2025.05.30 0N AIR

ホトケのレコード中古盤放浪記 
その8

LPのタイトルとコンピレーション曲の興味だけで買ったら充実したいいアルバムだった

The Real R&B (Tasty Records Mono)

ON AIR LIST
1.Little Queen Bee/Slim Harpo
2.Goin’ Crazy Over T.V. /Jimmy Anderson
3.Baby Let’s Play House/Arthur Gunter
4.Still Rainin’ In My Heart/Slim Harpo
5.I Had A Dream Last Night/Lonesome Sundown

中古レコード店で「本物のR&B」(The Real R&B )と題された派手なオレンジ色のジャケットに手が止まりました。参加ミュージシャンを見るとスリム・ハーボ、サイラス・ホーガン、ライトニン・スリム、ロンサム・サンダウンなどの名前でルイジアナのエクセロ・レコードの音源のコンピレーション・アルバムとわかる。実際ジャケット裏の英文ライナーには「エクセロからのセレクト」と書いてあ理、リリースしているのは”Tasty Records”(テイスティ・レコード)はイギリスのサウス・マンチェスターのレコード会社。
リリースは1964年だけどライナーを読むと前に”Authentic Rhythm And Blues”というやはりエクセロ・レコードの音源を使ったコンピレーションを出していてそれが評判が良かったのでまたリリースしましたとある。ライナーの最後には「多くの人がリズム&ブルーズって何?って訊くがこのレコードがその答えを出していると思う」と自信満々にかいてあります。
まずA面の一曲目。エクセロ・レコードの一番の売れっ子スリム・ハーポの曲から。
曲名”Little Queen Bee”「私の可愛い女王蜂に新しい王様ができた。新しい王様はきっと彼女を幸せにしてくれるだろう」と始まる曲は昔付き合っていた彼女にまだ未練があって自分のところに戻って欲しいと思っていたけれど彼女には新しい男がいてそれは無理だったという失恋ブルーズです。

1.Little Queen Bee/Slim Harpo

スリム・ハーポにはローリング・ストーンズもカバーし、今やスタンダードになっている”King Bee”という大ヒットがありそれのアンサーソングを自分で作った感があります。
以前エクセロ・レコードの特集をやったときにシカゴ・ブルーズの大ヒット・メーカーだったジミー・リードが南部ルイジアナのブルーズマンたちにも及ぼしていた大きな影響の話をしましたが、今から聞いてもらうこのアルバムに入っているジミー・アンダーソンはジミー・リードと間違えるくらいめちゃ似てます。笑うくらい似てます。ちょっとブルーズ知っている人に「ジミー・リードの未発表曲が出た」と言うて聞かせたらまず信じると思います。

2.Goin’ Crazy Over T.V. /Jimmy Anderson

歌もハーモニカもギターもサウンドもリズムも曲も全てジミー・リード調です。ルイジアナのレイドバックしたフィーリングにシカゴのダウンホーム・ブルーズマン、ジミー・リードのレイドバック感が合うんでしょうね。なんか無理して真似してる感じがないところがいいです。絶対本人は「オレ、ジミー・リード命やねん」と言うてたと思います。
今日紹介しているこのThe Real R&Bというアルバムには歴史的な一曲が入ってます。それがアーサー・ガンターの”Baby Let’s Play House”という曲で1954年にエクセロ・レコードからリリースされました。これがなんとR&Bチャートの12位まで上がる健闘ぶりを見せました。するとこの曲を翌55年にかのエルヴィス・プレスリーがカバー・リリースしました。こっちはR&Bチャートではなく白人のカントリー・チャートで5位まで上がりました。黒人の曲を白人がカバーしてヒットさせるというのはたくさんありましたが、アーサー・ガンターがR&Bチャート、プレスリーがカントリー・チャートというのも50年代半ば当時の人種で分かれるチャートの感じがよく分かります。多分白人のリスナーはこれはカントリー・ウエスタンの曲やと思って聴いていたと思います。いやいやカントリー&ウエスタンやなくてね、素晴らしくダンサブルなロッキン・ブルーズですよ。

