2019.12.06 ON AIR

期待される黒人女性ブルーズ・シンガー、クリスタル・トーマス

Don’t Worry About The Blues/Crystal Thomas (SPACE 021)
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On Air List
1.I’m A Fool For You Baby/Crystal Thomas
2.Can’t You See What You’re Doing To Me/Crystal Thomas
3.The Blues Ain’t Noting But Some Pain/Crystal Thomas
4.I Don’t Worry Myself/Crystal Thomas

 

今日は日本のブルーズ・ファンの間で最近ちょっと評判になっている女性ブルーズシンガー、クリスタル・トーマス
現在テキサス、ルイジアあたりで活動を続けている女性ブルーズシンガー。
1977年の生まれというから43才です。
以前この番組でテキサスの現在活躍する女性ブルーズシンガーたちを集めた「ブラッデスト・サキソフォンfeat.テキサス・ブルーズ・レイディズ」というアルバムを紹介した時に僕もイチオシで彼女の歌をON AIRしました。
そのクリスタル・トーマスのソロ・アルバムです。過去に一枚自主制作でアルバムを発表していますが、これが初ソロと言ってもいいと思います。アルバム・タイトルが”Don’t Worry About The Blues” 「ブルーズを心配しないで」ボーナストラックを含めて15曲収録されています
まずは一曲
1.I’m A Fool For You Baby/Crystal Thomas
タイトな演奏をバックにクリスタルが持ち前のいい歌声で気持ちのいい唄を歌ってます。
彼女の声は厚みのある豊かな声で、しかもよく通るんですね。ブルーズを歌う女性にありがちなガナったり、シャウトを多用するようなところがなくてナチュラルでいいです。
途中のギターソロはジョニー・モーラー、若い頃からテキサス、オースティンのブルーズクラブ「アントンズ」に出入りしてた叩き上げで、ファビュラス・サンダーバードに在籍したこともあり、自らのアルバムもリリースしているギタリスト。ドラムはジョニーの弟のジェイソン・モーラー。
このアルバムの売りはクリスタルの歌はもちろんですが、ベースにチャック・レイニーとキーボードとギターでラッキー・ピーターソンが参加しているところなんですが、そのラッキー・ピーターソンのオルガンとチャック・レイニーのベースがディープなファンク・テイストを作っているのが次の曲。
2.Can’t You See What You’re Doing To Me/Crystal Thomas
いまのは元々アルバート・キングの曲で「オマエ、オレに何してんのかわかってんのか。オレはふたつも仕事して金全部家に入れてる。そやのにオマエはオレと別れて元のさやに収まろうとしてのやぞ」と怒ってる歌ですが、クリスタルさんはアルバートほどドスが効いてなくてまだ可愛い。
クリスタルさんは43才だそうで、どういう経緯でブルーズを歌うようになったのか知らないのですが、南部にはまだまだブルーズを歌っている人はたくさんいます。でも、なかなかメイン・ストリームに出てくる人が少ないです。
スローの曲ではジャニス・ジョップリンのOne Good Manが収録されているのですが、それよりもいまから聴いてもらうブルーズ・バラード的なものの方が彼女に合っている気がします。
3.The Blues Ain’t Noting But Some Pain/Crystal Thomas

今回のアルバムの選曲をどういう経緯でやったのかわからないのですが、彼女自身のオリジナルが二曲、マディ・ウォーターズで有名なMojo Workinにさっき聴いたアルバート・キングやジュニア・パーカーのブルーズに、いま聴いてもらったのがあまり知られていないオルガン・プレイヤーのシャーリー・スコットの曲と、普段彼女が歌っている曲を歌ったのか、プロデュースサイドが用意したのかわからないのですが、全体のサウンドのテイストはファンク仕立てです。
昨年、日本のジャンプ・バンド、ブラッデスト・サキソフォンのテキサス録音盤”BLOODEST SAXOPHONE feat. TEXAS BLUES LADIES / I JUST WANT TOMAKE LOVE TO YOU”にテキサスの女性シンガーの一人として参加して、そのアルバムもこの番組でOn Airしました。確かに他の参加シンガーにはない独自の個性があり僕もいいなと思いました。だから、彼女への期待はすごく大きいのですが、以前シメキア・コープランドが登場した時に僕はすごく期待したのですが、シメキアもいまひとついいプロデュースのアルバムがないままいまに至っています。やはりプロデュースが大切です。
4.I Don’t Worry Myself/Crystal Thomas

いいアルバムですが、僕は今回の彼女のこのアルバムにすごく満足したわけではなく、もうひとつガツンとくるものが欲しい気がします。声もいいし、ナチュラルな感じも好きのですが、全部聴いてしまうとやや平坦で何か物足りないものを感じます。例えばジャニスのカバーを歌っていますが、ジャニスは歌が上手いとか下手とかの問題ではない、他の歌手にはない圧倒的な、有り余る気持ちのある歌を残しました。たぶん僕が感じているその物足りなさはそういうことではないかと思うのですが。あふれる気持ちが感じられたらええかなと。でも、また違うタイプのアルバムをつくれば彼女の個性がもっと出てくるのかも知れません。プロデュースの問題かなぁ・・・。偉そうにすんまへん。