2024.09.27 ON AIR

スタンダップ・ブルーズ・シンガー大特集 第二回

Johnnie Taylor

「南部の黒人たちの生活に根ざし圧倒的な支持を得たブルーズン・ソウル・シンガー、ジョニー・テイラーvol.1」

ON AIR LIST
1.Part Time Love/Little Johnny Taylor
2.Part Time Love/Johnnie Taylor
3.Who’s Makin’ Love/Johnnie Taylor
4.Jody’s Got Your Girl And Gone (Live)/Johnnie Taylor
5.Hello Sundown/Johnnie Taylor

ブルーズという音楽はヴォーカル・ミュージックです。ギターやハーモニカが前面で脚光を浴びることもありますがインストルメンタル・ミュージックではないのです。例えばB.B.キングのギタープレイは確かに多くのギタリストに大きな影響を与えましたが、B.B.がデビューして喝采を浴びたのはまずその歌が素晴らしかったからです。ブラック・ミュージックの世界では歌の力が最も重要です。しかし日本ではギターを弾かない歌だけのブルーズマンは大御所ボビー・ブランドはじめZ.Z.ヒル、ジュニア・パーカー、ジョニー・テイラーなどあまり人気がありません。そのことに長年腹立たしく思ってきたのですが楽器を弾かない歌だけで素晴らしいブルーズを残したスタンダップ・ブルーズ・シンガーたちの特集の2回目ジョニー・テイラーです。

1938年生まれのジョニー・テイラーは名門ゴスペル・グループ、「ソウル・スターラーズ」のサム・クックの後釜に抜擢された実力のあるシンガー。61年、そのサムが立ち上げた「サー・レーベル」からデビュー。そこから2000年に66才で亡くなるまでコンスタントにアルバムを出し続け、ヒットも多くブラック・ミュージックの最前線で活躍したシンガーでした。

前回のリトル・ジョニー・テイラーから今日はジョニー・テイラー。名前にリトルが付いているかどうかだけで歌っているジャンルが二人ともブルーズ&ソウル、二人ともゴスペル出身、活動した年代もほぼ同じ、二人とも似た芸風・・ということで前回聴いたリトル・ジョニー・テイラーのこの曲をまずちょっとだけ聴いてみよう。

1.Part Time Love/Little Johnny Taylor

この同じ曲をジョニー・テイラーも録音しているので今度はそのジョニー・テイラーのヴァージョンを。

2.Part Time Love/Johnnie Taylor

オリジナルの先に聞いたリトル・ジョニー・テイラーの歌はすごくパワフルでやや攻撃的、後のジョニー・テイラーはテンポも遅くしてなんとなく気だるいと違いはあるのですが似てるところもあります。二人ともゴスペル出身で歌い方がやはりゴスペル・テイストなところですね。。
先週聴いたリトル・ジョニー・テイラーは1943年生まれ。ジョニー・テイラーは38年生まれで5才ほど年上ですがほぼ同時代に活躍した二人。今の曲は1963年にリトル・ジョニー・テイラーがシングルで歌ってR&Bチャート1位(ポップチャート13位)になり、6年後の69年にジョニー・テイラーがリリースしたアルバム”Raw Blues”に収録されていますがシングルで出したかは不明です。しかし、ジョニー・テイラーも1968年に次のこの”Who’s Makin’ Love”がR&Bチャート1位(ポップ・チャートは5位)。お互いに60年代中頃から70年代にかけて活躍しています。ただ、今日聴くジョニー・テイラーの方が名前が知られたのは所属していたレコード会社がオーティス・レディングやルーファス・トーマス、アルバート・キングがいたメンフィスの有名レーベル「スタックス」
そしていまの”Who’s Makin’ Love”が映画「ブルース・ブラザーズ」で使われたり、76年には”Disco Lady”が300万枚というメガヒットになったり、晩年も南部マラコ・レコードからコンスタントに黒人に支持されたアルバムをリリースしました。なのでジョニー・テイラーの方が名前を知られているとうことはあります。では、68年のその大ヒット。
「あんたが外で誰かと浮気しているときにあんたの嫁さんは誰と浮気してるんやろね」という恐ろしいけど笑える歌です。先週から不倫ソング続きですが、今週もこんな感じで・・

