2016.11.11 ON AIR

The Original American Folk Blues Festival
~海を渡ったブルーズマンたち

The Original American Folk Blues Festival(Polydor 825 502-2)
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ON AIR LIST
1.We’re Gonna Rock/Memphis Slim
2.I Wanna See My Baby/T.Bone Walker
3.Need Your Love So Bad/John Lee Hooker
4. Hey Baby/Shakey Jake
5.Shake it Baby/John Lee Hooker
6.Bye Bye Baby/Memphis Slim

 

 

 

このところこの番組では1960年代のアメリカの黒人音楽の流れを追ってきて、前回は1970年にブルーズマンとして初めてグラミーを獲得した”The Thrill Is Gone”を発表したB.B.キングを聴きました。
でも、実はこの60年代ブルーズにとってふたつの大きな出来事がありました。ひとつはアメリカで50年代終わりからウディ・ガスリーやピート・シーガーたちのフォーク・ブームの中から新しいボブ・ディランやジョーン・バエズたちが登場し、アメリカのルーツ・ミュージックの再発見的な動きがあり、その流れでフォーク・ブルーズつまりアコースティック主体の戦前のブルーズマンたち、ミシシッピー・ジョン・ハートやライトニン・ホプキンス、スキップ・ジェイムズ、サン・ハウスたちが再び脚光を浴びました。まあ、フォークブルーズというよりド・ブルーズの人たちもアコギで弾き語りということで何となくその仲間に入れられた感はありましたが・・。
それと別にもうひとつの動きはヨーロッパにアメリカの黒人ブルーズマンたちが行くようになったことです。ヨーロッパではその前からアメリカのディキシーやジャズが盛んで、その流れからルーツであるブルーズがいい、とくに若い人たちがブルーズってかっこいいよねというブームがあり、もちろんこれにはチャック・ベリー大先生がブルーズからR&Rを作ったこともありまして、そのR&Rのルーツであるブルーズにヨーロッパの若者の目が注がれたわけです。それでヨーロッパに呼ばれて「アメリカン・フォーク・ブルーズ・フェスティバル」というのが各地で開催されるようになりました。それを必死なって観に行ってたのがローリング・ストーンズをはじめとする、のちのブリティッシュ・ブルーズ・ロックの若者たちでした。
では、まず一曲。ブルーズマンたちがヨーロッパに行った1962年の「アメリカン・フォーク・ブルーズ・フェスティバル」の音源からメンフィス・スリムの強烈なブギを。ピアノと歌メンフィス・スリム、ドラムはジャンプ・ジャクソン、ベース、ウィリー・ディクソン、ギターはなんとT.ボーン・ウォーカー
1.We’re Gonna Rock/Memphis Slim
このアルバムはハンブルグの小さなスタジオにちょっとお客さんを入れて録音したものらしくて、お客さんの拍手が入ってるものとないものがあります。62年ですからT.ボーンは52才、ウィリー・ディクソン47才、メンフィス・スリムも47、ドラムのジャンプ・ジャックは45才、みんなまだ若くて演奏もバリバリです。

次はT.ボーンがヴォーカルとギターです。T.ボーンはジャズテイストがあるのでジャズ好きのヨーロッパ人に受けたと想います。
2.I Wanna See My Baby/T.Bone Walker

ヨーロッパとくにイギリスの若い人たちにはT.ボーンより次のジョン・リーの方が受けた気がします。
途中のパンク的とも言えるジョン・リーのギター・ソロがおもろいです。最後まで弾かないで語ってしまうところなんか凡人にはなかなかできません。コードが変る小節数もジョン・リーは気にしていないというか、12小節でやっていたのに急に勝手にワン・コードになったりします。バックにウィリー・ディクソン、ピアノにメンフィス・スリム、ギターにT.ボーンというブルーズの名人がいようがジョン・リーはジョン・リーです。国宝みたいな人ですから。
これまた曲もですね。リトル・ウィリー・ジョンの大ヒットI Need Your Love So Badからパクったやろというものですが、そこは影響を受けたということで・・・なんせジョン・リー・フッカーでから。
3.Need Your Love So Bad/John Lee Hooker

次のシェイキー・ジェイクはマジック・サムの親戚のおじさんで、”Roll Your Money Maker”というファンキーな曲でも知られているハーモニカ・プレイヤー。ここではHey Babyという曲名でうたってるんですが、さっきのジョン・リーと同じでこれもリトル・ウォルターのヒット”Everything’s gonna be alright”のパクリみたいな曲です。それ言うたらブルーズって伝承音楽ですからしゃあないんですけどね。
4. Hey Baby/Shakey Jake
やっぱり、最初に Hey Babyって歌ってEverything’s gonna be alrightですからね。ハーモニカの音が遠かったところが残念ですが、ウケてましたね。

再びジョン・リー・フッカー、当時のことをジョン・リーは「イギリスではオレは王様のように大歓迎されたよ」と言ってます。
演奏がおもろいんですが、ピアノのメンフィス・スリムは形どおり12小節の定型ブルーズで演奏してるんですが、ジョン・リーが得意のコードチェンジしないワン・コードブギになって、ベースのウィリー・ディクソンはどうしょうかな・・どっちについていくのかなっていう感じですが、なんとなくスリムのピアノがずっとしっかり型通りやるものですからディクソンもみんながそこに収まっていきます。そのあたりの面白さも聴いてください。ジョン・リーはまったく関係なく進んでますが、ノってます!
5.Shake it Baby/John Lee Hooker
ジョン・リーは傍若無人というか、たぶんワン・コードで自由にやりたかったかも知れませんが・・・おもろいです。

時間があるのでメンフィス・スリムをもう一曲
6.Bye Bye Baby/Memphis Slim

このアメリカン・フォーク・ブルーズ・フェスティバルというイベントは何年か続いて、いろんなブルーズマンがヨーロッパに行ってめちゃウケしてその影響でイギリスでブリティッシュブルーズ、ブリティッシュ・ロックが生まれる土台を作りました。サニーボーイはイギリスのヤードバーズとライヴをやってライヴアルバムを残したりしています。ヤードバーズもまだデビュー前です。まだストーンズもデビュー前。今日は60年代ブリティッシュ・ロック爆発前夜、1962年のアメリカン・フォーク・ブルーズ・フェスティバルを聴きました。