2019.03.08 ON AIR

LPレコードで聴くブルーズ名盤
Hoodoo Man Blues/Junior Wells’ Chicago Blues Band
(Delmark Records DS-9612)

img01

ON AIR LIST
1.Snatch It Back And Hold It/Junior Wells’ Chicago Blues Band
2.Ships On The Ocean/Junior Wells’ Chicago Blues Band
3.Good Morning School Girl/Junior Wells’ Chicago Blues Band
4.Yonder Wall /Junior Wells’ Chicago Blues Band
5.Hoodoo Man Blues/Junior Wells’ Chicago Blues Band

LPレコードで聴くブルーズ名盤シリーズ。今日は1965年リリースのジュニア・ウエルズの「Hoodoo Man Blues」というアルバムです。
レコード会社は「デルマーク・レコード」
メンバーはハーモニカとヴォーカルがジュニア・ウエルズ、ギターがバディ・ガイ、ベースがジャック・マイヤーズ、ドラムがビリー・ウォーレンの4人なんですが、この4人がシカゴのウエストサイドのクラブで出しているブルーズ・サウンドをそのままパックしたようなリアル・ブルーズの名盤です。ジャケット写真もかっこいいです。
まずはside.1の一曲目。ジュニア・ウエルズらしいファンキーなダンス・ナンバー
1.Snatch It Back And Hold It/Junior Wells’ Chicago Blues Band

ジュニア・ウエルズそしてバディ・ガイたちはこの録音当時30歳前後。1965年ですから50年代初期に盛り上がったマディ・ウォーターズ、ハウリン・ウルフたちの時代から10年以上は過ぎているわけです。
マディの時代ほどシカゴブルーズは盛り上がってはいなくて、主流はB.B.キング、フレディ・キングのようなアーバン、モダン・ブルーズに移っていく狭間にジュニアやバディそしてマジック・サム、オーティス・ラッシュたちは、少し取り残された感じになってしまった。
「オレの乗っている船は紙(Paper)でできている。それに乗っておれはひとりで七つの海を航海している。オマエにしてやることは何もない。なにもないんだ」と恐らく苦しい日々の生活を船の航海に例えて歌った次の曲はトラッドなシカゴ・ブルーズとモダン・ブルーズがミックスされ、しかもそこにシカゴのストリートの匂いが付け加えられたこれぞブルーズという曲です。
2.Ships On The Ocean/Junior Wells’ Chicago Blues Band
レコーディングのチャンスも少なくなっている60年代半ばのブルーズ・シーンでこういうドロっとした、アウトローなブルーズをクラブで彼らは毎晩演奏してたのでしょう。
全体のサウンド、グルーヴ、雰囲気がマディの時代のような一流の感じではなく、どこか二流っぽい、でも素晴らしくブルーズなテイストが感じられるこのアルバム。

次はサニーボーイ・ウィリアムスン1(ジョン・リー・ウィリアムス)がオリジナルのブルーズの有名曲です。曲名「Good Morning School Girl」「おはよう女学生」にいつもひっかかるんですが、このスクール・ガールというのはいまで言うJK(女子高生)のことでしょうか。内容がですね「おはよう可愛い女子高生、いっしょに家に帰ってもええかな。パパとママに学校の友達やって紹介してくれよ。ほかの子やダメなんや、君やないと。めちゃ好きなんよ」まあ、これナンパの歌ですよね。これをですね、当時30歳になっているジュニア・ウエルズが歌うのはどうなんでしょう。いまね、援助交際とかセクハラとかうるさい時代に絶対問題になるでしょう。原曲には「オマエにダイヤ買ってやるから、彼女になってくれ」という歌詞もあるんですが、絶対マズいでしょ、いまやったら。でも、この曲ヤード・バーズ、テンイヤーズ・アフターはじめすごくたくさんのミュージシャンにカバーされているブルーズ・スタンダードです。

3.Good Morning School Girl/Junior Wells’ Chicago Blues Band
シカゴではリトル・ウォルターがハーモニカの音をアンプを通してだすアンプリファイドが主流になっていく中、ジュニアはアンプを使わないでヴォーカル・マイクに生の音のまま吹くというサニーボーイ・ウィリアムスン1のやり方で吹くことも多かったです。僕がアメリカでジュニアを見た最後、彼が亡くなる二年前くらいの時もアンプは使ってなかったです。アンプを使わないハーモニカの音の方が僕は好きです。
同時代のウォルター・ホートン、ジェイムズ・コットン、キャリー・ベルとはまた違うジュニア独特のハーモニカ・プレイがあり、改めてジュニアのハーモニカがいいなぁと思います。

次の曲はエルモア・ジェイムズ、ジュニア・パーカー、フレディ・キングなど本当にたくさんのカバーがあります
4.Yonder Wall /Junior Wells’ Chicago Blues Band

1998年にジュニア・ウエルズは亡くなったのですが、ざっと振り返ると34年にブルーズのメッカでもあったメンフィスに生まれ、10代のはじめにシカゴに移ってルイス・マイヤーズやフレッド・ビロウとバンドをつくり、52年にマディ・ウォーターズのバンドに誘われて加入、53年にレコーディング・デビューして”Little By Little”,”Messin’ With The Kid”といったファンキーなブルーズをシカゴ・ブルーズに吹き込んだ。そして、58年頃からコンビを組んだわけではないけれど、バディ・ガイとともに演奏することが多くなり互いの録音にも参加して、初来日もふたりでやってきました。これといった大きなヒット曲はなかったけれどシカゴのブルーズクラブをそのまま持ち込んだようなライヴはやっぱり、リアル・ブルーズで素晴らしかったです。僕が最後に観たときもファンキーなブルーズと独特のドロッとしたスローブルーズでブレないブルーズを聴かせてもらいました。
最後にアルバム・タイトル曲を聴いてください。

5.Hoodoo Man Blues/Junior Wells’ Chicago Blues Band

今日のLPレコードで聴くブルーズ名盤は1965年デルマーク・レコードがリリースしたジュニア・ウエルズの「Hoodoo Man Blues」を聴きました。CDでもリリースされているので是非ゲットしてじっくり聴いてみてください。