2016.11.04 ON AIR

B.B.Kingを世界に連れ出した “Completely Well”を聴く

Completely Well /B.B.King (ユニバーサル・ミュージック UICY 77464)
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ON AIR LIST
1.I’m So Excited/B.B.King
2.No Good/B.B.King
3.Confessin’ The Blues/B.B.King
4.The Thrill Is Gone/B.B.King

 

 

 

 

前回まで60年代の黒人音楽のヒット曲をいろいろ聴いて1969年まで辿ったのですが、その頃にはブルーズはヒットチャートにはほとんど出てこなくなりました。ところが1970年になってB.B.キングがグラミー賞を受賞することになりました。今日はその受賞曲”The Thrill Is Gone”が収録されている”Completely Well”を聴きます。
僕はこのアルバムをリリースされて1年後くらい71年くらいに聴いたと思う。ロックから黒人ブルーズにのめり込んでいった頃、このアルバムはすぐ好きになったブルーズの一枚。
参加ミュージシャンは当時のニューヨークの一流スタジオ・ミュージシャン、ドラムのハービー・ラヴェル、ベースのジェリー・ジェモット、ギターのヒュー・マクラッケンなど。プロデューサーはビル・シムジックという人で、のちに有名なイーグルスの「ホテル・カルフォルニア」をプロデュースした人で他にもJ.ガイルズやジョー・ウォルシュ。まあ、ロック派のプロデューサー。
でも、それが功を奏したのかブルーズをずっと手がけてきた人とはちょっと違う感覚がホピュラリティを得ることになったアルバム。
まずはすごくかっこいいなぁと聴いた最初に思った曲です。タイトルどおり僕もすごく興奮しました。
1.I’m So Excited/B.B.King

実は買ってしばらくして、このアルバムがブルーズ評論家やコアなブルーズファンにこき下ろされていることを知った。そのこきおろされた理由が「これはブルーズではない」というもので、ひどいのになると「B.B.キングは終わった」みたいなことを言ってる輩もいた。いま聴いてもらった曲のように曲調がファンク調だったり、”The Thrill Is Gone”にストリングスが入っていたり・・そういうことが昔ながらのブルーズを好きなファンからNOと言われてしまった理由だった。しかし、このアルバムが出た60年代終わり、すでに黒人音楽の主流はソウルやファンクといった音楽に移っていた。そして、振り返ってみればブルーズという音楽はその時代の新しい音楽のテイストを少しずつ入れながら生き続けてきた音楽だ。弾き語りのアーシーなブルーズにジャズやラグの要素を入れた小洒落たブルーズを入れたものが生まれ、ビッグバンドを入れてダンサブルにしたジャンプブルーズが流行り、カントリー・ブルーズをエレクトリック化してリズムを強化したシカゴ・ブルーズが生まれ、よりビートが強調されロッキン・ブルーズが生まれ、それはR&Rになり、ゴスペルの要素を入れたモダンブルーズのシンガーが登場したりと・・時代によってブルーズはずっと変化してきた。
B.Bに関して言えば、ファンクになろうが、ストリングスが入ろうがB.B.の音楽、ブルーズに対する根幹的な真摯な姿勢は何も変わっていない。それどころかいまの曲でも新しいものを取り入れてB.Bは?溂としているように感じる。

2曲目のスローブルーズでいつも通りの、揺るがないB.B.を聴く事が出来る。
2.No Good/B.B.King

ジェイ・マクシャン・オーケストラの30年代のヒット曲をファンク・テイストたっぷりにアレンジした次の曲も僕は好きだ。B.Bの他にもリトル・ウォルター、エスター・フィリップス、レイ・チャールズほかロックではローリング・ストーンズがカバー。でも、ファンクテイストでカバーしているのはB.B.だけだと思う。
Confessin The BluesですからConfessは告白とか打ち明けるという意味ですから、「告白のブルーズ」
「自分の心を自分の手に持って君の前に立つよ。君に分かってもらいたくてね。オレをバカにしないで、他の誰よりも君を愛している。これは君への告白だよ。昔のことなんか忘れて明日のことを考えようよ」
3.Confessin’ The Blues/B.B.King

この前はライヴ・イン・ジャパンのアルバムからON AIRしたけど、今日はスタジオ盤。もう一度B.B.のグラミー受賞曲、”The Thrill Is Gone”を聴いてみようと思う。
もともとこの”The Thrill Is Gone”は1951年にロイ・ホーキンスというピアノ・ブルーズマンが録音したのがオリジナル。スリルはワクワクドキドキっていう意味。
「ワクワクドキドキすることはなくなってしまった。オマエはオレにひどいことをしたけどいつの日かそれを悔やむだろう。オレはまだ生きてるけど寂しくなるよ。オレはオマエから離れて自由になった。すべては終わって、オレはただオマエの幸せを祈るだけだ」
B.B.らしいスケールの大きなブルーズになっていると思います。
4.The Thrill Is Gone/B.B.King

評論家やブルーズの頭の固いファンにボロクソ言われたこの曲ですが、この曲があったからヒットしたからグラミーを取ったからB.B.は世界をツアーすることができ、ブルーズを世界に広めることが出来た。どんな時でどこでもB.B.はこの曲だけはかならず歌いました。自分がずっと音楽を出来るようにしてくれた、自分を支えてくれたこの曲なくして自分はないと彼は言ってました。