ロックの老舗バンド「リトル・フィート」がニューリリースしたブルーズカバー・アルバム”Sam’s Place”
ON AIR LIST
1.You’ll Be Mine/Little Feat
2.Long Distance Call (Featuring Bonnie Raitt)/Little Feat
3.Mellow Easy/Little Feat
4.Why People Like That/Little Feat
5.Last Night/Little Feat
若い音楽ファンの方たちはリトル・フィートと言ってもピンと来ない人がほとんどだと思いますが、70年代に生まれた素晴らしいロックバンドでした。
最初はフランク・ザッパの「ザ・マザーズ・オブ・インヴェンション」に参加していたギターの名手、ロウエル・ジョージが同じマザーズにいたベーシストのロイ・エストラーダとともに69年に結成したのですが、その二人がすでに亡くなり一度解散もしているのでぼくは今はあまり興味がありませんでした。もちろん70年代にリリースされた「ディキシー・チキン」や「ウェイティング・フォー・コロンバス」などのアルバムは大好きで今でも時折聴きますが、オリジナル・メンバーがほとんどいなくなった現在のリトル・フィートの新譜と言われても・・・と思っていたらこれがブルーズ・アルバムということでやっぱり気になってゲットしました。
アルバム・タイトルは「サムズ・プレイス」今回のアルバムでヴォーカルを担当したパーカッションのサム・クレイトンの名前からサムズ・プレイスと名付けたのかと思っていたら、録音したのがメンフィスのサム・フィリップスのスタジオだったのでその名前からという2つの意味があるそうです。サム・クレイトンは現在78歳でリトル・フィートには1972年から参加しています。過去にもリトル・フィートのアルバムでヴォーカルをとったことはあるのですが、アルバムまるまる一枚で歌ったのは今回が初めてだそうです。
最初に聞いてもらうのはシカゴ・ブルーズのハウリン・ウルフの1962年の名盤「ハウリン・ウルフ」に収録されている曲でソング・ライティングはウィリー・ディクソン
「君は可愛くてべっぴんさんや。俺のものになってくれたらなぁ・・って思うよ。俺が君の彼氏になって君は俺のものや。俺の彼女や。俺が死ぬ日まで一緒にいて欲しい」
1.You’ll Be Mine/Little Feat
リトル・フィートのライヴは一度も聞いたことがないのですが、You Tubeに上がっているロウエル・ジョージが生きていた頃の映像を見ますともうすごいグルーヴ感のあるバンドで、ザ・バンドやオールマン・ブラザーズにあった南部のテイストもあったりして僕は好きです。
今回のリトル・フィートのブルース・カバー・アルバムには今のハウリン・ウルフの曲の他にもマディ・ウォーターズ、リトル・ウォルターなどシカゴ・ブルーズマンたちの曲が選ばれています。ヴォーカルのサムが今回のブルーズ・カバーアルバムを前々から作りたかったらしいです。
次はマディ・ウォーターズの代表的なブルーズで私もカバーしています。ゲストのスライドギターは私の愛するボニー・レイットです。
2.Long Distance Call (Featuring Bonnie Raitt)/Little Feat
ボニーはもう歌もスライド・ギターも風格が感じられる域に達してますね。いまいちばんライヴを観たいのはボニーです。
次の曲ではリトル・フィートらしくもありちょっとロス・ロボスを思い出したり。オリジナルはシカゴ・ブルーズのリトル・ウォルター チェス・チェッカーレコードから1954年のシングル・リリースです。ラテンのリズムが入ったファンキーな曲です。
3.Mellow Down Easy/Little Feat
このアルバムはシカゴ・ブルーズのカバーなんですがシカゴ・ブルーズのサウンドとグルーヴではなくリトル・フィートのサウンドとグルーヴなんですね。70年代の最初から始まったバンドでオリジナルのメンバーもほとんどいないのにどこかリトル・フィート・サウンドだと思えるのはなんでしょうかね。つまらないブルーズロックのバンドのようなギター弾きまくりの暑苦しさがないのですが、バンド独特の濃いブルーズの匂いがあります。でもこのバンドがこんなにストレートにブルーズを取り上げるとも思っていなかったです。意外でしたね。アメリカの腕のいいロックバンドはみんな必ずちゃんとブルーズを演奏できるんですよね。ブルーズをプレイすることは若い頃から日常ですからね。しかもそこそこマニアックに。
次の曲はマディ・ウォーターズのアルバム「ウッドストック・アルバム」に収録されてます。ぼくのブルーズ・ザ・ブッチャーでも去年リリースしたアルバム”Feel Like Goin’ Home”に収録した曲です。
作詞作曲はボビー・チャールズ
4.Why People Like That/Little Feat
もう1曲聴いてみましょう。オリジナルはさっきのリトル・ウォルターのカバー”Mellow Down Easy”のシングル盤の片面に収録されている曲です。
この曲の歌詞がよくわからないんですが、最初は「昨日の夜、オレは親友を失った。君はオレを最悪の気持ちにさせて行ってしまった」で始まるんですが、二番になると「いま朝早くに俺の愛がオマエに降り注いでいる。俺たちはどうすればいのか教えてほしいんや」3番の歌詞になると「明日まで待つつもりや。みんなは日々物事は変わっていくと言う。愛してるよ、ベイビー。めちゃ恥ずかしいこと(残念?)やってわかるやろ」
そもそも親友が死んだというのと2番から出てくる自分の彼女とどうつながっているのか・・、亡くなった友達とこの彼女が付き合っていたのか・・とか内容がイマイチはっきりつかめないブルーズですが、いい曲です。
5.Last Night/Little Feat
今回のこのリトル・フィートのブルーズ・カバーアルバムは一曲のオリジナルを除いてはマディやウルフやリトル・ウォルターのブルーズのカバー集です。
録音もいいし、演奏はもちろん、選曲もいいブルーズ・アルバムです。安っぽいブルーズロックのアルバムとは一線を画しているいいアルバムだと思います。そして70年代にリトル・フィートが残した素晴らしいアルバムをまでたどり着いて聞いてもらえると嬉しいです。