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2021.08.20 ON AIR

私が愛するソウル・シンガー、O.V.ライトの魅力その3

A Nickel And A Nail And Ace Of Spades / O.V.Wright
(Back Beat/P-Vine PCD-7303-07)

ON AIR LIST
1.Ace Of Spades / O.V. Wright
2.A Nickel And A Nail / O.V. Wright
3.I Can’t Take It / O.V. Wright
4.Don’t Let My Baby Ride / O.V. Wright

前回まではなかなかヒットが出せないでいた1960年代のO.V.ライトの話をしましたが、70年代に入りO.V.の救世主のように現れたのがメンフィスのハイ・レコードのプロデューサー、ウィリー・ミッチェル。
そして、録音のバックを務めることになったバンド「ハイ・リズム・セクション」(ドラム:ハワード・グライムス、ベース:リロイ・ホッジズ、キーボード:チャールズ・ホッジズ、ギター:ティニー・ホッジス)を得たことでO.V.はやっと本領を発揮します。
「ハイ・リズム・セクション」の彼らは元々O.V.とはメンフィスでは顔なじみで、たぶんO.V.にも安心感と信頼の気持ちがあったと思います。
そして、1970年10月チャート11位まで上がる曲がリリース。
「オマエがどんなカードを出しても俺には勝てないんだよ。俺がスペードのエースなんだ。俺が一番強いんだ。オレを打ち負かすことできないんだよ。心の底から愛しているからどうか俺を打ち負かそうなんてしないでくれ」
30過ぎのO.V.ライト、そのパワフルな迷いのない素晴らしい歌を聴いてください。
1.Ace Of Spades / O.V. Wright
O.V.の代表的なアップテンポのダンス・ナンバー。パワフルでソウルがギュウと凝縮しているような歌で文句なしの素晴らしい曲です。このアルバムの前のアルバム”8Men And 4Women”と比べると格段と曲やサウンドのクオリティが上がり、少し古い60年代っぽかったのが新しい70年代の感じになっています。
やはり、プロデュースとバック・ミュージシャンの力、そして曲の力はすごいです。

今の曲もそうですが次の曲もサザン・ソウルの名曲であり、名唱です。
「以前は愛もたくさんの金も持っていた。でもどういうわけか俺はしくじってしまった。いま俺のポケットにあるのは5セントと釘だけだ。みんなに笑いかけて陽気にやっているけど持っているのは5セントと釘だけだ」こういう曲の内容が思いっきりブルーズな曲の表現が本当にリアルなO.V.ライトです。
1971年リリース
2.A Nickel And A Nail / O.V. Wright
この曲はR&Bチャートの19位まで上がりました。
ちょっとこれくらい重量感を持って濃厚なソウルを歌えるシンガーはいないし、これほど歌の内容にリアリティを出して歌えるシンガーもあまりいません。
このアルバムを初めて聞いた頃は全曲好きになって毎日これを聞いてました。ソウルの歌っていうとサム・クック、ソロモン・バーク、ジョニー・テイラー、ビル・ウィザースと好きな歌手はたくさんいるんですが、立ち上がれないくらい自分の心の奥底をやられた感じでした。サザン・ソウル、メンフィス・ソウルというと一番有名なのはオーティス・レディングということになるのでしょうが、O.V.は歌の奥深さ、上手さも説得力もO.V.ライトがトップだと確信しています。
3.I Can’t Take It / O.V. Wright
今の曲はオーティス・クレイも録音しています。クレイのバージョンもいいです。聴き比べてみてください。
このアルバムからバック・バンドとして参加しているハイ・リズム・セクションのメンバーの1人、キーボードのチャールズ・ホッジズと会ったときに彼が録音に参加した、アル・グリーン、アン・ピーブルズ、オーティス・クレイたちのことを聞きました。その時「O.V.ライトは?」と聞くと「彼は別格、特別だ」と言いました。それは歌手としてだけでなく存在としてメンフィスの音楽シーンでは特別なシンガーなのだという意味でした。どういう風に特別なのかもっと聞けばよかったのですが・・・。
でも、O.V.が歌っている曲を他のシンガーのものと比べてみるとなんとなくその意味がわかるような気がします。
4.Don’t Let My Baby Ride / O.V. Wright

