2019.04.19 ON AIR

黒人音楽と白人音楽が交叉し始めた50年代をテーマにした映画
「アメリカン・グラフィティ」vol.2 LPでどうぞ!

AMERICAN GRAFFITI ・Original Sound Track Recording
(ワーナー・パイオニア P-5642/3)

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ON AIR LIST
1.Ain’t That A Shame/Fats Domino
2.Ya Ya/Lee Dorsey
3.To The Aisle/The Five Satins
4.Green Onion/Booker.T& The MG’s
5.At The Hop/Flash Cadillac And The Continental Kids
6.All Summer Long/The Beach Boys

前回から1973年に公開された映画「アメリカン・グラフィティ」のサウンド・トラックを聴きながら、50年代から60年代の黒人音楽への白人音楽の関わりみたいなことを話しています。
このLPレコードは2枚組計41曲収録されていて、前回聴いたバスター・ブラウンの「ファニー・メェイ」のような黒人ブルーズからデル・シャノンの「悲しき街角」のような白人ポップスまで収録されています。
今日はまずニューオリンズR&Bの大御所、ファッツ・ドミノからです。ジョン・レノンもソロ・アルバムでカバーしていました。1955年ポップ・チャート10位まで上がりましたが、これをカバーした白人シンガー、パット・ブーンのバージョンは1位になりました。当時は黒人がちょっとヒットさせた曲を白人がカバーして大ヒットになるということがよくありました。やはり白人にとってはそれが黒人のカバーであるかどうかより、白人が歌っていればいいわけなのでプロモーションの力も違うので白人の方が売れることになってしまいます。パット・ブーンのバージョンをYouTubeで聴いてみましたが、炭酸の抜けたコーラのようなテイストでした。
では、偉大な黒人ピアニストであり、シンガー&ソングライターのファッツ・ドミノの歌
1.Ain’t That A Shame/Fats Domino

次はもうひとりニューオリンズのシンガー、リー・ドーシーの1961年の曲です。50年代中頃から60年代にかけてニューオリンズのR&Bがかなりヒットして白人の若者たちに浸透していったと思われます。この曲はR&Bチャートで1位、白人のポップチャートでも7位まで上がりました。ファンキーでポップなこの曲もジョン・レノンがカバーしていますが、リー・ドーシーはイギリスでも人気でコンサートにも出かけています。

2.Ya Ya/Lee Dorsey
昔はこの映画にはアメリカの有名なラジオのディスクジョッキー、ウルフマンが出演して映画の中でもDJの役をやっているのですが、実は僕はこのウルフマンにロスで会ったことがあり、彼のラジオ番組にも出演しました。というのは彼が日本でラジカセのCMにデルために来日した時どこかの放送局で日本で英語で歌っているバンドとシンガーをON AIRしながらDJする特別番組をほやったのですが、その時に僕がやっていたウエストロード・ブルーズバンドが選ばれてON AIRされたんですが、その後気に入ってくれたらしくて会いたいとレコード会社に連絡がありました。僕はその頃ロスにいてブラブラしていたんですが、それでロスのカフェで待ち合わせしたらこの映画の本物のウルフマン・ジャックが来て「おおっ!」という感じでした。それで彼のスタジオに連れていかれていまから収録するから出ろって言われてほんのの2,3分ですが出ました。その時ウルフマン・ジャックが「
日本のローリング・ストーンズ」と言って紹介してくれたのですが、「いやいや、それは言い過ぎやろ、おっさん」いう感じで楽しい人でした。
このアルバムでは次の曲でそのウルフマンがラジオを聴いている若者と電話でちょっと話をして曲に入るんですが、 ウルフマンが「こんにちは、君はいくつ」と訊くと男の子が「僕は13歳だよ。あなたはいくつなの?」と言うと、ウルフマンが「僕はたった14歳だよ」と冗談を言うと男の子が「オーボーイ、I Love You Wolfman」と笑って返してます。聴いてください。曲は
3.To The Aisle/Five Satins
いまのは黒人のコーラス・グループ、ファイブ・サテンズでしたが、50年代中頃から黒人のドゥ・ワップのコーラスグループのブームがありました。このアルバムにもいまのファイブ・サテンズ、フラミンゴス、クローバーズ、ハート・ビーツ、スパニエルズとたくさん収録されていて、ドゥ・ワップ・ブームのすごさがわかります。ドゥ・ワップはきれいなハーモニーのコーラス音楽ですし、表面的な激しさ

次はブッカーT.&MG’sの「グリーン・オニオン」
キーボードのブッカーTはじめ、ギターのステーヴ・クロッパー、ベースのドナルド・ダックダン、ドラムのアル・ジャクソンからなるMG’sはメンフィス・スタックス・レコードのスタジオ・ミュージシャンのグループでオーティス・レディングはじめ多くのスタックスの録音そしてライヴもこなしていた。ブルーズ進行のどうってことないと言えばどうってことないインストルメンタルの曲が62年にチャート3位まで上がった。このアルバムでは唯一のインスト曲。
4.Green Onion/Booker.T&MG’s
アメリカの青春映画のひとつとして有名なこの映画は、4人の白人の若者のある一夜の出来事を映画にしたもので恋愛あり、喧嘩あり、悩みありの青春もの。監督のジョージ・ルーカスの出世作であり内容は彼が過ごした50年代の青春を描いていると言われてます。
こんな楽しい曲も入ってます。69年のウッドストック・フェスティバルの映画を観た方なら知っているこの曲はシャ・ナ・ナというオールド・ロックンロールのコーラス・グループが歌ってました。オリジナルは1958年のダニー&ザ・ジュニアズでこのアルバムで歌っているフラッシュ・キャデラック&コンティネンタル・キッズもカバーなんですが、楽しいロックンロールです。
5.At The Hop/Flash Cadillac And The Continental Kids

このアルバムの最後は僕もリアル・タイムで10代の頃ずっと好きだったビーチ・ボーイズです。
映画はベトナム戦争の泥沼にアメリカが入る直前の頃、50年代から続いた平和で豊かな最後の楽しい時代だったを描いているが、映画最後のエンドロールで映画の主人公だった4人のそれからどうなったかが文字で出てくる。そして、その中のひとりテリーがベトナムで亡くなったという文字がでる。その時にビーチボーイズのこの曲が流れる。
楽しく過ごした夏が終わっていくという曲です。
6.All Summer Long/The Beach Boys

アメリカン・グラフィティ観た方も観てない方もDVDで観てください。いつの時代も変らない青春の感じが描かれてますが、自分の高校時代の青春をきっと想い出すと思います。
そして、人種差別や権利の差別がまだたくさんあった時代で社会的政治的にはまだまだひどす時代ですが、黒人と白人が音楽の上では互いに歩み寄っていく時代です