3.Who’s Makin’ Love/Johnnie Taylor

次は1971年ジョニー・テイラーの2度目のR&Bチャート1位に輝いた曲です。曲名は「ジョディはお前の女を奪って連れ去ってしまった」ですが、ジョディとは間男のことで女性の浮気相手のことをジョディと呼んでいます。要するに「一生懸命働いて出世して金儲けしょうと頑張ってる間に留守の家に入った間男(ジョディ)があんたの女を取ってしまうよ」と。まあ、前の歌と題材は似てますが、これも大ヒットしたということはよっぽどアメリカの黒人たちは不倫ソングが好きなんですね。
ではライヴ・バージョンで黒人クラブの感じを味わってください。

4.Jody’s Got Your Girl And Gone (Live)/Johnnie Taylor

でも、アメリカの映画とかドラマを見てると男は仕事をバリバリやって金をいっぱい稼がないと行けないし、子供たちとも遊んで女房といる時間もちゃんと作らないといけない・・大変です。いつもスキンシップしたり、もちろんレディ・ファーストだし、「愛してる」ってしょっちゅう言わなあかんし、金稼がなあかんし・・私には無理です。
では最後も不倫ソングです。
タイトルは「やあ、日没」
昼間は会えないが日が沈むと会える女性と密会してるわけです。悪いことやとわかってるけど会わずにはいられないと。だから夕暮れになって日が沈むのをいつも待っているわけです。

5.Hello Sundown/Johnnie Taylor

We Know It’s Wrongと悪いのはわかってると。
ジョニー・テイラーの絶妙な歌の表現です。大人の男のブルーズをそれも不倫の歌をこれだけ品良く表現できるシンガーもいないです。有名なところではビリー・ポールの”Me & Mrs.Jones”という曲も密会のソウルですが、あとは”Dark End Of The Street”とストリートの暗くなった奥で密会するという有名な歌もあります。日本で密会ソングやと島津ゆたかさんという歌手の「ホテル」いう歌謡曲くらいですか。
また、来週!

 

2024.09.20 ON AIR

ブルーズは歌/スタンダップ・ブルーズ・シンガー大特集
第一回目

Little Johnny Taylor

「ゴスペルに裏打ちされた強靭なブルーズ・ヴォーカル、リトル・ジョニー・テイラー」

ON AIR LIST
1.Part Time Love/Little Johnny Taylor
2.Open House At My House(part.1)/Little Johnny Taylor
3.True Lovin’/Little Johnny Taylor
4.Everybody Knows About My Good Things/Little Johnny Taylor
5.Hard Head/Little Johnny Taylor

いつも同じことを言いますがブルーズという音楽はヴォーカル・ミュージックです。ギターやハーモニカが前面で脚光を浴びることもありますがインストルメンタル・ミュージックではないのです。例えばB.B.キングのギタープレイは確かに多くのギタリストに大きな影響を与えましたが、B.B.がデビューして喝采を浴びたのはまずその歌が素晴らしかったからです。ブラック・ミュージックの世界では歌の力が最も重要です。しかし日本ではギターを弾かない歌だけのブルーズマンは大御所ボビー・ブランドはじめZ.Z.ヒル、ジュニア・パーカー、ジョニー・テイラーなどあまり人気がありません。そのことを私は長年腹立たしく思ってきたのですが、とうとう堪忍袋の尾が切れたというか今回から楽器を弾かない歌だけで素晴らしいブルーズを残したスタンダップ・ブルーズ・シンガーの特集をします。今日聞いてもらうのは「モダン・ブルーズの至宝」とも呼ばれるブルーズ・シンガー、リトル・ジョニー・テイラー。
ブルーズをかなり知っている人でもリトル・ジョニー・テイラーのことはあまり話題にしません。でも1963年R&Bチャート1位(ポップチャート13位)になった彼の最大のヒット曲は今やブルーズ&ソウルのスタンダードになっています。
”Part Time Love”
「彼女とうまいこと行かへんで墓場に入っているような寂しい生活をするくらいやったら俺はパートタイム・ラブ(束の間の愛)の相手を探さなあかんやろ」という歌詞。ブルーズには昔から間男(Back Door Man)など不倫、浮気ソングが数多くありますが、これはモダン・ブルーズの不倫ソングの典型。

