2016.08.05 ONAIR

Down Home Blues特集

Papa George Lightfoot/NATCHEZ TRANCE(CCR 1001)
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ON AIR LIST
1.Ah,Come On Honey/Papa George Lightfoot(レコード)
2.You Don’t Have To Go/Jimmy Reed
3.I’m A King Bee/Slim Harpo
4.Lonesome Lonely Blues/Lonesome Sundown(レコード)
5.Down Home Blues/Z.Z.Hill

 

 

 

僕はこの番組でよくダウン・ホームなブルーズとか、このブルーズはダウンホームでという言い方をしていますが、番組を聞いている方からダウンホームってなんですかとこの前聞かれまして、今日はそのダウンホームについて話してみたいと思います。
Down Homeという言葉を辞書で調べると、この言葉はアメリカで使われる言葉で「気取らない」とか「素朴な」「飾らない」という意味が出てきて「アメリカの南部風の」というのも出てきます。
それで今日そのダウンホーム・ブルーズ特集をやろうと思ったのは、久しぶりにパパ・ジョージ・ライトフットというブルーズマンのアルバムを聞いていたら、昔は感じなかったこの人の素晴らしさ、そのダウンホームなブルーズの素晴らしさにひとり部屋で感動したからなんですが・・・、長い間ブルーズ聞いているんですけど、いまになって気づく事も多いです。
では、そのパパ・ジョージ・ライトフットがハーモニカを吹きながら歌っている曲を。
Ah,Come On Honey/Papa George Lightfoot
パパ・ジョージ・ライトフットはミシシッピのナッチェズという街の出身ですが、このアルバムジャケットは大きな樹の下で彼がハーモニカを吹いている写真なんですが、きっとこんな感じでひとりでハーモニカ吹いて歌ってることも多かったんでしょうね。
さて、ダウンホーム・ブルーズという言葉で僕がまっさきに思い出すのはジミー・リードです。ジミー・リードさんはB.B.キングよりもヒット曲が多いブルーズマンです。彼が活躍したのは1953年くらいから60年代の半ばですが、シカゴのVJレコードからリリースされた曲が次~次へヒットして黒人だけでなく、白人の世界にまで入り込んでいった人です。では、なんでそんなにヒットしたのかというと、50年代のシカゴですからやはりサウンドは都会的なんですが、ジミー・リード本人がもっているグルーヴやハーモニカと歌が実にダウンホームなんですよ。つまり、外側のサウンドは都会の匂いもあるんですが、その核になっている、真ん中にあるもの、つまりリードは南部を思い出させるゆったりとしたビートと素朴な歌とハーモニカなんです。この絶妙な組み合わせが田舎から都会に出てきて働いている黒人たちの心を捉えたんやと思います。
You Don’t Have To Go/Jimmy Reed

いまのジミー・リードのダウンホーム・グルーヴは遠く離れた南部ルイジアナのスリム・ハーポにも影響を与えてました。この曲なんかはシカゴ原産ジミー・リード・グルーヴに南部のこってりしたサウンドとスリム・ハーポのもっちゃりした歌声がミックスされた感じです。スリム・ハーポはこの番組で以前も特集しましたが、どこかポップなテイストもあってすごくヒットしました。そして、海を渡ってイギリスに届きローリング・ストーンズはいまから聞いてもらう曲をファースト・アルバムでカバーしています。
I’m A King Bee/Slim Harpo

次はやはり同じルイジアナのブルーズマンでロンサム・サンダウン。まあ、いろんな芸名のブルーズマンいますが、このロンサム・サンダウンってすごいです。寂しい夕暮れですよ。本名はコーネリアス・グリーンというええ名前があるのに・・・私の永井ホトケ隆もね。母がびっくりしてました。
ロンサム・サンダウンなのに聞いてもらう曲名がロンサム・ロンリー・ブルーズです。もう寂しいの極地です。
Lonesome Lonely Blues/Lonesome Sundown

こういうダウンホーム・ブルーズは60年代あたりでヒット・チャートなどには出てこなくなり、テンションがきついファンク・ブルーズとかソウルとミックスされたブルーズン・ソウルの時代になっていったのですが、ところがところが。なんと!1982年に南部ミシシッピ、ジャクソンのマラコ・レコードがリリースしたその曲名もそのもの”Down Home Blues”が大ヒットしました。二年間もチャートインしていた曲です。
パーティに来た彼女が言うわけです「あんたのパーティは盛り上がってるね、みんないい感じ。私の気持ちはお見通しよね。靴を脱いで楽になってもいい?あなたにお酒を作ってもらう間、なんかダウンホーム・ブルーズをかけてくれる。ダウンホーム・ブルーズ、ダウンホームブルーズ彼女が聞きたかったのはダウンホームブルーズ
Down Home Blues/Z.Z.Hill
この曲のヒットでやはり南部の黒人たちの間では根強くダウンホームなブルーズが好かれていることがわかったわけです。1982年ブラック・ミュージックで最も売れたのはマイケル・ジャクソンの「スリラー」でした。MTVの時代ですよね。そんな時代にアメリン南部ではこんなブルーズがヒットしていたわけです。