スウィート&ビターなスワンプ・ポップの魅力 その2




ON AIR LIST
1.Sweet Dreams/Tommy McLain
2.Pardon Mr Gordon/Rod Bernard
3.This Should Go On Forever/Rod Bernard
4.Rainin’ In My Heart/Slim Harpo
5.Small Town Talk/Bobby Charles
前回のスワンプ・ポップの特集で最初にON AIRしたのはトミー・マクレインが43年ぶりに一昨年リリースした”I Ran Down Every Dream”( 夢から醒めて)でした。そのトミー・マクレインが若き日の1966年にヒットさせたのが”Sweet Dreams”という曲でした。この曲はスワンプ・ポップを語るときによく出てくる曲です。
そのスワンプ・ポップという言葉は発祥のルイジアナ南部で生まれた言葉ではなく、70年代になってからイギリスの音楽ライターによって名付けられた言葉だそうです。多分地元では普通にR&BとかR&Rという風に呼ばれていたと思います。どこに特徴があるかといえば、ニューオリンズの黒人R&Bにフランスからの白人移民たちによって持ち込まれたケイジャン・ミュージックのテイストとこれまたフランス系黒人のクレオールたちによって持ち込まれたザディコと呼ばれる音楽のテイストが入っているところです。ケイジャンもザディコもダンス・ミュージックでそれと当時全米で吹き荒れていたR&RやR&Bがミックスされたものですが、もうひとつ「ティア・ドロッパー」と呼ばれる三連符のメランコリーなバラード(僕らは若い頃ロッカバラードとか呼んでました)もスワンプポップの特徴です。その「ティア・ドロッパー」の代表的な一曲がこのトミー・マクレインの往年のヒットです。
1.Sweet Dreams/Tommy McLain
「フラれてしまった君のことを忘れて新しい人生をなぜ自分は始められないのだろう。愛されていないことを知っているのに・・。一晩中君のことを憎むべきなのに僕は君の甘い夢を見ている」未練たっぷりの失恋ソングです。ティア・ドロップ(涙を流す)する悲しい歌ということで「ティア・ドロッパー」
スワンプポップと呼ばれている音楽には白人も黒人も両方のミュージシャンがいて、そこにフランス系のケイジャンやザディコといった音楽そしてさらにメキシコやカントリー&ウエスタンのテイストも混じっていてまさに人種の坩堝ルイジアナの音楽という感じですが、その中でかなり売れた白人シンガーにロッド・バーナードがいます。彼のシングルを集めたアルバムのタイトルが「スワンプ・ロックンローラー」ですからこれはちょっと聞いておかないと・・ですね。そのアルバムの一曲目に入っている曲です
2.Pardon Mr Gordon/Rod Bernard
軽めのR&Rの曲調に音色もフレイズもイナたいギターがなんともいい感じでが、やはりファンキーさのあるルイジアナ・テイストです。
ロッド・バーナードはもう一曲ヒットを持っていましてそれも定番のティア・ドロッパーの曲
Thisというのは彼女への愛を指しているのでしょう。「永遠にこの愛は続くべきで決して終わらない。君を愛することが悪いことなら僕は永遠に罪を背負っていくだろう。君を抱きしめてキスすることが間違っているのなら僕の魂は決して自由にはならない」こんな言葉は絶対に私は言えない熱烈なラブソングです。
3.This Should Go On Forever/Rod Bernard
今の曲を聴くとルイジアナのブルーズをよく知っている方ならあの黒人ブルーズマンを思い出しませんか。そうスリム・ハーポです。スリム・ハーポのこの曲も同じ時代に同じルイジアナ南部から生まれた心を締めつけられる「ティア・ドロッパー」のバラードです。彼もスワンプポップのひとりとして入っています。
1961年にR&Bチャートの17位、白人のポップ・チャートでも34位まで上がった曲です。
「オレたちが別れてから心に雨が降っている。オレが悪かった。帰って来てくれ。気が狂いそうだ。無駄に泣かせないでもう一度オレの愛を試してみてくれ」とヨリを戻したいこれも男の熱烈ラブソングです。
4.Rainin’ In My Heart/Slim Harpo
さりげない歌い方と声がいいですね。途中の語りの声はちょっと反則です。あの声だけでね、ぐっと来ますよ。女性は・・来ますよ。ブルーズ・ファンの人たちはスリム・ハーポはエクセロというレコード会社のスターでルイジアナのブルーズマンとして認識されているのですが、スワンプ・ポップを掘り出すとスリム・ハーポのRainin’ In My Heartもスワンプ・ポップの曲として出て来ます。ルイジアナ周辺の人たちは黒人も白人も関係なくみんながいわゆるティア・ドロッパーの曲を楽しんでいたんでしょうね。
前回ON AIRしたやはりスワンプ・ポップのひとり、白人のボビー・チャールズはファツ・ドミノに曲を提供したり、ザ・バンドの映画「ラスト・ワルツ」に出演したり、白人ブルーズマン、ポール・バターフィールドのグループ「ベター・デイズ」に曲を提供したり・・と白人黒人関係なく愛されたミュージシャンでしたが、今回スワンプ・ポップのアルバムを何枚か買って聴いているうちにそのボビー・チャールズの音楽的な背景が見えた気がしました。
大好きな彼のこの曲もそういうルイジアナのスワンプのルーツがあって作られたんだと感じます。
「それは小さな町の他愛ない噂に過ぎない。そんなこと信じないで俺のことを信じてほしい。俺たちは信じあって一緒に住んでうまくやっていこうと思っている二人だ。傷つけ合うようなことなんかしなくてもいい」
5.Small Town Talk/Bobby Charles
2回に渡ってON AIRしましたスワンプポップいかがでしたでしょうか。ブルーズ、ロックンロール、R&B<、ケイジャン、ザディコ、カントリー&ウエスタンといろんな音楽がガンボのようにミックスされたルイジアナ南部の音楽です。ぜひ自分で探して楽しんでください。