1.Part Time Love/Little Johnny Taylor

スティーヴィ・ワンダーに”Part Time Lover”という歌がありますがあれも不倫ソングで「昼間は知らない者同士、でも夜は恋人同士。悪いことやとわかってるがやめられへんねん」という歌です。まあ伝統的に不倫ソングはアメリカの音楽特に黒人音楽では伝統と言ってもいいくらいたくさんあります。
日本人とアメリカ人の倫理感とか道徳観とかが違うのでこういう歌は日本ではまず大っぴらには生まれませんが、寂しい夜をずっと過ごしているとパート・タイム・ラブでもいいから欲しいというのもわからないではないです。それでややこしい三角関係のゴタゴタが始まるのはめんどくさいですけどね。でもこういう歌がどこか笑えるんですよ。笑ってしまうんですね、「しゃーないなこいつら」いう感じです。
次の歌も不倫ソングです。「オレの金が家のどこにいくらあるのかガソリン・スタンドのにいちゃんが知ってるってどういうことやねん。そんで隣に住んでるツレはオレの好きなシーツの色や家のカーベットの色を知ってるっておかしないか・・」つまり自分がいない間にドアが開けっぱなしの家(Open House)にいろんな男が出入りしているという歌。まあ嫁さんがいろんな男と浮気してる話ですわ。こういう歌を黒人のクラブで聞いてると客がみんな笑ろてるんですよ。あるある・・みたいな感じで。おおらかというか・・。

2.Open House At My House(part.1)/Little Johnny Taylor

実はブルーズ界にはリトル・ジョニー・テイラーとジョニー・テイラーと二人いて、ややこしいことに二人ともゴスペル出身の二人ともブルーズ&ソウル・シンガーで、スタンダップ・シンガーです。しかも二人とも最初のPart Time Loveを歌っています。オリジナル・シンガーはリトル・ジョニー・テイラーですが、ジョニー・テイラーのヴァージョンもすごく良いです。それの聴き比べ来週やってみましょう。二人ともブルーズもソウルも歌うのでブルーズンソウル・シンガーと呼ばれてるんですが、次の曲はそのソウル・テイストの曲。

3.True Lovin’/Little Johnny Taylor

なんか黒人クラブでみんながダンスしてる風景が浮かぶようなダンス・ナンバーですが、すんませんけど次も不倫ソングです。
「郵便配達員も牛乳屋も水道の配管工の男もみんな、オレの嫁さんのことをよう知ってねん。俺のいいもの(My Good Tings)、そう嫁はんのことをよう知ってるんや」つまり、これも嫁さんが家に出入りするいろんな男と浮気してる話。
今日はこんなブルーズばっかでスンマヘンです。

4.Everybody Knows About My Good Things/Little Johnny Taylor

めちゃ声出てます。歌のテンションも高いです。生で聞いたらすごいと思います。
リトル・ジョニー・テイラーは1943年に生まれて2002年に亡くなってます。享年59才ですから若くして亡くなったんですね。7才くらいで有名ゴスペル・グループのマイティ・クラウズ・オブ・ジョイに入って歌ったこともあるくらいですから子供のころから歌の才能が認められていたんでしょう。そのマイティ・クラウズ・オブ・ジョイにいたシンガーでありソングライターのクレイ・ハモンドが書いたのが最初に聞いたパート・タイム・ラブです。
リトル・ジョニー・テイラーが影響を受けた歌手は僕も大好きなリトル・ウィリー・ジョンとのことです。少し高めの声でアグレッシヴに歌うところなんかはウィリー・ジョンに似ているかも知れません。そのウィリー・ジョンの特集も近々します。
リトル・ジョニー・テイラーは70年代終わりまではかなりいい感じで歌っていたのですが、80年代から録音も少なくなっていきます。それでもこういうタイプのシンガーは黒人サーキットでは根強い人気があるのでずっとクラブ・サーキットを回っていたんでしょう。
もう一曲聴きましょう。

5.Hard Head/Little Johnny Taylor

今回から始めたスタンダップ゜・シンガーの特集ですが、当たり前のことなんですが、ブルーズは歌が大切で歌詞も大切なんですね。アメリカの黒人クラブにいくとよくわかるのですが、黒人のお客さんは歌詞にものすごく反応します。リズムがあって踊ってればいいという音楽ではないんですね、ブルーズもソウルも。その歌を一緒に歌ったり、歌詞に笑ったり、嬌声を上げたり、同意する言葉を言ったり・・・
このリトル・ジョニー・テイラーの曲もまさに自分たちの生活の歌として彼らの身近にあるものなのだと思います。
来週は先ほど話に出したジョニー・テイラーの特集・・またおもろい不倫ソング出てきます。お楽しみに。

