2019.10.11 ONAIR

敬愛するJ.J.ケイル、遺作 “Stay Around”を聴く

STAY AROUND/J.J.Cale (BEC5543727)
 

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ON AIR LIST
1.Chasing You/J.J.Cale
2.Stay Around/J.J.Cale
3.Girl Of Mine/J.J.Cale
4.Maria/J.J.Cale
5.If We Try/J.J.Cale

今日は大好きなJ.J.ケイルです。
J.J.ケイルは2013年に亡くなっているのに、いまも亡くなった気がしません。たぶん、生きている時から「オレが・・」というような過剰な自己主張を感じさせない人だったからだろうと思います。
いつも、忘れた頃にアルバムを出してきて「おお、J.J.ケイルの新譜」と喜んだものです。マイペースでアルバムをつくり、ツアーをやり、ほんとにたまに大きなイベントに出るそんな感じでした。
かって70年代にレイド・バックという言葉が流行りました。まあ肩の力が抜けたリラックスしたという意味ですが、レイド・バックと言われた中でこの人ほどレイドバックはないんじゃないか僕は思います。それは今日聴いてもらう最後のアルバムまで少しも変ってません。時代とか流行のとか最新のとかそんなものとはほど遠いところに彼はいて、自分の好きな、信じた音楽をやり切ったミュージシャンでした。でも、オレはやり切ったぜとかそんな感じもないところがいいんですがね。
今日聴いてもらうのは、ケイルが亡くなってから奥さんでありバンドのメンバーでもあったクリスティーン・レイクランドとマネージャーであり友達だったマイク・カッパスがケイルが残した音源から曲を選び、ミックスして作ったアルバム「Stay Around」
まずは美しいギターの音色から始まり「ずっと旅を続けてるんだ、そしてもう戻るつもりはないよ」と歌い出す
1.Chasing You/J.J.Cale
この曲のプロモ・ビデオがネットでアップされてます。彼とバンドがツアーをしている映像とステージの映像がミックスされているのですが、音楽やってる楽しさと旅をしている楽しさが伝わってきて、ああ彼はこうして人生を楽しんでいたんだろうなと思いました。ライヴの会場もそんな大きなところではなくて、バンドもメンバーは最小限、みんなでバスに乗って本当にツアーバンドっていう感じです。

よく知られたことですが、彼が有名になったのは彼の作った「アフター・ミッドナイト」や「コカイン」をエリック・クラプトンがカバーしてヒットさせたからで、ケイル自身も前にインタビューで「クラプトンがヒットさせてくれたその印税でオレは次のアルバムが作れる」って言ってました。おもろいですね。なんかローリング・ストーンズがブルーズマンのフレッド・マクダウエルの”Yoy Gotta Move”をカバーしたらマクダウエルにある日印税がどかーんと入った話に似てます。ブルーズマンではないんですが、ケイルは佇まいがカントリーブルーズマンに似ています。

がむしゃらに歌うわけでもなく、がむしゃらにギターを弾くわけでもなく、その曲の大切なとろこをさっと伝えられる彼の演奏スタイルはちょっとマネできないです。そして、ずっと聴いていると音楽ってなんだろうということを自問してしまいます。よく肩の力を抜くって言いますが、ケイルみたいな人は最初から肩の力なんか入ってないんですね。
次はアルバムタイトル曲。朴訥に歌われていますが、美しいいい曲です。
「そばにいてくれ、もう一回愛し合おう」
2.Stay Around/J.J.Cale

