2018.03.16 ON AIR

サニーボーイ、シカゴに行く Sonny Boy Williamson vol.2

Down And Out Blues(MCAビクター MVCM-22006)
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ON AIR LIST
1.Don’t Start Me To Talkin’/Sonny Boy Williamson
2.West Memphis Blues/Sonny Boy Williamson
3.I Don’t Know/Sonny Boy Williamson
4.Cross My Heart/Sonny Boy Williamson
5.Keep It To Yourself/Sonny Boy Williamson

前回、40年代から50年代初期まで南部にいた頃のサニーボーイの話をしましたが、1955年にチェスレコードと契約して彼はシカゴに行きます。
待ち構えていたのは、ギターにマディ・ウォーターズ、ジミー・ロジャース、ピアノにオーティス・スパン、ベース ウィリー・ディクソン、ドラムにフレッド・ビロウ つまり当時シカゴ・ブルーズの超一流のマディ・ウォーターズのバンド。実際サニーボーイが南部ですごく人気があることはシカゴの連中も知ってますから「サニーボーイってどんなやつやねん」という感じでしょうかね。
そして、そのメンバーで録音した最初の曲がヒットする。この歌は「オレに喋らせるなよ。全部言うてしまうからな。仲間の嫁さんが他の男と浮気して、旦那に嘘ついてるるんも言うてしまうから、オレに喋らせんなよ」という怖い歌です。1955年チェス・レコード・リリース
1.Don’t Start Me To Talkin’/Sonny Boy Williamson
流石にバンドがいいですね。でも、先週聴いてもらった南部のバンドのサザン・ビートとはビートの感じもサウンドの感じも違います。でも、シカゴのビートにさらっと乗ってヒットにしてしまうサニーボーイはすごいです。まあ、サニーボーイという人は飄々とした人でニヤッと笑ってゆっくりハーモニカ吹き始めるような人で、あまりビートとかサウンドが変っても気にしない人だったかも知れない。それより彼に必要なのは録音する時のウィスキーと終わってからもらうギャラやったと思います。
この曲が入ってるアルバムは55年から58年までのシングルを集めた”Down & Out Blues”というアルバムなんですが、ちょっと先週聴いてない人のためにビートとかサウンドが南部のミュージシャンとシカゴのミュージシャンと違うか、南部の録音のサニーボーイを聴いてください。
2.West Memphis Blues/Sonny Boy Williamson
聴いてもらったわかるようにやっぱりサザンの方は武骨でラフなんですが、すごくスイングするというか、強烈にダンサブルな感じがします。

サニーボーイは大酒飲みで、女にだらしなく、ホラ吹きでと悪い評判がたくさんある人なんですが、そういう人やから出来たブルーズといのもあると思うんですよ。
だからと言って評判の悪い人になられければブルーズはできないのかという問題でもないんですよ。ただ、そういう修羅場みたいのをたくさんくぐってきた人というのは、独特な人間の見方をするなと思います。一曲目でもなんか人間の深いところを突いてくるような感じですね。
そもそも彼は実際の生年月日もわからない人で、1899年というのもあれば、1897年、1909年と10年くらい違う生年月日もある人です。名前も若い頃は”Little Boy Blue”って名乗ってたんですが、本名もライス・ミラーって言うてみたり、アレックス・ミラー、アレック・ミラー、アレックス・フォード、ウィリー・ミラーとまあ本人がどんどん違うことを言うんですよ。それでラジオの番組のDJをする時にそのプロデューサーかだれかにサニーボーイ・ウィリアムスンで行こうやと言われて、それでサニーボーイでとなってしまった。まあええ加減ですよね。そのプロデューサーがサニーボーイでというたのはその頃、すでにシカゴにサニーボーイと名乗っている同じハーモニカのブルーズマンがいてそっちが売れてたんで、その名前を使ってしまったんです。それでブルーズの中にふたりのサニーボーイが出来てしまったんですよ。それでブルーズ界ではその最初のシカゴにいた方をサニーボーイ1、今日聴いている方をサニーボーイ2と名付けることになったんです。
サニーボーイ2はライヴをすっぽかしたり、また悪気もなく現れて演奏したり、ギャラを全部もってどっかへ行ってしまったり・・まあ、大変な奇人ですが。
元々30年代の中頃はミシシッピをロバート・ジョンソンやエルモア・ジェイムズなんかと放浪していた人ですから、定着するという気持ちもなかったのかも知れません。

僕はサニーボーイのことをしゃべるように歌い、喋るようにハーモニカを吹くと言ったことがあるんですが、次の曲なんかまさにそんな感じです。
「夜の11時45分に電話がなって、受話器を取ると誰かがサニーボーイ?ーって言う。オレの名前を知ってる誰やオマエは・・。わからない。わからない。でも、オレは彼女に連絡を取ろうとしている何でアイツはオレを裏切るのか・・」彼女からの電話やなくて知らない男から電話がかかってきたというこれまた不気味な曲です。
3.I Don’t Know/Sonny Boy Williamson

シカゴに来てから二年目1956年、南部で一緒にやっていたロバート・ジュニア・ロックウッドがレコーディングに参加してきます。これがサニーボーイのブルーズをより一段と深みのあるものにしていきます。次の曲なんかロックウッドのギターはもう芸術的な域に達しているくらい素晴らしいものです。
最初のサニーボーイのハーモニカからギターが入ってバンド全体が入ってくるその緊張感、サニーボーイの歌とハーモニカを後ろで彩るロックウッドのギターの美しさ。これにはピアノが入ってなくてギターもうひとりルーサー・タッカーがこれまたしっかりバッキングしていて、バンドでブルーズをやる人は聴いた方がいい一曲です。
ブルーズの名曲です
4.Cross My Heart/Sonny Boy Williamson
本当に素晴らしいブルーズです。

もう一曲聴こうと思うのですが、これもひどい歌です。Keep it to yourselfというタイトルなんですが、Keep it to yourselfってまあ「内緒にしとけよ」ということです。
「俺たちのことを誰にも言うなよ。オマエのお父さんにも、お母さんにも、兄弟にも言うなよ。オマエには旦那がいるし、オレには女房がいる。もし、しゃべったら俺らふたりの人生はおしまいや。だから内緒にしとけよ。誰にもしゃべるなよ、俺らふたりのことは」
うーん、最近よくあるこわいダブル不倫の歌ですね。
5.Keep It To Yourself/Sonny Boy Williamson
こういうブルーズを聴きながらみんな酒飲んで踊る・・・僕的には最高なんですけどね。
こういう経験が僕にあったかどうかそれはKeep It To Yourself

この魅力的なブルーズマン、サニーボーイ・ウィリアムスンのことをもう一回次回話して、彼のブルーズを聴きたいと思います。