 

2024.09.13 ON AIR

追悼ブリッティッシュ・ブルーズの先駆者、ジョン・メイオール vol.2

ON AIR LIST
1.The Stumble/John Mayall & The Blues Breakers
2.You Don’t Love Me/John Mayall & The Blues Breakers
3.The Supernatural /John Mayall & The Blues Breakers
4.Someday After a While (You’ll Be Sorry) /John Mayall & The Blues Breakers
5.Hard Road/John Mayall & The Blues Breakers

先週に引き続き先ごろ7/22に90才で亡くなったジョン・メイオールの特集です。先週はエリック・クラプトンがジョン・メイオールのバンド「ブルース・ブレイカーズ」に在籍した時に残したアルバムから聴きましたが、クラプトンが一年も経たずバンドを辞めてしまった後に加入したギタリスト、ピーター・グリーンが在籍した67年のアルバム”Hard Road”を聞きます。クラプトンはすでに腕利きのギタリストとしてイギリスでは名の知れた存在でした。ピーター・グリーンはまだそれほど名は知られていませんでしたが、クラプトンに負けない自信があったようです。ではまずそのギターの腕前を聞いてみましょう。クラプトンはブルーズ・ブレイカーズでフレディ・キングのインスト”Hideaway”を録音しましたが、それに対抗するかのようにピーター・グリーンは同じフレディ・キングのこのインスト曲を録音しています。

1.The Stumble/John Mayall & The Blues Breakers

ギターの音色がいいですね。クラプトンの”Hideaway”もいいんですが、この”The Stumble”も負けず劣らず攻撃的なワクワクするギターです。まあこれだけ弾ければクラプトンの後釜としてメイオールも納得したでしょう。
ジョン・メイオールのバンドは「メイオール学校」と呼ばれるようにいろんなミュージシャンが出入りしてストレートにブルーズを演奏する経験をしました。そしてその経験を生かして次のステージに向かって行ったわけです。
クラプトンはやめた後に「クリーム」を結成しブルーズをルーツにした新しいロックへの試みをしました。ピーター・グリーンも一年ほどで辞めてしまいブルーズ・ブレイカーズのベースのジョン・マクビーと以前ブレカーズに在籍していたドラムのミック・フリートウッドと「フリートウッドマック」を結成し歴史に残る曲を録音しました。またその後にブルーズ・ブレイカーズに参加したミック・テイラーは後にローリング・ストーンズに加入してロックの名曲を残すことらなります。そういった新しいブルーズロックの動きが後にハード・ロックの母体ともなっていきます。つまりジョン・メイオールはイギリスのブリティッシュ・ブルーズだけでなく広くブリティッシュ・ロックやハードロックの土台作りにも貢献した人と呼べます。彼自身に大きなヒット曲があったわけではありませんが、若いミュージシャンにロックをやる上でのブルーズの重要性を教えた人でした。次は多くのブルーズマン、ロック・ミュージシャンにカバーされた黒人ブルーズマン、ウィリー・コブの1960年のヒット。歌とハーモニカはジョン・メイオールです。

2.You Don’t Love Me/John Mayall & The Blues Breakers

ジョン・メイオールはブルーズのカバーそして自作のブルーズなどたくさんの録音を残した人でしたが、ブルーズを志す若い人に自由にそのミュージシャンがいいところを出せるようにするプロデュースをしたり、前回ON AIRしたクラプトン参加のアルバムでもクラプトンが初めて歌を録音した”Ramblin’ On My Mind”が収録されてましたが、メイオールがクラプトンに歌うことを勧めたのではないかと思います。次の曲もピーター・グリーンがフリートウッドマックで発表し大ヒットとなった”Black Magic Woman”の原曲となっているようなマイナー・キーのラテン調リズムです。

3.The Supernatural /John Mayall & The Blues Breakers

ピーター・グリーン・ワールドが全開という感じです。こういう個性的なフィーリングをピーター・グリーンはずっと持っていくんですがその感覚の素晴らしさに気づいて自分のバンドで録音させたジョン・メイオールの先見の明もあったと思います。
次の曲もフレディ・キングがオリジナルですが、メイオールの歌もいいですしピーター・グリーンのギターも火を吹いてます。別れを告げられた男が「いつの日かお前は後悔する、オレを哀れんでくれるな。心は真っ暗だけど俺は一人寂しく列車に乗って行くよ」と。