3.Baby Let’s Play House/Arthur Gunter

次は一曲目に聞いたスリム・ハーポをもう一曲聞こうと思うのですが、タイトルが”Still Rainin’ In My Heart”です。このタイトル聞いただけでスリム・ハーポを知っている人ならニヤッと笑うと思います。じつはそのStillのない”Rainin’ In My Heart”という曲がハーポの代表曲で同名のアルバムまで作られたくらいでなんです。だから「その続編みたいな感じで作ったらまた売れるんとちゃうか」と盛り上がって作ったんやと思います・・知らんけど。メロディは全く同じです。
「俺の心の中にはまだ雨が降ってる。そして俺らはまだ離れ離れや。今になって俺が間違ってたとわかるけど、でもベイビーお前が必要なんや、帰ってきてくれよ」「俺は賢くはなかったとわかってる。そやから俺の心にはまだ雨が降ってんねん」とヨリを戻したいという未練タラタラの歌ですが、まああかん、彼女は戻らんでしょうね。

4.Still Rainin’ In My Heart/Slim Harpo

最初の”Rainin’ In My Heart”が61年にヒットして半年後にはこの続編が録音されたということはやはり柳の下にドジョウが二匹を狙ったと思いますが、ちっょとそれはあんまりやなという意見があったのかリリースされたのは3年後の64年になってます。あまりヒットしませんでした。やっばりな。
このアルバムを録音したエクセロ・レコードのスタジオ・ミュージシャンがいつも素晴らしいと思うのですが、メインのシンガーにダウンホームなレイドバックした歌手が多いので全体がレイドバックしてるように思うのですが、ビートはすごくタイトにグルーヴしていて決してゆるくはないんですよ。次の曲のリズム・ギターのビートの裏打ちなんか素晴らしいです。

5.I Had A Dream Last Night/Lonesome Sundown

このロンサム・サンダウンという芸名もなんかルイジアナらしいといえばそうですが、直訳すると「さみしい日没」ですよ。芸名につけますかね。この芸名は南部の有名プロデューサーにつけられたんですが、「今日から君、ロンサム・サンダウンいう名前でいくから」と言われた時どんな気持ちやったんですかね。サンライズやなくてサンダウンやからね・・・・
何かとツッコミどころの多いアルバムですが、このエクセロのブルーズはどこかポップなテイストがあって重くなくてカラッとしてるところが特徴です。
「The Real R&B」というアルバム・タイトルとコンピレーション曲目の興味だけで買ったら充実したいいアルバムだった今日の「ホトケのレコード中古盤放浪記 その8」でした。

 

 

2025.05.23 ON AIR

ホトケのレコード中古盤放浪記 
その7

全く知らないミュージシャンの中古LPを買う時の心得

買ってよかった素晴らしいサンダース・キング

Saunders King/the first king of the blues

ON AIR LIST
1.Summer Time Boogie PT.1/Saunders King
2.Summer Time Boogie PT.2/Saunders King
3.S.K.Blues/Saunders King
4.Empty Bedroom Blues/Saunders King
5.Goin’ Mad/Saunders King

レコード店で中古盤を掘っていると全然知らんアルバムなんやけどでもなんかジャケット写真とかアルバム・タイトルとかミュージシャンの名前とか顔が気になるアルバムが出てくることがあります。そういう時は何かヒントがないか探すわけですが、輸入盤の場合はまずアルバムに英文ライナーノーツが書いてあれば、英文ライナーノーツをできる限り頑張って読みます。参加ミュージシャンやプロデューサー、作詞作曲家のクレジットとかも大切な情報源です。輸入盤の場合、日本盤のように帯やジャケット中のライナーや歌詞カードはまず入ってないので裏ジャケットに書かれている英文の情報があればそれを読むしかないわけです。まあネットで検索することもできますがレコード店にいるときはそれはやりたくないんですよね、もちろん裏ジャケに何にも書いてないアルバムもたくさんあります。そういう時はもうジャケット写真頼りで清水の舞台かに飛び降りるしかありません。
今日紹介するアルバムは清水の舞台かに飛び降りるほどの値段ではなかったですが、アルバムタイトルの”the first king of the blues”(ブルーズの最初のキング)というのがまず気になりました。ミュージシャン名はサンダース・キング(Saunders King)で全く知らない名前です。ライナーの最初にはB.B.やアルバート、フレディなどキングと付くブルーズマンはいるけど最初にキングとついたのはこのサンダース・キングなんやと力強く書かれています。
いろいろ話す前にまずこのアルバムのA面の一曲目を聴いてみましょうか。

