2021.05.28 ON AIR

僕の思う日本語のブルースとポップ・ミュージック

Gumbo Roll 3 / JOE-GO (BSMF 1060)

Scheduled By Budget / MITSUYOSHI AZUMA AND THE SWINGING BOPPERS (Sony Music AICL-3699)

ばってんブルース / コージー大内 (MARUYOSHI-03)

Mooney Meets Kotez / Mooney And Kotez (Airplane AP1089)

ON AIR LIST
1.ロールパン/JOE-GO
2.ご機嫌目盛/吾妻光良とザ・スウィンギング・バッパーズ
3.おんぼろトレイン/コージー大内
4.冬の道/ムーニー&コテツ

70年代に日本語でブルーズを演奏する憂歌団が登場してから、黒人ブルースを日本語で自分流に変えて歌ったり、黒人ブルーズの曲のフォーマットだけ使って全く新しい日本語の歌詞を載せて歌う人が増えました。

去年開催された「なにわブルース・フェスティバル」では全曲英語でブルーズを歌ったのは僕のブルーズ・ザ・ブッチャーだけでした。ブルース・フェスとは銘打ってますが全くブルースと関係ない歌を歌うミュージシャンもいましたが・・・。とにかく英語でブルーズをカバーする人がすごく減って、日本語のブルースへの流れが強いのですが、アフリカン・アメリカンの民族音楽として生まれているブルーズという音楽をただ日本語でやるという安易さも最近感じます。

今日聞いてもらう日本のミュージシャンの曲はブルーズに影響を受けたものですが、それぞれが日本語でやる前にまた今でも黒人ブルーズや黒人音楽へのアプローチをしっかりやって来た人たちです。日本語のブルーズとひとまとめな言い方を僕は好きではなく、それぞれの日本語のオリジナル曲という感じで受け止めています。

最初にON AIRするのは東京の下町を中心に活動しているJOE-GO。1993年結成ですからもう28年ですか。僕が知ったのは2018年にリリースされたGUMBO ROLLというミニ・アルバムが出た頃でしたかね。

ギターと歌がガイくん(日本人ですけどね)、キーボードと歌のチャッピーくん(日本人ですけどね)、ベースと歌はミドケンくん、ハーモニカと歌がエイジくん、そしてドラムがケイゴくん

ちなみに英語表記になっているバンド名前のJOE-GOは、別に外国人がメンバーにいる訳でもなく、お酒を好きな人のことを「上戸」というところから取ってます。笑い上戸、泣き上戸というのと同じ上戸です。彼らもお酒大好きですからね。平均年齢どのくらいなんでしょう。もう28年も経っていて演奏はすごくしっかりしています。

では、2020年5月にリリースされたJOE-GOのGUMBO ROLLシリーズの三枚目から「ロールパン」

1.ロールパン/JOE-GO

僕はずっとバンドをやって来たんですが、最初は「ウエストロード・ブルースバンド」「ブルー・ヘヴン」「トリック・バッグ」そして今の「ブルーズ・ザ・ブッチャー」。途中でセッション・バンドもやったことありますし、ソロで活動することもありますが、基本的にぼくは自分のバンドが必要なんですよ。結局、なぜバンドをやるのかというとぼくのように不器用な歌手は一緒に演奏するメンバーがよく変わると上手く歌えないんですね。それと自分たちのバンド・サウンドを作りたいという気持ちもあります。そのためには同じメンバーである程度長くやらないとバンド・サウンドは作れない。もっと言えばメンバーが一人代わっただけでバンドのサウンドは変わってしまうんです。だれでもいいというわけではないんです。

次のバンドも長いです。吾妻光良とザ・スウィンギング・バッパーズ。結成は1979年でリーダーの吾妻くんが在籍していた早稲田大学の音楽サークルから始まっています。もう結成40年ですか・・。

