2021.01.08 ON AIR

ネイティヴ・インディアンの音楽がアメリカの音楽に残してきたもの~映画「ランブル」を観て

Link Wray & The Wraymen (Oldies ODR 6165)

THE COMPLETE RECORDED WORKS/Charlie Patton (P-VINE PCD2255)

Lighting And Thunder/The Golden Eagles (Rounder Records CD 2073)

Electric Lady Land/The Jimi Hendrix Experience (MVCE 24029)

ON AIR LIST
1.Rumble/Link Ray
2.Screamin’ And Hollerin’ The Blues/Charlie Patton
3.Shoo-Fly/The Golden Eagles featuring Monk Boudreaux
4.Gypsy Eyes/Jimi Hendrix

ネイティヴ・インディアンがアメリカの音楽に及ぼした影響を追求した映画「ランブル」が去年の10月から全国順次公開されたのですが、皆さんはご覧になりましたか。
とても興味深い、教えられることの多い映画でした。
ロックのジミ・ヘンドリックスやジェシ・エド・ディヴィス、またブルーズのT.ボーン・ウォーカーなどがインディアンの血を引いているというのは知っていましたが、実に多くのミュージシャンがネイティヴ・インディアン系であることを驚きました。

映画のタイトル「Rumble」は50年代の終わりから60年代にかけて活躍したギタリスト、リンク・レイの曲名から取ったものです。
リンク・レイはライヴ・ステージでのサウンドが歪んだ感じが欲しかったので、ギターアンプのスビーカーにわざわざ穴を開けて音を歪ませたそうです。今はディストーションというエフクターがありそれで音を歪ませているのですが、当時はエフェクターかせなかったので無茶なことをしたわけですが、これがギター・サウンドとしては革新的な音になったわけです。
現在のハード・ロック、ヘヴィ・メタルやパンクのサウンドの第一歩がこの曲と言われているのがわかるワイルドな曲です。
1958年。
1.Rumble/Link Ray
リンク・レイはお母さんがチェロキー族のネイティヴ・インディアンだったのですが、この曲のリズム、ビートの中にネイティヴ・インディアンのプリミティヴなビートが聞こえてきます。リンク・レイは肺が悪かったので歌うのが難しくて こういうギター・インストの曲をたくさん作りました。それにモロ影響を受けて、リンク・レイがいなかったらギターは弾いてなかったと公言しているのが映画にも出てきますが、ピート・タウンゼント。彼のバンド「ザ・フー」の曲を思い出してもらうとリンク・レイの影響がわかると思います。
そのほかレッド・ツェッペリンのジミー・ペイジなどリンク・レイの影響を受けたロック・ギタリストはたくさんいます。

映画「ランブル」ではアメリカのボビュラー・ミュージックにインディアンの音楽が与えた影響と、インディアンの血をひくミュージシャンたちが無意識に自分の体の中にあるインディアンのグルーヴを音楽に残していることが解明されています。
デルタ・ブルーズのキングと呼ばれるチャーリー・パットンのブルーズの中にそれがあることを解明するシーンがぼくにとっては一番興味深かった。
チャーリー・パットンが活躍した1920年代から30年代時代には当然まだエレキ・ギターはなかったが、彼はアコースティック・ギターでギターのボディを叩いたり、高音部でチャーキングするワイルドなスキルを披露しています。全体的にパーカッシヴでリズムがよくてとてもダンサブル。聞いてもらう次の曲でもギターのボディを叩く音が聞こえます。
2.Screamin’ And Hollerin’ The Blues/Charlie Patton
チャーリー・パットンは自分に流れている血のことを尋ねられることが嫌いだったそうです。黒人なのかインディアンなのか白人の血も入っているのかとか聞かれる容貌なので・・でも、パットンはそういう時に「オレがいまここにいる。それだけで十分だろう」と言ったそうです。
本当にそうです。何人であろうが、どういう血を引いていようがその人間が今生きていてそこにいるだけで充分です。
「ランブル」の映画の中にひとり知っている人が出てきました。ニューオリンズのマルディグラ・インディアンのトライブのひとつ、ゴールデン・イーグルスのビッグチーフであるモンク・ブードロー。僕が90年代にニューオリンズに行くようになって最初に感動したのはこのゴールデン・イーグルスとワイルド・マグノリアスというインディアンのライヴでした。
聞いてもらうとわかるのですが、ギターとかピアノとか和音を出す楽器がなくてタンバリンとコンガにバスドラにカウベルという打楽器と歌だけというとてもプリミティヴな、ストレートでグルーヴのある演奏でエレクトリックな音に慣れてしまっている自分にとってとても新鮮で刺激的なサウンドでした。
3.Shoo-Fly/The Golden Eagles featuring Monk Boudreaux
モンクは日本にもきているので聞いたことがある人もいると思いますが、優しいとてもいい人でした。
こういう土着的なサウンドにエレクトリックな音を入れてよりバンド・サウンドにしたものもその後作られて、僕の盟友の今ニューオリンズで活動しているギターの山岸潤史が加入したワイルド・マグノリアスはエレクトリックサウンドを入れてある種ファンク化、マルディグラインディアン・ファンクしたことですごく人気が出ました。あの頃のニューオリンズは本当に楽しくて、僕はアメリカでいちばん好きな街がニューオリンズになりました。

ロックのジミ・ヘンドリックスはインディアンのトライブのひとつチェロキー・インディアンの血を引いていることを公言しており、彼の作った曲の中にはインディアン音楽の要素が入ってると言われています。次の曲は古いブルーズのフィールドハラー(畑で働くときに歌われる労働歌)がベースになっているのですが、どこかにインディアンのワイルドなグルーヴが入っている気がしませんか。
1968年リリースの「エレクトリック・レディ・ランド」から
4.Gypsy Eyes/Jimi Hendrix

映画の中では奴隷から逃亡した黒人たちが追ってくる白人たちから逃れるために、インディァンの部族に助けてもらってかくまわれた話も出てきます。インディアンはアメリカの先住民族にもかかわらず、後からヨーロッパからやってきた白人たちに土地を奪われ居住区という地域に住むことを強制させられるというひどい目にあったわけです。白人は黒人を奴隷としてアフリカから連れてきただけでなく、先住民のインディアンから土地をうばうという全く理不尽なこともやってきたわけです
映画でブルーズのハウリン・ウルフにもチョクトー族というインディアンの種族の血が流れていると知り驚きました。ウルフはアフリカン・アメリカンだと思っていました。しかし、彼が持っているすごくワイルドなフィーリングはリンク・レイやジミ・ヘンドリックスに似ているかも知れません。
今日は映画「ランブル」から映画に関係していいるミュージシャンの曲を聞きました。
ぜひDVDで出してもらいもう一度観たい映画です。

来週はネイティヴ・インディアンであること早くから隠さなかったギターの名手、ジェシ・ディヴィスの特集。
ジョージ・ハリソン、エリック・クラプトン、ローリング・ストーンズなど多くのミュージシャンに愛されたジェシ・エド・デイヴィスです。お楽しみに。