1.Summer Time Boogie PT.1/Saunders King

聴いてすぐわかるのはジャズ・ジャンプ・ブルーズ系統ですね。名前も知らない初めて買うミュージシャンのアルバムですから「どんなんやろ」と不安もあるわけですが、家でターンテーブルに載せて一曲目を聴いて「これはしっかりしたミュージシャンのしっかりしたアルバムや」と一安心な感じです。
ライナーを読むと42年に自分の6人編成のコンボバンドを結成してレコーディングも初めています。キャブ・キャロウェィが広めたジャンプ・ブルーズがオーケストラからコンボになってルイ・ジョーダンが現れてジャンプが全盛に向かう頃ですね。
ここでこのアルバムを買った理由の一つはレコード・レーベルが”ace”だったことです。aceはイギリスのレコード会社でなかなか信用できるレーベルです。いいコンピレーション・アルバムを作ってたくさん再発しています。
さて、今のSummer Time Boogie PT.1の次にPT.2が収録されています。時々パート1.パート2というのがありますが、例えばジェイムズ・ブラウンの”Sex Machine”のシングル盤は演奏時間が長くてA面に収まり切れなくてB面に続きの演奏が入っています。レイ・チャールズの”What’d I Say”のパート1,2もそのタイプです。ではSummer Time Boogie PT.2を聴いてみますか。

2.Summer Time Boogie PT.2/Saunders King

ライナーを読み進むうちにこのサンダース・キングには1942年に「S.K. Blues」という大きなヒットがあったと書いてあります。あとでネットで検索したところこの「S.K. Blues」はエレキ・ギターをフィーチャーした最も初期の録音と書いてあります。つまりヒットしただけでなく歴史的な意味合いもある曲で「おお、これなかなかのアルバムやん」と嬉しくなる訳です。歌詞が「可愛いベイビー、おまえの柔らかい素敵な体を俺の膝の上に乗せなよ。お前の耳元で愛を囁きたいそして俺の悩みを聞いてもらいたいんだ」と最初歌ってるんですが、途中から「俺が買ってやったウィッグ(カツラ)を返してくれ。そして頭はハゲてしまえ。お前がずっと俺にちゃんとしないから頭の毛が全部なくなってしまうぞ」というひどい歌詞になります。

3.S.K.Blues/Saunders King

曲名のS.K.というのは名前のSaunders Kingの頭文字ですね。ギターソロも良かったですね。今の曲は後にビッグ・ジョー・ターナーやジミー・ウィザースプーンにカバーされたということですからやはりかなりヒットしたのでしょう。しかし今の曲1942年のヒットですからウィッグを女性にプレゼントする、買ってあげるようなことがそんな昔からあったんですね。すごいです、アメリカのウィッグ文化! 日本も最近はウィッグが普通になってきましたが、昔は「あの人カツラなんやて・・」とこっそり言う感じでしたよね。僕は女性でも男性でも綺麗に見えるならウィッグなんかどんどんやればいいと思います。ぼくはまだ地毛ですけどね。
そこでさらにライナーを読み込むと1909年にルイジアナで生まれウエストコーストに引っ越してオークランドでお父さんが教会をやっていたとのこと。つまりお父さんは牧師ですね。それで幼い頃から歌っていてピアノやバンジョーも練習したらしいです。若い頃は「サザン・ハーモニー・フォア」というゴスペル・グルーブにも参加して歌ってます。その後1938年にギターを始めてブルーズに入っていくわけですからギターを始めたのは29才ということになります。かなり遅いですね。
このアルバムに収録されている曲では他に”Empty Bedroom Blues”というのがR&Bチャート9位まで上がったヒットになっています。