1938年にオクラホマ州のオクラホマシティという街に生まれ、タルサという街で育った彼は10代からロックンロールやカントリーのバンドに入って地元で活動してました。
その頃知り合ったのがレオン・ラッセル。20才すぎの頃にはナッシュビルに住んでカントリーに入れ込んでやっていたけど、またタルサに戻り、1964年に今度はレオン・ラッセルとベースのカール・レイドル(クラプトンのデレク&ドミノスのベーシスト)と3人でロスに行きます。一旗上げに行ったのか。まあ、いろいろやったのですが、67年にまたタルサに帰ってきてしまいます。それで地元のクラブでボツボツやっていたところに成功したレオン・ラッセルが立ち上げた「ジェルター」というレコード会社でアルバムを出すことになったわけです。それが69年。34才。その翌年にさきほど話したクラプトンがケイルの「アフターミッドナイト」を録音するとチャートを上がって思わぬ印税がケイルの懐に入りました。
それからずっとタルサを中心にライヴをやり、ツアーに出て、まあまあコンスタントにアルバムを出して40年の音楽人生で13枚のアルバムをリリースしました。

次の曲はフォーク・ブルーズ・テイストとカントリーテイストがブレンドされた曲。
3.Girl Of Mine/J.J.Cale

弾き語りの曲でたぶん自分でギターをダビングしているんだと思います。
ケイルのバンドもレコーディングもすごく有名なミュージシャンがいるわけではなく、有名なゲストを入れるわけでもなくいつも淡々としてます。今回のアルバムだけでなく、まだまだあるだろう彼の未発表音源に期待したいところです。

4.Maria/J.J.Cale
J.J.ケイルにはカントリー、ブルーズ、フォークにちょっとジャズなどいろんな音楽のテイストがあるのですが、ジャンル分けしてどこかのカテゴリーに入れるのは難しいです。
J.J.ケイルはJ.J.ケイルです。でも、その彼の音楽にクラプトンだけでなく、ニール・ヤング、マーク・ノップラー、ジョン・メイヤーなどたくさんのミュージシャンが憧れ、カバーされている曲数はかなりの数あると思います。

いつもこんな人にはなれないなぁ・・と思うのがJ.J.ケイルです。でも、こんなにカッコつけてない、カッコいいミュージシャンいないです。いつもヨレヨレのTシャツ着ているようなイメージがあるんですが、たぶん新品のTシャツでもヨレヨレに見える人なんですけど、そこがすごくかっこいいですね。
いまも生きているように感じるのはこの世を去るときも彼はさりげなく大げさじゃなかったからでしょう。何か知らん間に逝ってしまっていたような・・いやまだ生きているような・・
自分の生き方を考えるときに、自分と音楽を考えるときにJ.J.ケイルが浮かんできます。
5.If We Try/J.J.Cale
夏の終わり、秋の始まりにJ.J.ケイルの美しいレイドバック・ミュージック、どうでしょうか。

2019.10.04 ON AIR

★50年代の希代の歌手でありソングライター、チャック・ウィリス
The Song Of Chuck Willis~From The Bottom Of My Heart/Chuck Willis (JASMIN JASMCD-3075)
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ON AIR LIST
1.It’s Too Late(She’s Gone)/Chuck Willis
2.C.C.Rider/Chuck Willis
3.Feel So Bad/Chuck Willis
4.Oh What A Dream/Ruth Brown
5.What Am I Living For/Chuck Willis
6.Hang Up My Rock & Roll Shoes/Chuck Willis

今日は1950年代に活躍したR&Bシンガー&ソングライター、チャック・ウィリスを聴いてみようと思うのですが、チャック・ウィリスと言っても馴染み薄いですよね。
そんなこと言うたらこの番組で流してる曲のほとんどは世間的には思いっきり馴染み薄い曲ばっかりですけど・・・。
他のラジオ局の音楽番組が流行の曲しかほとんどON AIRしないので、ブルーズを中心としたいい音楽を聴いてもらおうとしてるんですけどね。
今日聴いてみるアルバムはジャスミンレコードからリリースされたチャック・ウィリスの”The Song Of Chuck Willis/ From The Bottom Of My Heart”というコンピレーションアルバムです。
スーツなのにターバンを頭に巻いてカメラ目線のめちゃ濃い顔のチャック・ウィリスがジャケットに写っています。プロフェッサーロング・ヘアなんかもターバン巻いてる写真ありますが、ターバンはオシャレやったんですかね。
チャックさんはヒット曲たくさんあるし、彼の作った曲はたくさんの人にカバーされているのになぜあまり馴染みがないかと言えば、30才という若さで亡くなってしまったということもあると思います。活動していた期間は50年代のほぽ10年です。今日聴いてもらうアトランティックレコードの前にオーケーレコードから52年に”My Story”という曲でデビューして、56年にアトランティックレコード入りです。

