った曲です。
別れるという男に別れないでくれという女の歌なんですが、私も傷つくけれどあんたもいつの日か傷ついて、後悔して心がぼろぼろになってまた私に逢いたくなるに違いないわ。こんないい女をなくして泣くのはあなたよ。
まあ、強がりを言ってるのか、それとも別れたいという男に自分よりええ女はおらんよという自信なのか・・・自立した女性としてかなり豪快に生きたベッシー・スミスらしい、またダイナ・ワシントンらしいブルーズだと思います。
「君去りし後」 After You’ve Gone

次の歌は「Careless Love」 というタイトルですが、Carelessはよく試験の時に使われるケアレス・ミス(分かっていたのに不注意で間違える)ですよね。だから「不注意な恋」ですか。うかつな恋というのがいいと思うんです。歌詞を追いかけてみるとよくない恋愛をしてしまったんですね。途中でたったひとりの友達を失ってしまったという歌詞が出てきますが、友達の彼氏を好きになってしまったんですかね。それでその恋がうまくいったかというとこれがひどい男で、いろんな女を最初はもちあげて結局ダメにしてるっていう・・私はすべてを失ったとなっています。そして、審判の日までこの罪を償うのだと。
Careless Love

ダイナもベッシーも恋多き女だったので、というよりモテたんでしょうね。ダイナは確か8回くらい結婚してます。学習能力はないのか・・とも言えますが。
さて、東北の大震災が起こったあと、石巻を訪ねてその変わり果てた街の姿にしばらくして僕はブルーズの歴史の中にあるいくつものミシシッピーが氾濫して洪水になった時のブルーズを思い出しました。次の”Back Water Blues”もミシシッピーの氾濫を歌ったブルーズ。オリジナルのベッシー・スミスが歌ったのは1926年。ダイナが歌ったのはその約30年後1958年
「五日間も雨が降り続いた時、空は寄るのように真っ暗になった。土地が低いところで災害が起こった。朝目が覚めると、私はドアから出れなくなっていた。出たくてもでれないひどいことになっていた。(最後には)家は流されて住むところはもうない、そして、どこにも行くことができない」
Back Water Blues

「ジンさえあれば食べるものも寝るところもいらない、気分がよくなったら何でもできる。いっぱい飲めば私は機嫌がいい。でも、私をかまわないであっちにいって私はジンのせいで悪いことをしているのよ」。この曲がリリースされた1929年頃には彼女自身がアルコールを手放せなくなり次第にその活躍が衰退していった。
次の歌のようにダイナは酒と薬の過剰摂取で39才で亡くなってしまいました。
Me And My Gin
ダイナ・ワシントンも幼い頃は教会でピアノを弾きゴスペルを歌ってました。それが15才の時にコンテストで優勝して18才でプロとしてデビューしてます。若くしてその才能を認められ当時有名だったライオネル・ハンプトンの楽団の専属歌手になります。そして、初めてレコーディングした”Evil Gal Blues”がヒット。それからはジャズ・スタンダードからポップスまで実力のあるシンガーとして後輩の女性シンガーたちの憧れで、前に聞いたアレサ・フランクリンもダイナがアイドルだったし、エスター・フィリップス、ルース・ブラウンもダイナに憧れて歌ったシンガーでした。次の歌もエスターがカバーしています。
You’ve been a good old wagon
ダイナには”Dinah Jams”という名作があります。ドラムがマックス・ローチ、トランペットにクリフォード・ブラウン、ピアノにジュニア・マンスたちが参加した素晴らしいアルバムでこれも一度この番組でOnAIrしょうかと思ってます。