結局、チャート20位内に入った曲が17曲あるのですが、そのほとんどはウィリー・ミッチェルがプロデュースしたものでした。
今回聞いたのは1972年にリリースされたO.V. Wrightのアルバム”A Nickel And A Nail And Ace Of Spades”でした。ソウルのアルバム特にサザン・ソウルのアルバムとしては屈指の一枚です。一生聞けるアルバムなので是非ゲットしてください。
音源はP-Vine RecordsからリリースされたBox Setからです。

2021.08.13 ON AIR

私が愛するソウル・シンガー、O.V.ライトの魅力その2

NUCLEUS OF SOUL / O.V.Wright (The Complete Recorded Works By The Boss Of Southern Soul For Backbeat And ABC Labels / P-Vine PCD7303-07)

NUCLEUS OF SOUL / O.V.Wright (The Complete Recorded Works By The Boss Of Southern Soul For Backbeat And ABC Labels / P-Vine PCD7303-07)

ON AIR LIST
1.Blowing In The Wind / O.V.Wright
2.Gonna Forget About You / O.V.Wright
3..I Have None / O.V.Wright
4.Pledging My Love / O.V.Wright
5.Why Not Give Me A Chance / O.V.Wright

前回6月のON AIRでO.V.ライトの初期の録音である60年代中後期の曲を聴いていただいたところリスナーの皆さんからとてもいい反響をいただきました。

自分が心底好きなシンガーの歌が皆さんに喜ばれて嬉しいです。

今回はその続きで、1970年にバックビート・レコードからリリースされた彼の3枚目のアルバム「ヌークリアス・オブ・ソウル」を聞きます。今回もP-VineレコードがリリースしたO.V.のボックスセットからの選曲です。

僕は70年代中頃からサザン・ソウルのコンピレーション・アルバムでO.V.をいいなぁと思っていたのですが、77,78年頃から静かなサザン・ソウル・ブームが日本で始まりました。それは日本のブルーズ・ブームが70年代半ばに下り坂に向かった時に、ブルーズ・ファンだった人たちがブルーズのテイストとゴスペルのテイストがミックスされたサザン・ソウルに引き寄せられたのだと思います。つまり「濃い」黒人音楽であるサザン・ソウルに。そういう人たちはモータウンのような煌びやかなソウルではなく、素朴で魂そのものがダイレクトに感じられる音楽が好きだったのです。僕もどちらかと言えばサザンソウル派です。

では今日の一曲目、1970年にBack Beatレコードからシングルでリリースされた”Blow In The Wind”(風に吹かれて)

もちろんボブ・ディランの1963年リリースの大ヒット曲です。この歌をなぜ7年も過ぎた70年にO.V.が歌うことになったのかわかりません。彼が尊敬するサム・クックが歌ったのも1964年です。つまりあの頃は黒人の公民権運動やベトナム反戦運動が盛んでこういうメッセージ・ソングをサムは選んだのだと思います。

「男は男と呼んでもらうためにどれだけ多くの道を歩けばいいのか。砂の中で眠るために白い鳩はどれだけ多くの海を渡られなければならないのか。その答えは吹いている風の中にある」と、生きていく厳しさとともに戦争の虚しさや現実の悲惨さに目を向けるように喚起した歌。

1.Blowing In The Wind / O.V.Wright

今となっては揺るがない名曲ですが、1970年リリース時にはこの歌はもう古い感じがしました。70年頃の黒人社会運動は公民権運動よりさらに強い「ブラック・パワー」の時代にあり黒人ミュージシャン達はより新しい音楽テイストでメッセージを出していました。O.V.が尊敬するサム・クックも歌っていたから歌いたかったのか、歌わされたのか・・・。歌そのものはいいし、O.V.の歌唱もいいのですが、当時はやはり「なんで今頃?」という感じはしました。

今日の1970年リリースのO.V.3枚目のアルバム「ヌークリアス・オブ・ソウル」(ソウルの核)はO.V.のアルバムの中でもあまり評判になりません。60年代後期のシングルの寄せ集めのアルバムにトータルなコンセプトはなく、バックビートはO.V.の才能をどうしたらいいのかプロデュースできていません。このアルバムには3曲彼自身が書いた曲があります。次の自作曲はいい曲だと思うのですが。