では、最初にロックの名盤と言われているエリック・クラプトンのデレク&ドミノスのアルバムでもカバーされ、オーティス・レディング、バディ・ホリーもカバーしてますが、僕はフレディ・キングのカバーが好きです。
タイトルどおり「もう遅過ぎる、彼女は行ってしまった。君のことが誰よりいちばん好きだと言えばよかった」という歌です
1.It’s Too Late(She’s Gone)/Chuck Willis
1956年R&Bチャートの三位まで上がりいまも歌い継がれている名曲ですが、不肖永井も歌ったことあります。

彼が有名になったのは1957年にリリースされた次の”C.C.Rider”という曲なんですが、この曲は元々1920年代にマ・レイニーという女性ブルーズシンガーが録音したブルーズの古典です。それをリメイクさせたのですが、この曲でチャック・ウィリスは”The King Of Stroll”と呼ばれることになりました。「ストロールの王様」ということですが。ストロールというのは1957年頃に流行っていたダンスのステップなんですが、男女が向い合わせに1列ずつになって順番にふたりで踊るんですが、めちゃユルいダンスです。誰でも踊れるようなダンスなので流行ったんでしょう。そのダンスとこの曲がぴったりフッィトしてR&Bチャートの1位になり、白人のポップチャートでも12位まで上がりました。
2.C.C.Rider/Chuck Willis
このC.C.Riderが白人のチャートでも上がったというのは、実は50年代半ばにアメリカの全国放送のテレビ番組で「アメリカン・バンド・スタンド」というのがありまして、ディック・クラークという人気の司会者がいまして、その番組でこの曲が取り上げられたこともあって大ヒットしたようです。この他にもダイヤモンズというグループのモロの「ストロール」という曲もあって、それに合わせて白人の10代の男女が本当にユルいダンスやってるのがyoutubeに上がってるので見てください。
いまのC.C.RiderやIt’s Too Lateの前、1954年にチャックが出した”Feel So Bad”という曲もいまだに歌い継がれていてブルーズのスタンダードになっています。リトル・ミルトン、オーティス・ラッシュ、レイ・チャールズも歌ってます。
3.Feel So Bad/Chuck Willis
ちょっとラテン風味のリズムに乗ってハイトーンのよく伸びるいい声してます。
彼はシンガーとしてもアップテンポからバラードまで歌える素晴らしい才能があったんですが、ソングライターとしても才能があり他の歌手にも曲を提供しています。
50年代アトランティック・レコードの看板歌手で、R&Bの女王だったルース・ブラウンがヒットさせたこの曲も作詞作曲はチャック・ウィリスでした。
愛してる彼と結婚する夢を見てしまった歌で、目が覚めてああ夢だったのねとがっかりしているせつない歌です。
4.Oh What A Dream/Ruth Brown
ルース・ブラウンは1949年からアトランティックレコードの大ヒット歌手でアトランティックを大きな会社にした功労者ですが、チャック・ウィリスも56年にアトランティックに入ります。入ってすぐヒットしたのが最初に聴いてもらったIt’s Too Late。
そこから10曲ほどアトランティックでヒットを出していますが、僕がいちばん好きな曲が次のWhat Am I Living For
「What Am I Living For,If Not For You」と始まるんですが、あなたのためでないとしたら私は何のために生きているのだろう。誰のためでもないあなたのために私は生きている。
私は毎晩何に恋いこがれているんだろう。あなたの唇を感じて、強く抱きしめることに焦がれているのに・・愛する人よ、あなたは私の人生のすべて、他の誰でもない、あなたなんだ」
強烈なラブソングです。
5.What Am I Living For/Chuck Willis
100万枚売れた.What Am I Living For。
チャック・ウィリスはちょうどブルーズがR&Bやロックンロールに変っていく時代に活躍したので、もちろんブルーズのテイストもありながらゴスペルのテイストも入った素晴らしいR&Bシンガーでソングライターでした。しかし、30才でガンで亡くなってしまいました。その最後となったシングルがいまの曲です。
いまのWhat Am I Living Forのシングルの片面が”Hang Up Rock & Roll Shoes”
6.Hang Up My Rock & Roll Shoes/Chuck Willis

