2024.05.24 ON AIR

偉大なギタリスト、ディッキー・ベッツの死を悼む-1

ON AIR LIST
1.Don’t Want You No More/The Allman Brothers Band
2.It’s Not My Cross To Bear/The Allman Brothers Band
3.Hoochie Coochie Man/The Allman Brothers Band
4.In Memory Of Elizabeth Reed/The Allman Brothers Band

オールマン・ブラザーズ・バンドのギタリストであり、ディッキー・ベッツ&ザ・グレート・サザンのバンマスでもあったディッキー・ベッツが4/18に80才で亡くなりました。オールマン・ブラザーズ・バンドは60年代後半から70年代はじめに活躍したブルーズ・ロックあるいはサザン・ロックの代表的なバンドで日本にも多くのファンがいました。ディッキーの死によってオールマン・ブラザーズのオリジナル・メンバーで生きているのはドラムのジェイモだけになってしまい、時代が行き過ぎるのを感じているところです。
ディッキー・ベッツは69年に一緒にバンドをやっていたベースのベリー・オークリーとともにデュアン・オールマンの誘いでオールマン・ブラザーズ・バンドに参加。71年にデュアンがオートバイ事故で亡くなった後はバンマスとしてバンドを牽引しました。ギターの名手というだけでなく、「In Memory Of Elizabeth Reed」「ランブリンマン」や「ジェシカ」といった後世に残る名曲を残した優れたソングライターでもあります。もちろん若いころからブルーズやカントリーなどルーツ・ミュージックへの強い愛着もありました。つまりデュアンとディッキーの二人の豊かな才能を持ったふたりのギタリストによってバンドの基本が作られていたと考えていいと思います。
実は私はオールマン・ブラザーズがなければ現在のように黒人ブルーズ、黒人音楽に入りこまなかったと思います。オールマン・ブラザーズは私にとって黒人音楽へ足を踏み込むきっかけを作ってくれたバンドでした。1971年のデビュー・アルバムからずっと今日まで聴き続けてきました。ギターの名手デュアン・オールマンとディッキー・ベッツのふたりのツイン・リード・ギターの素晴らしい絡みが聴ける曲を聴いてみましよう。
”Don’t Want You No More”から二曲目のスローブルーズ”It’s Not My Cross To Bear”へ連奏される展開を聞いてください。

1.Don’t Want You No More/The Allman Brothers Band

2.It’s Not My Cross To Bear/The Allman Brothers Band

これが収録されているのがオールマン・ブラザーズ・バンドのファースト・アルバム”The Allman Brothers Band”で1969年のリリースでした。私がこのアルバムを聞いたのは1971年の終わり頃でした。今聞いたオープニングの二曲のブルーズをルーツにしながらも何かすごく新しいものを聞いた感動がなかなか冷めませんでした。2枚目のアルバム”Idlewild South”にはマディ・ウォーターズの有名ブルーズ”Hoochie Coochie Man”が収録されているのですが、そのアレンジに驚きました。僕はプログレッシヴ・ブルーズバンドと呼んでいますが、こういうアレンジの発想は当時誰も持ってなかったです。だから僕はクラプトンがやっていたクリームのブルーズよりもオールマンの方が断然好きでした。。
まさにこのアレンジは同じメンバーでリハーサルを重ねてアイデアを出し合ったバンドでしか生まれないもので、クリームがどこかセッションバンド的だったのに比べるとオールマンは完全にバンドです。だからバンドだからこそ作れたクオリティの高さを感じます。

3.Hoochie Coochie Man/The Allman Brothers Band

この頃、オールマンのこういうブルースロック的なアブローチも好きでしたが、オリジナルのマディのリアルなブルーズにも惹かれていました。
次は亡くなったディッキー・ベッツが作った曲で二つのツインリードが実に美しく絡み合うインストルメンタルの名作です。やはりこれはデュアンとディッキーというふたりの優れたギタリストがいなければできなかった曲です。次々に展開していく曲の中でバンドがグルーヴし、それぞれのソロが何一つ無駄なく続くオールマンを代表する曲です。
タイトルのIn Memory Of Elizabeth Reed(エリザベス・リードの追憶)は彼女とデートしていた時にディッキーが近くにあった墓地の墓碑銘から取ったそうです。こういうブルーズやラテンそしてジャズのテイストをロックでクロスオーバーさせたバンドとしてオールマンと当時先を行ってました。

4.In Memory Of Elizabeth Reed/The Allman Brothers Band

こういうロックの新しい発想を持ち、それを音として作り上げていったオールマンの音楽的な実力に当時はすごく惹かれました。
僕が最初に塩次伸二とウエストロード・ブルーズバンドを作った時に最初に目標としたのはこのオールマン・ブラザーズ・バンドでした。そしてここから黒人ブルーズに突入しました。今日だけでは収まらないのでディッキー・ベッツの追悼を兼ねて来週もオールマン・ブラザーズ・バンドです。