4.Empty Bedroom Blues/Saunders King

Empty Bedroom Bluesというベッシー・スミスの同名曲がありますが、それとは関係ない曲です。
ネットにサンダース・キングのインタビューがアップされてまして、最初に好きになったギタリストはジャズで最初にエレキギターを使ったと言われているエディ・ダーラムとのことで、今度はエディ・ダーラムを探してみようと思います。
彼はやはりジャズ・ミュージシャンとの交流が多く、チャーリー・クリスチャン、ビリー・ホリディ、サラ・ヴォーンとも仕事をしたことがあるそうで逆にブルーズ・ミュージシャンとはあまり接触はなかったようです。
実はB.B.キングがサンダース・キングのファンだったこともわかりました。つまり、いろいろ調べてみたらサンダース・キングはかなり有名なミュージシャンだとわかりました。ぼくが知らなかっただけで・・。いや、まだまだ知らんこと多いです。失礼しました。

5.Goin’ Mad/Saunders King

予備知識のあまりない知らないミュージシャンのアルバムと初めて出会った時は家で初めてターン・テーブルに載せて聴くまでドキドキします。今回のサンダース・キングは「当たり!」でした。外れる時もあります。それも楽しいと言えば楽しい。でもやっぱり外れないようにレコードや音楽の知識をどんどん頭に入れることです。

 

 

2025.05.16 ON AIR

5月にニューアルバム”From Here”をリリースしたいま聴いてもらいたい女性シンガー、Yoshie.N

From Here /Yoshie.N(MSR-004)

ON AIR LIST
1.Fields Of Gold/Yoshie.N
2.People Get Ready/Yoshie.N
3.Nobody Knows You When You’re Down and Out/Yoshie.N
4.Do Right Woman,Do right man/Yoshie.N

私は女性シンガーに対して結構好き嫌いがはっきりしている。好きでないシンガーは取り上げていないのですが、先ごろ来日したメイヴィス・ステイプルズのように好きだと何度もON AIRしてしまいます。歌が上手いとか音域がどうのこうのという前に私にとってはその歌声の声質が大切なのです。どんなに上手い、素晴らしいと言われている歌手でもその声質が自分の好みではないと心に入ってきません。それはギターはじめ楽器の音質も同じで音質は私にとって決定的な要素です。ライヴで演奏する場合、プレイヤーは自分の好きな音質で演奏するわけですがその音質がずっと私にとっては好きではないということもあります。長くなりましたが、ギターやエレクトリックな楽器はアンプなどでその音質を変えることができますが、歌声の質を変えることはできません。それで声質は決定的な要素になってしまいます。
今回紹介する女性歌手Yoshie.Nさん(いつもヨシエちゃんと呼んでいるのでヨシエちゃんと言いますね)の声質はその歌い方とも相まってとてもなめらかでナチュラルで気持ちのいい歌声です。
では、Yoshie.Nさんの先月リリースされた新しいアルバム”From Here”からまず一曲