まだまだいい曲を書いて、まだまだいい歌を残せる実力のあったチャック・ウィリスの若くしての死は本当に残念です。
今日聴いたジャスミンレコードの”The Song Of Chuck Willis/ From The Bottom Of My Heart”というCDはまだ出回っていると思います。アトランティック時代のアルバムでは1958年の”The King Of The Stroll”というのが一枚だけありますが、そしてもう一枚なくなってからアトランティックがリリースした”I Remember Chuck Willis”があります。
アルバムをゲットして是非ゆっくり聴いてみてください。

2019.09.27 ON AIR

Hometown Blues / Sonny Terry & Brownie McGhee (P-Vine Records  PCD93002)
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ON AIR LIST
1.Meen Old Frisco/ Sonny Terry & Brownie McGhee
2.Sittin’ On Top Of The World/ Sonny Terry & Brownie McGhee
3.Feel So Good/ Sonny Terry & Brownie McGhee
4.Women Is Killin’ Me/ Sonny Terry & Brownie McGhee
5.Key To The Highway/ Sonny Terry & Brownie McGhee

今日聴いてもらうのはブルーズのデュオで有名な「ブラウニー・マギー&ソニー・テリー」の彼らがいちばん充実していたと言われる40年代終わりから50年代あたまの録音。
最初に聴いてもらうのは1942年にアーサー・ビッグボーイ・クルーダップがリリースした”Mean Ol Frisco”
フォーク・ブルーズ・シンガーたちがよく歌う曲でスタンダードな一曲ですが、シカゴブルーズのマディ・ウォーターズやリトル・ウオルターも歌ってます。ロック畑だとエリック・クラプトンで知って方も多いと思います。

1.Meen Old Frisco/ Sonny Terry & Brownie McGhee

聴いてもらったわかるように基本はブラウニー・マギーのギターと歌、そしてサニー・テリーのハーモニカと歌です。そこにバンドが入ったものや他の楽器が入った録音もあるのですが、基本はシンプルなデュオ・スタイルでしかもギターはアコースティック・ギター、ハーモニカはアンプに入れないでヴォーカルマイクで吹くという素朴なスタイルです。ふたりとも最初は別々にやっていたのですが、ハーモニカのサニーは早くからハーモニカのテクニシャンとして人気があり、有名なブラインド・ボーイ・フラーとデュオでしばらくやってました。一方ブラウニーは小さい頃から足が不自由でなんとか音楽で生活できるようにと父親の後押しもあったようです。当時、いま名前の出たブラインドボーイ・フラーは人気者というかスターだったのでブラウニーもフラーのギタースタイルを練習していたところ、フラーがなくなってしまい、そこでフラーのマネージャーがサニーとくっつけて第2のフラーで売ろうとしたらしいです。
そこから何十年と一緒にデュオを組むことになったのですから人生なにがあるかわかりません。

次の曲は30年代に録音をたくさん残した4人組のグループ「ミシシッピー・シークス」がオリジナルですが、ハウリン・ウルフのヴァージョンで知ってる方も多いと思います。これもブルーズ・スタンダードです。「彼女は行ってしまったけど、オレは大丈夫や。なぜってオレは世界のてっぺんに座っているからさ」まあフラれた男の負け惜しみですね。
2.Sittin’ On Top Of The World/ Sonny Terry & Brownie McGhee
ちょっとハモったりしているところがなんとものんびりした感じでいいですね。こういうのはフォークブルーズのデュオならではの演奏ですね。
僕は若い頃はこういうブルーズはちょっと苦手でした。あまりブルーズを感じられなくて・・もっとガツンとした味の濃いブルーズが好きだったんですね。アコギの弾き語りだとライトニンとかジョン・リー・フッカー、サン・ハウスとかブッカ・ホワイトとか・・そういうのが好きでフォーク・ブルーズ的なものはあまり聴いてなかったです。

