2019.12.13 ON AIR

ルイジアナ・ミュージックで必ず出会うケイジャンとザディコの楽しさ

The Best Of Cajun & Zydeco (NOT NOT2CD358)
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ON AIR LIST
1.Jambalaya/Moon Mullican
2.Vinton High Society/Hackberry Ramblers
3.Paper In My Shoe/Boozoo Chavis
4.Squeeze Box Boogie/Clifton Chenier
5.Ay-Tete-Fee/Clifton Chenier
6.La Louisianne/Vin Bruce

前からルイジアナ固有の音楽であるケイジャン・ミュージックとザディコ・ミュージックの特集をやりたいと思っていたら、偶然先日レコード店で”The Best Of Cajun & Zadeco”を見つけたので今日はそれを聴きながらケイジャンとザディコについて話してみたいと思います。
ニューオリンズの音楽、近年亡くなったアレン・トゥーサンやアート・ネヴィル、ドクター・ジョンはじめニューオリンズの音楽を好きになると自然と同じルイジアナ州のケイジャン・ミュージックとザディコ・ミュージックに出会うことになります。

まずケイジャンというのはライターの文屋章さんたちが編纂した「ニューオリンズ・ミュージック・ガイドブック」によると、「カナダのアーケイディア地方に済んでいたフランスの移民たちが、1700年代後半にルイジアナの南西部に移り住んで原住民のネイティヴ・インディアンとの混血が進み、インディアンとアーケイディアが合わさったということで「ケイジャン」と呼ばれるようになったそうだ。それでルイジアナにはケイジャン料理とかケイジャン音楽というものが生まれた。
フランス系ですから白人の音楽でアコーディオンとフィドル(バイオリン)が必ず入っていて、そこにギターやピアノなんかも入ることがあります
まずケイジャン・ミュージックで有名なこの曲を聴いてみましょうか。
1.Jambalaya/Moon Mullican
まあなんとものんびり感たっぷりの曲で、同じ白人音楽のカントリー&ウエスタンと同じようなテイストを感じますね。そのカントリー&ウエスタンに対しても僕は知識が薄くて、一度どっぷり聴かなくてはと思っているのですが・・・。
タイトルのジャンバラヤというのはご存知の方も多いと思いますが、ケイジャン料理のひとつで香辛料が効いたお米の煮込み料理ですが、ニューオリンズへ行ったときもケイジャン料理はよく食べたのですが、ケイジャン・ミュージックはあまり進んで聴かなかったんですね。
では、ケイジャン・ミュージックで最も有名なバンドのひとつ「ハックルベリー・ランブラーズ」を聴いてみましょうか。1933年に結成されてフィドル、ギター、ベース、アコーディオンと言う編成でフランス語で歌っていたのですが、途中から英語でも歌うようになったそうです。でも、曲のタイトルやミュージシャンの名前などで読めないものがあり、よくよく見るとフランス語というのがケイジャンにはよくあります。やはり元々フランス人の末裔ですからフランス特有のプライドはあるのかも知れません。
2.Vinton High Society/Hackberry Ramblers
いまのハックルベリー・ランブラーズというバンドは有名なバンドでこのアルバムにも4曲収録されています。2000年にもアルバムをリリースしてますが、まだバンドが継続しているかどうかはわかりません。

では、このアルバムのもうひとつの音楽ザディコを聴いてみましょうか。ザディコはまあまあ得意分野です。と言うのもざっくり言うといまケイジャン・ミュージックにアフリカ黒人系のR&Bのテイストを混ぜたものです。だからケイジャンよりビートが強くてグルーヴ感が黒人音楽系です。サウスルイジアナやイーストテキサスのフランス文化圏で育ったアフリカ系黒人たちが作った音楽がザディコ
では、そのザディコのよく知られた曲のひとつでザディコ・ミュージックの創始者のひとりブーズー・チェイヴィズが1954年に録音してヒットした曲

3.Paper In My Shoe/Boozoo Chavis
さっきのケイジャンの曲に比べると急にブルーズ・テイストというかR&Bテイストが出てきて、リズムも強くなってます。一曲目のジャンバラヤと比べると歌がまず違いますよね。まあ、人種による表現の違いがはっきり出てますね。
では、ザディコと言えば「キング・オブ・ザディコ」と呼ばれたクリフトン・シェニエ。
彼はトラッドなザディコにブルーズやニューオリンズのR&Bを融合させ、すごくダンサブルな音楽を作ったパイオニアでアコーディオン・プレイヤーです。
そもそも僕の時代の人たちはアコーディオンは歌のバックの楽器。子どもの頃に横森良三さんというアコーディオン奏者の有名な人がいて、その人が歌のコンテストなんかで歌のバックで弾いていた印象しかない。それをブルーズのソロ楽器として聴いたときにはびっくりしました。でも、なんともいなたカッコいいんですよ。
4.Squeeze Box Boogie/Clifton Chenier
ザディコ音楽はダンスナンバーが多いのですが、サウンドが厚いアコーディオンという楽器をアグレッシヴなリズム楽器的に使っているところが実にカッコいいです。他にもロッキン・ドプシー、バックフィート・ザディコとか女性のクイーン・アイダとか有名どころがいます。
もう一曲聴いてみますか、クリフトン・シェニエ。

5.Ay-Tete-Fee/Clifton Chenier
最後はケイジャン・ミュージックのヴィン・ブルースを聴いてみましょう。50年代にコロンビアレコードからコンスタントにリリースしていた人で、かなり売れていたようでナッシュヴィルにあるカントリー&ウエスタン有名なラジオ番組「the Grand Ole Opry」にも出ている。彼はスムース&ジェントル・ヴォイスと呼ばれる声をしているんですが、カウボーイ映画のワン・シーンで流れるような歌を聴いてください。
6.La Louisianne/Vin Bruce
ヴィン・ブルースは1932年生まれで今年87才・・・もう歌ってないかな。でも、いまも健在なのでルイジアナあたりで活動しているかもしれません。

白人のケイジャン・ミュージックと黒人のザディコは互いに影響し合いながらルイジアナのローカル・ミュージックとしていまも親しまれています。ブルーズとソウルのような黒人音楽もそうですが、白人の音楽の影響は受けているし、白人の方も当然黒人の音楽の影響を受けて現在まで着ているわけで、そう考えると音楽の世界の中では差別はないんですがね。
今日はNOTレコードからリリースされているThe Best Of Cajun & Zydecoを聴いてみました。