1.Fields Of Gold/Yoshie.N

この曲は1993年にスティングがリリースした彼の5枚目のアルバム”テン・サマナーズ・テイルズ (Ten Summoner’s Tales)”に収録されています。
原曲の美しさを失わず無理のないヨシエちゃんの自然な歌唱で聞いていて本当に気持ちのいい歌声です。
アルバムの一曲目に収録されていてとても印象に残ります。
このアルバムはいつもライヴを一緒にやっているピアノの堺敦生くんとヨシエちゃんの二人で録音されたデュオ・アルバムで、アレンジも二人で行われたそうです。
普段からライヴを一緒にやっているので息もピッタリで4時間でアルバムの11曲を収録したそうです。
プロデューサーは上田正樹先輩
このアルバムのライナーにもヨシエちゃんが「師匠上田正樹さん」と書いているようにヨシエちゃんの才能を見抜いたのはキー坊(上田正樹)。キー坊(上田正樹)のライヴでコーラスも担当しています。僕が最初に彼女の歌声を聞いたのもそのコーラスの時だったのですが、時々ソロのパートをキー坊に回される時に彼女の歌声の良さに気づきました。それから何度かステージを一緒させてもらううちに彼女のソロが聴きたくてソロ・ライヴも聞きに行ったりしています。
今のFields Of Goldはオリジナルのスティング以外に聞いたことないのですが、他にカバーしているシンガーっているんでしょうか。
ちなみにスティングとヨシエちゃんは誕生日が同じだそうです。
次は少しエモーショナルな彼女の歌です。ソウル・ミュージックの偉人、カーティス・メイフィールドがコーラスグルーブ「インプレッションズ」時代の1965年に発表した名曲でこれはアレサ・フランクリン、ディオンヌ・わーウイック、ジェフ・ベックとロッド・スチュワートなどカバーがたくさんあります。

2.People Get Ready/Yoshie.N

黒人公民権運動が盛り上がった60年代半ばにカーティス・メイフィールドが聖書の内容を引用しながらいつか人種差別や貧困のない日がくることを祈って書いた曲です。
ヨシエちゃんの気持ちが盛り上がってエモーショナルな歌に向かっていくのは、当然その歌詞も理解しているからだと思います。このアルバム”From Here”にはブルーズの曲も何曲か収録されているので聞いてみます。
クラシック・ブルーズと呼ばれる20,30年代に活躍した女性ブルーズ・シンガー、ベッシー・スミスが広くヒットさせた曲ですが、作ったのは1923年ジミー・コックスというピアニストです。
金を持っているときには気前よくみんなに酒を奢ったりして豪勢にやっていたが自分が落ちぶれたら誰も見向きもしてくれないといういつの世の中にもある話です。

3.Nobody Knows You When You’re Down and Out/Yoshie.N

あとヨシエちゃんの歌のいいところはギミックなところがないことです。変にフェイクしたりしないところもいいです。
次の曲はアレサ・フランクリンが1967年にリリースした有名な”Do Right Woman, Do Right Man”です。これはエタ・ジェイムズ、ウィリー・ネルソン、ディオンヌ・ワーウィックなど幅広くカバーされ、曲を作ったダン・ペン自身のヴァージョンもあります。
歌詞の内容は「正しいことをする女性を求めるのなら、あなたも正しいことをする男にならなくてはいけない」「女性は男の遊び道具ではないし一人の生き生きとした血の流れる人間なんだから」と現在の性暴力や性差別へりプロテストにも繋がる不滅の名曲です。

4.Do Right Woman,Do right man/Yoshie.N

なんかね、ジワジワくるんですよ。すごいインパクトで最初からドーンとくるシンガーもいるんですがヨシエちゃんの歌はジワジワなんです。だから是非ライヴに行っていただきたいのですが、ライヴで最後まで聞くとそのジワジワが広がって最後にジーンとします。
今回ヨシエちゃんにとっては4枚目のアルバムになるそうですが、今回一曲をのぞいてカバー曲にしたのは今まで自分を育ててくれた曲たちへの感謝と敬意の気持ち、そしてそれらを継承していく思いを込めたそうです。
このアルバムにはブルーズが”Stormy Monday”,”Blues Before Sunrise”とさっきの”Nobody Knows You When You’re Down and Out”と三曲入っているのですが、一曲だけ入っているヨシエちゃん自身のオリジナル”Who Is The Blues?”もブルーズっぽい曲です。
こういうルーツ・ミュージックをしっかり歌いながらもオリジナルを歌うという人は少なくなってきています。彼女の歌を聴いていると底辺がしっかりしているなと感じます。アルバム・タイトル”From Here”の通りここから彼女がどこへいくのかすごく楽しみです。
一度是非ライヴで彼女の魅力的な歌声を体験してください。
そう言えば6月21日に東京高円寺JIROKICHIの50周年記念ライヴでヨシエちゃんとキー坊(上田正樹先輩)と僕そしてピアノの堺くんのライヴがあります。ぜひお越しください。