4.Someday After a While (You’ll Be Sorry) /John Mayall & The Blues Breakers

メイオールは高めの歌声なんですが、黒人ブルーズマンで高い歌声といえばJ.B.ルノアーでした。そのJ.B.ルノアの素晴らしさに早くから気づいていたのもメイオールでルノアが亡くなった時に「J.B.ルノアの死」という曲をリリースしてルノアを追悼しました。
彼が録音したカバー曲を見てみるとシカゴ・ブルーズを中心にフレディ・キングのようなモダン・ブルースそしてロバート・ジョンソンのような戦前のカントリー・ブルーズと多彩なレパートトリーがあります。つまりブルーズという音楽全般を彼は自分で探索したミュージシャンで、自分のバンドに参加したミュージシャンに聞くべきブルーズを示唆した人だったと思います。

5.Hard Road/John Mayall & The Blues Breakers

思い出しましたがもう50年以上前、1971年に京都会館のジョン・メイオールが初めて来日したコンサートに行きました。ドラムはいなかったのですが、ベースはキャンド・ヒートの名ベーシスト、ラリー・テイラー。ギターはこの人もあまり話題にならないですが同じキャンド・ヒートの素晴らしいギタリスト、ハービー・マンデル。ジョン・メイオールは主にキーボードとハーモニカそして歌。ドラム・レスのトリオ編成でしたがすごくいいコンサートでした。僕はブルースに突入する頃で初めてライヴで聴いたブルースでした。そして翌72年に僕は塩次伸二とウエストロード・ブルーズバンドを結成するのですが、塩次伸二もピーター・グリーンが大好きでこのアルバム「ハード・ロード」を二人でよく聴いてました。そして、バンドの名前を考える時にこのアルバムタイトルの「ハード・ロード」からロードをもらって、頭には関西にいるということでウエストをつけて「ウエストロード・ブルーズバンド」としました。

ジョン・メイオールさん、ありがとうございました。

2024.09.06 ON AIR

追悼 ブリッティッシュ・ブルーズの先駆者、ジョン・メイオールvol.1

ON AIR LIST
1.All Your Love/John Mayall & The Blues Breakers
2.Double Crossing Time/John Mayall & The Blues Breakers
3.Parchman Farm/John Mayall & The Blues Breakers
4.Ramblin’ On My Mind/John Mayall & The Blues Breakers (Vo.Eric Clapton)
5.They Call It Stormy Monday/John Mayall & The Blues Breakers

ブリティッシュ・ブルーズの先駆者の一人であり1960年代には「ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズ」を率いて、ブリティッシュ・ブルーズ・シーンに大きな役割を果たしたジョン・メイオールが90歳で亡くなった。私も彼のブルーズを聴き教えられる事もたくさんありました。ありがとうございました。
私がいちばん最初に聴いたジョン・メイオールのアルバムは&ザ・ブルースブレイカーズの1966年リリース「Blues Breakers with Eric Clapton 」でした。これには個人的な思い出があります。リリースの翌年67年、当時17才の高校生だった自分が好きだったガール・フレンドがある日「ビートルズとかストーンズもいいんだけど、これからはこういうブルースが流行るみたいよ」と教えてくれました。彼女は音楽におませな女の子で当時日本のグループサウンズが演奏するディスコに行っていてそこでグループサウンズのバンドがカバー演奏するブルースブレイカーズの曲を知ってこのアルバムをゲットしてきました。当時は正直私はやっぱりビートルズの方が好きでそんなにいいと思わなかったのですが、一曲目のこの曲だけは心に残りました。