ブラウニー・マギーとサニー・テリーはすごくたくさん録音を残しています。レコード屋さんに行くとたくさんアルバムが有りすぎてちょっとどれを買ったらいいのか迷いますが、今日聴いてもらっているこのHometown Bluesはお薦めです。これは以前日本のP-Vineレコードからリリースされていて、小出斉くんの丁寧な解説も入ってます。でも、これも2007年のリリースか・・まあ、探してみてください。
ブラウニー・マギーとサニー・テリーはコンビのアルバムだけでなく、それぞれのソロのアルバムもあって本当にたくさん録音したことがわかります。1940年代から70年代、30年間くらい結構コンスタントに録音していて、50年代にはフォーク・リバイバルのブームにも乗っかって売れまくったそうです。

次の曲はバンド・スタイルで元々はビッグ・ビル・ブルーンジーの曲でマディ・ウォーターズもカバーしていますが、シカゴ・ブルーズのような南部のブルーズをエレキバンド化したような泥臭さはありません。というのも彼らの録音はニューヨークでされていて洗練されてというところまではないですが、かなりあっさり目の味付けになってます。ニューヨーク・ダウンホーム・ブルーズと呼ばれています。
3.Feel So Good/ Sonny Terry & Brownie McGhee
いまのはギターのブラウニー・マギーが歌っています。
実はふたりは1978年に来日しています。僕も聴きに行きましたが、その時はライトニン・ホプキンスがメイン・アクトで僕も含めてほとんどの人たちがライトニン目当てだったために彼らのことを覚えている人たちも少ないと思います。しかも、ふたりが仲が悪いのが客席からもわかるような有様で、途中でブラウニーがステージからいなくなり、なんかよくわからないサニーのハーモニカの弟子みたいな白人の若者が出てきてハーモニカ・デュオになってしまい・・もうなんかどさくさな感じでした。本当に申し訳ないけどライヴの印象は「ふたりが仲悪かったなぁ」しかないです。あと、サニーがハーモニカで汽車の音のマネをやったのだけ覚えてます。
では、サニーが歌っている曲ですごいタイトルです
4.Women Is Killin’ Me/ Sonny Terry & Brownie McGhee

最後にこういうフォーク・ブルーズ・デュオがよく演奏する曲でブルーズのスタンダードです
5.Key To The Highway/ Sonny Terry & Brownie McGhee

今日聴いてもらったブラウニー・マギー&ソニー・テリーは、1949年と1952年のニューヨーク録音の音源でした。ブルーズではライトニン・ホプキンスやジョン・リー・フッカーのフォークギターを弾いたブルーズもありますし、ブッカ・ホワイトやサン・ハウスのようなドブロ・ギターを使った弾き語りスタイルもありますが、それらとはまた違うちょっと都会的なダウンホームの味がこのふたりにはあります。まあ、白人のフォーク・ブルーズのブームに長い間入り込めたのもミシシッピー・ブルーズよりあっさり味なところがよかったのでしょう。
夏の日にそうめんを食べるようにたまにはあっさり味のブラウニー・マギー&ソニー・テリー・・・いかがでしょうか。

2019.09.20 ON AIR

変らぬ精神、変らぬ歌心-メイヴィス・ステイプルズのニューアルバム”We Get By”

We Get By/Mavis Staples (ANTI CAT.# 7670-2)
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ON AIR LIST
1.We Get By/Mavis Staples
2.Change/Mavis Staples
3.Brothers And Sisters/Mavis Staples
4.Hard To Leave/Mavis Staples
5.One More Change/Mavis Staples