Yoshie.N公式HP / https://yoshie-n.com/index.html

2025.05.09 ON AIR

ホトケのレコード中古盤放浪記 
その六

自分のアルバムを中古盤で救出する気持ち

West Road Blues Band/Junction

ON AIR LIST
1.Shot Gun/ West Road Blues Band
2.I Just Wanna Make Love To You/ West Road Blues Band
3.I’d Rather Drink Muddy Water/ West Road Blues Band
4.I’d Rather Go Blind/ West Road Blues Band

レコード店の中古盤ブルーズ・コーナーでアルバムを見ていると自分のアルバムが出て来ることがある。その時の気持ちはなかなか複雑で、恥ずかしいという思いもあるし「ああ、これ買った人このアルバム気に入らなかったのかなぁ」とか「金に困って売ったのかなぁ」「断捨離したのかな」といろいろ想いが巡る。とにかくその目の前にある中古盤の自分のアルバムはどういう経緯で売られたにしろ私自身にとっては愛おしいものなので私は「救出」と言ってますが大抵買います。
今日は2,3,ヶ月前に救出したウエストロード・ブルーズバンド再結成の時に録音したアルバム「ジャンクション」です。
ビクターのインビテーション・レーペルから1984年のリリースです。メンバーはウエストロードのオリジナル・メンバーでギターに山岸潤史、塩次伸二、ベースに小堀正、ドラムに松本照夫そしてヴォーカルの私、永井ホトケ隆です。
自分の昔のアルバムを聴くのは本当に好きやないんですが、今回はまあ中古レコードの話の流れということで私は約40年ぶりに聴きます。
まずレコードA面の1曲目
ジュニア・ウォーカー&ザ・オールスターズの1965年のヒット”Shot Gun”のカバーです。実は事務所の関係でクレジットされてないのですが途中のサックスソロはサックス・プレイヤーでありソングライターであり、かってグループサウンズ時代にブルー・コメッツのメンバーでもあった井上大輔さんです。もうお亡くなりになっているのですが、素晴らしくブロウするサックスソロを残してくださいました。井上さんは「ブルー・シャトー」「ガンダムの主題歌」ラッツ&スターの「ランナウェイ」、美空ひばりさん、中森明菜さんはじめたくさんの歌手に曲を提供した素晴らしい作曲家でもありました。

1.Shot Gun/ West Road Blues Band

井上さんはライヴにも来てくれてJIROKICHIでフルステージ吹いてもらったことがありました。とても優しい方で60年代の終わりにヨーロッパで観たジェイムズ・ブラウンの凄まじいステージの話もしていただきました。
それにしても録音のシンドラムの音が80年代初めやなぁという感じ。
実はこの録音のきっかけとなったのは、84年頃に高円寺のライヴハウス「JIROKICHI」のセッションでたまたまウエストロードのオリジナル・メンバーが揃っていました。それで亡くなったJIROKICHIのマスター荒井さんが「せっかくウエストのメンバーいるのに何曲かやったらどう?」って言われて久しぶりにメンバーで音を出したらすごく良くてそれで時々集まってやるようになったわけです。その流れでレコーディングの話も出たのだと思います。でも、もうそれぞれが個人的な活動をしていたのでそんなに頻繁にやれるわけでもなかったし、ツアーも単発でしかできませんでした。
84年の録音ですが、当時はシンセサイザー・ドラムとか録音機材もコンピューター関連のものが多くなっていた時代でその約10年前のウエストロードの最初のレコーディングとは録音方法もすっかり変わっていました。まあ、私はなるべくバンドと一緒に歌いたかったので後からの歌入れはほとんどやらなかった記憶です。ギタリスト二人のギター・ソロの別録音は時間かかったように思います(笑) ではそのギタリスト二人山岸潤史と塩次伸二のソロが交互にでて来る曲です。小堀のグルーヴするベースもよく聞いてください。