2.Gonna Forget About You / O.V.Wright

僕は好きな曲ですがこれもそんなにヒットしなかった。ヒット曲を作るというのは本当に難しいです。この60年代から70年代にソウルのヒット曲を連発したモータウン・レコードやそれに対抗した南部のスタックス・レコードは作詞作曲のチームがあり、そういうソングライターたちがシンガーに合った、そして時代の流れにあった曲を作ってシンガーに歌わせるということをしていました。つまりプロデュースがしっかりしていた。そしてそういうレコード会社はお金もあるのでプロモーションも強い。バックビートというレコード会社にいたために、ソウルのショービジネスのメインストリームでO.V.ライトは活躍できなかった。才能はあったのに・・。

次もO.V.が書いた曲です。2分14秒の短い曲ですが僕は好きです

「君のせいで恋に落ちた。もし、愛しているという方法が百万通りあったとしても僕は全部おぼえている。ぼくが愛しているのは君なんだよ。自分の心をコントロールできないんだ。もう君に心を捧げたから。その心を大切に扱ってください。今君は君と僕の二つのハートを持っているけど僕には何もないんだから」

3.I Have None / O.V.Wright

最後にI Have Noneと歌ってあっという間に終わってしまうところが切ないですが・・。「僕には何もない」

ヒット曲が出ないからなのか、恐らく社長のドン・ロビーの指示だと思いますがバック・ビートと同じ系列のデューク・レコードのジョニー・エースの大ヒット曲”Pledging My Love”をカバー・レコーディングします。「ダーリン、永遠に私の愛は本物だ。いつもそしてずっと君だけを愛するだろう」

4.Pledging My Love / O.V.Wright 

すごく中途半端なところで終わってしまうのですが・・オリジナルのジョニー・エースを以前ON AIRしましたが、ジョニー・エースはもっと柔らかくて素朴さが歌にあるのですが、O.V.はかなりジョニー・エースに寄せている感じもありますが、やはりゴスペルの鋼が後ろに見え隠れします。

次の歌は最初の”Are You Lonesome and all alone”という歌声で僕はゾクッとしました。「ひとりぼっちで寂しいかい」と「電話してくる人もいない、だったらなぜ僕にチャンスをくれないんだ。もし、君がずっと付き合ってくれる友達を探しているのなら、なぜ僕にチャンスをくれないんだ」

5.Why Not Give Me A Chance / O.V.Wright

ヒット曲は出なかったのですがO.V.の歌唱はいつも真摯で、このアルバムも充分聴く価値があります。

そして、なかなかO.V.の良さが出せないレコーディングが続いていいたところにメンフィスの敏腕プロデューサー、ウィリー・ミッチェルがプロデュースを担当するようになります。やっとO.Vは本領を発揮し始めます。そこからの話はまた来週のO.V.ライトの特集で。

2021.08.06 ON AIR

時代に対応し生き延びたボビー・パーカーは黒人音楽の玉手箱や~

Soul Of The Blues / Bobby Parker (rhythm and blues records RANDB060)

ON AIR LIST
1.Watch Your Step/ Bobby Parker
2.I Feel Fine / The Beatles
3.I’m Looking For A Woman / Bobby Parker
4.I Got The Blues So Bad / Bobby Parker
5.Get Right / Bobby Parker
6.Every Day I Have The Blues / Bobby Parker