ここ数年早いペースでメイヴィス・ステイプルズはアルバムをリリースしています。この番組を聴いているみなさんの中にも「またメイヴィスや」と思っている方もいると思います。
それはメイヴィスの歌が必要とされている証のひとつではないかと僕は思ってます。今回のアルバム”We Get By”はすべてベン・ハーパーが全曲新しく書き下ろし、プロデュースもしています。

ここ数年リリースされたアルバムには、60年代の公民権運動の頃から変らない彼女の人種差別反対の意志や平和への思いやマイノリティへの気持ちが一貫して表されています。しかし、エンターテイメントとしての音楽を忘れないで、しかもそこにメッセージをしっかりこめる彼女の姿勢に共感する人が多いからこそアルバムはリリースされるのだと思います。ミュージシャンが政治や社会のことについて発言したり、それに関する歌を作って歌ったりすることに僕は反対ではありませんが、それはあくまでも音楽というエンターテイメントとしてクオリティがあってこそだと思います。
例えば、ジョン・レノンの”Imagine”という曲は世界平和を願った歌ですが、あの歌の歌詞の意味をたとえ知らなくてもあの曲は素晴らしいものです。そして、意味を知るといかにあの歌でジョンが平和を願ったかわかりより共感するのだと思います。メッセージも素晴らしいですが、楽曲としてもあの曲は素晴らしいです。つまりエンターテイメントになっているわけです。だからいまでもあの曲は生き続け、歌われているわけです。
メイヴィスのアルバムも同じです。
では、まずアルバムタイトル曲を聴きますが、誰もが口ずさめる心に残るいい曲です。
「私たちは愛と信頼の上でなんとかやっていく、私達は笑顔でやっていく、仲間の助けで何とかやっていく、よい時も悪いときもなんとかやっていく」
1.We Get By/Mavis Staples

次の曲はChangeというタイトルですが、「自分の周りのことを変えよう。大きな声ではっきり言おう私達は周りのことを変えなければいけない。毎日毎日 毎年毎年変えて行こう」
Changeと言えばオバマ前大統領が選挙の時のスローガン「Change Yes,We Can」を想い出しますが、いまのトランプ大統領になってから差別や貧困は更にひどくなっていることに対して改めてこの言葉を出してきたように思います。
やっぱり変えなければダメだというメッセージです。
2.Change/Mavis Staples
今回、楽曲の提供とプロデュースしたベン・ハーパーはメイヴィス2016年のアルバム『LIVIN’ ON A HIGH NOTE』に収録されている「Love And Trust」を作ったときに、メイヴィスのアルバムをプロデュースしたいと本人に申し出たらしいです。その時にメイヴィスが「またいい曲を作ってくれたらいいわ」と言ったそうです。それで今回ベンは全11曲、すべてを書き下ろしてメイヴィスをプロデュースしたわけです。
ここまで思わせるメイヴィスってすごいです。過去プリンスもメイヴィスのアルバムをプロデュースしていますし、ステイプル・シンガーズ時代にはカーティス・メイフィールドがプロデュースしたアルバムもありました。ライ・クーダーがブロデュースした「WE’LL NEVER TURN BACK」そして近年はウィルコのジェフ・トゥーディがプロデュースしています。こんなにいろんなミュージシャンがメイヴィスをプロデュースしたがるのは、彼女の歌の力でしょう。そして、彼女もまたプロデュースしてくれる人との信頼関係を築くのがうまいのだと思います。みんなメイヴィスが好きなんですね。キース・リチャーズもMAVIS!って書いたTシャツ着てます。僕もあれ欲しいです。
次の曲のタイトルのブラザー・アンド・シスターズという言葉はそれこそ60年代終わりから70年代にかけて黒人たちが結束を表す言葉としてよく使ってました。
いま、この言葉がメイヴィスから歌われるとき、それは世界中に対する兄弟姉妹、Brothers And Sistersということのように思えます。
「同じところに留まっていないで、あなたの周りを変えるいろんなことを考えてみよう、ブラザーズ&シスターズ。お互いに助け合い、お互いに強く生き、お互いに困難なことに立ち向かおうブラザーズ&シスターズ」
3.Brothers And Sisters/Mavis Staples