2.I Just Wanna Make Love To You/ West Road Blues Band

マディ・ウォーターズの50年代のブルーズを今のようにファンク・テイストにアレンジしたのは山岸潤史。当時ぼくらの間ではジョニー・ギター・ワトソンやジェイムズ・コットンのようなファンク・ブルーズが流行ってましてその流れです。
次の曲はジャズ・ブルーズのスタンダードでルー・ロウルズ、ジョニー・テイラーなどソウル・ブルーズ系のシンガーがよく歌う曲でした。
途中のピアノソロは佐山雅弘、続くギターソロは塩次伸二。二人ともなくなってしまったのですがいいソロ弾いてます。そしてやっぱりドラムの松本照夫のシャッフルは素晴らしいです。

3.I’d Rather Drink Muddy Water/ West Road Blues Band

基本的に私は自分のアルバムがリリースされたら以後聞きません。なので今日40年ぶりに聞いています。自分の歌はもう嫌なところばかり耳に付くので聞きたくないのです。
聴いてもらってわかると思いますがこのアルバムの特色の一つは豪華なホーンセクションです。ちょっとメンバーを紹介すると沢井原児、包國充、土岐英史、片山宏明、梅津和時、小林正弘、兼崎潤一・・とまあ日本を代表するホーン・プレイヤーたちが参加しています。
次の曲はその豪華ホーンセクションが見事に活躍してくれた曲です。
1975年に自分がロスアンゼルスでエタ・ジェイムズのライヴを観た時に彼女のこの歌に感銘していつか録音したいと思っていました。

4.I’d Rather Go Blind/ West Road Blues Band

サックスの包國くんと山岸が素晴らしいアレンジをしてくれました。
「君が他の男と去っていくのを見るくらいなら目が見えなくなった方がいい」というバラードですが、最近歌ってません。
当時は歌っても歌ってもなんかたどり着かない難しい曲でした。
今日は中古レコード屋さんで出会った自分の40年前のアルバム、1984年ウエストロード・ブルーズバンドのジャンクションを聴いてもらいました。いろんな思いが胸の中を駆け巡ります。
中古レコード店で昔の自分のレコードと出会うのは複雑な気持ちです。だれがどういう理由でアルバムを売ったのかわからないですが、自分としてはいろいろ思いもあるのでそのままにできず買ってしまいます。

 

 

2025.05.02 ON AIR

ホトケのレコード中古盤放浪記 
その五

昔買えなかったアルバムを中古盤で見つけ買ったら見本盤(Not For Sale)だった

“エヴェレスト・ブルースの真髄シリーズ第二弾” ビッグ・ビル・ブルーンジー

ON AIR LIST
1.Baby Please Don’t Go/Big Bill Broonzy
2.In The Evening/Big Bill Broonzy
3.See See Rider/Big Bill Broonzy
4.Ridin’ On Down/Big Bill Broonzy

中古盤を探している時に昔リリースされていた日本盤のブルーズ・アルバムに出会うことがある。見覚えのある懐かしいジャケットだけど当時はその手のブルーズには興味がなかったか、欲しかったけれど金がなかったか・・・買わなかったアルバムです。ブルーズという音楽の情報が少なかった70年代初期はそういう日本盤に書かれているライナーノーツの情報がその後アルバムをゲットするのに役に立ちました。中村とうよう、日暮泰文、桜井ユタカ、福田一郎、鈴木啓志といった方々がよく日本盤ブルース・アルバムのライナーを書かれていた。時々間違った情報もあったし、その書き手の個人的な思いや嗜好が自分と合わないと思うこともあった。でも、それも自分なりにブルーズという音楽を受け入れていくための土台作りに役立ったといまになって思う。
それで今日は今年になって中古盤でゲットした1969年日本コロムビアがリリースした”エヴェレスト・ブルースの真髄シリーズ第二弾”ビッグ・ビル・ブルーンジーのアルバムを聴いてみます。50年前の日本のリリースです。ライナー解説は中村とうようさんが書いています。
まず一曲。よく知られているビッグ・ジョー・ウィリアムスの有名曲ですがこのビッグ・ビルもいい感じです。ブルーズ・スタンダードとなっているこの曲「ベイビー、行かないでくれ」