ボビー・パーカーと言えばこの曲というのがビートルズの有名な”I Feel Fine”の元ネタともなった”Watch Your Step”
この曲のイントロはモロにビートルズの”I Feel Fine”で、ビートルズもこの曲からもらったと言ってます。この曲のカッコ良さにビートルズが気づいたところも素晴らしい。この曲はロックのスベンサー・デイヴィス・グループやドクター・フィールグッド、サンタナにもカバーされている名曲です。
1.Watch Your Step/ Bobby Parker
1961年の録音
ではビートルズの”I Feel Fine”をちょっと聴いてみましょうか。
2.I Feel Fine / The Beatles
オールマン・ブラザーズの”One Way Out”のリフもこういうパターンですが、実はボビー・パーカーはこの曲の発想をレイ・チャールズの大ヒット”What’d I Say”とジャズのトランベッター、ディジー・ガレスビーの”Manteca”という曲から得たと言ってます。それでYouTubeでディジー・ガレスビーも聞いてみました。ちょうどアフロ・キューバン・ジャズというのが流行った頃のディジーの曲で影響を受けたのがわかります。
ボビー・パーカーはプロになった最初の頃の仕事がボ・ディドリーのバックギターでした。
1955年ボ・ディドリーのギタリストとして参加した時のボビー・パーカーの録音、歌はボ・ディドリー
3.I’m Looking For A Woman / Bobby Parker
こういうファンキーなテイストがボビーには最初からあったんでしょうね。この頃、ボ・ディドリーがテレビの「エド・サリバン・ショー」に出ているえいぞうがYouTubeにアップされていて、ボの後ろに若かりし日のボビーが映っています。
最初に聴いたWatch Your Stepのヒットの翌年62年にリリースされた曲が次のブルーズです。
彼はいろんなタイプの曲を作って歌っているんですが、自分ではブルーズマンだと思っていたようです。
4.I Got The Blues So Bad / Bobby Parker

最初に聞いてもらった”Watch Your Step”以降これと言ったヒットが出ないボビーでしたが、めげずにマイナー・レーベルにどんどん録音します。ざっと彼が録音したレーベルを見たら20社くらいあります。基本ブルーズなんですが、R&Bやモータウン風味のものやその時代の流行りの音楽を取り入れててるんですが大ヒットには至りません。なかなか笑える次のような曲もあります。
60年代前半、ブルーズやリズム&ブルーズの時代からソウルやファンクが台頭してくる時代です。そんな中たぶん興奮症のボビーは当時ヒット連発していたハイ・テンションのジェイムズ・ブラウンがお気に入りだったんでしょう。「これジェイムズ・ブラウンと違うの?」という曲が何曲かあります。
また、声もちょっと似てます。
次は1963年のリリースですが、ジェイムズ・ブラウンの”Think”なんかに似ています。サウンドとグルーヴはモロにジェイムズ・ブラウンの影響です。
5.Get Right / Bobby Parker

実は彼はずっとシングルは出しているのですが、アルバムを出したのは90年代に入ってからで、93年にブラック・トップというレーベルから二枚リリースしました。実に56歳の時です。なかなかの苦労人です。この今回のアルバムを時代を追って彼の音楽を聴いているとその苦労がわかります。「ブルーズはいつの時代も帰ってくるスティーヴィー・レイボーンは白人の客を連れてきたし、Z.Z.ヒルは黒人の客を連れ戻してきた」と語り精力的にライヴもやっていたのですが、2013年に心臓麻痺で76歳で亡くなりました。結構晩年までワシントンD.C.とカナダでライヴをやっていたようです。このアルバムにはライヴの曲も収録されているのですが、スタンダードなブルーズと自分の曲という選曲でライヴをやってます。
ボビーが若い頃に好きだったブルーズマン,Lowell Fulsonの有名曲
6.Every Day I Have The Blues / Bobby Parker
1995年ニューヨークでのライヴ音源でした。
結局、1961年のヒット”Watch Your Step”以上のヒットは出なかったのですが、晩年まで現役として頑張ったボビー・パーカーのこの二枚組のアルバムはいろんな時代のいろんな音楽に影響を受けたいいろんな曲が入っているB級玉手箱みたいな楽しさがあります。今なら手に入ると思います。
今日はボピー・パーカーの”Soul Of The Blues”を聞きました。詳しくは番組HPをごらんください。

2021.07.30.ON AIR

ブルーズ・スタンダード vol.33 戦前シティ・ブルーズ
「ギターの魔術師」と呼ばれ名ソングライターでもあった
タンパ・レッドの名曲

“The Guitar Wizard”/ Tampa Red (Sony SRCS 7393)

The Guitar Wizard 1935-1953 / Tampa Red (Blues Classics 25)

