2024.01.26 ON AIR

もうひとつのブギウギ/ジョン・リー・フッカーの個性的なブギ vol.7

ON AIR LIST
1.Boogie Chillen/John Lee Hooker
2.Hoogie Boogie/John Lee Hooker
3.Feelin’ Good/Junior Parker
4.I Feel So Good/I Wanna Googie/Magic Sam
5.Boogie Thing/The James Cotton Band

アメリカでは20年代から始まったブギウギの嵐が30年代も収まらず40年代にはアフリカン・アメリカンだけでなくアメリカのポピュラーソングの土壌にブギウギはしっかり根を張ってしまいました。つまり、一過性の流行りの音楽ではなくアメリカ音楽のルーツのひとつとなったわけです。
1946年にブギウギから発展したR&Bの匂いをさせたルイ・ジョーダンの”Choo-Choo Ch’ Boogie”が18週間R&Bチャートの1位となりそれまでのピアノ・ブギからバンド・サウンドによるブギそしてR&Bへと変化いく中で、49年にダウンホームつまりアメリカ南部を感じさせるイナたいブギがデトロイトから発信されました。ジョン・リー・フッカーの「ブギ・チレン」です。R&Bチャートの1位となり、なんと100万枚売れました。歌詞は「オレのお袋はオレが一晩中遊んでいるのを許してはくれなかった。オレはそんなこと気にせず一晩中ブギしてた。初めて街のヘイスティング・ストリートを歩いているとみんなが「ヘンリー・スイング・クラブ」のことを話していたので行ってみたら、みんなめちゃ盛り上がってるやん、そう「ガキども、ブギで踊れ!」だ」

1.Boogie Chillen/John Lee Hooker

ジョン・リー・フッカーの「ブギ・チレン」
このミシシッピー伝統のワン・コードのブギが都会に出て来ていたデトロイトの黒人たちから支持され、やがて全米ヒットになり「ブギ」はジョン・リー・フッカーの代名詞のようになった。都会に出て来て洒落た音楽が好きになる黒人ぱかりでなくこういう故郷南部のグルーヴを持ったリズムがやはり心地よいと感じる黒人も多かった。
しかし、このブギは今まで聞いて来たピアノやバンドのブギとまた違う種類のジョン・リー独自のブギ。リズムもギター一本で弾き語りで演奏されています。もうオーケストラやエレキ・ギターの入ったバンドが全盛になりつつある時にこんな土着的な匂いのブルーズ・ブギが大ヒットしたのです。
僕はとにかくジョン・リー・フッカーがめっちゃ好きでアルバムもボックスもたくさん持っているんですが、内容のバリエーションは全然ないです。でもなんかこう聞きたくなるんですね。もう一曲おかわりです。

2.Hoogie Boogie/John Lee Hooker

このジョン・リーの独特のブギのグルーヴはその後の時代もサウンドを変えて受け継がれてくのですが、50年代初期に”Feelin’ Good”という曲でこのブギを受け継いだのがメンフィスにいたジュニア・パーカー。ジョン・リーのギター・ブギのグルーヴを使いながらどこか洗練されたモダン・ブルースのテイストを感じさせる不思議な曲。

3.Feelin’ Good/Junior Parker

更に60年代にはジュニア・パーカーのヴォーカルに影響を受けたマジック・サムがこの曲を今度はロッキン・ブルーズとして”I Feel So Good/I Wanna Googie”というタイトルで見事に再生させるという素晴らしいブルーズの継承がありました。

4.I Feel So Good(I Wanna Googie)/Magic Sam

70年代になってこのジョン・リーのブギに新たに命を吹き込んだのがジェイムズ・コットン・バンド。
ハーモニカの名手ジェイムズ・コットンとギター名人マット・マーフィがタッグを組んだこのバンドが74年に発表した”100%コットン”はファンク・ブルーズと呼ばれ新しいグルーヴのブルーズを作りました。
そしてその中の「Boogie Thing」はジョン・リー・マナーのブギを使いながらも生き生きとした新しさがありました。
今日最初のジョン・リー・フッカーの1949年の「ブギ・チレン」からジュニア・パーカーの50年代の「Feelin’ Goodそして先ほどのマジック・サムの60年代後期の「I Feel So Good/I Wanna Googie」に受け継がれたブギが70年代に入って新しく生き返りました。マット・マーフィのリズム・ギターがジョン・リーのブギの裏打ちやリズム・パターンを何気なく使っているところが聞きどころです。

5.Boogie Thing/The James Cotton Band

前も言いましたが、70年代に今のコットン・バンドがデビューして間も無く彼らのロスでライヴを観たのですが、本当にブルースにもブギにも新しいテイストを吹き込んだ素晴らしいバンドでした。こんな素晴らしいブルースを「あんなのはブルースではない」と言ったアホな評論家もいました。