メイヴィスは80才です。僕は彼女のツイッターをフォローしているのですが、驚くぐらい精力的に活動しています。アルバムをつくるだけでなく自分のバンドでツアー、そして大きなフェスティバルにもたくさん参加しています。
前もこの番組で言いましたが、彼女が年とってからこれだけいろんな聴衆とミュージシャンに支持されているのは、彼女が変らない生き方を貫いているからだと思います。信念が変らないことは大切です。そして、強い信念とともに大切なのは人柄、表面的な優しさではなくてすべてを越えた偏見のない優しさや正義です。どんな人の心にも寄り添えるような気持ちです。メイヴィスの歌と生き方が自分の背筋を伸ばしてくれます。
彼女を初めて聴いたのは70年代最初のスタックスレコードから出されたステイプル・シンガーズのアルバムでした。とても力強い歌の中に大きな包容力を感じました。それはいまも変りません。
4.Hard To Leave/Mavis Staples

このアルバムのジャケットは、黒人の子供たちが柵がめぐらされた向こうにある遊園地のようなところで遊ぶ白人の子どもたちを見ているとても切ないアルバム・ジャケットです。
同じ子どもが同じ環境で遊べない、育つことができない・・これがいまだに解消されない。メイヴィスはずっと静かにプロテストしています。
5.One More Change/Mavis Staples

2019.09.13 ON AIR

ニューオリンズ・リズム&ブルーズの道を作った偉大なプロデューサー、デイヴ・バーソロミュー vol.2

The Best Of Fats Domino (EMI CDP 7 46581 2)
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New Orleans The Ultimate Collection (Union Square Music)
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The COSIMO MATASSA STORY (PROPER BOX 129)
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ON AIR LIST
1.Blue Monday/Fats Domino
2.Lawdy Miss Clawdy/Lloyd Price
3.Come On/Earl King
4.Let The Good Times Roll/Shirley & Lee
5.Walking To New Orleans/Fats Domino

前回、6月に100才で亡くなった偉大なプロデューサー、デイヴ・バーソロミューがプロデュースした曲や彼自身の曲を聴きましたが、今日もまず彼なくしては語れない偉ファッツ・ドミノがバーソロミューと作った曲から始めましょう。
月曜日をテーマにした曲はほとんど月曜に働きに行くのがイヤだというものですが、この曲もそうです
「ブルーな憂鬱な、嫌な月曜日や。一日中奴隷みたいに働かなアカン。そしてハードな火曜日がやってくる。遊ぶ時間もないんやで、もうめちゃしんどいわ。水曜も木曜もそんな調子で金曜には給料もらえるし、土曜になったら疲れはどっかへいってしまう。彼女そさって金もあるしや、出かけて遊びまくるで。日曜日は休みとっとかんとな。また最悪の月曜がくるから」
1.Blue Monday/Fats Domino
実はこの曲スマイリー・ルイスが先に1954年にリリースしたんですが、売れなくてその二年後にファッツがリリースするとR&Bチャートのトップになり、ポップチャートでも5位という大ヒット。
ちなみにこのBlue Mondayは映画「The Girl Can’t Help It」(女はそれを我慢できない)の中でファッツ自身が歌うシーンがあります。それもあっての大ヒットだったかも知れません。