ON AIR LIST
1.It’s Tight Like That/Tampa Red And Georgia Tom
2.Black Angel Blues/Tampa Red
3.It Hurts Me Too/Tampa Red
4.Crying won’t help you/Tampa Red
5.Things ‘Bout Comin’ My Way / Tampa Red

久しぶりのブルーズ・スタンダード曲集です。このシリーズではブルーズの歴史の中で重要な曲、これからも聴き継がれ歌い継がれていくだろうブルーズの名曲を紹介しています。
今回はタンパ・レッド。本名はハドスン・ウッドブリッジ。フロリダ州のタンパという街で育って30歳くらいになってシカゴへ移住した時に「タンパから来た奴」ということでタンパ・レッドとなりました。考えて見れば安易なあだ名、芸名ですが、こういう地名をあだ名や芸名につけるのが多くて、テキサス・アレキサンダー、メンフィス・スリム、メンフィス・ミニーとか色々あります。
そのシカゴでタンパ・レッドが知り合ったのがこれまたジョージア・トム。冗談ではなくもちろんジョージア州出身です。
このタンパ・レッドとジョージア・トムのコンビで1928年に録音した”It’s Tight Like That”が大ヒットになりまして、2人は4年間くらいに80曲以上を録音し人気者になりました。ちなみにジョージア・トムさんはその後トーマス・ドーシーという名前を変えてゴスペルの世界に転身して有名な”Precious Lord”を作りました。ゴスペルでもブルーズでも後世に残る曲を作ったすごい人ですが、その”It’s Tight Like That”という曲がホウカム・ブルーズと呼ばれるちょっとエッチな、コミカルな猥褻な歌で、みんな面白がってすごく流行りました。
そういう人がゴスペル界に行って「神様、私の手をとって光の元へ私を導いてください」と作って歌うわけですから・・・聖と俗・・ゴスペルとブルーズがアフリカン・アメリカンの日常でいかに密接に成り立っていいるかがわかります。
さて、そのIt’s Tight Like ThatですがTightは「ぴったり」とか「きつい」とか「ぎゅっとしてる」という意味ですが、It’s Tight Like Thatですから「そんな風にきつい」とか「そんな風にギュとぴったり」とかいうことで、まあはっきりいうとセックスそのもののことです。「朝起きたら彼女と一つ枕で寝ていた。あれはぎゅっとぴったりで良かったぜ」動物の例えを歌ったりして露骨な感じをなるべく避けておもしろ可笑しく歌っているのですが、4番目の歌詞に「オヤジとオフクロが地下室で何やってるかって・・そんなん言えへんよ」と出てきます。
1.It’s Tight Like That/Tampa Red And Georgia Tom
こういうセックスをコミカルなネタにしたヒット曲って日本にはないんですね。未だに国民性でしょうか。こういう歌を女性も男性もニヤニヤ笑って聞くわけです。こういうのをホウカム・ブルースといい20年代後半から30年代に流行りました。

1920年代といえばベッシー・スミスなど女性ブルーズ・シンガーの男にひどい目に遭う切ない辛いブルーズやチャーリー・パットンなど南部の土着的なブルーズが流行ったのですが、一方で都会ではこういう洒落た歌が流行っていたわけです。
でも30年代半ばにはもうこういうホウカム・ブルースは流行らなくなるのですが、元々ギターにも曲作りにも実力のあるタンパは次の流行に乗ってシカゴで生き残っていきます。
次の”Black Angel Blues”はこの前に特集したロバート・ナイトホークの”Sweet Black Angel”の元歌です。そしてB.B.キングの大ヒット曲”Sweet Little Angel”の元歌でもあります。先ほどの”It’s Tight Like That”とまるで曲調の違う戦前シカゴ・ブルーズという感じです。
「俺には可愛い黒い天使がいるんだ。翼を広げた彼女の姿を見るのが好きでね。俺の上で翼を広げてくれた時にはもう最高よ」という内容です。タンパのスライド・ギターにも注意して聞いてください。1934年録音
2.Black Angel Blues/Tampa Red
一曲目の”It’s Tight Like That”と同じブルーズマンと思えないほどストレートなリアル・ブルーズです。弾き語りでしたが、南部のサン・ハウスあたりの激しいスライド・ギターとは違う澄んだ音色の繊細な演奏です。こういうスライドに憧れ影響を受けたのが少し前にこの番組で特集したロバート・ナイトホーク、そしてアール・フッカーというスライドギターの名手たちです。その元祖がこのタンパ・レッドです。

