2021.01.22 ON AIR

現代一流のブルーズ・ハーモニカ・プレイヤー、
キム・ウィルソンの新譜

Take Me Back / Kim Wilson (BSMF-2714)

ON AIR LIST
1.Strollin’/ Kim Wilson
2.Last Time / Kim Wilson
3.Slow Down/Kim Wilson
4.No Place To Go/Kim Wilson
5.Out Of The Fryin’ Pan/Kim Wilson

昨年10/28にBSMFレコードよりリリースされた日本盤で聞きます。
キム・ウィルソンは、1951年生まれで私とほぼ同年代。70年代半ばからテキサスで知り合ったギターのジミー・ボーンと「ファビュラス・サンダーバード」を結成して70年代終わり頃からコンスタントにアルバムをリリースしていた。テキサスではブルーズの有名ライヴハウス「アントンズ」でハウスバンドとしてずっと演奏をし、ツアーでテキサスにやってくるブルーズマンたちのバックバンドもやり力を蓄えていた。
私がファビュラスを知ったのは70年代の終わり頃でロスにいた白人のブルーズフリークにカセットテープをもらったのが最初。白人のブルーズバンドにありがちなやたらギターが出てくる感じはなくて、キムのハープと歌を中心にバンドの一体感が素晴らしかった。まさにブルーズバンドという感じだった。ジミーが脱退してしまったが今もファビュラスは続行しているが、このところキムのソロでの活躍が目立つ。
今回のソロアルバムは三年ぶりです。
まずはキムのハーモニカのすばらしさが聞けるインストの曲
1.Strollin’/ Kim Wilson

キム・ウィルソンは現代のブルーズ・ハーモニカを代表するプレイヤーで自身の「ファビュラス・サンダーバード」だけでなくボニー・レイットはじめ多くのミュージシャンのアルバムにゲスト・プレイヤーとして参加している。実際、テクニックがあるだけでなくこれだけパワフルに多彩にブルーズ・ハーモニカが吹けるプレイヤーは黒人、白人問わずあまりいない。
次の曲はシカゴ・ブルーズの名盤と呼ばれているジミー・ロジャースのアルバム「シカゴ・バウンド」に収録されている。
ジミー・ロジャースの曲あたりはキムにとってはもうお手の物という感じだろう。
2.Last Time / Kim Wilson

一曲ラリー・ウィリアムズのR&Rがカバーされている。1958年にラリー・ウィリアムズがスペシャルティ・レコードから”Dizzy Miss Lizzy”のシングのB面として歌った曲で、僕は最初ビートルズがカバーしているバージョンで知った。懐かしいロックンロールだ。
3.Slow Down/Kim Wilson
今のSlow Downでキムはハーモニカを吹かないで歌だけ歌っている。歌が貧弱だとその分ギターとかハーモニカとか楽器の演奏に重点が置かれてしまうのだけど、キムの歌はパワフルで十分聞き応えがある。

自分のバンド”ブルーズ・ザ・ブッチャー”にもハーモニカのコテツくんがいるが、ハーモニカという楽器はいい楽器だ。手頃でどこでも練習できるし、一人でもバンドでも演奏できて音もアンプを通すのもいいし、生の音もいいし、一家に一つハーモニカ!
今回のアルバムはオリジナルとあまり手の込んだアレンジをしていないカバーと二つのテイスト、
「お前が俺の人生をめちゃくちゃにしてからえらい長い時間が経った。俺は年も取って頭も白くなって、行くところもない。俺を捨てて若い男を手に入れるんやろ」
4.No Place To Go/Kim Wilson
今回のこのキムのアルバムでギターを弾いているのがビッグ・ジョン・アトキンソン。見た目おっさんなんですが、彼は1988年生まれだそうでまだ32才。フロリダ生まれで10代でギター弾き始め古いブルーズに興味を持って、18才の時にラスベガスへ移り住んでそこでいろんなミュージシャンとセッションしたりして、その後移ったテネシーで初めて自分のバンドを結成。その後南カリフォルニアに移って初めてのアルバム”House Party At Big Jon’sをリリース。シカゴブルーズ・スタイルのギターが多い感じがするが、多分なんでも弾ける人だと思います。自分のソロ・アルバムやライヴにもキムが参加している。
他の参加メンバーはビリー・フリン(ギター)、キッド・アンダースン(ギター)、バレルハウス・チャック(ピアノ)、ラスティ・ジン(ギター)、ボブ・ウェルシュ(ギター、キーボード)、トロイ・サンドウ(ベース)、マーティ・ドッドソン(ドラム)
2016年に亡くなったバレルハウス・チャックの名前があるところから数年前の録音も入っていると思う。

最後にもう一曲キムのハーモニカがフィーチャーされたインスト曲
5.Out Of The Fryin’ Pan/Kim Wilson
とても力強く押しがある中で細かい技も出しているハーモニカでいい。ビッグ・ジョン・アトキンソンのサボートもいい感じ。
16曲収録されている中の9曲がカバーでトラッドな演奏になっているけど古い感じはしない。こういうサウンドやグルーヴが好きなミュージシャンたちが集まって自然とできたトラッドなブルーズのスタイルだと思う。
今日は昨年10月にリリースされたキム・ウィルソンの新譜”Take Me Back”を聞きました。
来日もして欲しいキム・ウィルソン。