2021.05.14 ON AIR

シカゴ・ブルーズの名ギタリスト、エディ・テイラーのスタジオ仕事集

Eddie Taylor In Session/Diary Of Chicago Bluesman 1953-1957 (Jasmine JASMCD 3070)

ON AIR LIST
1.You Got Me Dizzy/Jimmy Reed
2.Ride’Em On Down / Eddie Taylor
3.Dimples/John Lee Hooker
4.Ice Cream Man/John Brim
5.Big Town Playboy/Eddie Taylor

ここ数年イギリスの「ジャスミン」というレーベルがブルーズのいい感じのコンピレーション・アルバムを出してまして、今回聴くのはシカゴのブルーズ・ギタリスト&シンガーのエディ・テイラーのスタジオ・ワークを集めたコンピ盤。エディ・テイラーは1977年12月に来日してご覧になった方もいらっしゃると思いますが、ぼくがエディ・テイラーの名前を意識したのはブルーズのヒット・メイカーとしてシカゴだけでなく全米にその名前を知られたジミー・リードのアルバムでした。
ジミー・リードのブルーズは全体にダウンホームでありながらどこかポップな味わいがあり、メロディもはっきりしていて歌詞もわかりやすい、途中のハーモニカのソロもワンパターンと言って良いほどの定番で、ジミー・リードの親しみのある緩やかな歌は一緒に口ずさみたくなるものです。つまりイナたいがどこかポップ。そしてついつい腰が浮いて踊りだしたくなる唯一無二のグルーヴがあります。それをリズムで支えていたのがエディ・テイラーでした。
まあ、縁の下の力持ち。有名旅館のしっかりした番頭はんという感じですね。
まずはそのジミー・リードのR&Bチャート3位まで上がった1956年のヒット曲。ドラムがこれまた名手のアール・フィリップスでエディ・テイラーのギター、そして歌とギターとハーモニカがジミー・リード
しっかりベース・パターンをやってグルーヴを出しているのがエディ・テイラー
「聴いてくれやベイビー、ちゃんとしたこと言うてんねん。オレは朝家を出るけど一晩中遊んでられへん。何でか言うたらオマエにクラクラしてる。ホレてんねん。自分のことがわからんくらいクラクラしてるんや。ほんまやて、オマエにホレたように他の女を好きになったことはない。グラグラや、めっちゃホレてんねん」
1.You Got Me Dizzy/Jimmy Reed

実はエディ・テイラーとジミー・リードは同じミシシッピーの田舎の幼なじみでジミー・リードにギターを教えたのはエディ・テイラーでした。そして大人になって二人は別々にシカゴにやってきて、二人ともプロのみゅーじしゃんをめざしていたのですがジミーがVee Jayレコードでレコーディングをすることが決まった時、スタジオに現れたのが幼なじみのエディでした。以来、ジミーの録音には必ずと言って良いほどエディが参加してジミーの音楽を支えた。何曲も長い間やりライヴも一緒にやってたみたいですから仲がよかったんでしょうね。
次のはエディがメインで歌う曲にジミーが参加しているものです。ドラムと三人でベースもいないんですが、ベースがいないことが全く気にならないグルーヴの素晴らしさですが、エディとジミーの二人のシャッフルのビートが本当に気持ちのいい曲です。ローリング・ストーンズもカバーしています。
2.Ride’Em On Down / Eddie Taylor

エディ・テイラーはVee Jayレコードのレコーディングに数多く参加しているのですが、偉大なジョン・リー・フッカーのVeeJay録音にも参加しています。ジョン・リーは60年代の初期にVeeJayと契約して”Boom Boom”のようなヒットを出してイギリスのロック・ミュージシャンにも取り上げられ次第に世界的に認知されるブルーズマンになっていきます。次の曲もアメリカのチャートには出なかったけれどイギリスのチャートには上がった曲です。次の曲もイギリスのアニマルズやスベンサー・デイヴィス・グループ、ドクター・フィールグッドなどに愛されカバーされた曲です。これにもエディ・テイラーが参加しています。
「君の歩き方が好きやねん。めちゃ好きやねん。俺はオマエをしっかり見てるで。ほっぺにえくぼあるよね。いいよね。ずっとオマエを見てるよ」
3.Dimples/John Lee Hooker

1977年にエディ・テイラーはギターのルイス・マイヤーズそしてルイスの弟のベースのデイヴ・マイヤーズ、ドラムのオディ・ペインと共に日本ツアーをしました。実はその時にこの番組のキーステーションであるアップル・ウエーブがある弘前でもライヴをやっています。弘前で「ブルーズン」というブルーズ・バーをやっておられた正井さんという方を中心に有志が集まりエディのライヴを弘前で開催しました。そのツアーの中では一番小さい街が弘前だったと思います。今思うエディ・テイラーを弘前で聞きたいという強い熱意に頭が下がります。
僕はこの来日のライヴ・アルバムになった京都で聴いたのですが、その三年前の1974年にルイス・マイヤーズとデイヴ・マイヤーズはロバート・Jr.ロックウッドと日本に来ていました。それでまあ「日本ではオレの方が人気があるんだぞ」とルイスは思ったのかも知れませんが、エディ・テイラーとステージで張り合ってしまいライヴ自体はあまりいいものではありませんでした。でも、エディのシャッフルのビートを聞けただけでも僕は嬉しかったんですが。

このエディ・テイラーのコンピレーション・アルバムの最初に収録されているジョン・ブリムの有名曲、シカゴ・ブルーズの有名曲でもありますが、「アイスクリーム・マン」
これにもエディが参加していました。「夏になったら涼しくなるものが欲しいやろ。君のためにその涼しくなるものを持ってんのやけど逃さん方がええで。オレは君のアイスクリーム屋や。通り過ぎる前によびとめてや。オレが持ってる味に君が絶対満足するから」とまあアイスクリームにかけたちょっとエロい歌ですが、名曲やとぼくは思います。
4.Ice Cream Man/John Brim
このアイスクリーム屋はハードロックのヴァン・ヘイレンがカバーしています。You Tubeに出ているので探してみてください。なかなかいい感じでした。

次の曲名がビッグ・タウン・プレイボーイで実際エディがプレイボーイだったかどうかはわかりませんが、まあ働かないで女性に食べさせてもらっている男の歌です。
「朝、あいつがあんた仕事探して来てよ。シカゴはええとこやけどめちゃ景気悪いねん。あんた先に行ってるけどそこが私の嫌いなとこや(I Don’t Want You Go Ahead.That’s One Thing I Don’t Enjoy/ここの意味が今いちよくわからない)。大丈夫や、あんたは大都会のプレイボーイやから」そのあとも「一日中街をふらふらして夜中に帰って来てとか、あんたなんかやりたい放題やって一文の値打ちもないで」と女性の愚痴が続くんですが最後はあんたは大都会のプレイボーイやからで終わってしまう。
働かない男やけど女性に優しくてええ男やというところで許されている男の歌でしようか。
5.Big Town Playboy/Eddie Taylor

このジャスミン・レコードからリリースされたエディ・テイラーのアルバムですが、初めてエディを聞く人にはいいかも知れません。