スライド・ギターといえば、エルモア・ジェイムズにも大きな影響を与えた人で、次の曲もブルーズを好きな人たちの間ではエルモア・ジェイムズのカバーの方が有名になっていますが、本家はこのタンパ・レッドです。
”好きな彼女が他の男と付き合っているのですが、その男がひどい男で彼女は辛い目に遭っていて、そういう傷つけられている彼女を見るとオレの心も傷付く”という歌詞です。
1949年の録音です。
3.It Hurts Me Too/Tampa Red
いい曲ですよね。いい歌詞です。

いろんな資料を読むとタンパ・レッドは「いつも銀行員みたいにしっかりした格好をしていた」という話が残っています。確かに写真を見るとちゃんとネクタイをしてジャケットを着ているものが多いのですが、音楽的にも整合性のあるしっかりした構成と歌詞のブルーズを残しています。
もう一曲、今回のブルーズ・スタンダード曲として挙げておきたいのが、B.B.キングやナイトホークがカバーした次の曲です。
「何を言っても、何をやっても、お前が俺にしたことは返ってくる。泣いても無駄だよ。泣いても無駄。お前はずっと俺にひどいことをしてきたんやから」
この「Crying won’t help you / 泣いても無駄」という英語の表現がぼくは好きです。
4.Crying won’t help you/Tampa Red

最後にですね、ブルーズ・スタンダードではないのですが、彼の得意技でもある素晴らしいスライドギターのインスト曲を聴いてください。
5.Things ‘Bout Comin’ My Way / Tampa Red

20,30,40年代までは録音の機会もあったのですが、50年代になると次第に名前が聞かれなくなりました。でも、彼の作った曲と彼のギター奏法はいろんなブルーズマンに受け継がれて今日に至っています。
晩年愛する奥さんが亡くなってから元気がなくなり、認知症にもなっていたようで最後は施設でさみしく亡くなっています。悲しいことですが、こんなに立派なミュージシャンなのに彼自身のお墓はなく共同墓地に埋葬されているようです。1981年 77歳でした。
今回はギターの名手でもありブルーズのソングライターとしても名を残したタンパ・レッドのブルーズ・スタンダード名曲を聴きました。

2021.07.23 ON AIR

日本で唯一のブルースとソウルとゴスペルの専門誌「ブルーズ&ソウル・レコーズ」を紹介

ON AIR LIST
1.You’ve Got My Mind Messed Up / James Carr
2.It’s Wonderful To Be In Love / The Ovations
3.Deep Moaning Blues / Ma Rainey
4.Moonshine Blues / Bessie Smith

現在、私がエッセイを寄稿している音楽雑誌「ブルース&ソウル・レコーズ」を皆さんはご存知でしょうか。一年ほど前から”Fool’s Paradise”という連載を書かせてもらってます。私の連載はさておき今日はこの「ブルース&ソウル・レコーズ」という雑誌の紹介をしたいと思います。

「ブルース&ソウル・レコーズ」誌は隔月の発行でその時々のブルーズやソウルに関連した特集やライターの皆さんのエッセイや興味深い連載や、新譜紹介、日本のバンドの紹介、外タレの来日情報など盛りだくさんの雑誌です。コアなコーナーもありますが、私のエッセイ「Fool’s Paradise」などは全くコア感はなく、自分の音楽体験を元に普通のエッセイとして読めるものを目指しています。

この雑誌には毎回、その時の特集にちなんだCDが付録でついています。いちばん新しい160号はメンフィス・ソウルの特集なので、それに関連したゴールドワックスというメンフィスのレーベルに残された音源がついています。

そこからまず一曲聞いてみますか。

君は俺の心をかき乱すという歌です。夜は眠れないし食事も喉が通らない、彼女のためならいちばん高い山でも登るしいちばん深い海でも泳ぐ・・・まあ、何でもするよと。歌ってるのはゴールドワックス・レコードの代表的なソウル・シンガー、ジェイムズ・カー