次の大ヒットもバーソロミューのプロデュースですが、1952年に19才だったロイド・プライスに歌わせたこの曲はR&Bチャートの1位に7週間もとどまるヒットになり、ロイド・プライスを代表する曲となりました。彼はこのあとも”Just Because”などで素晴らしいR&Bを聴かせています。
2.Lawdy Miss Clawdy/Lloyd Price
もうなんと言っても歌が素晴らしい。
デイヴ・バーソロミューが最初にプロデュースを手がけた曲はインペリアルというレコード会社からリリースされたのですが、いまの曲はスペシャルティというレコード会社からの1952年のリリースです。どうもインペリアルレコードともめたらしくてスペシャルティの録音をしたのですが、たぶんお金のことでしょうね。でも、金を出してもらったのか、またインペリアルに戻っていってます。
バーソロミューは僕が大好きなこの曲もプロデュースしています
3.Come On/Earl King
この曲はこの前もドクター・ジョンの追悼の時もON AIRしましたが、ジミ・ヘンドリックスがアルバム「エレクトリック・レディランド」でカバーしているのを知っている方もいると思います。デイヴ・バーソロミューのような人というとブルーズ界ではシカゴ・ブルーズのウィリー・ディクソンで、ディクソンはベーシストでシンガーでもありましたが、彼自身の曲はあまり売れなかったんですが、やはりプロデューサー、タレントスカウトとしての才能はありました。マディ・ウォーターズもハウリン・ウルフもサニー・ボーイもやはりディクソンのプロデュースがあったからのヒットやと思います。バーソロミューの立場をニューオリンズで60年代から70年代引き受けたのが、アレン・トゥーサンです。彼はバーソロミューの録音にピアニストとして若い頃参加しています。たぶん、そこでバーソロミューのプロデュースのやり方も学んだと思います。
どんなにいい歌手でも曲に恵まれないとまず売れません。そしてその曲をどんな風にアレンジして、どんなミュージシャンにどこのスタジオでどのエンジニアを使って録音させるかというのがプロデューサーの仕事です。だからプロデューサーというのは音楽を作る上で最もトップにいる立場なんですね。それをこれだけヒット曲を出したデイヴ・バーソロミューはやはり偉大というしかないでしょう。
次の曲も大好きな曲です。1956年のヒットです。
4.Let The Good Times Roll/Shirley & Lee
ドラムはアール・パーマー・・・無敵です。
バーソロミューがプロデューサーとして腕を振るったインペリアル・レコードは1963年にリバティ・レコードに買い取られ、バーソロミューはウエストコーストからニューオリンズへ帰ってきました。そして、トランペット・レコードやマーキュリーレコードでプロデュースをし自分のレーベルを立ち上げたりしましたが、セールス面での成果はあまりなかったようです。70年代80年代はニューオリンズでディキシーランドジャズバンドを立ち上げたりもしましたが、まあ悠々自適の晩年だったのでしょう。
最後の曲は元々ボビー・チャールズが書いた曲ですが、ある時ボビー・チャールズが大ファンだったファッツ・ドミノのコンサートの楽屋で会ったそうです。その時にファッツが「今度ニューオリンズのオレんところに遊びにおいでよ」と誘ったそうです。その時ボビー・チャールズは車を持っていなくて「もし、ご自宅へ行くのなら僕は歩いてニューオリンズへ行かなくては・・」と答えてこの歌ができたそうです。ニューオリンズまで歩いていく・・。
5.Walking To New Orleans/Fats Domino
この曲もヒットしてR&Bチャート2位、ポップチャート6位まで上がりました。

元々ニューオリンズはジャズからR&Bまで優れたミュージシャンがたくさんいるところでしたが、そのミュージシャンたちをまとめてクオリティの高いしかも売れるエンターテイメントにしたデイヴ・バーソロミューはもっと知られて評価を受けるべき人だと僕は思います。僕もこういう音楽を好きになった最初はプロデューサーの名前なんてクレジットにあっても見なかったんですが・・・。
アトランティックレコードのアーメット・アーディガンやジェリー・ウエクスラー、モータウンのベリー・ゴーディ、マッスル・ショールズのリック・ホール、そしてアラン・トゥーサン、そして二回に渡ってきいてもらったデイヴ・バーソロミューといったプロデューサーたちはほんとに素晴らしい音楽を世の中に出した人たちです。
デイヴ・バーソロミュー・・・みんなも名前を覚えておいてください。