1.All Your Love/John Mayall & The Blues Breakers

オリジナルはシカゴのブルーズマン、オーティス・ラッシュ。
今のは歌がジョン・メイオール、ギターはエリック・クラプトン。クラプトンはその前に在籍していたヤードバーズがポップな方向に向かうのに納得できなくて脱退し悩んでいる時にジョン・メイオールと会いブルース・ブレイカーズに参加しました。1965年録音ですからクラプトンは20才。当時のイギリスでやはりこれだけキレのある正確なブルース・ギターを弾ける若者は少なかったでしょう。ギターの音色もすごく魅力的でこのアルバムのクラプトンが私はいちばん好きかもしれません。
ジョン・メイオールは1933年生まれでお父さんがジャズを好きで聴いていたそうです。当時のジャズが好きということは当然ブルーズも流れてくるわけです。そして13才くらいでギター、ウクレレ、ピアノを買ってもらって弾き始めていますから多分お金がある家庭に育ったのだと思います。美術学校を卒業してショーウィンドウの装飾をする仕事をしたりデザイン事務所でアート・ディレクターをしていたこともあるそうです。59年26才くらいからバンドも始めて29才の時にメイオールよりすこし先輩のアレクシス・コーナーと出会い、そこからメイオールはブルーズに向かって一直線に進みます。
ここで一曲メイオールのオリジナル・スローブルーズを。これでもクラプトンがいいギターを弾いてます。タイトルのDouble Crossing Timeは「裏切りの時」という意味。

2.Double Crossing Time/John Mayall & The Blues Breakers

60年代の初めにロンドンでブルーズのすばらしさに気づいていたのがアレクシス・コナーで彼の元にはストーンズのミック・ジャガー、ブライアン・ジョーンズ、キース・リチャーズなどが教えを乞いに集まり、メイオールの元にはクラプトンやピーター・グリーン、ミック・テイラー、のちにクラプトンとクリームを結成するジャック・ブルース、フリートウッド・マックのミック・フリートウッドとジョン・マクヴィーなどが集まりました。ジョン・メイオールとアレクシス・コーナーはブリティッシュ・ブルーズの真の先駆者でした。
次の曲はカントリー・ブルーズマン、ブッカ・ホワイトにも同名異曲がありますが、メイオールのこのバージョンはジャズ・ピアニスト&シンガーのモーズ・アリソンが作ったもの。バックの軽快なビートに乗ってメイオールが気持ちのいいハーモニカをプレイしてます。

3.Parchman Farm/John Mayall & The Blues Breakers

ジョン・メイオールは歌、ギター、キーボード、ハーモニカと一応ブルーズに関する楽器をいろいろプレイする人ですが、失礼ですがどれも突出しめちゃすごいと感じるものありません。でも、嫌だなと思うプレイもありません。ただ彼はブルース・ロックの黎明期のイギリスでどんな風にブルーズを演奏したらいいかということはよく理解していて、だから「ジョン・メイオール学校」と呼ばれたように彼の元にはブルーズをこれからプレイしたいクラプトンやピーター・グリーンなど若く才能のあるミュージシャンが集まったのだと思います。
次はこのアルバムでエリック・クラプトンが歌っている曲です。ロバート・ジョンソンの代表的な曲でたぶんこれがクラプトンのヴォーカルの初録音だと思います。

4.Ramblin’ On My Mind/John Mayall & The Blues Breakers (Vo.Eric Clapton)

クラプトン20才のヴォーカルでした。
ヤードバーズから人気のあったクラプトンが加入したことでブレイカーズの人気は上がり、このアルバムもイギリスのチャートで6位まで上がりました。しかし、リリースの数日後にはクラプトンはブレイカーズを辞めてジンジャー・ベイカーとクリームの結成に向かいました。結局、クラプトンは一年もブレイカーズにいなかったのですが、ジョン・メイオールと出会ったことでブルーズへの知識を深め、ブルーズで得た多くのものを使ってその後のクリームに向かいました。
面白いのはクラプトンも来週聴くピーター・グリーンも短い期間でブルース・ブレイカーズを辞めてしまうのですが、ジョン・メイオールはあまり引き止めもしなかったようで、「げんきで、またな」みたいな感じだったらしいです。
では最後にクラプトンのギターが火を吹いているギターソロが聞けるスロー・ブルーズを聞きましょう。ギターソロの途中から入ってきます。

5.They Call It Stormy Monday/John Mayall & The Blues Breakers

最後に亡きジョン・メイオールへ追悼のコメントをエリック・クラプトンが出しているのでその1部ですが読みます。
「私が本当に考えなければいけないことを彼から全て学んだ。誰かに気に入られようと気に入られまいとただ自分が演奏したい音楽を演奏すればいいんだと彼は教えてくれた」
ジョン・メイオールの冥福を祈ります。
来週もう一回ジョン・メイオールの追悼特集をします。来週はエリック・クラプトンの後にブルーズ・ブレイカーズに入ったピーター・グリーンの素晴らしいブルーズギターが聞けます。