1.You’ve Got My Mind Messed Up / James Carr

R&Bチャートの7位まで上がった曲です。

もう一曲続けて聞いて見ましょうか。やはり同じゴールドワックスに所属していたソウル・コーラスグループです。すごく有名なシンガーに声が似ているのですが・・・三人編成のコーラスでリードを取っているのはルイス・ウィリアムズです。

君に恋するのは天国のように素晴らしく素敵なことだというめちゃ甘いラヴソング。

2.It’s Wonderful To Be In Love / The Ovations

サム・クックにそっくりなルイス・ウィリアムズ。サム・クックのフォロワーや影響を受けた歌手はゴマンといるのですがそっくりなのはこのルイスさんがだんとつです。

こういう音源のCDが付いていてそれを聴きながら特集記事を読むとあまり知らない音楽のことでも少しずつ身近に感じてきます。

この「ブルース&ソウル・レコーズ」誌は前身の「ブラック・ミュージック・レビュー」そしてそのまた前身の「ザ・ブルーズ」という時代から僕はずっと読んでいます。

最初の「ザ・ブルース」が創刊されたのは1970年。もう50年以上前になります。

創刊したのは音楽評論家の日暮泰文さん。直接日暮さんに創刊の動機などを聞いたことはないのですが、1970年当時まだまだブルーズという音楽が日本で正しく認知されていない中、日本人にちゃんとブルーズを知ってもらいたいという気持ちだったと思います。日暮さんはその前60年代後半に同じ音楽評論家の鈴木啓志さんとブルーズ愛好会を作っていてその機関紙の延長が「ザ・ブルース」の創刊になったと思います。それはちょうど僕がブルーズに興味を持ち始め、歌い始めた頃だったのでブルーズのいろんな知識を得たくて「ザ・ブルース」を毎号隈なく読んでいました。

最初はほとんどブルーズだけをとりあげていたのですが、次第にブルーズと関連のあるゴスペルやソウル、ファンクなども取り上げるようになっていったのですが、そのあたりで「ブラック・ミュージック・レビュー」という名前になり、その後今の「ブルーズ&ソウル・レコーズ」へ名前が変わりました。

ブルーズ・ロックの特集やギターの特集もあり、戦前の古いブルーズの特集もあり前々号でとりあげられていたのが、最近ネットフリックスで公開された映画「マ・レイニーのブラックボトム」に連動したクラシック・ブルースの女性シンガー、マ・レイニーの特集でした。

そういう遠い昔の歴史的なブルーズというのはなかなか接する機会がないと思いますが、この「ブルーズ&ソウル・レコーズ」の特集記事を読んで、付録CDを聴くとクラシック・ブルーズへのすごくいい手引きとなります。CDの一つ一つの曲にも解説が書いてあります。1928年録音

3.Deep Moaning Blues / Ma Rainey     

この号の付録CDにはマ・レイニーと同時代のベッシー・スミスの歌と比較して聴く為にベッシーの歌も入ってます。

曲は「ムーン・シャイン」日本でも昔「どぶろく」と呼ばれるような密造酒がありましたが、次の歌はアメリカの黒人たちが隠れて作っていた密造酒のことで「ムーン・シャイン」と言います。警察に見つからないように月の明かりだけを頼りに酒を隠してある場所へ行ったことから「月の輝き」ムーン・シャインとよばれました。ムーン・シャインって少しロマンティックに聞こえるのであま~い曲かと思ったら密造酒でした。

1924年録音

4.Moonshine Blues / Bessie Smith

こういうCDが本についていてその解説もあるというのはすごくその音楽を理解するのにいいと思います。

自分が知らない音楽に出会うきっかけというのは、なかなか自分だけでは限界があります。そこでこういう「ブルーズ&ソウル・レコーズ」誌のような本があると親しみやすくなります。

毎号読んでいると自然とブルーズやソウル、ファンク、ゴスペルの知識が自然と増えてまた新しい音楽に興味が湧くと思います。

今日は日本で唯一のブルースとソウルとゴスペルの専門誌「ブルーズ&ソウル・レコーズ」の話をしました。ぼくのエッセイもよろしく。

ブルーズ&ソウル・レコーズ→https://bsrmag.com