1.Baby Please Don’t Go/Big Bill Broonzy

お聞きの通りギターのリズムが抜群によくアコースティック・ギターの名手でもあるビッグ・ビルは1929年の初録音から30年代40年代と録音の途絶えなかったブルーズマンで、ヨーロッパへも50年代にいち早く演奏に行き人気がありました。このアルバムの何曲かは1956年にヨーロッパへ行った際のミラノでの録音ではないかと中村とうようさんは書かれている。
次の曲はビッグ・ビルが何度か録音しています。当時はこういう弾き語りの録音はスタジオではなく普通の部屋かホテルの一室に録音機材を持ち込んですることも多くて、このアルバムも普通の部屋に簡単な録音機材を持ち込んで行われたのではないかと思います。
次の曲は曲が始まる前にブルーンジーが咳をしている音が入ってます。咳が入ってる録音なんて滅多にないですが・・笑えます。歌は思いっきりブルーズです
「夕暮れになって太陽が沈む頃、愛する人がそばにいないなんて寂しくないか。昨日の夜、オレはひとりでずっと眠っていた。俺が本当に愛する女は他でところで寝ていた。ああ太陽は沈んでいく」

2.In The Evening/Big Bill Broonzy

とにかくリズムがいいのとどこか洗練されているんですよね。
次はビッグ・ビルのギターの上手さが前面に出たインストルメンタルの曲です。ギターが上手いので他のブルーズマンのバックを頼まれることも多くてサニーボーイ・ウィリアムスン1やリル・グリーンなどいろんなブルーズマンのバックで印象に残る録音をたくさん残してます。

3.See See Rider/Big Bill Broonzy

これだけ弾けたら楽しいやろなと思います。このギターの演奏だけで踊れます。下手なバンドやったらいらんよね。
このアルバムは日本コロムビアの「ブルースの真髄シリーズ」という企画のシリーズもので第一弾がライトニン・ホプキンス、二弾がこのビッグ・ビル、そのあとオーティス・スパン、ビッグ・ジョー・ウィリアムス、ジョン・リー・フッカーなど全部で10枚リリースされました。1969年から70年という日本のブルーズ黎明期に必ずしもベストな録音ではないにしろ解説付きで重要なブルーズマンがシリーズでリリースされていたことはブルーズを知り始めた私にはありがたいものでした。次は語りのような歌のような弾き語りならではの曲調ですが、ビッグ・ビルのグルーヴ感が素晴らしい余裕のギター・プレイが聞けます。

4.Ridin’ On Down/Big Bill Broonzy

ビッグ・ビル・ブルーンジーは50年代に後輩のマディ・ウォーターズたちが盛り上がったシカゴ・エレクトリック・ブルーズのブームつまり新しいブルーズの流れから外れてしまったわけですが、ヨーロッパではフォーク・ブルーズとして最初にブルーズの人気を高めた立派な人でした。
実はこのアルバム買って開けてみてわかったのですが、私がゲットしたこのアルバムは見本盤でレコードの真ん中のいわゆるレーベルが真っ白でいわゆる白盤というやつで「見本盤」とハンコが押してあります。輸入盤だと”Not For Sale”書いてあります。誰か見本盤としてレコード会社から受け取った人が売ってしまったのでしょう。本来見本盤とかサンプル盤と言われるものは売買しないものですが、珍しさや中には音がいいと言われるものもあって少し高い値段がつく場合もあります。
こういう見本盤を偶然買ってしまうと誰が売ったのかなぁと前の持ち主のことを思ったりします。

今日のホトケのレコード中古盤放浪記 その五 今日は1969年に日本コロムビアからリリースされたビッグ・ビル・ブルーンジーのアルバムを聴きました。