2017.06.23 ON AIR

グラミー・コンテンポラリー・ブルーズ・アルバム賞獲得
ファンタスティック・ネグリートを聴く

FANTASTIC NEGRITO/Last days of oakland (P-VINE PCD-24547)

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ON AIR LIST
1.Scary Woman/Fantastic Negrito
2.Working Poor/Fantastic Negrito
3.Hump Thru The Winter/Fantastic Negrito
4.The Worst/Fantastic Negrito
5.Nothing Without You/Fantastic Negrito

 

 

 

 

今年のグラミー賞のコンテンポラリー・ブルーズ・アルバムを受賞したファンタスティック・ネグリートの「Last days of oakland 」を今日は聴いてみたいと思います。コンテンポラリー・ブルーズ・アルバムとは、コンテンポラリーつまり「同時代のとか現代の」ブルーズ・アルバムという賞ですが、この番組を聴いている方の中にはトラッドなブルーズが好きで聴いている方も多いので、いまから聴いてこれがブルーズなのかという疑問を持たれる方もいると思います。僕自身もブルーズという言葉を使う時、どこまでの範疇で使えばいいのか、考えさせられる時もあります。
今日は聴いているみなさんの意見を聞いてみたいです。

今日聴いてもらうLast days of oaklandというアルバムにはファンクやヒップホップ、ロック、またある種のパンクのテイストもあり、いわゆるストレートなブルーズ・アルバムではないのですが、歌詞の中には現在のいまの、つまりコンテンポラリーなアメリカのブルーズが歌われています。かってブルーズがストリートの、それも裏通りバック・ストリートの生活から生まれたものであったように、このアルバムで歌われている内容とそのサウンドには現在のバック・ストリート・ブルーズのテイストが詰まっています。
かって僕がいろんな黒人ミュージシャンに「ブルーズって何を指してブルーズ」と呼ぶのかと訊いて、返ってきたいちばん多い答が「それは歌詞だ」というものでした。だから逆にいうとワンコーラス12小節、三つのコードといういわゆるブルーズというフォームを使って演奏し、歌ってもその歌っている内容がブルーズではないものもあるわけです。
最終的にその聴き手ひとりひとりがその音楽をブルーズと思うか、ブルーズを感じるかどうかですが・・・。
さて、今日のファンタスティック・ネグリートのLast days of oakland つまり、オークランドの最後の日々をみなさんはどう感じるでしようか。
まずは一曲
この曲は50年代からの黒人R&Bのテイストを含み、プリンス的なノリ、グルーヴも感じさせる、でも根っこはブルーズを感じさせます。
1.Scary Woman/Fantastic Negrito
Scary(ské(ə)ri )Womanとはやっかいな女とか怖い女という意味で、「機嫌がいい時は最高だけど、機嫌が悪い時は最悪。本当にやっかいな女だ。ケツの振り方は最高。だけどオレの金を使い果たして、オレを自分の夢から追い払おうとした。機嫌がいい時は最高だけど、機嫌が悪い時は最悪のやっかいな女。オークランドの女さ」
こういう歌詞って昔のブルーズにもたくさんありました。

サウンドの作り方がいいというか僕の好みなんですが、オルガンの使い方なんかいい感じです。

2.Working Poor/Fantastic Negrito
Working Poorとは一生懸命働いているのに貧しい人のことです。「会社で上司にこき使われて、休みの日のことばかり考えている「ドアをノックしてるけど、ノックしても中に入れてくれない」という歌詞が何度も繰り返されるんですが、まあ一生懸命働いて給料をたくさんもらっていい暮らしができるようにと思ってそのドアを叩いているけど、そこには入れてもらえない。そういう楽な暮らしにはならないということでしょう。これもブルーズが生まれたその初期からずっとブルーズで歌われて題材です。

初めての音楽を聴く時、僕の基準になるのはまずその歌手の歌声で、その声が好きになれないとどんないい曲を歌われても好きになれないです。その歌声というのは歌い方も入ってます。そして、リズムがグルーヴがいいか好きなタイプかそれから全体のサウンドのテイストと歌詞です。
ギターが上手いからとか歌が何オクターブも声が出るとかそういうことはあまりどうでもいいです。そういう意味ではこのアルバムは僕の好みです。
次の曲、あれ?これって思う人いると思います。ハードロック好きな人はとくに。
まあ聞いてみてください。
3.Hump Thru The Winter/Fantastic Negrito
そうです。レッド・ツェッペリン。そういう音楽の影響も受けているファンタスティック・ネグリート、ちょっと面白いですね。

次はスピリチュアルズやゴスペルのテイストもあり、メイヴィス・ステイプルズが歌いそうな曲です。
すごくシンプルな歌と歌詞の底辺にルーツ・ミュージックを感じさせファンクやロックのテイストも積み重ねている音作りです。
“Money and power they’re the Root of all evil”(金と権力がすべての悪の根源)という言葉で始まるこの曲は、ちょっと社会的な歌ですが、彼の書く詞が複雑なのでストレートに理解するのは難しいです。
4.The Worst/Fantastic Negrito
5.Nothing Without You/Fantastic Negrito
アルバムのグルーヴ感とかサウンドとか全体の重い、重心の低いどっしりしたミステリアスなムード、こういうのが僕は好きなんですね。グルーヴにはスライ&ファミリー・ストーンやプリンスにも通じるものもあり、ロックやゴスペルのサウンドのテイストも散りばめられて更にその下には現代のいろんな問題や彼なりのブルーズが歌われている気がしますが、ブルーズという音楽のくくりをどこまで自分の中で広げるのかという問題は残ります。みなさんはどう思われますか?