2019.06.14 ON AIR

LPレコードで聴くR&Bのゴッド・ファーザー、ジョニー・オーティスのクオリティの高いキャピトル・レコード時代

The Capitol Years/Johnny Otis (Capital/Bug C1-92858,92859)
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ON AIR LIST
1.Willie And Hand Jive/Johnny Otis
2.Castin’ My Spell/Johnny Otis
3.Until We Meet Again(Bye Bye Baby)/Johnny Otis
4.Hum-Ding-A-Ring/Johnny Otis
5.Why Don’t You Do Wright/Johnny Otis(

今回聴いてもらうこのアルバム”The Capitol Years/Johnny Otis”はLP レコード2枚組です。
ジョニー・オーティスと言えばこの曲を真っ先に想い出す”Willie And Hand Jive”。この曲は有名曲でエリック・クラプトンも「461オーシャン・ブールバード」でカバーしていますが、ポップな要素もあり1958年にポップ・チャートの9位になった大ヒット。ジョニー・オーティスのいちばんのヒット曲となりました。今日はまずその曲から。

1.Willie And Hand Jive/Johnny Otis

ジョニー・オーティスは両親がギリシア人からアメリカに移民してきて、彼はカリフォルニアで生まれました。育ったのが黒人と同じエリアだったので自然と黒人音楽が身についてしまったようです。音楽に目覚めた頃は、カウント・ベイシーのようなジャズ・オーケストラが好きだったようです。最初に覚えた楽器はドラムですが、ピアノも弾くし作曲もするし歌も歌うし・・とにかくジョニー・オーティスの肩書きというのがめちゃたくさんあるんですが、ざっと挙げてみます。singer, musician(ドラム,ピアノ、ビブラホーン), 作曲家, arranger, bandleader, talent scout, disc jockey, record producer, television show host,, author, journalist, minister そして コンサートの興行主。最後のコンサートの興行主というのは40年代終わりくらいから自分がスカウトしてプロデュースしたミュージシャンたちをつれて「ジョニー・オーティス・ショー」というパッケージ・ショーを組んで全米をツアーしました。前にこの番組でもジョニー・オーティス・ショーのライヴ盤をON AIRしましたが、それも最高です。
エスター・フィリップスやエタ・ジェイムズをスカウトしてデビューさせたのもジョニー・オーティスです。そして、ビッグ・ママの大ヒット「ハウンド・ドッグ」のプロデュースも彼です。

次の曲で一緒にデュエットで歌っているのはマーシィ・リーというシンガーで、ちょっと調べてみましたがこのジョニー・オーティスとの録音しかないみたいです。ファンキーなダンス・チューンですがまさにジョニー・オーティスの真骨頂です。
2.Castin’ My Spell/Johnny Otis

当時ナット・キング・コールやフランク・シナトラも抱えていたメジャーのキャピタルレコードはメジャーな会社でスタジオのクオリティやエンジニアの腕がいいのか音がいいです。そして録音がいいだけでなく演奏がいいです。
このアルバム、すべてドラムが”ミスター・バック・ビート”アール・パーマー、ベースがカーティス・カウンス、この人はウエストコーストのジャズ系のベーシストです。そして、ギターがジミー・ノーラン、この人は知っている人も多いと思いますが、ジェイムズ・ブラウンのバンドにいて”Cold Sweat”や”I Got The Feelin’””Lickin’ Stick”など60年代のジェイムズ・ブラウンの代表曲のほとんどはこのジミー・ノーランです。たぶん、こういうスタジオ・ミュージシャンをやっていて、JBのバンドに誘われたのだと思います。それでジョニー・オーティスもウエストコーストということでウエストコーストの有名ブルーズマン、チャールズ・ブラウン・タイプのスロー・ブルーズを録音しています。と言うか、メロディはチャールズ・ブラウンの大ヒット”Driftin’ Blues”そのまんまですが・・サウンドの感じも・・
ジミー・ノーランのギターのバッキングが最高です。ちょっとしか出てこないギターソロも最高です。
「また、会う日までさよなら」という最初の”Bye Bye Baby”なんか歌詞もメロディも歌い方もチャールズ・ブラウンで笑ってしまいます。
3.Until We Meet Again(Bye Bye Baby)/Johnny Otis
いまのジミー・ノーランの短いギター・ソロでしたが、いい音色でいいフレイズであれだけですごく印象に残るもんなんですね。もちろんバッキングの丁寧なプレイは素晴らしいです。

ジョニー・オーティスは1957年から59年まで二年間キャピタル・レコードに在籍しました。大ヒット”Willie And Hand Jive”以外、キャピタルでは大きなヒットは出なかったのですが、彼の作るファンキーな音楽はブルーズ、ジャンプ・ブルーズ、リズム&ブルーズ、ロックンロールと当時の黒人音楽すべての要素をもっていて50年代R&Bの躍動を感じます。
では、一曲ロックン・ロール・タイプの曲を。
4.Hum-Ding-A-Ring/Johnny Otis
Ding-A-Ringいうのは鐘の音なんかがジャラン、ジャランもとかカンカンいう音のことで、Humいうのはハミングのことでもありますが、ガヤガヤいう意味もあって、まあわいわい騒ぐ様子のことでしょうか。
ドラムがステディで力強くてストレートで余計な音がない・・もうめちゃくちゃ気持ちいい。歌と演奏そして録音のクオリティが高いのでヒット曲がなくてもこのアルバムは聞き応えがあります。しっかりアレンジもされていてこの50年代後期のジョニー・オーティスは本当に素晴らしいです。
最後の曲はこの番組で以前ON AIRしましたが、40年代のはじめの女性シンガーのリル・グリーンが歌った曲です。「なんであんたしっかりせんの。もっとお金稼いできてや」いう歌でスローの曲ですが、それをジョニー・オーティスはインストでラテン調のファンキー仕立てにしています。原曲を知っているとちょっとびっくりのアレンジです。
5.Why Don’t You Do Wright/Johnny Otis

2012年に90才でジョニー・オーティスは亡くなりましたが、晩年は牧師さんになって社会奉仕の仕事などもやっていたそうです。
今日はギリシア系の白人でしたが魅了されたR&Bに夢中になり、最後はリズム&ブルーズのゴッド・ファーザーと呼ばれ、アメリカの音楽に大きな貢献をしたジョニー・オーティスのキャピタル・レコード時代の曲をLPレコードで聞いてみました。