2021.01.01 ON AIR

2021年新年あけましておめでとうございます!

That’s What I Heard / Robert Cray Band (NOZZLE Records 72098CD)

Rawer Than Raw / Bobby Rush (Deep Rush Records/BSMF-2713)

Living On Mercy / Dan Penn (LMCD-219)

ON AIR LIST
1..Hot/Robert Cray
2.Burying Ground/Robert Cray
3.Down In Mississippi/Bobby Rush
4.Smokestack Lightning/Bobby Rush
5..I’ll See You In My Dreams/ Dan Penn

ブルーズの王様と呼ばれたB.B.キングは生前「全ての人がブルーズを持っている。黒人であろうが白人であろうがどんな人種でも、また貧しくてもお金を持っていても地球上の全ての人間にブルーズはある」と言いました。その言葉のように昨年から猛威をふるっているコロナ・ウィルスは地球上のすべての人にとって逃れられない大きなブルーズになっています。そして一つの大きな試練になっています。
この番組も本来ならキー・ステーションの弘前のアップルウェーブで収録しているのですが、去年の夏前から感染拡大を防ぐために住んでいる東京からリモート録音が続いています。
コロナ・ウィルスに対する考え方は人それぞれあると思うのですが、僕も高齢者ということもあり、また知り合いの医療関係者の方たちの苦労を考えると自然と自粛という方向になっています。弘前に行きたいのは山々ですが、リモート録音しているのも自粛の一つです。ライヴもお客さんを入れてのライヴはやってません。ツアーもやっていません。ほぼ月に一度の無観客配信ライヴだけです。普段も必要のない限り出歩くことはしていない。そこから生まれるストレスや不安はみなさんと同じようにあります。でも、思うように活動できないこの時間の中で自分が今までやってきた音楽活動を振り返り、これからのことを考え準備するための時間なのだと思っています。そして、リモートですがこの番組をやれることが自分自身の大きな活力になっています。そしていま日本でいちばん大きく充実したブルーズのラジオ番組のアーカイヴスを残そうと思っています。
今年もよろしくお願いします。

今日は去年リリースされたアルバムで紹介できなかったものや、去年印象に残ったアルバムから今日は聞いてみたいと思います。
ブルーズに関してはここ10年くらいの間にB.B.キングはじめレジェンドと言われたブルーズマンが亡くなってしまい、かと言ってこの番組で心から聞いてもらいたいと思う新人のアルバムも新譜も少ないのが現状です。
そんな中、もうすっかりベテランになったロバート・クレイが去年2月にリリースしたアルバム”That’s What I Heard”は本当に素晴らしかった。
ブルーズン・ソウルという言い方は70年代に始まった古い言葉だが、クレイのことを僕はブルーズとソウルの両方のテイストがあるブルーズン・ソウルの歌手だと思っている。最初の曲は60年代はじめ頃のR&Bスタイルのジャンプナンバーだがまったく古さがない。

1.Hot/Robert Cray
正直言うと昔私はクレイがあまり好きではなかった。一つの理由はなんでもソツなくて器用で、引っかかるものがなくてあまり好きではなかった。それがここ数年、そこからまた一皮剥けたと言うか円熟味が出てきた。でも変な大御所感みたいな感じで歌っている訳ではない。
もう一つ、このアルバムはプロデュースとドラムで参加しているスティーヴ・ジョーダンの力が大きいと思う。
この録音チームでもう一枚録音してほしいところだ。
次のようなゴスペルの曲も歌う力量があるブルーズシンガーは今はあまりいない。
オリジナルは1950年代に活躍したゴスペル・グループ、センセイショナル・ナイチンゲイルズ。

2.Burying Ground/Robert Cray
オールドスタイルという言い方で古いものという決めつけをしてしまう人がいるけれど歌手とプレイヤー、プロデューサー、アレンジャーそしてレコード会社のスタッフたちが古いことをやっていると思わなければ、それは新しい音楽なのだと僕は思う。逆に新しいことをやっているようで実はそれが少し前のものだと感じた瞬間にもう古いものになってしまうこともある。今の曲には今を生きているロバート・クレイとスティーヴ・ジョーダンはじめスタッフ全員の生きている感じがすごくする。生命力のある音楽だ。
ロバート・クレイは今年68歳、ますます磨きのかかったいいブルーズマンになってきた。ちょっと上から目線で申し訳ない。

次は87歳になったボビー・ラッシュ。去年リリースしたニューアルバム”Rawer Than Raw”は番組で紹介できなかったが、今回はアコースティック・アルバムで歌、ギター、ハーモニカ、そしてバスドラム代わりのフットストンプ(足音)を全て一人でやっている。
しかし、曲の半分をボビーが書いていて気力は全く衰えていない。まずはそのオリジナルを。

3.Down In Mississippi/Bobby Rush
歌、ギター、ハーモニカが格別上手い訳ではないのに曲全体から匂うものがブルーズという感じ。長い間クラブ・ツアーのチトリン・サーキットを回ってきたボビーの原点がわかるようなアルバムだ。

次はハウリン・ウルフのカバー。女にフラれて汽車に乗って街から去っていく歌だが、毎回出てくる”don’t ya hear me cryin’?”(俺が泣いているのが聞こえないのかい)という一節が切なくてと耳に残る。汽車の煙突のことを歌っているのだが「煙突の閃光」とでも言ったらいいのだろうか。

4.Smokestack Lightning/Bobby Rush
今年はずっと聴いてきたダン・ペンが新しいアルバム”Living On Mercy”をリリースしてくれたのも嬉しかった。変わらないいつもの歌声に彼独特のゆったりした曲がちりばめられたアルバムで、これでホッとした人も多かったのではないかと思う。

5.I’ll See You In My Dreams/ Dan Penn
コロナ・ウィルスの収束が早く来ることを願ってます。コロナ・ウィルスを甘く見ないで一人一人ができることで感染を防ぎましょう。人間生きててなんぼのもんです。
今年もよろしく!
Hey,Hey,The Blues Is Alright!