2021.01.15 ON AIR

ネイティヴ・インディアンの血をひくギターの名手、ジェシ・デイヴィスが残した音楽

Red Dirt Boogie: The Atco Recordings 1970-1972 /Jesse Ed Davis

ON AIR LIST
1.Statesboro Blues/Taj Mahal(Guitar:Jesse Ed Davis)
2.Red Dirt Boogie,Brother/Jesse Ed Davis
3.Sue Me,Sue You Blues/Jesse Ed Davis
4.Crazy Love/Jesse Ed Davis
5.Kiowa Teepee/Jesse Ed Davis

前回はネイティヴ・インディアンがアメリカのポピュラー・ミュージックに及ぼした影響を描いた映画「RUMBLE」にまつわる曲をON AIRしたのですが、今回はインディアンの血を引くミュージシャン、ギタリストとして60年代終わりから70年代にかけて活躍したジェシィ・エド・デイヴィスです。
早くからネイティヴ・インディアンの血を引いていることを表明していたジェシィ・デイヴィスは素晴らしいギタリストだったのですが、44歳という若さで亡くなっているので若い人たちには馴染みがないかも知れません。
エリック・クラプトンの”No Reason To Cry”、ジョン・レノンの”Rock And Roll”,ジョージ・ハリソンの”Extra Texture”他様々なミュージシャンのアルバムにゲスト・ギタリストとして客演しています。僕がジェシィ・エド・デイヴィスの名前を知ったのは、オールマン・ブラザーズの”Statesboro Blues”という曲でのデュアン・オールマンの素晴らしいスライドギターが、実はタジ・マハールのアルバムで同じ”Statesboro Blues”でギターを弾いているジェシィ・デイヴィスの影響らしいと聞いて、そのタジのアルバムを聞いたのが最初です。
1968年のアルバム”Taj Mahal”から
1.Statesboro Blues/Taj Mahal(Guitar:Jesse Ed Davis)
オールマン・ブラザーズのこの曲を知っている人は、1972年のオールマンのフィルモアのライヴでのデュアンのスライド・ギターがジェシ・ディヴィスの影響を受けたことがわかると思います。ギターの音色もいい素晴らしいプレイでデュアンが影響を受けたのもわかります。
ジェシィ・デイヴィスは1971年にソロ・アルバム”Jesse Davis”と翌72年に”Ululu”をリリースしてます。その二枚を一枚にまとめた”Red Dirt Boogie: The Atco Recordings 1970-1972 “というアルバムから今日は何曲か聞こうと思ってます。
ジェシィ・デイヴィスは60年代中頃から地元オクラホマを中心に「コンウェイ・トゥッティ」というバンドで活動していましたが、60年代終わりになってウエストコーストに移ってから当時ブルーズをやっていた、タジ・マハールと出会い彼のバンドに加入します。いま聞いてもらった”Statesboro Blues”は68年の録音ですが、その頃からギタリストとして評判になり69年にタジのバンドを離れてからはアルバート・キングやウィリー・ネルソンのレコーディングなどに参加し始めます。そして71年にソロ・アルバム”Jesse Davis”のリリース、そして翌年に”Ululu”をリリースとなります。では、まずその”Ululu”に収録されたこの曲から。ビートにインディアンのテイストがあると思うのですがどうでしょう。
2.Red Dirt Boogie,Brother/Jesse Ed Davis
ギター、ものすごくいい音してます。土着的でありながらファンキーでもちろんブルーズのフィーリングもあり当時こういうサウンドは初めてだった気がします。
次はジョージ・ハリソンが作った曲で、ジョージの1973年のアルバム”Living In The Material World”に収録されてます。ジェシ・デイヴィスはジョージの有名なバングラディシュ・コンサートにも参加していますが、この73年頃は、レオン・ラッセルやクラプトン、ローリング・ストーンズなどイギリスのミュージシャンとの交流も多くてホブ・ディランと共演もしています。ギターも上手いけど性格もよかったそうでいろんな人に誘われていた頃です。
3.Sue Me,Sue You Blues/Jesse Ed Davis
曲名のSue Me,Sue You のSueというのは訴える、告訴するという意味ですが、多分奥さんともめて裁判沙汰になり「君がぼくを告訴して、ぼくも君を告訴するという・・こういうこともういい加減やめないか」という意味の歌だと思います。昔愛し合っていたのに告訴し合うってイヤですね。

80年代に入るとジェシィはドラッグ中毒から抜け出すのに時間がかかるようになり活動が減って行き88年に亡くなってしまいました。
ギターの名手というだけでなく音楽的才能もセンスもある人だけに残念です。
次は最初のアルバム”Jesse Davis”に入ってる曲です。作ったのアイルランドのレジェンド、ヴァン・モリソンですが、愛する彼女から溢れるほどの愛を与えてもらえる喜びを歌ったものです。モリソンの70年のアルバム「ムーンダンス」に収録されています。
4.Crazy Love/Jesse Ed Davis
ジェシィは「スワンプロック」というジャンルで語られることが多いのですが、スワンプとは南部の湿地帯のことですからなんかジトジトした梅雨時のようなサウンドを思い浮かべる人いるかと思いますが、まああまり洗練されていない土臭いロックのことです。70年代の初中期にブルーズやリズム&ブルーズ、ゴスペルという黒人音楽とカントリー、ヒルビリーと言った白人音楽がミックスされたものです。その代表的なバンドがデラニー&ボニーです。そのデラニー&ボニーのサウンドに惚れ込んだのがクラプトンですが、ジェシィ・デイヴィスのことを気に入ったのがビートルズのジョージ・ハリソンです。その時代からレオン・ラッセル、ボブ・ディラン、デイヴ・メイソンなども加わりアメリカとイギリスのロックの交流が盛んになっていきます。
スワンプロックのテイストは同時代のサザンロックのオールマン・ブラザーズなんかも被ってます。

もう一曲。ネイティヴ・インディアンのトライヴであるカイオワ族のティーピーとはテントのことです。
5.Kiowa Teepee/Jesse Ed Davis

映画「RUMBLE」でもジェシィのことが取り上げられていますので機会があれば是非映画もご覧ください。
次回は現在最高のハーモニカ・プレイヤーのひとり、キム・ウィルソンのニューアルバムを聴きます。
Hey Hey The Blues Is Alright!