2019.08.09 ON AIR

60年代初期イギリスのモッズたちが愛したR&BそしてBLUES vol.2

Stirring Up Some Mad Soul ACTION(JASMINE  JASCD!046)

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ON AIR LIST
1.I Got Love If You Want It/Slim Harpo
2.I’m A Lover Not A Fighter/Lazy Lester
3.Too Many Cooks/Jesse Fortune
4.Homework/Otis Rush
5.16 TONS/B.B”Blues Boy”King And His Orchestra

前回に引き続き60年代のイギリスのカルチャー・ムーヴメントのひとつだったモッズ、そのモッズの連中が好きだった音楽、アメリカのR&Bとブルーズをコンピレーションしたアルバム「Stirring Up Some Mad Soul ACTION」を聞きます。
前回はアルバムに入ってるR&Bを聞いたのですが、今回はブルーズを中心に聞きます。
60年代前半にロンドンでモッズと呼ばれた若者たちは、モッズコートと呼ばれたアメリカ軍のパーカーを好んで着たり、スクーターはイタリアのベスパ、ヘアースタイルはおかっぱみたいに前髪をおろしたスタイルとライフスタイルにそれなりのこだわりがあり、そういう連中が夜な夜なロンドンのパブ、クラブに集まって呑んだり踊ったりしていました。その頃彼らが聞いていた音楽を集めたのがこのアルバム「Stirring Up Some Mad Soul ACTION」

今日はこのアルバムからブルーズ編。まずは当時のイギリスの黒人音楽好きが大好きだったルイジアナのブルーズマン、スリム・ハーポ。
そのスリム・ハーポが所属したのが「エクセロレコード」。社長のジェイ・ミラーが作ったエクセロレコードのサウンドがイギリスの若者にぴったり来たようです。スリム・ハーポにはストーンズがカバーした”King Bee” “Shake Your Hips”はじめ”Rainin’ in My Heart” “Baby, Scratch My Back.””Tip on In”などヒット曲、有名曲がたくさんありますが、このアルバムに収録されているのは1957年彼のデビュー曲。イギリスで人気のあったスリム・ハーポをコンサートに呼ぼうという動きは当然あったようですが、ハーポは1970年に心臓発作で亡くなりました。46才という若さでした。
1.I Got Love If You Want It/Slim Harpo
もともとハーモニカ・スリムという芸名だったくらいでハーモニカは個性的ですごく印象に残ります。
ハーポの鼻にかかったような歌声とシンプルでメロディックなハーモニカ、バックのリズムはタイトでしっかりグルーヴして、全体的にはダウンホームな味わいという絶妙なサウンド・・これがエクセロ・レコードの特徴です。当時のモッズ連中は曲とか歌詞だけではなくてこういうエクセロレコードの録音の空気感も好きだったのではないかと思います。音が歪んでいなくて軽くはないんですけど乾いた音がしている。あと全体のサウンドの響きがなんとも言えずいいです。

もうひとりエクセロレコードのブルーズマン、レイジー・レスターが収録されています。レイジー・レスターはスリム・ハーポほど売れませんでしたが、エクセロというレーベルを代表するブルーズマンのひとりで彼のダウンホームな感じも捨てがたいものがあります。ハーモニカもいいです。
2.I’m A Lover Not A Fighter/Lazy Lester
レイジー・レスターは二年前に日本でも公開された”I AM THE BLUES”にも元気に出演していたのですが、昨年の8月に85才で亡くなりました。すごくいい味を出していた歌とハーモニカがもう聞けないのは残念。

次の曲は1963年の録音でバックのギターは若き日のバディ・ガイです。この曲はロバート・クレイがカバーしたのでそのヴァージョンで知っている方もいるかも知れませんが、オリジナルはこのジェシー・フォーチュンです。ラテン調のリズムとちょっとラフな演奏そしてフォーチュンのテンションの高い歌は盛り上がってきた夜中のクラブで踊るには最適のダンスナンバーだったと思います。
3.Too Many Cooks/Jesse Fortune
このアルバムのタイトル”Stirring Up Some Mad Soul”「奮い立つ熱狂のソウル」にふさわしいジェシー・フォーチュンの熱唱でしたが、こういうちっょとラテン色の入ったリズムもモッズ連中は好きだったみたいです。
次のオーティス・ラッシュもイギリスで人気のブルーズマンでした。彼のヒット曲”I Can’t Quit You Baby”はレッド・ツェッペリンにカバーされたり、”All Your Love”をジョン・メイオール&ブルーズブレイカーズ時代にクラプトンがカバーしたり、イギリスにも何度かコンサートに行ってます。しかし、ここで選曲されているのはラッシュがデュークレコードと契約した時に一枚だけリリースされたこの曲
ラッシュの有名曲ではないこの選曲もモッズらしい感じがします。
4.Homework/Otis Rush
いまの「ホームワーク」はロックのJ.ガイルズバンドにもカバーされています。

これ前もON AIRしたかも知れませんが、B.B.キングの珍しい曲で1956年にRPMレコードにいた頃の録音ですが、いわゆるスタンダードナンバーをB.Bがギター弾かないで歌だけ歌っているトラックです。曲は16トンという曲でマール・トラヴィスという人が作ってテネシー・アーニー・フォードという歌手が歌ってヒットしたらしいのですが、僕は黒人コーラスグループのプラターズ歌っているレコードをうちの親父が持っていたので小学生の頃よく聞かされました。。
しかし、この曲をBBが歌っているとは・・・最初聴いたときはびっくりしました。
5.16 TONS/B.B”Blues Boy”King And His Orchestra
やっぱりギターを弾かなくても充分に歌手としてだけでも通用する歌の上手さです。
今回は前回に引き続きちょっと面白いアルバム「Stirring Up Some Mad Soul ACTION」を聞きました。これは輸入盤でジャスミン・レコードというイギリスの会社からリリースされています。なかなか楽しいアルバムです。