吾妻くんはバッパーズの前に僕とブルー・ヘヴンというバンドをやっていまして、その頃彼に教えられた音楽的なことも多かったです。バッパーズはいわゆるオーケストラですからメンバーが多いです。12人もいます。でもメンバーがほとんど変わっていないところがすごいです。一番最初のアルバムは僕がプロデュースしたというか録音の世話係をしたんですが、それから40年バッパーズのメンバーもおっさんから初老になってしまいました。

では2019年5月にリリースされたアルバム”Scheduled By Budget”から

2.ご機嫌目盛/吾妻光良とザ・スウィンギング・バッパーズ

バッパーズはジャンプ・ブルーズ、ジャズ、ジャイヴ・ミュージックをルーツにそれらを日本語で演奏するというコンセプトなのですが、それも変わっていないところが素晴らしいです。

次のコージー大内くんも変わらない人です。

あまりお会いしたことはないのですが、いつも気になっている人です。コージーくんは2008年に「角打(かくち)ブルース」でレコードデビューしたのですが、ライトニン・ホプキンスのギター・スタイルにコージーくんの生まれ故郷大分県の日田市の日田弁という方言で歌うというのを始めました。これが「弁ブルース」(方言のなになに弁の弁)とよばれて評判になり、全国各地から方言でブルーズを歌う人が出て来ました。元祖弁ブルースのコージーくんがいいなと思うのは、その日田弁というのがブルーズのリズム合うんですね。特にコージーくんが習得したライトニンのリズムとムードにぴったりしてい。

2012年の『ばってんブルース」から

3.おんぼろトレイン/コージー大内

「おんぼろトレイン、乗せちっちくりー」と方言で歌われてますが、乗せてってくれということですがリズムに合うんですよね。面白いです。2016年にも「一番街」というアルバムを出してツアーもかなりやっているようです。

 

次のムーニーさんは1951年生まれだから僕より一つ下で、1972年に「アンクル・ムーニー」というジャグバンドをはじめたのが最初のようです。そのあと「チェイン・ザ・スリー・ギャング」「SHY&MOONEY」「Mad Words」「Mooney&his Lucky Rythm」などのバンドをやって来ていわゆるジャグ・ミュージックの日本の元祖です。全国のJugbandを集め行うイベント 「横浜Jugband Festival」プロデュースもされてます。僕もジャグではないのに出させてもらったことがあります。あと若いバンドのプロデュースやCMソングを提供されたりいろんなところで活躍されています。

今日聞くのは去年、ハーモニカのKOTEZくんとデュオでリリースされたアルバム「Mooney Meets Kotez」からオールド・ジャズ・テイストの曲で「冬の道」

4.冬の道/ムーニー&コテツ

今日聞いた人たちは英語のカバーとオリジナルと両方やってます。音楽はどんな表現をしても自由なのですが、僕らがやっているブルーズとかR&Bとかジャグ、ジャイヴという音楽は長い歴史の中で作られたもので、それを土台に何か新しいものを作ろうとする前にまずその土台になる音楽をマスターしなければ、土台の弱い所に家を建てるようなものです。

ムーニーさんも吾妻くんもみんな最初はしっかりまずカバーをやってます。それは聞くとわかります。音楽に厚みがあります。今はオリジナル、オリジナルと言いますが、それは果たして本当にオリジナリティのあるオリジナルなのだろうかと自問するべきだと思います。逆にカバーをしていてもそこにオリジナリティを出すことはできます。昨今、すぐ日本語のブルーズということを言いますが、そもそも日本語のブルーズってあるのでしょうか。じゃそこには演歌の新宿ブルースや伊勢佐木町ブルースは入るのか、それはなぜ別なのか同じ音楽なのに・・・。だから僕はまとめて日本語の歌という括りでいちいち日本語のブルーズとか日本語のフォークとか日本語のロックとか言わなくてもいいのではないかと思います。つまり大きな意味での日本のポップスだと思っています。日本語のブルーズというとブルーズを好きな人しか聞かない、買わない可能性があります。より多くの人に聞いてもらうには日本語の・・・という分類ではなく、大きな分類に入れた方が聞いてもらえるのではないでしょうか。この話はまたしたいと思っています。