2024.02.09 ON AIR

ブギウギからジャンプ・ブルーズそしてロックンロール誕生

ON AIR LIST
1.Ain’t That Just Like a Woman (They’ll Do It Every Time)/)/Louis Jordan
2.Johnny B. Goode/Chuck Berry
3.Rocket 88 /Jackie Brenston & His Delta Cats
4.Tutti Frutti/Little Richard
5.Whole Lotta Shakin’ Goin’ On/Jerry Lee Lewis
6.Jailhouse Rock/Elvis Presley

20世紀の初頭に黒人音楽のブルーズのひとつのリズムとして生まれ、やがて1930年代に白人も取り込み熱狂的に全米で広まったブギウギ。それが次の時代のジャンプ・ブルーズのリズムの土台となりそこから50年代のR&Bへと変遷して行った。それは同時にR&Rを誕生させることになりそれが現在のロックのルーツであることを省みるとブギウギの凄さに改めて驚く。
R&Rを作ったオリジネーター、チャック・ベリーはブギの影響を強く受けたジャンプ・ブルーズを代表するルイ・ジョーダンの大ファンでソングライティングに大きな影響を受けている。そして、そのギターのリズム・パターンは明らかにブギからの流れで作られたものだ。
ルイ・ジョーダンのイントロからチャック・ベリーがいただき大ヒットとなったそのイントロだけまず聴き比べてみましょう。まずルイ・ジョーダンのこの曲です。ギターはカール・ホーガン。 リリースは1946年。

1.Ain’t That Just Like a Woman (They’ll Do It Every Time)

ではチャック・ベリーの大有名曲のイントロをよく聞いてくだい。

2.Johnny B. Goode/Chuck Berry

ルイ・ジョーダンのAin’t That Just Like a Womanから10年以上経った1958年リリース。ジョニー・B・グッドのイントロのギターのシングル・ノートはほぼそのままAin’t That Just Like a Womanを使っています。チャックは20歳頃にルイの曲を聞いていたわけです。曲だけでなくライヴのルイのコミカルな動きはチャックがギターを持ってアヒルのように歩く「ダック・ウォーク」や股を大きく開いてギターを弾くアクションのヒントになったのではと思います。そして何よりチャックのノベルティな歌詞はルイ・ジョーダンからのものでしょう。ジャンプ・ブルーズの王様ルイ・ジョーダンがR&Rの王様となるチャックに与えた影響は大きかったと思います。
チャック・ベリーはR&Rの王様とか創始者と呼ばれていますが、最初のR&Rの曲と言われてるものがチャック・ベリーの他にもいくつかあります。
1951年のジャッキー・ブレストン&デルタ・キャッツの「Rocket 88 」。これが最初のR&Rと言っている人も多くいます。実はこのデルタ・キャッツというグループは元々アイク・ターナー(ティナ・ターナーの夫だった)が結成していた「キング・オブ・リズム」というバンドでジャッキーはそのバンドのヴォーカル&サックスだった。それがチェス・レコードでジャッキー・ブレストン&デルタ・キャッツという名前に変えてリリースしたそうです。
この曲が最初のR&Rの曲という説もあります。ギターのリズム・パターンは完全にブギピアノの左手のパターンを弾いてます。ホーンを混えたサウンドはジャンプ・ブルーズそのもの。

3.Rocket 88 /Jackie Brenston & His Delta Cats

R&Bチャートの一位に1ヶ月君臨した曲でした。
R&RとR&Bの線引きは難しいところですが、黒人ミュージシャンはR&Rという言葉よりR&Bを使うことの方が多いです。いまのRocket 88も僕はジャンプ・ブルーズまたはR&Bと思ってます。でも、多分R&Rという言葉を使った方が白人に受けて売れたからでしょうね。
次の曲はどうでしょう。これもR&Rの最初の曲と言われているもので、歌っているリトル・リチャードはキング・オブ・ロックンロールと呼ばれています。1955年リリース。これもピアノ・パターンはブギ・ウギ。サウンドはR&B。個人的に大好きなリトル・リチャード

4.Tutti Frutti/Little Richard

黒人のジャンプ・ブルーズやR&Bの影響を受け、50年代半ばには白人シンガーがたくさん登場してきて白人の子供たちも熱狂し始めてR&Rと呼ばれそのブームは世界的な規模になっていきます。僕も子供の頃、近所のちょっとワルなリーゼントのお兄さん、ポニーテールのお姉さんがR&R聞いていたのをうっすらおぼえてます。当時はロカビリーと呼んでました。
次の白人シンガーもロカビリー・シンガーと呼ばれていました。

5.Whole Lotta Shakin’ Goin’ On/Jerry Lee Lewis

今のもリズムの根幹はブギウギですが感じ取れましたか。
リリースしたのは先ほどのRocket 88と同じメンフスのサン・レコード。オーナーのサム・フィリップスは先見の明があり才能のあるロックンローラーだけでなく、ブルーズのハウリン・ウルフやジュニア・パーカー、リトル・ミルトンそしてカントリーのジョニー・キャッシュなどジャンルに関係なく才能を発掘した偉大なプロデューサーです。
そしてメンフィスからビッグ・スターとなったエルヴィス・プレスリーの才能を最初に見抜いたのもフィリップスでした。次の曲はサン・レコードの後RCAレコードに移籍してからの大ヒットですがこれもギターのリズムがブギなのがわかります。

6.Jailhouse Rock/Elvis Presley

ちなみにプレスリーがその歌い方のお手本にしたのは以前ON AIRしたジャンプ・ブルーズのロイ・ブラウンでした。
こういう50年代のR&Rが現在まで続くロック・ミュージックの礎になっているわけですが、それを解析してみるとR&Rはジャンプ・ブルーズそしてその前のブギウギなくしては生まれなかった音楽ということがわかります。そして、黒人音楽(ブラック・ミュージック)がその礎を築いた後に白人ミュージシャンがそれをポピュラーにしてお金を稼ぐという構図はその後も続いていきました。